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スタッフの主体性を高め チームを活性化する!
看護のためのポジティブ・マネジメント

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組織やスタッフのもつ「優れた側面、特性、強み」にアプローチした新しいマネジメント手法、それがポジティブ・マネジメント。いまある豊かさや強みを伸ばすことで、スタッフの主体性やモチベーションを高めると同時に、スタッフ間の関係を向上させ、組織の一体化を目指す。前向きに、活き活きとした人材の育成、組織づくりに役立つ1冊。
編著 手島 恵
発行 2014年03月判型:A5頁:208
ISBN 978-4-260-01891-3
定価 2,860円 (本体2,600円+税)
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はじめに

 この「看護のためのポジティブ・マネジメント」が出版されるまでには3年にわたる道のりがありました。2010年12月5日に,北海道医療大学看護学研究科の石垣靖子先生が主催されたゼミの研修会で,「ポジティブな見方と看護管理」のテーマで講演をする機会をいただきました。外は雪景色でしたが参加者の熱気につつまれたその会場に,偶然,札幌出身の医学書院編集者,小齊 愛様が同席されており,この本の出版をという話になったのです。
 ところが,企画が進みつつある2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。なんということか……と途方に暮れ,ポジティブな見方どころではない時間が過ぎました。
 当時,日本赤十字社の本社で看護係長として被災者支援の仕事をしながら山口赤十字病院で退院支援のプロジェクトをしていたのが大林由美子さんです。地震による被災に加え原子力発電所の事故が加わり,避難区域ぎりぎりに位置している福島県の相馬市総合病院で看護部長として病院を支えていたのが堀内由美さんです。お2人は,この大変な状況にありながら修士研究に取り組み続けました-第IV章にその取り組みが収載されています。どのようなときも常に前を向いて取り組む彼女たちの姿に励まされ,こういうときだからこそ,ポジティブな視点で管理をすることの重要性を伝える本書をまとめることが大切なのだと思うようになりました。
 6つの事例を書いてくれた皆様,授業やプロジェクトの取り組みを通してたくさんのヒントをくださった院生の皆様,たくさんの示唆をくださり,ポジティブ・マネジメントの手法について原稿を寄せくださいました市瀬博基先生に心より感謝いたします。
 急速な少子高齢化による課題に,さまざまな対策が提言されています。これまでどおりにはいかない時代に,どのように看護管理者として仕事をしていくか。ないものを数えるのではなく,あるものの価値を見出し,未来を見据えて力を合わせていく時代になります。
 本書が,看護管理者の皆様の創造力をかきたてるヒントになってくれることを願っています。
 医学書院の編集者小齊 愛様には,出版の企画立上げから困難な状況の中,こ本書の出版に向けて励まし続けていただき,また山内 梢様には,ラストスパートに向け表紙やレイアウトにポジティブなニュアンスを表現していただきました。お2人の細やかなご支援に感謝しております。
 本書の出版を支えてくださいました多くの皆様に心よりお礼を申し上げます。

 2013年 冬  手島 恵

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第I章 ものの見方・考え方と看護管理
  1 なぜものの見方が大切なのか
  2 組織感情とポジティブ・マネジメント
  3 ポジティブ・マネジメントによる組織開発
  4 アクション・リサーチと組織開発
  5 ポジティブ・マネジメントで活き活きとしたチームづくり

第II章 自ら考え,行動し,助け合う文化をつくるために
 ポジティブ・マネジメントの理論とプロセス
  1 感情・学習・組織行動
    -ポジティブ・マネジメントがめざすこと
  2 管理者自身の感情のマネジメント
    -ポジティブ・リーダーシップの第一歩
  3 ワークショップとファシリテーション
    -組織メンバーに対して求められるリーダーシップ
  4 ポジティブ・マネジメントの計画と実践
  5 学習する組織,遊び心,ソーシャル・キャピタル
    -組織の“ポジティブ度”を測る指標

第III章 さまざまな手法を柔軟に組み合わせる視点
 ポジティブ・マネジメントの手法
  1 組織開発手法の特徴を見きわめる視点
  2 ワールドカフェ
  3 アクションラーニング(質問会議)
  4 AI(アプリシアティブ・インクワイアリー)
  5 ヒューチャーサーチ
  6 組織開発手法をポジティブ・マネジメントに活用するために

第IV賞 実例から学ぶポジティブ・マネジメント
  ポジティブ・マネジメントの実践
   -取り組みを考える視点とステップ
事例1ポジティブ・アプローチによる看護師長の能力開発と支援
対話を通じた価値の共有と未来志向の目標管理で組織を活性化
事例2支援し合える関係性に着目した目標管理
ポートフォリオ評価の導入
事例3大切な価値の共有で,看護の質と効率の両立を実現
事例4看護師-看護補助者のチーム形成
看護補助者の支援と活用
事例5自分たちの“お宝”を見つけることが組織を動かす!
事例6施設を超えてポジティブ感情を生み出し,
支え合う新人看護研修のしくみづくり

おわりに

付録 ワークノート
   ポジティブ・マネジメントを考えるうえで役立つ資料

索引

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ビジョンを持ち続けられる管理者であるために
書評者: 福家 幸子 (虎の門病院管理看護師長・看護教育部)
 ポジティブのほうがネガティブより良いに決まっている。できることなら常にポジティブでありたいと,誰もが漠然と願っているのではないだろうか。本書を読む前,ポジティブという言葉についてこの程度の認識しか持っていなかった。

