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ねじ子の ぐっとくる体のみかた

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頭から足の先まで、体全体をみるために必要なテクニックをねじ子先生が徹底解説。聴診器の使い方や打診の指の動きなど、くわしいイラストと「ぐっとくる」コメントで、楽しみながらマスターできる。フィジカルアセスメントに強くなりたいナース、実習・臨床研修にむかう医学生、体をみるコメディカルなど、医療従事者必読!
森皆 ねじ子
発行 2013年08月判型:A5頁:136
ISBN 978-4-260-01771-8
定価 1,760円 (本体1,600円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 みなさんこんにちは。森皆ねじ子です。今回の本は「体のみかた」です。患者さんの身体を見る方法です。太古の昔から続く、医療の基本とも言えます。医者のおまんまの種です。

 でも、体を「見る」ことは、誰にでもできます。毎日子供を注意深く見ているお母さんは、どんな医者よりも素早く正確に、子供の異変を見抜くことができます。自分の病気をよく勉強して自己管理なさっている患者さんは、医者よりもずっと敏感に自分の体の変化に気が付きます。では、より詳しく「見る」ためにはどうしたらいいのでしょうか? 漫然と「見る」だけでは情報は増えません。ポイントをおさえて「観察」する必要があるのです。

 かの有名な名探偵シャーロック・ホームズは、『ボヘミアの醜聞』の中でワトソンとこんな会話をしています。

「君は見ているだけで、観察はしてないということさ。この違いは明らかなんだ。例えば君は、玄関からこの部屋への階段をしょっちゅう見ているだろう?」
「何度も見ているな」
「どのくらい?」
「そうだな、何百回と見てるよ」
「では、階段は何段あるかな?」
「何段かだって?知らないな」
「それだよ。君は観察をしていないんだ。それでも、見てはいる。僕が言いたいのはそこさ。いいか、僕は階段が17段あることを知っている。僕は見た上で、観察もしているからさ。」
(ねじ子超訳)

 ホームズまではいかなくても、体を「観察」することは十分可能です。目と耳と手と体があれば、実は誰にだって可能なんです。医者じゃなくても、医療従事者じゃなくても、ポイントさえ押さえれば一般の方にだってできます。大切なのはポイントをしぼることと、ピントを合わせて見ることなのです。

 この本が、その「ポイント」をわかりやすくお伝えする一手段になることを願っています。

 森皆ねじ子

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はじめに
この本の取り扱い説明書
診察ってなんじゃらほい?

体のみかた
 体のみかた
 視診
 聴診
 打診
 触診

顔面のみかた
 顔のみかた
 目、眼のみかた
 口のみかた
 コラム 瞳孔が開くとなぜ「死んだこと」になる?

頸〈くび〉のみかた
 頸部のみかた
 甲状腺のみかた
 首のリンパ節のみかた
 頸動脈と頸静脈のみかた
 項部硬直

胸のみかた
 胸の表面
 胸の打診
 胸の触診
 胸の聴診
 心臓の音
 肺(呼吸)の音
 乳のみかた

腹のみかた
 腹のみかた
 腹部の視診
 腹部の聴診
 腹部の触診
 肝臓のみかた
 腎臓のみかた
 虫垂炎
 直腸診
 手足のみかた

あとがき
参考文献
索引

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診察が醸し出す「匠の技」を探求したくなる一冊
書評者: 山中 克郎 (藤田保衛大教授・救急総合内科)
 名探偵シャーロック・ホームズの推理と医師による診断の類似性からこの本の前書きは始まる。古くから,患者が語る病歴と身体診察だけで90%の診断ができるといわれる。医師に必要なことは,(1)幅広く奥深い医学知識,(2)診察時の鋭い観察力,(3)病名を推理する力なのだ。

 発熱のために来院した中高年の女性を診察したとき,「先生は聴診器を使うのですね。わたくし5年間,高血圧のために近くの病院に通院していますが,初めて聴診してもらいました」と言われビックリしたことがある。きっと忙しい病院なのだろう。それとも「萌え聴診器」……医者はここにいますという案内板として聴診器はもてはやされるだけになってしまったのか。疾患の見逃しで訴えられては困るからという防衛反応からか,最近は検査が大流行である。それがいけないと言っているのではない。しかし,患者の訴えに耳を傾け静かに聴診器を当てて,心雑音の性状から「大動脈弁狭窄症ですね」とつぶやくほうが,医師の技量を示す豊かな物語に満ちている。

