健康支援と社会保障制度[4]
看護関係法令 第46版

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看護基礎教育で学ぶべき各領域の法令について解説し、学習のポイントを記述しています。 看護の中心となる法令から周辺の法令まで、系統立てて解説しているため、法令間の関係も理解しながら学習を進めることができます。 本書は、毎年改訂し、発行直前までに制定・改正された最新の法令を加え、充実しています。 制定・改正法令のおもなものは、「精神保健福祉法」「障害者雇用促進法」「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」「障害者総合支援法」およぴ「予防接種法」に伴う改正です。 巻末には、「保健師助産師看護師法」の全文をはじめ、必要な諸法令の関係条文を掲載し、本書1冊で用が足りるようにしています。
シリーズ 系統看護学講座
発行 2014年02月判型:B5頁:376
ISBN 978-4-260-01909-5
定価 2,640円 (本体2,400円+税)
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はしがき

看護の発展は国民のために
 看護とは,人間の自然治癒力を引き出し,生きる希望と力を与え,生涯にわたり尊厳をもって輝く人生を送れるよう支援することである。保健師助産師看護師法第5条では,傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助という行為の外見を書いているが,それは看護師にしかできないことを書いているのであり,看護の定義を書いているわけではない。保健師助産師看護師法では看護とはなにかを定義していない。同法は行為規制法だからである。この法律だけで看護が決まるのではない。看護学を積み,多くの法を理解してはじめて国民が求める看護がわかる。
 2010年に,保健師助産師看護師法の基本である教育に関し,戦後初ともいえる大改正が施行された。看護教育の柱の一番目に大学が位置づけられたこと,保健師・助産師教育を1年に延長したこと,そして免許取得後の臨床研修に努めるようにしたことが内容である。これらにより看護の質はさらに向上するであろう。
 看護はじめ医療は,経済的面では最大で55兆円近くの産業規模であり,健康保険の対象となる国民医療費ベースだけでも40兆円にもなるわが国最大の産業である。医療で働く250万人の中でも最大の集団である155万人以上の働く看護職の活躍が,医療の質を決め,国民に評価されることになる。
 看護職が質の高い看護を提供するには,まず社会人として充実した豊かな人生を送り,職業人として任務を十分に果たさなければならない。そのためには高い教養を持ち,深い専門的知識と優れた技術技能を身につけるとともに,わが国の保健医療福祉に関する諸制度の概要とそれを規定する諸法令を理解しなければならない。社会において看護が大きな位置を占め,保健師・助産師・看護師がどういう役割を受け持っているかを正しく認識する必要がある。看護はじめ医療という仕事は,人間の生命に直接関係するだけに,医療に携わる人々の資格や業務内容が法律で厳格に規定されている。看護に携わる者が,国民の健康を守り,与えられた職責を正しく遂行するためには,看護関係法令への理解が必要である。
 本書は,看護に携わる者にとって最も重要な法である保健師助産師看護師法から説き,順次周辺に広げ,医事や衛生,社会福祉などの関係法令を重点的に解説したものである。
 学習にあたっては,これら法令を単に知識として学ぶだけではなく,なぜこのような内容になっているのか,看護との関係はどうなのかについて,他の科目で学んだこと,あるいは日常生活や実習での経験,さらに書籍・テレビ・新聞・インターネットなどからの情報とも関連づけて理解するように希望する。なお,附録に,保健師助産師看護師法および関係政省令と保健医療関係法のうち看護業務に密接に関係する部分の条文を掲載しているので,勉学の参考にされたい。
 法律というと,日常生活とはかけ離れたもの,難解なものという印象があり,敬遠されがちであるが,実際には,法律は私たちの日常生活そのものであり,知らず知らずのうちに,法から守られ,法を守っているのである。法とは,基本的には誰もが守ることができる,ごく当たり前のこと,自然な内容であり,そうむずかしいことではない。読者の研鑽に期待したい。

少子高齢人口減少社会で看護の役割は増大
 今,わが国では,利用者の視点を中心にして,ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもとに,医療など社会保障の施策が展開されている。2013年は出産数が103万人である。合計特殊出生率は1.41となったが,これは一時的な現象であり,厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所による人口推計でも,基調は年間出生数が100万人程度にまで下がり,合計特殊出生率は1.26で推移するなど少子化が進むことが予測されるのが,わが国の現実である。
 相対的に高齢化も進展し,65歳以上の高齢者は3200万人で,高齢化率は全人口の25%に,75歳以上の後期高齢者は12%にまで達し,2013年は女性の平均余命86.41歳とともに世界最高水準であるだけでなく,年間死亡数が128万人と増加して,わが国は少子高齢化とともに人口減少社会に突入している。
 このため,国中でわが国の将来を考え,国会や厚生労働省社会保障審議会などにおいて,社会保障から社会のあり方まで社会保障と税の一体改革として幅広く議論しとりまとめられ,新しいわが国の姿に向かって進もうとしている。
 医療の分野では,医療制度改革が推進中で,給付と負担の適正化により安定的な医療保険制度の構築を目ざし,医療提供体制については,利用者の視点を中心においた改革が進んでおり,利用者主役と医療安全が基本である。
 福祉の分野では,少子高齢化時代の介護を社会全体で支えるために介護保険が施行され,関係者の尽力によって順調に進んでいる。ただし介護人材の確保が課題である。さらに利用者主役を進めるために,障害を持つ方々へのサービスが障害の種別をこえて提供されようとするなど,社会福祉の基礎構造改革を進めている。基本的には社会を根本から見すえて,子育て支援を充実し,働き方を見直し,男女共同参画のために,国をあげて体制整備の最中である。

