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Dr.宮城×Dr.藤田
ジェネラリストのための呼吸器診療勘どころ

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収載の15症例は内科医がよく遭遇するコモンな呼吸器疾患。Dr.宮城の豊富な経験による「臨床の勘どころ」と、Dr.藤田の画像診断と文献考察を各症例から学ぶことができる。本書の哲学は、問診や身体所見を重視する沖縄オリジナルの総合診断学であり、1つの症例につきさまざまな角度から臨床推論、得られた情報をもとに最終診断に迫る全人的アプローチを用いている。ジェネラリスト必見のケースカンファレンス!
シリーズ ジェネラリストのための
宮城 征四郎 / 藤田 次郎
発行 2014年04月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-01979-8
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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 沖縄県臨床呼吸器同好会における症例検討の実態を記した単行本がこの度,医学書院から出版される運びとなった.
 総合診療誌『JIM』に連載された本会の症例集をまとめて一般医(ジェネラリスト)ならびに研修医を対象に発刊するという試みである.
 沖縄県臨床呼吸器同好会が発足してすでに40有余年が経過した.
 正式に記録されているだけでもすでに280回以上の回数を超え,その内容はともかく,年数から言えば全国的に見ても全く遜色のない研究会である.
 私が故郷である沖縄に帰ったのは昭和44(1969)年であるが,当時,呼吸器を専門にする医師は当地にはわずか数人という少なさであった.沖縄県全体の医師数そのものがごくわずかであったから,無理からぬことでもあった.
 そういうなかで,臨床医学を中心に討論する沖縄県臨床呼吸器同好会は産声を上げた.原則として毎月1回というのがうたい文句であったが,いろいろな事情により,概して年間8~9回前後の割で行われてきた.
 沖縄県立中部病院呼吸器科に奉職していた私が代表世話人となり,数少ない沖縄の呼吸器科医を集めて細々と発足させたのが始まりである.
 その後,昭和62(1987)年,斎藤厚先生が琉球大学第一内科の教授として長崎大学からご赴任後,多数の教室員たちが加わることにより,同会は飛躍的に発展した.
 その後,斎藤教授が平成17(2005)年に定年によるご退官となり,地元長崎にお帰りになったが,同年,同教室の教授に香川大学からご赴任された藤田次郎先生が,その後を受けて同会の代表世話人に加わることによって,さらに大きく飛躍した.
 同教室は呼吸器,感染症,消化器を掲げる大きな教室の1つであり,すでに多くの呼吸器専門医を輩出していたことから,ここ沖縄の呼吸器学は大きな変貌を遂げ,同時に,沖縄県臨床呼吸器同好会の会員数も倍加したのである.
 藤田教授が代表世話人の一人となった沖縄県臨床呼吸器同好会は,年々大きく発展を遂げるところとなり,最初の1時間は会員が属する病院から1症例を提示してもらい,その症例について臨床討論を徹底的に行う.残りの1時間は若手会員から選ばれた演者が,自分の得意とする分野について講演をするというスタイルが確立した.この講演スタイルは演者に選ばれた若手呼吸器科医にとっては登壇練習の場でもあり,同時に大きな登竜門ともなったのである.
 この機会を通じて大きく羽ばたくことになった若い呼吸器科医は数知れず,国内外の学会や研究会などの演者として成長していく原動力となったことは論をまたない.
 加えて藤田教授がこの会の第237回から,自ら録音機を持参して症例検討会の模様を克明に録音し,文章にまとめ,文献を加えて論文化し,アカデミックな域にまで昇華して,2009年4月号(第19巻4号)から総合診療誌『JIM』に連載し始めたことは,この会をより学術的な研究会に押し上げる画期的な出来事であった.
 その連載原稿もすでに約40回を数え,毎月,『JIM』愛読者の目には触れてきたわけであるが,この度,それらを編集・改変して1冊の単行本としてジェネラリストならびに研修医たちの参考に供してはどうかという医学書院編集部の方たちのご好意により,実現する運びとなった次第である.
 この本は呼吸器を中心として書かれてはいるものの,臨床を志すすべての医師に共通する症例検討の実態であり,モデルである.
 この本に記された内容が日本の臨床医たちにとって少しでもお役に立つことがあるとすれば,私たち沖縄県臨床呼吸器同好会の会員にとっては望外の喜びである.
 さらに読者諸兄の新工夫やご提案をいただいて,私たちの同好会の在り方を一層改善することができればと願ってやまない.
 また,本書を企画・推進していただいた医学書院総合診療誌『JIM』編集室の野中良美氏,滝沢英行氏に対し,深甚なる謝意を表したい.