 しかし,本書の冒頭にある「前向きに,ポジティブにものを見るためには,必ず,意思と努力,そして行動が必要」という言葉を目にした瞬間,一気に引き込まれると同時に,襟を正す思いにさせられた。看護管理者としてポジティブに実践するためには,もともとの自分のポジティブな性格に頼るだけではダメだし,自然と良い方向に向かうのを待つだけでもいけない。「管理者のプロフェッションとしての高い意識と自己規制」(本書P. 7)を求められていることがわかった。

 本書の第I・II章では,ポジティブな視点で管理することの意義や理論が述べられている。豊富な文献的裏付けを元に,さまざまな専門用語が非常にわかりやすく解説されており,知的好奇心を大いにくすぐられる。過去の自分の管理実践を,成功例も失敗例も思い出しながら,これらの章を何度か繰り返し読むことで,看護管理者としてポジティブであることの重要性が身にしみてわかってきた。

 読み進めるほどに自分の思考がポジティブに変わっていくのを感じつつ,「では,どうすれば実際にポジティブな組織を作れるのか?」という次なる疑問が湧いてくる。第III章ではその疑問に答えるかのように,さまざまな組織開発手法が紹介されている。ワールドカフェ,アクションラーニングなど,名前を聞いたことはあるが,詳細については知らなかった手法ばかりである。これらが簡潔にわかりやすく解説され,自組織でこの手法を導入したらどのようになるだろうとワクワク想像しながら読んだ。さらに,第IV章では,これらさまざまな手法を組み合わせて実際に組織変革に取り組んだ実践報告が6例紹介されている。「うちもあるある」と自施設に重ね合わせて頷きたくなるような事例から,非常に困難な状況の克服に挑むチャレンジングな事例まで,さまざまな工夫とアイディアが詰まっている。現在および未来の自分の管理実践の参考になるような6つの事例に刺激を受けた。

 看護の世界では,問題解決技法に代表されるように「問題点は何か」という発想から入ることが多い。問題解決思考はもちろん大切だし必要である。しかし管理の現場において,問題→解決→また新たな問題…→解決…のサイクルに忙殺されていると,本来の管理の目的を一瞬見失ってしまうことがある。自組織の強みや宝を見つけて生かし,どういう組織にしたいか・どういう仕事ができる集団にしたいかというビジョンを持ち続けられる管理者であるために,本書を指南書として手元に置き,適宜ひもときながら,今後も看護管理に取り組んでいきたい。また同じように看護管理に関わる仲間たちにも紹介したい本である。
看護管理者を元気にする,看護管理が楽しくなる一冊
書評者: 撫養 真紀子 (大阪府立大准教授・看護管理学)
 看護管理者として,日々起こるさまざまな問題にどう対処すればよいのか,どうすればスタッフとの関係がうまくいくのか,チームをより良い方向に導くにはどうすればよいのかなど,日々考えたり,悩んだりすることが多いでしょう。そういった方に,本書は,大変お薦めの一冊です。

 まず,本書は,「なぜものの見方が大切なのか」という根本的な問いから始まります。看護者は,仕事熱心で真面目な人が多いといわれています。それと同時に,課題や目標を立案するために,問題探しが習慣になっていることが多いのではないでしょうか。しかし,問題探しは,現場や組織のあら探しになりがちです。これを繰り返すと,うんざりし,やる気も笑顔も消えてしまいます。それは,お互いに欠点や至らなさを指摘し合っているようなものでしょう。そのような経験をしたことはないですか? きっと少なからずどなたも心当たりがあることでしょう。では,どうすれば,あら探しでなく,うんざりせず,スタッフやチームと良い関係を築きながら高い目標へと導けるのか,笑顔で前向きに問題解決に向かえるのか。この書は,その解決として「ポジティブ・マネジメント」というアプローチ手法を提案してくれています。看護管理者として,自然体で明るく,楽しく,看護管理に取り組んでいける気になります。

 次に,ポジティブ(前向き)な感情に注目し,ポジティブ・マネジメントの理論とその手法を整理した上で,事例を用いてポジティブ・マネジメントがもたらす効果を丁寧に説明しています。看護管理者が組織を変革する時の新たなヒントを与えてくれるに違いありません。紹介されている実践的な事例は,大変わかりやすいです。特に,目標管理など現在行っている組織変革の手法にポジティブ・アプローチを組み合わせた事例などは,どんな現場でも応用が効くものだと思います。

 看護管理者の多くの方は,「感情に流されず仕事をすることが重要である」と考えていることでしょう。冷静に対処することも必要ですが,本書では,看護管理者も自分自身の感情に目を向け,対話することに重きを置き,「感情に気づく・感情を変えるためのエクササイズ」が収められています。気持ちを変えたい時やネガティブな感情を持った時,いつでもどこでも取り入れることができます。また,本書は,看護管理者のための書ですが,スタッフが読んでも日々の仕事で活用できるエッセンスが豊富にあり,気持ちが軽くなったり,明日への活力にもなったりします。私自身,ポジティブ・アプローチに関心を持ち,研究として取り組む中で,スタッフの新たな成長や可能性を実感しています。

 読んでいて,共感し納得できることが多く,読み終わった時には心が温かくなり,元気を与えてくれる良書です。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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