 一般的な診察法はオスキー(客観的臨床能力試験)で習うが,これはお作法である。忙しい外来で頭のてっぺんから足先までゆっくりと診察する時間はない。身体診察の教科書はたくさんあるが,重要点がわかりにくい。医学生や初期研修医は,本書を見て大切なポイントをまず学んで欲しい。ねじ子先生による診察での細かな注意点が,かわいいイラスト付きで書かれているので楽しみながら学習ができる。

 もう一度基本的な身体所見を勉強しようと考えているベテラン医師にもお薦めである。何となくやってきたルーチンの診察に対する改善のアイデアが随所にある。打診では指をしっかりと胸壁に当て,スナップを利かせてDIP関節をたたくなどの診察技法が示されている。面倒になりスキップしがちな神経学的診察も臨床で必須のエッセンスがわかりやすく図示されているのが嬉しい。

 視診,打診,触診という単純な作業だけで,診察は温かみのある「診療の美」へと姿を変える。診察とは,まさに種も仕掛けもない魔法のような,伝統の職人技なのだ。診察前には予想もしなかった「診療の美」が華麗に立ち現れるのだ。感動を呼ばないわけがない。

 お看取りという,教科書にはあまり書かれていない,荘厳な臨終に立ち会うときの医師としての心構えも記載されている。もっと詳しく身体診察を学びたいとのニーズもあるかと思うが,そのときはベイツやマクギーの教科書を熟読すればよい。こんな素晴らしい診察の本に出会ったらきっと診察をしたくなる。診察が醸し出す「匠の技」をますます探求したくなる。

(この書評は、ねじ子シリーズの「体のみかた」と「脳と神経のみかた」の2冊について書かれたものです)


単に見方を教えるだけでなく,どのように対処すべきかも描き出す (雑誌『看護教育』より)
書評者: 若村 智子 (京都大学大学院医学研究科教授)
 「五感を研ぎ澄ませ!!」がキャッチフレーズのこの本。看護師をしていた大学院生が,病棟勤務で新人のときに森皆ねじ子さんのシリーズを愛読していたという話をたまたま聞き,どのような内容なのだろうという思いで,この本を手に取りました。

◆相手に正しく伝えるという本質を追求

 この本は,マニュアル本のようにフィジカルイグザミネーションの方法を記しているのではありません。マニュアル本の多くは,「その方法」を説明していますが,この本には「その方法の流れ」があります。相手にわかる(伝わる)イラストの描き方までも指南されており,読み手(若き学徒)の立場をよく理解して書いてくださっています。さらに,心臓の雑音や呼吸音は,なかなかポイントが伝えにくく,「経験すればわかるようになるから」とよく言ってしまう項目なのですが,このようなイラスト(グラフなど)で耳に聞こえる音も表現してあれば,抽象度が高まり,理解できる部分が増えます。あくまでも相手に正しい情報が伝わればよい(伝わらなければならない)という本質がきちんと押さえられているわけです。

 学生に「肺は肩のどこのあたりまでありますか」と質問すると,多くが「肺尖部は鎖骨あたりまでです」と答えます。そこで,「もしそれが正しいなら,鎖骨から上の部分には何がありますか」とさらに問うと,答えに窮します。これは,知識が知識として身についていないことを示す笑い話のようなものです。この本を参考にすれば,みて,きいて,さわって,自分の体に置き換えて身体の見方を学べるでしょう。言い換えると,この本は,解剖学での肺と自分の体にある肺との乖離を埋めることの手助けをしてくれるのです。さらに,解剖学書とは違い,その用語の歴史や関連する事項まで,内容はバラエティに富んでおり,何気ない表現のなかに著者の造詣の深さを感じます。

◆五感で患者さんの不安な気持ちをキャッチする

 さらに,単に見方を教えているだけでなく,患者さんの不安な気持ちを具体的な言葉として表現し,どのように対処すべきかを細やかに描き出しています。著者の優しさが随所に伝わり,看護学生や新人看護師は,単に処置の仕方や見方をこの本から学ぶだけでなく,小さい文字にもしっかり目をやり,心で読んでほしいと思いました。

 看護学生の副読本にもぜひおすすめと言いたいところですが,言葉づかいが少し気になりました。もっとも,若い人には,このようなアプローチが,とっつきやすいのかもしれないので,常識をふまえての行動ができる学生ならば,心配はありません。

(『看護教育』2013年12月号掲載)

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