 2014年1月
 群星沖縄臨床研修センター
 宮城征四郎

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本書のコンセプト

Case 01 喀痰の性状と胸痛の種類で疾患を絞る
 右胸痛,湿性咳嗽を主訴とした特記すべき既往歴のない50歳男性

Case 02 感染症を疑った時,問診でどのヒストリーを押さえるか
 1週間前からの発熱と咳嗽(湿性から乾性に変化),全身怠感により来院した49歳男性

Case 03 血尿と血痰は一元的か二元的か,生検すべきか,すまいか
 右上肺野に空洞性陰影を呈した61歳女性

Case 04 バイタルサイン,検査所見のピットフォール
 急性の発症を示し,発熱,および乾性咳嗽を伴う呼吸困難を呈した59歳男性

Case 05 胸部X線写真上の中枢性気管支拡張で何を疑うか
 気管支喘息,肺炎による入院歴を有し,5日前からの喘鳴,咳嗽を呈した56歳男性

Case 06 長期ステロイド療法中の患者に何が起こったか
 薬剤性間質性肺炎のステロイド療法中に発熱・湿性咳嗽が出現した61歳男性

Case 07 非典型的なコモン・ディジーズをどう見極めるか
 63歳男性の発熱と胸部異常影

Case 08 問診,症状,聴診の陰性所見で,鑑別診断を絞り込む
 徐々に進行する労作時呼吸困難を呈した65歳男性

Case 09 リウマチ治療中に急変した患者
 関節リウマチの治療中に呼吸困難を呈した75歳男性

Case 10 若年者に発症した急性の呼吸困難で何を考えるか
 発熱,呼吸困難を主訴とした特記すべき既往歴のない21歳男性

Case 11 亜急性か,慢性かを見極める
 亜急性の発症を示し,発熱および乾性咳嗽を伴う労作時呼吸困難を呈した63歳男性

Case 12 急性か,亜急性か,慢性かを見極める
 約3週間前からの発熱と呼吸苦により来院した生来健康な47歳女性

Case 13 病歴と身体所見だけで気づくべき疾患
 右肩から右上肢にかけての疼痛としびれから発見された,52歳男性の胸部異常影

Case 14 ばち指を見たら何を考えるか
 胸膜炎と疑われた43歳女性の胸部異常影

Case 15 健診での「胸部異常影」を理由に受診した患者をどう診るか
 人間ドックにて,両側多発性小結節性陰影を指摘された51歳男性

あとがき
索引

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重要なポイントを押さえたい研修医,指導医必携の一冊
書評者: 山中 克郎 (諏訪中央病院内科)
 豊穣な知識を持ちながら多くは語らない。それが私の憧れる指導医像である。患者さんへの慈しみと人間愛にあふれ,静かに一線を守り寡黙な風情を見せるほうが格好いい。

 宮城征四郎先生が司会をされた症例検討会に参加させていただいたことがある。時系列に基づいた症状の変化と基本的身体所見の中で,何に注目すべきかを明確に示す大変教育的な診断推論カンファレンスであった。本書ではその教えが臨場感を持って迫ってくる。決して多くの知識を読者に与えるものではない。どの症状や所見が診断の絞り込みに重要であるかという診断推論のポイントが示されている。「疾患当てゲームではなく,どう考えどうアプローチするかという過程が重要」なのだ。

 呼吸器疾患を有した15の教育症例が含まれている。最初に病歴と身体所見が担当医により発表される。「診療の勘どころ」では宮城先生や藤田次郎先生が,鑑別診断を絞り込む様子を見せてくれる。例えば,痰の性状で起炎菌がわかる。「鉄錆色(肺炎球菌),イチゴゼリー状(クレブシエラ),オレンジ色の粘稠痰(レジオネラ)」(p2)という情報を知っていることは臨床医の腕の見せどころである。「呼吸数が30/分以上となるなら病態は四つしかない(敗血症,低酸素血症,過換気症候群,呼吸筋の障害)」(p101)。こんな風に言い切れるなんて,なんと悠々としてすてきなことだろうか。
 さまざまな情報からどれが診断に重要な情報であるかを見極めること,数多く考えられる鑑別診断から可能性が高い診断へと一気に絞り込む方法は,実は非常に奥深い臨床的センスがいる技術なのである。

 藤田先生の「画像診断のポイント」では特徴的な陰影とその分布から鑑別診断が導かれる。原著論文まで引用した「文献考察」も秀逸である。「Hornerはスイス生まれの眼科医で,Horner症候群の原著は1869年にドイツ語で報告されている」そうだ(p154)。40歳の女性について眼瞼下垂,縮瞳,眼球の軽度陥没,発汗低下という詳細な臨床所見を記載し,これが交感神経の異常であることまで指摘したHornerの洞察力に深い感銘を受ける。疾患が見つかった歴史的背景や科学的意味を知ることは楽しい。

 また表や図を用いた,抗真菌薬の作用機序と各種真菌に対する効果のまとめ(p75)とガイドラインに基づいたアスペルギルス症に対する標準治療の解説が非常にわかりやすい。さらに喜舎場朝雄先生をはじめ,超一流の臨床医からのコメントも学ぶことができる。なるほど,そこに着目すればよいのか。

