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医療福祉総合ガイドブック 2013年度版

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医療・福祉サービスを利用者の視点で一覧できるガイドブックの2013年度版。医療・福祉制度の概要が理解できるように解説を見直すとともに、「通知」レベルの最新情報も従来通りフォローしながら大幅刷新。利用者からの相談に素早く、より確実に対応するための保健・医療・福祉関係者必携の1冊。
本書は2013年2月末日までに把握できた情報をもとに構成しております。本書の発行後にも法律の改正や制度の変更が行われる場合がありますので,あらかじめご了承ください。
編集 NPO法人 日本医療ソーシャルワーク研究会
編集代表 村上 須賀子 / 佐々木 哲二郎 / 奥村 晴彦
発行 2013年04月判型:A4頁:308
ISBN 978-4-260-01770-1
定価 3,630円 (本体3,300円+税)
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読者のあなたへ

 本書を手に取っていただきありがとうございます。
 このガイドブックを発行し続けて,13年になります。継続してきた本書の製作過程を紹介しておきましょう。
 本づくりは毎年9月にスタートします。各章担当の編集代表が各地から集まり,制度改正,または変更が予測される情報を交換し,次年度版に盛り込むべき事項を検討します。また本書を使ってみてわかった改善点,周りの読者からいただいた要望などを反映すべく変更点を確認します。
 この議論の中で常に重視されてきたことは,利用者にとって,その制度がいかなる意味を持つかという視点に立つことです。つまり,私たち執筆者の「立場性」が問われるわけです。医療・福祉サービス利用者の立場に立って制度を解説することに徹する,という姿勢を改めて確認します。
 制度の前進なのか改悪なのか,改悪であれば警鐘を鳴らし,制度の限界が見られれば改善のためのアピールを盛り込みます。説明文も,利用者の立場に立って,「ここを注意すれば利用できます」「こんな工夫が大事です」というように,制度活用に関し前向きで具体的な書き方を心がけています。
 編集会議で各章の組み立てや方向性を決定し,2か月かけて各自が担当する社会資源情報の一つひとつを調査・確認します。「せっかくこのガイドブックを見て利用しようと思ったのに,制度はすでに廃止されていた」などと読者を落胆させ,傷つけないため念入りに調べます。
 11月中旬までの情報を集めて印刷所へ入校し,初校を1月の「成人の日」,2校を2月の「建国記念日」に確認します。私たちは,毎年,「ガイドブック暦」と名づけて,この2つの祝日をないものとしてすべてに優先させてスケジュール調整することが課せられています。
 校正作業時には,各章のチームメンバー別でテーブルに分かれ,情報の最新性,正確性,表現の的確性など,一語ずつ一項目ごとに点検します。時に障害者分野のメンバーが難病分野のテーブルで議論したり,医療分野が高齢者分野と協議したり整合性を確認し合います。役所から出されるパンフレットのように,制度ごとで分立して並べるのではなく,人々の生活場面ごとに制度を編み込んでいるため,このように全メンバーが一同に会して丸1日かけて点検する校正作業が必須なのです。
 主に執筆している医療ソーシャルワーカーたちは,日頃から,医療現場のフィールドで働き,生活問題にかかわっています。困難な事例もあきらめず,「どうしたら解決するか」を考えています。生活問題を抱えている人を,まさにワンストップサービスで受けとめ,寄り添っていくパーソナルサポーターとなっているのです。こうした日常の実践の集積がこの『医療福祉総合ガイドブック』を生み,育んで進化させています。
 本書の見返し部分に,日本の複雑な社会保障制度全般をライフステージに沿って概観し,人生の局面ごとに抱える生活上の問題により,その際に必要な分野の支援策(各章)にたどり着けるよう「幹線道路図」ともいえる案内図を作成しています。
 各章では,おおまかな制度の解説の次に,実際的な情報,その利用方法などを述べるという構成になっています。取り上げる各制度の情報は,全国共通で利用頻度の高い制度順に編集していますが,場合によっては地域の特徴的な例も掲載しています。
 本書をもとに,あなたの地域の医療・福祉のサービスを付け加えていただければ,文字通り,あなた自身のオリジナルガイドブックになることでしょう。

