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慢性頭痛の診療ガイドライン2013

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日本頭痛学会が2006年に編集したガイドラインの改訂版。頭痛診療のエキスパートが最新のエビデンスに基づき、片頭痛についてのクリニカル・クエスチョンを中心に大幅改訂。付録として「スマトリプタン在宅自己注射ガイドライン」「バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン」「プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン」を新しく追加。頭痛をよく診る神経内科医、脳神経外科医のみならず、プライマリケア医も必携。
シリーズ 日本神経学会監修ガイドラインシリーズ
監修 日本神経学会 / 日本頭痛学会
編集 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会
発行 2013年05月判型:B5頁:368
ISBN 978-4-260-01807-4
定価 3,850円 (本体3,500円+税)
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慢性頭痛の診療ガイドライン2013の発行について

慢性頭痛の診療ガイドライン2013の発行について
 日本神経学会では,2001年に柳澤信夫理事長の提唱に基づき,理事会で主要な神経疾患について治療ガイドラインを作成することが決定され,2002年に「慢性頭痛」「パーキンソン病」「てんかん」「筋萎縮性側索硬化症」「痴呆性疾患」「脳血管障害」の6疾患についての「治療ガイドライン2002」を発行しました.また日本頭痛学会では,慢性頭痛診療のレベル向上,標準化,および専門医のみでなくプライマリ・ケア医への普及を目的に,2006年に「慢性頭痛の診療ガイドライン」を作成・発行しました.
 その後,日本神経学会では「治療ガイドライン2002」の発行から時間が経過し,新しい知見も著しく増加したため,2008年の理事会(葛原茂樹前代表理事)で改訂を行うことを決定し,「治療ガイドライン2010」のガイドライン作成委員会が発足し,2009年から2011年にかけて,「神経疾患の遺伝子診断」「てんかん」「認知症疾患」「多発性硬化症」「パーキンソン病」のガイドラインが発行されました.さらに2011年の理事会で新たに6神経疾患の診療ガイドライン(ギラン・バレー症候群・フィッシャー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎・多巣性運動ニューロパチー,筋萎縮性側索硬化症,細菌性髄膜炎,デュシェンヌ型筋ジストロフィー,重症筋無力症)を2013年に発行することが決定されました.同時に,慢性頭痛に関する薬物治療を中心としたエビデンスの集積を背景に,日本神経学会・日本頭痛学会の共同監修により,「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」が作成されることとなりました.
 各診療ガイドライン作成委員会委員長は日本神経学会の代表理事が指名し,各委員長が委員,協力研究者,評価・調整委員の候補者を推薦して,候補者は利益相反自己申告書を提出し,利益相反審査委員会の審査と勧告に従って各委員会委員長と調整したうえで,理事会で承認するという手順をとっています.また,本ガイドラインは日本脳神経外科学会と日本神経治療学会の協力で作成されました.快く作成に賛同いただいた両学会には深謝いたします.
 本ガイドラインは,これまでのガイドラインと同じくevidence-based medicine(EBM)の考え方に基づいて作成され,Q&A(質問と回答)方式で記述されていますので,2010年版と同様に読みやすい構成になっています.回答内容は,引用文献のエビデンスを精査し,エビデンスレベルに基づく推奨のグレードを示しています.しかしながら,疾患や症状によっては,エビデンスが十分でない領域もあり,薬物治療や脳神経外科治療法が確立されているものから,薬物療法に限界があるために非薬物的介入や介護が重要なものまで,治療内容は疾患ごとにさまざまであり,EBMの評価段階も多様です.さらに,治療目標が症状消失や寛解にある疾患と,症状の改善は難しくQOLの改善にとどまる疾患とでは,治療の目的も異なります.そのような場合であっても現時点で考えられる最適なガイドラインを示しています.
 診療ガイドラインは,決して画一的な治療法を示したものではないことにもご留意下さい.同一疾患であっても,最も適切な治療は患者さんごとに異なり,医師の経験や考え方によっても治療内容は異なるかもしれません.本ガイドラインは,あくまで,治療法を決定する医師がベストの治療法を決定するうえでの参考としていただけるように,個々の治療薬や非薬物的治療の現状における評価を,一定の方式に基づく根拠をもとに提示したものです.
 慢性頭痛の診療も日進月歩で発展しており,今後も定期的な改訂が必要となります.本ガイドラインを各関係学会員の皆様に活用していただき,さらには学会員の皆様からのフィードバックをいただくことにより,診療ガイドラインの内容はよりよいものになっていきます.本ガイドラインが,皆様の日常診療の一助になることを期待しますとともに,次なる改訂に向けてご意見とご評価をお待ちしております.

