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救急レジデントマニュアル 第5版

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救急診療の現場における実践的知識をコンパクトな体裁に詰め込んだマニュアル。本書の特徴は、(1)症状を中心に鑑別診断と治療を時間軸に沿って記載、(2)診断・治療の優先順位を提示、(3)頻度と緊急性を考慮した構成、(4)教科書的な記述は省略し簡潔を旨とする内容。救急室で「まず何をすべきか」「その後に何をすべきか」がわかるレジデント必携のマニュアル、待望の第5版。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 相川 直樹
編集 堀 進悟 / 藤島 清太郎
発行 2013年10月判型:B6変頁:536
ISBN 978-4-260-01874-6
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
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第5版の序

 1993年に上梓された『救急レジデントマニュアル』は5年ごとに改訂され,今日までに13万部以上が世に出された.幸いに読者の支持を得た背景には,この間に,救急医療を取り巻く社会環境が大きく変遷し,特に2004年以後の新研修医体制によって,救急医療の基本的スキルをすべての医師に求めるようになったことが影響している.当然のことではあるが,すべての医師は救急患者を診療する際に,「何をなすべきか」を身につけていることを,国民から期待されている.一方では,この目標達成は容易でなく,また医師のみによって救急医療が成立するものではない.ERは診療の場であるとともに,実地教育の場であり,さらにチーム医療の場であるから,学生,初期研修医,さらにERで勤務する看護師,救急救命士にも分かりやすい,共有する行動指針が必要である.本書は,この目的で私たちが自らのER診療および教育に使用するために,編集したものである.
 救急領域に限らず,医学研修は航海(臨床)と海図(教科書)に例えられてきた.航海では暴風に遭うことがある.海図を読まない航海は危険であるが,海図をいくら学んでも航海しなければ船乗りになれない.本書は,ERで使用するマニュアル(簡単な海図)であり,臨床研修(航海)と一体になって,初めて効果を発揮するように編集されている.初期研修医は,できれば救急研修の開始前に本書を一読してほしいが,救急患者が救急外来に到着する前に,あるいは診療の途中で該当部分を読み,ポイントに線を引いたり,メモを書き込んだりして,Cooking Bookのように使ってほしい.1人ひとりの救急患者は,緊急度,重症度,傷病の種類,社会背景,基礎疾患など,みな異なる.1人ひとりへの救急診療が,初期研修医にとっての大切な航海であり,この航海を積み重ねれば立派な船乗りになれる(もちろん,指導医の存在は欠かせないが).
 第5版への改訂にあたり,旧版の読者(学生,初期研修医,救急医学後期研修医,指導医,看護師,救急救命士)にアンケート調査を行い,白衣ポケットに入るサイズとすること,読みやすさの改善,エビデンスの更新,などに配慮した.