 本書の編集は,「もし,自分が利用するならば……」と自問しながら,進めています。
 1)法律や役所から示されている説明文を載せるのではなく,すべての解説を利用者にかわりやすく言い換えました。
 2)制度をひとことで説明する見出しをつけました。
 3)「内容」「利用できる人」「利用方法」「利用者負担」「窓口」「コメント」など見出しをつけて,各項目はできる限り箇条書きで表記しました。
 4)医療ソーシャルワーカーが相談に用いる図,表,イラストをふんだんに使いました。
 5)ソーシャルワーカーの視点から全体を構成して,「コラム」「ミニ事例」「ミニ知識」などを通じて医療・福祉を総合的に補足しています。

 2012年度版より新たに,「自然災害等にあわれた人のために」という章を設けています。戦争,被爆,地震など過去のさまざまな被害の例に見るごとく,被災者は被災地のみに留まらず,全国各地での避難生活を余儀なくされます。災害に加えて,制度を活用できなかったという不幸が重ならないよう,全国版の本書に東日本大震災の援護策を盛り込みました。しかし,残念なことにコラムで紹介していますが,「知らないでいたこと」による口惜しい事例がありました。「知って」「行使」しなければ制度は縮小廃止されます。自然災害等にあわれた人々への特例措置は福島の原発被災を除き,ほとんど消滅しつつあります。
 本書の情報を活用し,我が国の医療福祉サービスの劣化を食い止めていただきたいという思いとともに今年度版もお届け致します。

 なお,本書編集の「NPO法人日本医療ソーシャルワーク研究会」では,本書の印税を医療福祉の広報,普及活動や医療ソーシャルワーカーの研修に役立てておりますことをご報告しておきます。

 2013年3月
 編集代表 村上須賀子 佐々木哲二郎 奥村晴彦

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I 社会保障のしくみ
 社会保障のしくみ
  (1)社会保障とは
  (2)社会保険とは
  (3)公的扶助(生活保護)とは
  (4)社会保障を利用するときに
 サービス利用の窓口・支援する人

II 医療サービス
 病院選び-よりよい選択をするために
  (1)今日の医療提供体制と医療制度改革
  (2)医療サービスの概要
   A 医療機関の構成
   B 医療機関の種別
  (3)医療機関の種類
   A 医療法による区分
   B 診療報酬制度による区分
   C 医療対策・医療関連各法による区分(拠点病院)
   D その他の法による区分
  (4)一般病院における医療サービス
   A 入院
   B 在宅と施設--地域連携の意義と活用する社会資源
   C 在宅
  (5)精神科における医療サービス
   A 精神科という医療への受診
   B 入院
   C 入院の形態
   D 退院請求・処遇改善請求
   E 在宅へ向けて利用できるサービス
   F 在宅
 医療費に困ったとき
  (1)国民皆保険制度
  (2)医療費自己負担を軽くするために
   A 高額療養費制度
   B 医療費軽減制度
   C 自治体によって異なる医療費補助
   D 被害者救済医療
   E 税制上の軽減制度

III 生活費としごと
 生活費
  (1)公的扶助
  (2)資金貸付制度
  (3)公的年金
  (4)手当
  (5)税金
  (6)公共料金等の減免・割引
 しごと
  (1)雇用保険制度
  (2)就職支援

IV 高齢者サービス
 高齢者サービスのガイド
  (1)介護保険のしくみ
  (2)介護保険の手続き
  (3)相談するところ
 高齢者サービスの実際
  (1)介護保険サービスの費用
  (2)サービス提供事業所
 住まい
 暮らすところで利用するサービス
 出向いて利用するサービス

