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ねじ子の ぐっとくる脳と神経のみかた

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お待たせしました! 「ぐっとくる体のみかた」 に続き今回のテーマは「脳と神経のみかた」。顔・体の神経のみかた、体の感覚のみかた、筋肉のみかた(MMT)を“ねじ子”表現でわかりやすく解説。看護師、医学生はもちろん、リハビリテーション領域でも必読の1冊。他の本にはあまり載っていない「死亡確認」も掲載。
森皆 ねじ子
発行 2013年11月判型:A5頁:136
ISBN 978-4-260-01772-5
定価 1,760円 (本体1,600円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 みなさんこんにちは。今回の本は「脳と神経のみかた」です。

 人間を最も人間たらしめている臓器、それが脳と神経です。その人をその人として認識する最も重要な器官と言えます。「人間が何をもって人間であるか」「その人が何をもってその人であるか」というのは非常に難しい哲学的問題ですが、性格や考え方、それに基づく行動によって人間の価値が決まるのであれば、「脳」とその出先機関である「神経」のふるまいによって、人間は人間たりうると言っても過言ではないでしょう。

 社会的に最も重要な臓器にも関わらず、人類の長い歴史において、脳と神経の働きはずっとベールに包まれたままでした。脳は非常に軟らかい臓器で、頭蓋骨という硬い骨に守られています。脊髄も同様に脊椎(背骨のこと)という硬い骨に守られています。外から見ても中でいったい何が起こっているか、さっぱりわかりません。異常が起こっても、それがいったいどんな病気か(脳梗塞か? 脳出血か? 脊髄のどこか切れたか? など)をうかがい知ることができなかったのです。表面に見えるのは、ある日突然ろれつがまわらなくなったとか、言動がおかしくなったとか、右腕が麻痺したとか、足が痛くてたまらないとか、そういう表面的な「結果」だけでした。

 ブラックボックスの中身を外からなんとか予想しようと、人類は努力してきました。古来より医者は、脳と神経の出先機関である皮膚や筋肉や腱を見ることによって、「脳と神経のどこが悪くなったのか」を推理してきました。体じゅうを叩いたり、ひっかいたり、なぞったり、押したり引いたり力比べしたり、様々な検査法を編み出してブラックボックスの中で起こったことを予想していたのです。

 人類が四千年の歴史をかけて積み上げてきた技術、それが今回の本で紹介する「脳と神経のみかた」です。

 近年になってようやく、CTやMRIで脳みその中が「見える」ようになってきました。神経伝達物質や脳内ホルモンも見つかり、神経細胞(ニューロン)がどんなふうに興奮して、どんなふうに情報を伝えているかも、ある程度わかるようになってきました。それでもまだまだ、わからないことがいっぱいあります。人体において、脳と神経は最後に残されたミステリーゾーンだと思います。

 この本では、あまたある神経学的所見の中から、よく使う重要なものを抜粋して紹介します。もちろん、この本に載っていないもっと細かい神経学的検査方法はまだまだいっぱいあります。それらを勉強したくなった方は、ぜひさらなるぶ厚い教科書にチャレンジしてください。

 森皆ねじ子

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はじめに
この本の取り扱い説明書
脳と神経っていうのはね

顔の神経のみかた
 脳神経のみかた
 Ⅰ番 嗅覚 嗅神経
 Ⅱ番 視覚 視神経
 Ⅲ番 眼球運動 動眼神経/Ⅳ番 滑車神経/Ⅵ番 外転神経
 Ⅴ番 顔の感覚 三叉神経
 Ⅶ番 顔の筋肉 顔面神経
 Ⅷ番 聴力 聴神経
 Ⅸ番 のどの神経 舌咽神経/Ⅹ番 迷走神経
 Ⅺ番 首の筋肉 副神経/Ⅻ番 べろ 舌下神経

体の神経のみかた
 体の神経解剖
 生理つまり機能的なこと

筋肉のみかた(MMT)
 徒手筋力試験
 顔
 首/胸/肩
 肘
 手首
 握力/太もも
 膝
 足首
 MMTカルテの書きかた
 ほんのわずかな筋力低下

体の感覚
 体の感覚のみかた
 皮膚の感覚
 関節の感覚
 ヒステリー

腱反射
 腱反射のしくみ
 腱反射のやりかた
 アゴ(下顎反射)
 肘の内側
 手首の親指側
 肘の外側
 膝(膝蓋腱反射)
 アキレス腱反射
 カルテの書きかた
 出たら異常な反射(病的反射)

死亡確認
 お看取り

あとがき
参考文献
索引

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診察が醸し出す「匠の技」を探求したくなる一冊
書評者: 山中 克郎 (藤田保衛大教授・救急総合内科)
 名探偵シャーロック・ホームズの推理と医師による診断の類似性からこの本の前書きは始まる。古くから,患者が語る病歴と身体診察だけで90%の診断ができるといわれる。医師に必要なことは,(1)幅広く奥深い医学知識,(2)診察時の鋭い観察力,(3)病名を推理する力なのだ。

 発熱のために来院した中高年の女性を診察したとき,「先生は聴診器を使うのですね。わたくし5年間,高血圧のために近くの病院に通院していますが,初めて聴診してもらいました」と言われビックリしたことがある。きっと忙しい病院なのだろう。それとも「萌え聴診器」……医者はここにいますという案内板として聴診器はもてはやされるだけになってしまったのか。疾患の見逃しで訴えられては困るからという防衛反応からか,最近は検査が大流行である。それがいけないと言っているのではない。しかし,患者の訴えに耳を傾け静かに聴診器を当てて,心雑音の性状から「大動脈弁狭窄症ですね」とつぶやくほうが,医師の技量を示す豊かな物語に満ちている。