 2013年9月
 慶應義塾大学教授 堀 進悟

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第1章 救急患者の診療にあたって
第2章 救急診療の進め方
 1 トリアージ
 2 病歴の取り方
 3 バイタルサイン,身体所見
 4 神経学的所見
 5 診療記録の書き方
 6 入院・帰宅の判断(Disposition)
第3章 救急蘇生法
 1 BLS(一次救命処置)
 2 ALS(二次救命処置)
第4章 症候からみたER診療
 1 上気道閉塞
 2 ショック
  1 鑑別と緊急処置
  2 心原性ショック
  3 低容量性ショック
  4 閉塞性ショック
  5 セプティックショック
  6 アナフィラキシーショック
  7 神経原性ショック
 3 意識障害
  1 鑑別と緊急処置
  2 脳血管障害
  3 代謝性脳症
  4 髄膜炎,単純ヘルペス脳炎
 4 頭痛
 5 痙攣
 6 失神
 7 めまい
 8 転倒
 9 胸背部痛
  1 鑑別と緊急処置
  2 急性冠症候群(ACS)
  3 急性大動脈解離
  4 その他(自然気胸,胸膜炎,帯状疱疹)
 10 不整脈
 11 呼吸困難
  1 鑑別と緊急処置
  2 心不全
  3 気管支喘息
  4 肺炎
  5 急性呼吸促迫症候群(ARDS)
  6 肺塞栓症
  7 過換気症候群
 12 喀血
 13 腹痛
  1 鑑別と緊急処置
  2 急性腹膜炎
  3 腸閉塞(イレウス)
  4 急性虫垂炎
  5 胆道疾患
  6 急性膵炎
  7 腸間膜動脈血行不全,ヘルニア
 14 吐血,下血
 15 消化管異物
 16 尿路結石
 17 尿閉,乏尿,無尿
 18 陰嚢内腫瘤
 19 発熱(成人)
 20 脱水
 21 電解質異常
 22 高血圧緊急症
 23 糖尿病昏睡,低血糖症
 24 甲状腺機能異常
 25 急性副腎不全
 26 痛風
 27 軟部組織感染症(蜂巣炎,壊死性筋膜炎・ガス壊疽),破傷風
 28 鼻出血
第5章 外傷
 1 重症外傷患者の初期診療(JATEC)
 2 止血法
 3 創処置
 4 頭部外傷
 5 顔面外傷
 6 胸部外傷
 7 腹部外傷
 8 脊椎・脊髄損傷
 9 四肢外傷
 10 血管損傷
 11 熱傷
 12 電撃傷
 13 化学損傷
第6章 中毒,環境障害,テロリズム
 1 薬物中毒
 2 一酸化炭素中毒
 3 食中毒
 4 熱中症
 5 低体温
 6 溺水
 7 高山病
 8 減圧症(潜函病,潜水病)
 9 虫刺症,動物咬創
 10 アルコールと救急疾患
 11 サリン
 12 炭疽
第7章 各科救急
 1 小児科救急(発熱を含む)
 2 精神科救急
 3 眼科救急
 4 耳鼻科救急
 5 産婦人科救急
 6 歯科口腔外科救急
第8章 救急治療手技
 1 バッグマスク換気
 2 酸素療法
 3 気管挿管
 4 輪状甲状間膜穿刺・切開
 5 気管切開
 6 ベンチレーター
 7 直流除細動(DC)
 8 人工ペーシング
 9 経皮的心肺補助法(PCPS)
 10 動脈穿刺,動脈ライン
 11 中心静脈カテーテル
 12 肺動脈カテーテル(PAC,Swan-Ganzカテーテル)
 13 胸腔ドレーン挿入
 14 心嚢穿刺
 15 胃管挿入,胃洗浄
 16 Sengstaken-Blakemore チューブ挿入
 17 イレウス管挿入
 18 腹腔穿刺
 19 膀胱留置カテーテル
 20 腰椎穿刺
 21 関節穿刺
 22 血液浄化
 23 輸血
第9章 救急医療関連事項
 1 インフォームド・コンセント
 2 脳死判定基準
 3 届け出義務
 4 災害医療
 5 感染対策
資料
 1 JCSとGCS
 2 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とMMSE
 3 APACHE II
 4 ISS
 5 酸塩基平衡異常に関する計算式
 6 NIH Stroke Scale
 7 クモ膜下出血の重症度分類
 8 緊急時の髄液検査
 9 慢性呼吸器疾患における息切れの程度の分類
 10 脂肪塞栓症候群の臨床診断
 11 食道・胃静脈瘤内視鏡所見記載基準
 12 急性膵炎重症度判定基準
 13 日本外傷学会臓器損傷分類
 14 下肢深部静脈血栓の治療
 15 DIC診断基準(日本救急医学会)
 16 注射用抗細菌薬一覧
 17 経口抗細菌薬一覧
 18 抗真菌薬一覧
 19 妊娠と薬剤

略語一覧
索引

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「型」がきちんと踏襲された「海図」を持って,臨床の「荒波」に乗り出そう
書評者: 林 寛之 (福井大病院総合診療部教授)
 既に20年! も研修医や実地医家に愛され続けられたのには訳がある。今の研修医が生まれる前からあったんだよね(ウソ)。5年ごとの改訂でついに20年。常に最新の内容に改編し続けた執筆陣のご苦労は並々ならぬものであっただろう。