V 障害児・者サービス
 障害児・者サービスの実際
  (1)相談支援
  (2)障害福祉サービスのしくみ
   A サービスのしくみ
   B サービス利用の流れ
   C 障害程度区分の認定
  (3)サービスの実際
  (4)障害児の福祉サービス
   A 利用の手続き
   B 障害児通所・入所支援
  (5)障害児・者の費用負担
   A 障害者の費用負担
   B 障害児の費用負担
   C 補装具の費用負担
   D 費用負担の軽減措置
 障害児・者サービスのガイド
  (1)身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
  (2)手帳で利用できる制度
  (3)発達障害者への支援
  (4)高次脳機能障害者への支援
 住まい
  (1)共同生活するところ
  (2)居住サポート
  (3)公営住宅への入居
  (4)住宅の改造
 暮らすところで利用するサービス
  (1)地域移行支援
  (2)介護サービス
  (3)暮らしを豊かにする用具
 出向いて利用するサービス
  (1)日中活動のイメージ
  (2)介護サービス
  (3)活動支援のサービス
 おでかけ
  (1)のりもの
  (2)自動車関係
  (3)移動支援
 しごと
 自助グループ(セルフヘルプグループ)
  (1)自助グループって?
  (2)本人のグループ
  (3)家族のグループ

VI 難病
 難病患者のために

VII 母子(ひとり親)・乳幼児・児童のために
 母子(ひとり親)・乳幼児・児童のために
  (1)子どもの手当
  (2)医療費自己負担の軽減
  (3)医療保険からの給付
  (4)貸付
  (5)しごと
  (6)乳幼児・児童の保護と育成
   A 相談するところ
   B 入所施設
   C 社会的扶養
   D その他
  (7)子育てサポート
  (8)就学のための支援

VIII 権利の擁護
 権利の擁護
  (1)人権・権利擁護のためのしくみ
   A 成年後見制度
   B 福祉サービス利用援助事業
  (2)児童虐待防止法と支援のしくみ
   A 児童虐待とは
   B 支援のしくみ
  (3)DV防止法と支援のしくみ
   A DVとは
   B 支援のしくみ
  (4)高齢者虐待防止法と支援のしくみ
   A 高齢者虐待とは
   B 支援のしくみ
  (5)障害者虐待防止法と支援のしくみ
   A 障害者虐待とは
   B 支援のしくみ

IX 自然災害等にあわれた人のために
 自然災害等にあわれた人のために
  (1)大規模自然災害等の保障
  (2)医療サービス
  (3)生活と住まい・しごと
   A 生活
   B 住まい
   C しごと
  (4)高齢者サービス
  (5)母子(ひとり親)・乳幼児・児童のために
  (6)その他の支援

資料編
 1.全国のいのちの電話
 2.都道府県における医療ソーシャルワーカーに関する問合せ先
 3.意識障害の評価スケール
 4.労働者災害補償保険法障害等級表
 5.自動車損害賠償保障法後遺障害等級表
 6.重度心身障害者医療費助成制度の例
 7.生活保護における地域の級地区分
 8.国民年金障害等級表,厚生年金障害等級表,厚生年金障害手当金
 9.特別障害者手当障害程度
 10.身体障害者障害程度等級表
 11.精神障害者保健福祉手帳障害等級表
 12.高次脳機能障害診断基準
 13.精神障害のある人たちのグループ
 14.身体に障害や難病のある人たちのグループ
 15.知的障害のある人たちのグループ
 16.障害者総合支援法の対象疾患と難病患者等居宅生活支援事業の対象疾患の対応表
 17.子ども医療費助成制度,乳幼児医療費助成制度の自己負担の例
 18.ひとり親家庭等医療費助成制度
 19.無料低額診療施設