 一般的な診察法はオスキー(客観的臨床能力試験)で習うが,これはお作法である。忙しい外来で頭のてっぺんから足先までゆっくりと診察する時間はない。身体診察の教科書はたくさんあるが,重要点がわかりにくい。医学生や初期研修医は,本書を見て大切なポイントをまず学んで欲しい。ねじ子先生による診察での細かな注意点が,かわいいイラスト付きで書かれているので楽しみながら学習ができる。

 もう一度基本的な身体所見を勉強しようと考えているベテラン医師にもお薦めである。何となくやってきたルーチンの診察に対する改善のアイデアが随所にある。打診では指をしっかりと胸壁に当て,スナップを利かせてDIP関節をたたくなどの診察技法が示されている。面倒になりスキップしがちな神経学的診察も臨床で必須のエッセンスがわかりやすく図示されているのが嬉しい。

 視診,打診,触診という単純な作業だけで,診察は温かみのある「診療の美」へと姿を変える。診察とは,まさに種も仕掛けもない魔法のような,伝統の職人技なのだ。診察前には予想もしなかった「診療の美」が華麗に立ち現れるのだ。感動を呼ばないわけがない。

 お看取りという,教科書にはあまり書かれていない,荘厳な臨終に立ち会うときの医師としての心構えも記載されている。もっと詳しく身体診察を学びたいとのニーズもあるかと思うが,そのときはベイツやマクギーの教科書を熟読すればよい。こんな素晴らしい診察の本に出会ったらきっと診察をしたくなる。診察が醸し出す「匠の技」をますます探求したくなる。

(この書評は、ねじ子シリーズの「体のみかた」と「脳と神経のみかた」の2冊について書かれたものです)


「臨床のコツ」がちりばめられた一冊
書評者: 網本 和 (首都大学東京教授・理学療法学)
◆「ぐっとくる」

 素晴らしいとか美しいとか直截に言われるより,ぐっとくると言われた方が,なぜだがうれしくなります。ぐっとくるというコトバの類義語には,感動する,シビレる,ハマる,などがあるようです。例えば小田和正のクリスマスコンサートで,あの吉田拓郎の歌う「落陽」を聴いたときにぐっとくる,というのが適切な例といえる(評者のようなオジサンには特に)のではないでしょうか?

◆「やせ気味のパンダ」

 前置きはこのくらいにして,医師でありマンガ家でもある森皆ねじ子先生による『ねじ子の ぐっとくる脳と神経のみかた』のどこがぐっとくるかについてみていきましょう。

 本書の特徴は何といっても,ほぼ全編にわたってマンガというかイラストレーションで描かれていることです。少しやせ気味のパンダ君が,本来なら壮大な脳と神経の診察法(いわゆる神経学)を実にさらりとわかりやすく巡ってみせてくれます。考えてもみてください。この書評を読んでいるあなたが,医療従事者や関係学生なら,脳神経が12本もあってその機能の複雑さ,検査法の微妙さに期末試験前はもちろん資格をとって臨床に出てからも大いに悩まされてきたことは十分に考えられます。それが,軽妙なタッチのパンダ君が次々と診察をこなしてゆくのをみると,自分でもできるはずだと確信することになります(ひょっとすると過信かも?)。「脳神経のみかた」に続いて,「体の神経のみかた」「筋肉のみかた(MMT)」「体の感覚」「腱反射」「死亡確認」と進んでいきます。

◆「けだるげ」とは?

 評者は理学療法士なので特に「筋肉のみかた(MMT)」には大いに期待し,また楽しませていただきました。徒手筋力検査法(MMT)では,周知のように0,1,2,3,4,5の6段階で評価するのですが,大事なのは「5と3だけ」であると喝破されてしまいました。このくらい大胆に言われるとかえって気持ちが良いものです。

 「腱反射」の項では,打鍵槌(ハンマー)の持ち方のポイントとして,「けだるげ」が大切であること,目的の筋肉の力を抜くこと,そのためのポジショニングが肝心であることが示されます。「けだるげ」ってどんな様子なの? という声が聞こえてきそうですが,文章でその微妙なイラストを説明することは難しいのです。ぜひ,本書を実際に手に取って確かめてください。

◆「臨床のコツ」

 こうして紹介してみると,簡単だけど内容が薄いように思えるかもしれませんが,基本的事項は実に真面目に書かれています。コラム「嘘ではないのよ,ウソでは」ではヒステリーについて記されています。内容はミュンヒハウゼン症候群にも及び,本格的な医学記事となっていて,その結びには適切な対処法として「極めてやさしく同情的に,共感的に接する」ことが提案されます。

 本書は言ってみれば,脳と神経をみていくときの「臨床のコツ」がちりばめられた秘密の箱のようなものです。ねじ子先生によれば「まずポイントをおさえて,目の前にいる患者さんの脳と神経の状態を“ざっと”観察できるようになりましょう」ということです。この「ざっと」というところがぐっときますねえ。読者のみなさんは,どんなところにぐっとくるでしょうか? ぜひぜひご一読を!

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