看護は文化
 このような動きの中で,社会保障制度を守り,だれもが普遍的にサービスを受けられる現行制度を安定的に維持していくことに,いささかの揺るぎもない。医療でも,利用者主役・地域主義・地方分権については最優先の課題として取り組まれているところである。利用者が施設や在宅の区別なく,本人の個性に応じた多様なサービスを受けるために,関連施策と連携をとり,医療は総合的に推進されなければならない。医療安全や地域連携で看護職に国民が期待している今はチャンスである。
 医療をはじめ,わが国の社会保障は,基本的に誰もが最高水準のサービスを受けられるという,諸外国に比べて遜色のない制度であり,内容・人員・設備水準も向上してきている。
 これからは利用者本位のサービスを展開し,そのために自己評価,利用者評価および第三者評価をふまえ,とくにサービス向上の中核は安全であることを認識して利用者に接しなければならない。国中で安全やリスクマネジメントが大きく叫ばれ,将来の様相はかわっていくであろう。日常の勤務の中で,仕事を効率化し,楽にすることは利用者のためでもある。評価の導入で,努力が報われ,利用者満足度の高いシステムができる。社会の変革と制度の改革は飛躍の機会である。
 看護は文化である。看護を見れば一国の文化水準がわかる。今まさに国民が看護への期待を高め,その役割が増大している。期待が高いから不満も大きいのである。現在おこっている改革の流れは看護職のための機会拡大でもある。今までできなかったことが,できるようになるかもしれない。

改訂にあたって
 看護を中心とする関係法令の中でも資格関係と医療改革関連法について,読者の利便を考え,最新の動きも入れて大きく充実し,法律の見出しについてもメリハリをつけてなにが重要かがわかるように改善を続けている。また附録の掲載条文も必要な法令と条文を見直した。最近では,看護の質を向上させるための保健師助産師看護師法および関係法律・政令・省令,保健師・助産師のカリキュラム・国家試験出題内容などの改正,医療改革や保健衛生関係法改正の施行状況,介護保険法の改正をふまえて,内容を充実してきた。さらに,東日本大震災での看護職の活動を受けて,災害に関する法律も充実し,社会保険法,福祉法についても大きく内容・構成をかえて一層充実した。2013年8月の社会保障制度改革国民会議の報告を受けてさらに改革が進むので,これからも新たな視点で引きつづき内容の改善に努めていきたい。読者の御鞭撻をお願いするものである。
 なお,原則として法令の内容は2013年12月1日現在をもとにし,2014年4月1日に施行されている内容で記したが,一部は同年7月1日施行のものもある。記述方法,用字・用例については医学書院の内規によっている。
 2014年1月
 森山幹夫

最近の改正点
1.法律改正や充実のための改訂
(1)最近の大きなものは,2010年4月施行の保健師助産師看護師法などの改正に伴う政省令の改正であり,看護師養成の実態に合わせて大学教育を明記したこと,保健師と助産師の養成期間を実態に合わせて1年に延長したこと,看護職が卒後臨床研修を受けるように本人や周囲も努めなければならないとしたことであり,2011年1月の保健師・助産師のカリキュラムおよび国家試験出題基準の改正,その後の2013年中の改正などもを盛り込んでいる。なお,2013(平成25)年6月に保健師助産師看護師法が一部改正されたが,本文でもふれているとおり,地域の自主性を高めるための全省庁一律の手続きに関する改正である。
(2)医療法などについて,より理解を深めるためにデータを最新のものにするとともにわかりやすく表現を改訂した。
(3)予防接種法が改正され,Hib感染症などが加わったことも記している。
(4)インフルエンザ対策について,新型インフルエンザ等対策特別措置法ができたことや予防接種対応が明記されたほか,2009年に発生した新型インフルエンザは一般インフルエンザとして取り扱われることになったこと,鳥インフルエンザ(H7N9)が指定感染症とされたこと,などについても記している。
(5)精神保健福祉法に関し,負担が大きかった保護者の規定を2014年4月1日から廃止すること。
(6)総合的な育児支援関係法整備,子ども手当を児童手当とする改正,障害者基本法改正,障害者に関し,障害者自立支援法から障害者総合支援法への改正と施行,介護保険法改正,介護福祉士が診療の補助の一部を行える改正,労働法,社会基盤の整備について記し,労働基準法や育児・介護休暇法,バリアフリー関係の法律を充実した。
(7)読者の便を考え,法律の見出しにメリハリをつけるとともに,細かな点も含め表現を改善した。
2.法改正および今後の予定
 今後の看護関係法令の改正としては,社会保障と税の一体改革のために社会保障制度改革国民会議の報告書が2013年8月に出されたのを受けて,その改革に必要な事項のうち法律によるものは2014年の通常国会で審議されることになる。個々の法律改正の内容が固まっていないので具体的なことは記述できないが,2013年秋の臨時国会で成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(平成25年法律第112号)」で,社会保障制度改革の全体像および進め方が明らかにされている。そのなかには看護に関係する部分もあり,今後は,保健師助産師看護師法や看護師等の人材確保の促進に関する法律,医療法の一部改正などが考えられる。なかには法律事項でないものもあると思われる。
看護師が一定の高度な行為について研修を行う関係の規定,その他の医療関係職種の業務範囲,業務実施体制の見直し,地域における看護職員・医師等の確保および勤務環境の改善に関する規定の整備
病床の機能分化・連携および在宅医療・介護を推進するための規定の整備
医療保険制度について,国民健康保険の保険者や運営のあり方,保険料にかかる国民の負担の公平化をはかる措置,保険給付の対象となる療養の適正化等
難病対策について,費用負担の適正化
介護保険について,低所得者への保険料負担の抑制をはかるとともに,要支援者への支援の見直し,高所得者の利用者負担の見直し,特別養護老人ホームの入所対象者の見直し
公的年金制度について,消費税率引き上げに伴う年金生活者支援給付金,基礎年金国庫負担割合1/2の恒久化,遺族基礎年金の支給対象の拡大のほか,各般の検討を行うこと。
少子化対策について,保育給付などのための措置や次世代育成支援対策推進法の延長などの検討