索引

コラム
 「社会保障と税の一体改革」の経過/悲しみの中でも必要な各種手続き/訪問看護が果たす役割と社会的意義/便利になった高額療養費制度,しかし……/精神科の治療を長く続けていくには?/生活保護バッシング/生活保護はどうなるの?/年金減額と低所得者への給付/年金の受給資格期間が10年に短縮されます/父子家庭にも遺族基礎年金が支給されます/障害者雇用率改正のウラで/誰のための地域包括か/これからの住まいは?/必要なケアをより安全に!/ヘルパーさん,もう帰っちゃうの?/相談支援の充実/身体障害者認定基準まで見直し?/地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の個別給付化によって生じた問題/子育てしている人が地域で孤立しないために/DVが与える子どもへの影響/被災者は全国各地に逃れている/福祉仮設住宅って知っていますか/災害福祉広域支援事業が始まります

ミニ知識
 労災保険のメリット制/分野ごとにある地域の支援センター/地域連携パスの利用/在宅医療を支える「往診」と「訪問診療」は同じ意味?/不服申立て/生活保護の相談・開始・適用に関する厚生労働省通知/生活保護の内容で知っておきたいこと/生活保護手帳と別冊問答集/民生委員/緊急小口資金(緊急援護資金)/特別児童扶養手当等の給付(生活保護受給家庭の場合)/産科医療補償制度/「直接支払制度」と「受取代理制度」の違い

ミニ事例
 初診日の証明に困ったとき/うつ病で障害年金がもらえるかも?/一家の大黒柱が亡くなったとき……/傷病手当金の事例/35歳のAさん,急性骨髄性白血病

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さまざまな患者・家族のケースマネジメントへの実践書
書評者: 宇都宮 宏子 (在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)
 私は,病院から生活の場へ患者さんを帰したいと考え,訪問看護の現場から大学病院に移り,「退院調整看護師」として,退院支援・退院調整に取り組んだ。私が訪問看護をしていた時代は介護保険制度が施行される前で,行政の高齢福祉課のケースワーカーや,ヘルパー事業所,特別養護老人ホームのデイサービスや短期入所担当の相談員たち,多くの社会福祉士の仲間に支えられ,対象者や,家族の抱える暮らし,経済問題,虐待の問題等に一緒にかかわってきた。

 1992年から,私が訪問看護を実践していた京都の行政区では,特に「福祉・医療・保健の実務者会議」を当初から開催し,困難事例のケース検討も行ってきた。そこで中心になって会を牽引していたのが行政の社会福祉士だった。その経験から,退院調整部門では医療ソーシャルワーカー(MSW)と退院調整看護師が協働して取り組むことが効果的であると考え,病院に戻ってからも退院調整部門の仕組みを作ってきた。

 効果的な退院調整の鍵となる職種だが,多くの医療機関は,MSWが1人あるいは2人くらいで対応していることが多く,ロールモデルの少ない環境で,働きながら知識を深め,相談支援の経験をこなし,業務マネジメントをすることも求められている。大学卒業後,病院に就職した時点で,病院の中の唯一の福祉職として,MSWに期待されることが多い中,孤軍奮闘している。ただ,私が全国の医療機関でアドバイザーとして活動したり,研修を行ったりする中で,「介護保険のケアマネジャーはいるが,ケースマネジメントができる人がいない」と感じることは多い。病気や障害と遭遇するのは,医療機関である。患者のみならず,家族や支える人たちも含め,生涯にわたり,ケースマネジメントができるMSWに成長していただきたい。そのためにも,図や表による説明が多く,理解しやすくまとめられた本書をMSW1年目の教科書として活用してほしい。

 I章「社会保障のしくみ」では大枠を理解でき,各種サービスの窓口も紹介されている。II章以降は,「医療サービス」「生活費としごと」「高齢者サービス」「障害児・者サービス」「難病」「母子(ひとり親)・乳幼児・児童のために」「権利の擁護」と分野を分け,東日本大震災後からは,「自然災害等にあわれた人のために」という章も加え,制度の説明,情報,利用方法がまとめられている。表紙の見返し部分の「ライフステージからみた社会保障」では,誕生から高齢者までのライフステージに沿って利用できる制度がわかりやすく紹介されている。

 MSWがいない医療機関で退院調整にかかわる看護師にも,制度や窓口等の理解,参考になる項目が多い書籍である。

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