 2013年5月吉日
 日本神経学会 代表理事 水澤英洋
 日本頭痛学会 理事長 坂井文彦
 日本神経学会 ガイドライン統括委員長 辻 貞俊



はじめに
 1988年,国際頭痛学会がThe International Classification of Headache Disordersを発表したことによって,世界で共通の頭痛診断基準が用いられるようになり,頭痛研究の基盤ができた.それに応じて,わが国でも日本頭痛学会,日本神経学会が中心となり慢性頭痛の研究が進み,2002年には日本神経学会治療ガイドラインの1つとして,「慢性頭痛治療ガイドライン2002」が出版された.続いて2004年,国際頭痛学会はThe International Classification of Headache Disorders ; 2nd Edition(ICHD-II)を発表した.これに応じて,慢性頭痛の診療ガイドライン作成における研究班(主任研究者:坂井文彦)が中心となり,厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業として,2005年に「慢性頭痛の診療ガイドライン」がまとめられた.2006年には「慢性頭痛の診療ガイドライン(編集:日本頭痛学会)」が医学書院から出版された.また,2007年にはICHD-IIを日本語に訳した「国際頭痛分類第2版新訂増補日本語版(訳:日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会)」が出版された.

2010年からの新たな「慢性頭痛の診療ガイドライン」への取り組み
 トリプタンが普及し,日本における頭痛診療も変化してきたため,日本頭痛学会が作成した「慢性頭痛の診療ガイドライン」(2006年)を改訂する必要が生じてきた.日本頭痛学会では,第2版の「慢性頭痛の診療ガイドライン」作成を目的に,39名のメンバーで2010年11月より第3版作成のための委員会が結成された.その後,2011年には,日本神経学会と日本頭痛学会が中心となり,さらに日本神経治療学会,日本脳神経外科学会も加わって,この改訂作業を行うことになった.日本頭痛学会ガイドライン委員39名のうちグループリーダー12名を神経学会のガイドライン委員とし,他の27名を神経学会のガイドライン協力委員とすることが決まった.また,評価・調整委員7名を新たに加え計46名で構成される委員会となり,改訂作業が進められた.

作成手順と組織
 この改訂作業のはじめに,内容の組み立て方の方針として,第2版の構成にならって作成することが決められた.第2版ではClinical Question(CQ)を採用していたので,その形式は変えず,第2版同様に以下の8つの章に分けた.
 I.頭痛一般
 II.片頭痛(1.診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後,2.急性期治療,3.予防療法)
 III.緊張型頭痛
 IV.群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
 V.その他の一次性頭痛
 VI.薬物乱用頭痛
 VII.小児の頭痛
 VIII.遺伝子
 以上の8つの章に加えて,「スマトリプタン在宅自己注射ガイドライン」「バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン」および「プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン」を付録として掲載することも決まった.
 科学的根拠の検索には系統だった手法を用いた.すなわち,表1に示す基準に従ってPubMed,Cochrane Library,医学中央雑誌その他を利用して検索し,その結果を統合してそれぞれのCQに対する推奨グレード(表2)を作成した.なお本作業を進めるにあたって,医療情報サービスセンターMinds部長の吉田雅博氏にご指導をいただいた.同氏にはこの場を借りて深甚の謝意を表する.また,重要な論文はできるだけ,アブストラクトフォームを作成し,学会のホームページでみられるようにすることも決まった.