 情報過多に陥っている研修医に必要なのは,重要ポイントを押さえた学習であろう。この本を手に入れて,指導医としての人生を変えるという発想もありだろう。研修医だけでなく,もう一度呼吸器疾患を学び直したいベテラン医にもこの名著を推薦したい。
初学者にもわかりやすい呼吸器臨床の面白さがあふれた一冊
書評者: 松村 理司 (医療法人社団洛和会総長)
 総合診療誌『JIM』の「臨床の勘と画像診断力を鍛える コレクション呼吸器疾患」シリーズは,すでに第40回に迫っている。この中から日常でよく経験する15症例を選び,呼吸器疾患へのアプローチの仕方を一般内科医や研修医向きにまとめられたのが本書である。このシリーズの基になっている沖縄県臨床呼吸器同好会が40有余年間で280回以上開かれているのは,誠に慶賀に堪えない。卒後9年目の私が沖縄県立中部病院勤務の若き日の宮城征四郎先生の門を叩き,(1)H&P(history takingとphysical examination;病歴聴取と身体診察)を重視した診断推論,(2)文献(エビデンス)による裏付けの訓練,(3)チーム医療下での屋根瓦式教育の実際に感銘を受けたのは1983年だが,歴史の一こまかと感慨深い。

 本書の長所は数多い。第1には,中身の濃い,質の高い症例検討会の臨場感に浸れることである。記録に残そうとする藤田次郎先生の発想と持続力の賜物である。第2に,宮城御大の出番と肉声が十分に確保されている。文字通りの「診療の勘どころ!」から教わるものは多い。H&Pやバイタルサインの活用をめぐる宮城節には従来名人芸がつきまとったが,それをきっちりと味読できるのはありがたい。第3に,重鎮の方々の「画像診断のポイント」や「コメント」にもまばゆい「クリニカル・パール」が散りばめられている。第4に,藤田先生の「文献考察!」が貴重である。ほぼ毎月の努力には頭が下がる。第5に,何よりも,呼吸器臨床の面白さ,楽しさがあふれている。徹底して実際的で,衒学的でない。口語体なのもうれしい。EBM用語も少なく,初学者にも極めて入りやすい。

 新医師臨床研修制度開始10年後の今日でも,診断推論の訓練の「四ない現象」が散見される日本は,不幸である。患者の生の言葉を医学情報に直す「医学的置換(まとめ)」の訓練が足りない。「知識引き出し」による病名推定の訓練は,もっと足りない。そもそも,普段からの「引き出しの蓄積・整理」がなされていない。診断仮説検証の訓練も十分ではない

 診断にまつわる「直感」ほど大切なものは少ない。しかし,生きた教師はなかなか現場にいない。本書にみられる呼吸器診療の名医たちの息吹や謦咳が,実地臨床の羅針盤であり続けてほしいゆえんである。
呼吸器疾患へのアプローチを楽しく習得できる
書評者: 徳田 安春 (地域医療機能推進機構研修センター長)
 最近,勉強会が熱い! 中でもケースカンファレンス方式が人気である。ケースカンファレンス方式の勉強会は,必然的に参加型となり,臨床現場でのリアルタイム診療に合わせた臨場感で,ケース謎解きのスリル感もあって学習効果も大きい。従来このようなケースカンファレンスは,それぞれの病院内で行われてきたが,最近では病院間や地域,全国規模でカンファレンスが行われるようになった。

 地域の病院間のケースカンファレンスで人気のあるものには,京都GIMなどがある。しかしながら,このような病院間カンファレンスの起源であり,現在も定期開催されているのは,沖縄県の呼吸器疾患ケースカンファレンスであろう。「うふいーち会(うふいーちは沖縄の方言で深呼吸を意味する)」という別名でも有名なこのカンファレンスは,群星プロジェクトセンター長の宮城征四郎先生が立ち上げられたもので,歴史あるカンファレンスである。全国への波及効果もあり,「全国うふいーち会」という年1回のカンファレンスも毎年の日本呼吸器学会に合わせて開催されている。

 このカンファレンスにリアルタイムで参加しているような臨場感を感じながら楽しく学習できるように工夫されているのが本書だ。藤田次郎先生は,実際のカンファレンスでの発言を全て録音し,そのテープ全文の書き出しをされたという。なるほど,カンファレンスの臨場感が味わえる理由がわかる。本書のメインディッシュはなんといっても宮城先生の「勘どころ」のご発言である。この英知は,「勘」とは言っても理由なき直感ではなく,英語ではintuitionというよりinsightとも呼ぶべきものであり,長年にわたる豊富な臨床経験からあふれ出すパールの輝きを呈している貴重なアドバイスである。

 若手医師が提示する病歴情報に対して,宮城先生からは詳細な問診情報が要求され,その根拠が示される。バイタルサインの提示に対して呼吸数はもちろんのこと,それぞれのバイタルサイン・データの解釈の切れ味は鋭い。最終診断に至るまでの過程を振り返りながらinsightあふれるコメントをもらうことができる。藤田先生の「文献考察」では,疾患の歴史的背景からエビデンスベースとなったランドマーク研究の論文について紹介され,知識の地固めができる。“ジェネラリストのための”というタイトル通り,ジェネラリストが知っておくべき呼吸器の基本必須事項が満載であり,高齢化でますます重要となっている呼吸器疾患へのアプローチを楽しく習得できる読みごたえのあるものとなっている。

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