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第1章 法の概念
  A 法の概念
  B 法の分類
  C 衛生法
  D 厚生行政のしくみ
第2章 医事法
 I 看護法
  A 保健師助産師看護師法
  B 看護師等の人材確保の促進に関する法律
 II 医師法・医療法
  A 医師法
  B 歯科医師法
  C 医療法
 III 医療関係資格法
  A 薬剤師法
  B 診療放射線技師法
  C 臨床検査技師等に関する法律
  D 理学療法士及び作業療法士法
  E 視能訓練士法
  F 言語聴覚士法
  G 臨床工学技士法
  H 義肢装具士法
  I 救急救命士法
  J 歯科衛生士法
  K 歯科技工士法
  L あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律
  M 柔道整復師法
  N 本項のまとめ
 IV 保健医療福祉資格法
 V 医療を支える法
 VI 人の死に関する法
 VII 緊急時の医療に関する法
 VIII 災害時の医療に関する法
第3章 保健衛生法
 I 共通保健法
  A 地域保健法
  B 健康増進法
 II 分野別保健法
  A 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
  B 母子保健法
  C 母体保護法
  D 学校保健安全法
  E がん対策基本法
  F 肝炎対策基本法
  G 自殺対策基本法
  H ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
  I 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
  J 歯科口腔保健の推進に関する法律
  K アルコール健康障害対策基本法
 III 感染症に関する法
  A 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  B 新型インフルエンザ等対策特別措置法
  C 予防接種法
  D 検疫法
 IV 食品に関する法
第4章 薬務法
  A 薬事法
  B 人等の組織を用いた医療関連法
  C 薬害被害者の救済等
  D 麻薬・毒物等
第5章 環境衛生法
 I 営業
 II 環境整備
第6章 社会保険法
 I 費用保障
  A 健康保険法
  B 国民健康保険法
  C 国家公務員共済組合法・各共済組合法
  D 船員保険法
  E 高齢者の医療の確保に関する法律
  F 介護保険法
 II 年金と手当
  A 国民年金法
  B 厚生年金保険法
  C 各手当法
第7章 福祉法
 I 共通的福祉
  A 社会福祉法
  B 生活保護法
  C 共通的な各福祉法
 II 分野別福祉
  A 児童分野
  B 高齢分野
  C 障害分野
  D 母子及び寡婦福祉法
第8章 労働法と社会基盤整備
 I 労働法
 II 社会基盤整備等
第9章 環境法
  A 環境保全の基本法
  B 公害の防止法
  C 自然保護法
附録 看護関係法令
  保健師助産師看護師法
  保健師助産師看護師法施行令
  保健師助産師看護師法施行規則
  保健師助産師看護師学校養成所指定規則
  看護師等の人材確保の促進に関する法律(抄)
  医療法(抄)
  医療法施行令(抄)
  医療法施行規則(抄)
  厚生労働省設置法(抄)
  医師法(抄)
  歯科医師法(抄)
  薬剤師法(抄)
  診療放射線技師法(抄)
  臨床検査技師等に関する法律(抄)
  理学療法士及び作業療法士法(抄)
  視能訓練士法(抄)
  言語聴覚士法(抄)
  臨床工学技士法(抄)
  義肢装具士法(抄)
  救急救命士法(抄)
  歯科衛生士法(抄)
  歯科技工士法(抄)
  あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師等に関する法律(抄)
  柔道整復師法(抄)
  健康保険法(抄)
  日本国憲法(抄)
  民法(抄)
  戸籍法(抄)
  刑法(抄)
  心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(抄)

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