表1 Oxford EBMセンター・エビデンスレベル(2001)
レベル内容
Ia均質なランダム化比較試験の系統的レビュー
Ib信頼区間の狭い1個のランダム化比較試験
Icすべてか/なしか
IIa均質なコホート研究による系統的レビュー
IIb1個のコホート研究(質の低いランダム化比較試験を含む;
  例えば追跡率80%未満のもの)
IIcアウトカム研究
III均質な症例対照研究による系統的レビューあるいは1個の症例対照研究
IV症例集積研究と質の低いコホート研究や症例対照研究
V明白な批判的吟味のない,あるいは生理学や実験室での研究,
  根本原理に基づく専門家の意見


表2 推奨のグレード(強さ)
グレード A行うよう強く勧められる
グレード B行うよう勧められる
グレード C行うよう勧めるだけの根拠が明確でない  


 各委員の分担を決め,執筆した後,各グループ内での議論を行った.そして,その結果をインターネット上で全委員に公開し,ブラッシュアップを行った.2012年6月3日には委員が集まり,すべての項目のブラッシュアップを行った.その後,2012年11月17日に日本頭痛学会総会でガイドラインに関するシンポジウムを行い,広く意見を求めた.また,評価・調整委員からの意見を集め,また全学会員に公開しパブリックコメントを求めた.2013年3月20日に最終的なまとめを行い,5月に出版の運びとなった.

ガイドラインの内容
 本ガイドラインは2006年版でも述べられているように,診療を支援するためのものであって,診療を拘束するものではなく,臨床の現場では,ガイドラインとともに医師の経験が重要となる.よりよい臨床的判断により患者の満足度を高めるために活用されることが望まれる.
 2006年版のClinical Question(CQ)を採用し,さらに新たに19項目のCQを追加した.従来からのCQもすべて内容を見直して作成した.

おわりに
 本ガイドラインは2006年版慢性頭痛の診療ガイドラインをもとに,最新の情報を加え,慢性頭痛診療の国際標準的な考え方を示した.2002年のガイドラインをわが国の慢性頭痛治療ガイドライン初版とすれば,2006年版が第2版,そして本ガイドラインは第3版といえる.慢性頭痛の診療に当たる医師が効率的かつ標準的治療を行ううえで必須の資料となれば幸いである.さらに,英語版を作成し国際的にわが国の慢性頭痛の診療ガイドラインに関する情報を発信する予定としている.
 最後に多くの委員の努力の賜物といえる本書が出版される運びとなり,関係各位に感謝の意を表したい.

 2013年5月
 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会を代表して
 荒木信夫
 竹島多賀夫

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 慢性頭痛の診療ガイドライン2013の発行について
 序
 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会・委員一覧/評価・調整委員/協力学会

I 頭痛一般
 CQ I-1 頭痛はどのように分類し診断するか
 CQ I-2 一次性頭痛と二次性頭痛はどう鑑別するか
 CQ I-3 くも膜下出血はどう診断するか
 CQ I-4 救命救急室(ER)での頭痛診療の手順はいかにあるべきか
 CQ I-5 プライマリケア医は頭痛医療にどう取り組むべきか
 CQ I-6 歯科医は頭痛医療にどう取り組むべきか
 CQ I-7 頭痛外来,頭痛専門医は必要か.また,病診連携は一次性頭痛診療に有用か
 CQ I-8 アルゴリズムをどう使用するか
 CQ I-9 頭痛による個人へのインパクトを知るにはどうするか
 CQ I-10 問診票,スクリーナーをどう利用するか
 CQ I-11 頭痛ダイアリーをどう使用するか
 CQ I-12 どのような一次性頭痛を治療すべきか
 CQ I-13 一次性頭痛の入院治療の対象と治療法は
 CQ I-14 市販薬による薬物療法をどのように計画するか
 CQ I-15 漢方薬は有効か
 CQ I-16 薬物療法以外にどのような治療法があるか
 CQ I-17 認知行動療法は一次性頭痛の治療に有効か
 CQ I-18 一次性頭痛は不安/抑うつを随伴するか
 CQ I-19 産業医,脳ドック医は頭痛にどう対処すればよいか
 CQ I-20 学校医は頭痛にどう対処すればよいか
 CQ I-21 患者教育,医師-患者関係で留意すべき点は
 CQ I-22 片頭痛の適切な治療による医療経済効果はどのように評価するか
 CQ I-23 頭痛診療においてチーム医療は必要か
 CQ I-24 解離性動脈瘤に伴う頭痛はどう診断するか
 CQ I-25 特発性低髄液圧性頭痛はどのように診断し,治療するか