 昔の当直は行き当たりばったりで目の前の患者が来たら先輩医師の見よう見まねで患者さんを診察するという徒弟制度でしか学べなかった。つまり「救急なんて誰でもできるさ(……多分)」と強がりつつ,実はきちんとしたマニュアルがなく,常に当直はビクビクもので,「一晩乗り切れさえすればいい」と考える浅~い『なんちゃって救急』の時代だった。そこできちんとした型を教え,かつ現場で使えるように,広範囲の知識をギュウギュウ詰めにして登場したのが本書であった。私も同僚もみんな白衣のポケットに入れていました。本書は治療まで細かく言及して,かつ広範囲のエッセンスをアップデートしつつ盛り込んでいたので,専門外でもなんとか急場をしのがないといけない当直医にとってはそれはもう重宝した。

 ここで刷新された第5版はポケットに入るという機敏性をそのままに,「型」がきちんと踏襲されて非常に現場で調べやすい,使いやすい装丁になっている。巻頭諸言で述べられている「海図なくして航海ができない」のと同じように,きちんとした臨床を行うにはきちんとした海図,つまり本書のような「型」をおさえたマニュアルが必須なのだ。穏やかな海ではいい船員は育たないという。臨床という荒波にもまれて初めて腕のいい医師が出来上がるのだから,救急の現場から逃げていたのではいつまでたっても役に立たないお荷物の医師にしかなれないのだ。レジデントは積極的に本書を携えて荒波に出ていってほしい。

 ただのマニュアルと侮ってはいけない。本書を手に取ると,涙が出るくらい実に細かい所まで記載してある。これは現場にでている医師でないと書けない内容だ。Early-Goal Directed Therapyなどさまざまな個所でアップデートされており,また各手技についても言及し,至れり尽くせりだ。テキストのように読破するというより,救急の現場で急いで調べるのに最適な仕上がりになっている。もちろん将来救急の道に進みたいという根性フルなレジデントはぜひ熟読してほしい。巻末の資料はかゆいところに手が届くものになっている。

 初期研修医はもとより,当直で専門外を見ないといけない実地医家にとってはコンパクトな本書はなかなか使い勝手がいい。白衣に海図を携えて荒海にでてみよう。
救急のチーム医療で協働する多職種の必携書
書評者: 中村 惠子 (札幌市立大副学長・看護学研究科長)
 『救急レジデントマニュアル』は1993年11月に初版が発行され,このほど第5版が刊行された。持ちやすいポケットサイズ(11×18 cm)の中には,ぎっしりと内容が詰まっている。本書の編集者の一人,慶大救急医学教授の堀進悟先生は「第5版の序」で以下のように記している。

 「(前略)医学研修は航海(臨床)と海図(教科書)に例えられてきた。航海では暴風に遭うことがある。海図を読まない航海は危険であるが,海図をいくら学んでも航海しなければ船乗りになれない。本書はERで使用するマニュアル(簡単な海図)であり,臨床研修(航海)と一体になって,初めて効果を発揮するように編集されている。(後略)」

 本書は全9章の構成で,救急部門で遭遇する症状や疾患について要点を簡潔に押さえている。例えば,第1章「救急患者の診療にあたって」では「レジデントの心構え」「医師の応招義務」「患者・親族への対応と説明の仕方」「注意事項(CPA患者,患者死亡,転送)」などが記載されており,ERで困っている研修医をフォローする内容となっている。第2章「救急診療の進め方」,第3章「救急蘇生法」,第4章「症候からみたER診療」,第5章「外傷」,第6章「中毒,環境障害,テロリズム」では,基本的に「(1)ポイント,(2)最初の処置,(3)重症度の判定,(4)病態の把握・診断の進め方,(5)引き続き行うべき救急処置,(6)入院・帰宅の判断」の順に書かれている。これはERで患者診察を進めるときの順序を踏まえていて,現場で活用しやすい。