II 片頭痛
 1.診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後
 CQ II-1-1 片頭痛はどのように分類するのか
 CQ II-1-2 片頭痛はどのように診断するか
 CQ II-1-3 わが国における片頭痛の有病率はどの程度か
 CQ II-1-4-1 片頭痛の病態にはどのような説があるか
 CQ II-1-4-2 片頭痛の前兆にはどのようなものがあるか
 CQ II-1-4-3 片頭痛の前兆のメカニズムはどのように考えられているか
 CQ II-1-4-4 片頭痛の疼痛はどのように考えられているか
 CQ II-1-4-5 片頭痛にセロトニンの異常はどう関与するのか
 CQ II-1-4-6 片頭痛発作時の脳血流はどう変化するか
 CQ II-1-5 片頭痛の誘発・増悪因子にはどのようなものがあるか
 CQ II-1-6-1 片頭痛の予後はどうか(片頭痛慢性化を含む)
 CQ II-1-6-2 片頭痛患者の健康寿命の阻害,QOLの阻害はどの程度か
 CQ II-1-7 片頭痛のcomorbid disorders(共存症)にはどのようなものがあるか
 CQ II-1-8 慢性片頭痛とはどのような疾患か
 CQ II-1-9 片頭痛は脳梗塞の危険因子か
 CQ II-1-10 片頭痛患者における低用量経口避妊薬の使用は安全か

 2.急性期治療
 CQ II-2-1 片頭痛の急性期治療には,どのような方法があり,どのように使用するか
 CQ II-2-2 トリプタンはどのタイミングで使用すべきか
 CQ II-2-3 複数のトリプタンをどう使い分けるか(preference)
 CQ II-2-4 非経口トリプタンはどのような片頭痛患者に対して,どのように使用すべきか
 CQ II-2-5 脳底型片頭痛および片麻痺性片頭痛の急性期にはどのように対応するか
 CQ II-2-6 エルゴタミンはどう使うか
 CQ II-2-7 アセトアミノフェン,非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は片頭痛の
  急性期治療に有効か
 CQ II-2-8 急性期治療において制吐薬の使用は有用か
 CQ II-2-9 その他の片頭痛の急性期治療薬にはどのようなものがあるか
 CQ II-2-10 片頭痛重症発作,発作重積の急性期治療はどのように行うか
 CQ II-2-11 妊娠中,授乳中の片頭痛治療(急性期・予防)はどうするか
 CQ II-2-12 月経時片頭痛の診断および治療

 3.予防療法
 CQ II-3-1 どのような患者に予防療法が必要か
 CQ II-3-2 予防療法にはどのような薬剤があるか
 CQ II-3-3 複数の予防療法をどのように使い分けるか
 CQ II-3-4 予防療法はいつまで続ける必要があるのか
 CQ II-3-5 β遮断薬(プロプラノロール)は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-6 Ca拮抗薬(ロメリジン)は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-7 アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンギオテンシンII受容体
  遮断薬(ARB)は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-8 抗てんかん薬(バルプロ酸)は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-9-1 抗うつ薬は片頭痛の予防に有用か
 CQ II-3-9-2 抗うつ薬(SSRI/SNRI)とトリプタンの併用は安全か
 CQ II-3-10 マグネシウム,ビタミンB2,feverfew,鎮痛薬は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-11 片頭痛のその他の予防療法は有効か
 CQ II-3-12 ボツリヌス毒素(botulinum neurotoxin:BoNT)は片頭痛の予防に有効か
 CQ II-3-13 典型的前兆のみで頭痛を伴わないものはどのように診断し治療するか
 CQ II-3-14 慢性片頭痛はどのように治療するか