 第7章「各科救急」では,小児科,精神科,眼科,耳鼻科,産婦人科,歯科口腔外科の各科で救急受診数が多い症候ごとに,状態の把握,対応と処置,入院・帰宅の判断が示される。第8章「救急治療手技」は,酸素療法,ベンチレーター,人工ペーシング,PCPS,血液浄化などの緊急治療について。第9章「救急医療関連事項」では,インフォームド・コンセント,脳死判定基準,届け出義務,災害医療など,救急指導医が来るまで何をしたら良いかがわかる。巻末には資料として,ISS(Injury Severity Score)や抗細菌薬一覧など19項目が約30ページで掲載されている。これらは確認したいときにサッと開くことができて,研修医や看護師の強い味方になるだろう。

 救急医療の第一線で活躍している医師によって執筆された本書には,現場でとっさの判断が必要なときに知りたい情報が精選されている。評者と救急医療のかかわりは30年余りになるが,その当初(1980年代初頭)は救急医療に関する医学書や看護書のタイトルは極めて少なく自己学習や後輩指導には難儀したものである。本書が当時出版されていたら,救命救急センターで働くチーム医療者全員の実践書として活用していたに違いない。救急医療のエッセンスが凝縮されており,研修医・指導医だけでなく救急のチーム医療で協働する多職種の必携書として,本書を推薦したい。特に看護師は本書を1冊手元に置いて救急業務を実施すると,医師と共通の視点で医療が進行し,看護アセスメントも容易になるだろう。
症候からのアプローチを重視し,読者への配慮も行き届いたマニュアル
書評者: 行岡 哲男 (日本救急医学会代表理事/東医大主任教授・救急医学)
 本書は読む前にまず手に取り,その感触を確かめて欲しい。サイズ,重さのことである。白衣に入るが,少し重くこれが存在感を感じさせる。この重さが不思議なことに安心感につながる。そしてポケットからこれを取り出してみて欲しい。入れる動作より,取り出すのが容易である。臨床現場で持ち歩くべき本書は,取り出すこと(欲しい情報にたどり着く過程)がスムーズでなければならず,その点で心地良い本である。

 ページを閉じたまま前小口(背表紙の反対側)を見ると,各章の分量が青い色分けの厚さでわかる。最も分厚いのは第4章「症候からみたER診療」である。救急診療は症候論的アプローチが重要であり,本書の執筆姿勢をこんなところからうかがうことができる。

 さて,本のページを開いたら468ページから始まる「資料」を確認してほしい。救急診療やその後のカンファレンスで「え~っ,あれは……」と確認したい資料が並んでいる。その前の「救急医療関連事項」も,現場で確認を要することが並べられている。版を重ねる本には特徴があると思う。読み手(本書の場合はエンドユーザー)への配慮である。特に実用書では,これが極めて重要であり本書が版を重ねてきた理由もここにある。既に述べたように第4章が最も分量が多く,その中でも,38ページから60ページまでの「ショック」は編者らのライフワークでもあり内容が充実している。

 本書には全編を通じ「POINT」と表記された記述が約140項目ある。本書を使い込んだ人は,これを通し読みすることで本書の内容を総覧し再確認することができる。情報の粒度は必ずしも統一されてはいないが,これは気にならない。「POINT」はまとめではなく,それぞれの執筆担当者がどこに力点を置いたのか,その執筆者の思いが凝縮したものである。したがって,初読者がこれを読んで本書の内容を理解しようとするのは間違いである。

 本書の使い始めの段階では,自分が経験した事例を,直後に当該事例の記載頁で確かめることになるだろう。または,診療には必ず間があくときがある,その間に当該事例にかかわる記載内容を確認にして,これを手掛かりに次の診療の展開に備えることができる。しかし,それにはあらかじめの通読が必要になるが,その価値はある本だと思う。

 「第5版の序」にも書かれているが,本書は線を引いたり,書き込みをして使うべきものがある。しかし,コンパクト性を追求した結果か,書き込みのスペースは限られている。各節の終わりのスペースを活用する必要もあろう。この場合の書き込みには,関連ページの記載が必要であるが,この自分の書き込みを自由に使えるようになれば,それが本書を卒業するときとなろう。レジデントが本書を使い込み,これを窓口として救急診療のより深部へと進むことを願っている。

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