III 緊張型頭痛
 CQ III-1 緊張型頭痛にはどのような分類があるか
 CQ III-2 緊張型頭痛はどのように診断するか
 CQ III-3 どの程度の緊張型頭痛患者が存在するのか.またその危険因子や
  誘因・予後はどうか.本当の緊張型の数は
 CQ III-4 緊張型頭痛の病態はどのように理解されているのか
 CQ III-5 変容性片頭痛と緊張型頭痛の関連はどうか
 CQ III-6 緊張型頭痛の治療はどのように行うか
 CQ III-7 緊張型頭痛の急性期(頭痛時,頓服)治療にはどのような種類があり,
  どの程度有効か,またどのように使い分けるか
 CQ III-8 緊張型頭痛の予防治療はどのように行うか
 CQ III-9 緊張型頭痛の治療法で薬物療法以外にどのようなものがあるか
 CQ III-10 緊張型頭痛にボツリヌス療法は有効か

IV 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛
 CQ IV-1 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛にはどのような
  分類・病型があるか
 CQ IV-2 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛はどのように診断するか
 CQ IV-3 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛にはどの程度の患者が
  存在するか.危険因子,増悪因子にはどのようなものが存在し,患者の予後はどうか
 CQ IV-4 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛の病態はどのように
  理解されているのか
 CQ IV-5 群発頭痛急性期(発作期)治療薬にはどのような種類があり,どの程度の
  有効性か
 CQ IV-6 群発頭痛発作期の予防療法にはどのような薬剤があり,どの程度有効か
 CQ IV-7 発作性片側頭痛治療薬にはどのような種類があり,どの程度有効か
 CQ IV-8 SUNCT,SUNAの治療薬にはどのような種類があり,どの程度有効か
 CQ IV-9 群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛患者の健康寿命の阻害,
  QOLの阻害はどの程度か

V その他の一次性頭痛
 CQ V-1 片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛以外の一次性頭痛にはどのようなものがあるか
 CQ V-2 一次性穿刺様頭痛,一次性咳嗽性頭痛,一次性労作性頭痛はどのように
  診断し,治療するか
 CQ V-3 性行為に伴う一次性頭痛はどのように診断し治療するか
 CQ V-4 睡眠時頭痛はどのように診断し治療するか
 CQ V-5 一次性雷鳴頭痛はどのように診断し治療するか
 CQ V-6 持続性片側頭痛はどのように診断し治療するか
 CQ V-7 新規発症持続性連日性頭痛はどのように診断し治療するか
 CQ V-8 慢性連日性頭痛はどのように診断するか

VI 薬物乱用頭痛
 CQ VI-1 薬物乱用頭痛はどのように診断するか
 CQ VI-2 薬物乱用頭痛の患者はどれくらいいるか
 CQ VI-3 薬物乱用頭痛の治療法と予後はどうか

VII 小児の頭痛
 CQ VII-1 小児にはどのような頭痛が多いか
 CQ VII-2 小児の片頭痛はどのように診断するか
 CQ VII-3 小児の二次性頭痛にはどのようなものが多いか
 CQ VII-4 小児の片頭痛治療薬について,急性期治療薬,予防治療薬にはどのような
  種類があり,どの程度有効か
 CQ VII-5 小児に慢性連日性頭痛はどのくらいあるか,また,その診断と治療はどのように
  進めるか

VIII 遺伝子
 CQ VIII-1 片頭痛は遺伝的素因があるか
 CQ VIII-2 群発頭痛は遺伝的素因があるか
 CQ VIII-3 緊張型頭痛は遺伝的素因があるか
 CQ VIII-4 単一遺伝子異常による家族性(遺伝性)の片頭痛は存在するか
 CQ VIII-5 片頭痛の遺伝子診断はできるか

付録
 スマトリプタン在宅自己注射ガイドライン
 CQ 1 どのような頭痛患者にスマトリプタン在宅自己注射による治療を行うか
  (適応,副作用,使用禁忌)
 CQ 2 スマトリプタン在宅自己注射の導入と患者説明をどのように行うか.処方量は
  どれくらいが適切か
 CQ 3 スマトリプタン在宅自己注射の初回投与時はどのように指導するか.また,
  緊急時(重篤な有害事象出現時)の対処法はどのようにするか

 バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)
 はじめに
 CQ 1 バルプロ酸は片頭痛の治療に有効か,片頭痛の予防薬としてバルプロ酸は
  国際的なコンセンサスがあるか
 CQ 2 バルプロ酸はどのような片頭痛患者に投与するのか
 CQ 3 片頭痛治療に用いるバルプロ酸の用量はどの程度か,バルプロ酸投与時の
  注意点は何か
 CQ 4 片頭痛治療におけるバルプロ酸血中濃度測定にはどのような意義があるのか
 CQ 5 バルプロ酸は小児片頭痛の予防に有効でかつ安全か

 プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン(暫定版)
 はじめに
 CQ 1 プロプラノロールは片頭痛の予防に有効か,また,片頭痛の予防薬として
  プロプラノロールは国際的なコンセンサスがあるか
 CQ 2 プロプラノロールはどのような片頭痛患者に投与するのか
 CQ 3 片頭痛治療に用いるプロプラノロールの用量はどの程度か
 CQ 4 プロプラノロール投与時の注意点は何か(副作用,相互作用)

 索引

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頭痛診療に携わるすべての医師に必携の書
書評者: 高橋 良輔 (京大大学院教授・臨床神経学)
 診療ガイドラインに必要な条件はまず,EBMの手法に忠実にのっとって作成されていることであるが,次にどれだけ読みやすく使い勝手がよいかという,読者の利便性を考慮することが挙げられると私は考えている。ガイドラインの目的は医療の標準化であり,広く読まれなければその目的を達成することができないからである。

 本書は,その前版の,日本頭痛学会による『慢性頭痛の診療ガイドライン』(2006年)から読者への配慮が行き届いているのが印象的であった。臨床的に重要な問題がクリニカルクエスチョンに網羅されているだけでなく,クリニカルクエスチョンも推奨文も短い文章にまとめられ,解説,文献まで含めて2-3ページ以内に収められている。短時間でポイントがわかる構成をとっており,薬物治療では容量など具体的な記載が充実しているため,若手医師や頭痛の非専門医にとってもベッドサイドで使いやすく,私も大変重宝していた。私自身,日本神経学会編 『パーキンソン病治療ガイドライン2011』 の作成に携わったが,上記の点で慢性頭痛のガイドラインを良いお手本として参考にさせていただいたものである。

 今回のガイドラインも読者を重視した十分な目配りがされ,その上に丹念な編集作業により,いくつかの類似のクエスチョンが一つにまとめられた一方,最新の知見がふんだんにもりこまれている。ガイドライン作成委員会は埼玉医大・荒木信夫教授が委員長,富永病院・竹島多賀夫副院長が副委員長を務め,37名の頭痛診療のエキスパートが委員に名を連ねている。執筆者が多いのにもかかわらず,編集作業が丁寧に行われているため,記載には統一感があり,簡明で読みやすい。ただ前回と比べてボリュームが約1.5倍に増えたので,時間のない読者は,まずはクリニカルクエスチョン,推奨,背景・目的だけをさっと通読して,必要なところを精読するという読み方でも,頭痛診療に役立つ基本知識は頭に入るだろう。

 本書は大項目として,「頭痛一般」「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛(前版では「群発頭痛」という項目であった)」「その他の一次性頭痛」「薬物乱用頭痛」「小児の頭痛」「遺伝子」に分けられている。

 新たにクリニカルクエスチョンが設けられた項目は解離性動脈瘤に伴う頭痛,片頭痛の病態(疼痛,前兆),非経口トリプタンによる片頭痛治療,抗うつ薬とトリプタン併用の可否,頭痛を伴わない前兆への対応,慢性片頭痛の治療,変容性片頭痛と緊張型頭痛の関連,発作性片側頭痛治療薬,SUNCT,SUNA(まれな片側神経痛様頭痛発作)の治療薬,小児の慢性連日性頭痛の診断と治療などであり,いずれも最近の研究や診療の進歩を反映した改訂である。

 これに加えて,付録として「スマトリプタン在宅自己注射ガイドライン」「バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)」「プロプラノロールによる片頭痛治療ガイドライン(暫定版)」が付けられており,至れり尽くせりの内容になっている。専門医,非専門医を問わず,頭痛診療に携わるすべての医師に必携の書としてお薦めする。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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