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SHDインターベンション コンプリートテキスト

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本書は、ハート・チーム、ハイブリッド治療室など環境的な整備、疾患を理解するための解剖・病態生理・画像診断など基礎知識を踏まえたうえで、卵円孔開存、心房/心室中隔欠損などの先天性心疾患の閉鎖療法、経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI/TAVR)、僧帽弁狭窄症/僧帽弁閉鎖不全症のカテーテル治療について詳しく解説。臨床応用が進む欧米における最新、最高のテクニックがこの1冊につまっている。
編集 ジョン D. キャロル / ジョン G. ウェブ
監訳 ストラクチャークラブ・ジャパン
発行 2013年07月判型:B5頁:448
ISBN 978-4-260-01789-3
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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日本語版の序

日本語版の序
 心臓カテーテル治療に携わる循環器医は,約30年もの間,冠動脈疾患に対する治療を中心に行ってきた。A. Grüntzigらが1977年に臨床応用したバルーン血管形成術に始まり,その合併症として問題になった急性冠閉塞を打破するために開発されたのが,ベアメタルステント(BMS)である。BMSは,簡便かつ安全に手技が行えることで,急速に世界中に広まった。しかし,内皮平滑筋細胞の増殖によるステント再狭窄という新たな問題が出現したため,それを解決すべく近年の薬剤溶出性ステント(DES)時代へと突入した。DESの開発により,安定した臨床成績が得られることで,冠動脈疾患に対するカテーテル治療は,まさに成熟期に入ったといえる。一方,心臓カテーテルの分野に限らず,重症心不全治療においても,現在,CRT(心臓再同期療法)や植え込み型VAD(心室補助装置)などのデバイス治療が盛んに行われている。冠動脈疾患以外の心疾患をいろいろな視点から観察・診断したうえで,的確な治療介入を行い,少しでも症状や長期予後の改善を目指そうとしたグローバルな循環器治療に目が向けられている。そのようなデバイス治療の進歩により,カテーテル治療も大きく時代が変遷しようとしている。
 今まで外科的治療が主にゴールドスタンダードであったstructural heart disease(SHD)に対して,手術が困難な高齢者や複数の臓器に合併疾患を多く有する症例においても,より侵襲が少なくかつ安全に治療効果が期待できるSHDインターベンションが注目されている。
 このような風潮の中,SHDインターベンションに特に興味をもち,同じ向上心をもった有志が集まってできた組織がStructure Club Japan(SCJ)である。岩手医科大学循環器内科・森野禎浩教授を代表世話人として,SHDインターベンションを今まさに学んでいる海外留学中の先生方,それらの知識を学んだ後に帰国されたスペシャリストの方々はもちろん,この治療の発展に強く期待し取り組んでいきたいという熱い思いをもつも今まで情報交換の場がなく困っていた有志が集まった組織である。SCJは会議室での情報交換だけでなく,便利なSNS(social networking service)を上手に活用し,より多くの先生方の意見交換を行っている。
 SNSによる情報交換を通じて,SHDインターベンションの適応,手技・方法,デバイスの特徴などに関して,多くの医師が知識の共有化を図るためには,テキストが必要であろうという声があがった。ならば,このSCJのメンバーを執筆者として作成しようということで推し進めてきた計画が,第1弾となる書籍『SHDインターベンション ハンドブック』である。この書籍では,すでにSHDインターベンションに精通し,手技・技術を持ち合わせた経験豊かなSCJメンバー(古田晃先生,原英彦先生,有田武史先生ら)をはじめ,日本の高名な先生方に執筆をお願いしている。
 一方,諸外国において教育的かつ実用的であることが評価され,多くの術者に愛読されている成書『Structural Heart Disease Interventions』(Lippincott Williams & Wilkins刊)がある。わが国の循環器医の中にも,基礎知識の向上のために購入された方も少なくないと思われる。しかし,約420頁のハードカバーからなる成書を原書で熟読するには,激務の日本の臨床医にとってハードルが高い。そこで,今回,第2弾として,SCJメンバー有志によってこの優れた成書の翻訳を進めることとなった。多くの循環器内科医,心臓外科医,治療に関わるスタッフに興味をもっていただきたい。そして,本書がわが国におけるこの分野の発展に大きく寄与することを心より期待している。
 最後に,今回の企画に賛同し,多忙な臨床業務の中,翻訳・執筆して下さった先生方に,この場をお借りして感謝を申し上げたい。また,歴史の浅いSCJのメンバーの意見を取り入れ,迅速に出版の協力をしてくださった大野智志さんをはじめとする医学書院の皆さんに感謝申し上げたい。
 本年(2013年)は,いよいよ大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)の臨床承認が見込まれ,革新的な幕開けが期待される年である。そのような緊張と期待が高まる中,本書の実用性や臨床的意義が一躍脚光を浴びることとなれば幸いである。

 2013年6月
 訳者代表 三宅省吾,榊原 守



 structural heart disease:SHD(弁膜症・先天性心疾患などの心臓の構造に関連した疾患)に対するカテーテル治療は,従来,外科的治療,あるいは外科的治療が困難で姑息的に内科的治療を行っていた疾患に対して,当初は少数の介入的治療から始まった。しかし,この10年の間で多くの新しいアプローチが研究されたことにより,目覚ましい発展を遂げ,従来の冠動脈疾患へのアプローチとは異なる革新的な治療へと成長した。そのカテーテル治療の目的は,臨床的な症状の出現を予防するものでもあり,症状の軽減やQOLの向上のために施行するものでもある。
 この分野の歴史はまだ浅いが,高いレベルの研究活動が盛んに行われており,冠動脈疾患,非冠動脈疾患(末梢血管,腎動脈,頸動脈疾患など)に続く,循環器カテーテル治療における“第三のうねり”の到来といっても過言ではない。SHDに対するカテーテル治療は,他のカテーテル治療に比べ知識,技術,臨床結果,関連するテクニックの点で特殊な部分も多く存在するが,すでに多くの論文が発表され,すでに治療の有用性・実用性が確立しつつある。
 新しいカテーテル治療を首尾よく実施するためには,系統だった実用的な成書の準備が必要である。現在,実用性のある多くのデバイスがヨーロッパでは承認され,米国でもその多くが承認済または承認に近づいている。また,多くの臨床医がSHDカテーテル治療のプログラムを立ち上げており,世界中で活躍する彼らはタイムリーな論文をまとめ,最新の情報を提供している。本書は,成人におけるSHDのカテーテル治療に興味をもつ循環器内科医,心臓外科医,また治療に関わるスタッフのための成書であり,経皮的カテーテル治療を実用的かつわかりすく紹介し,さらに臨床に直結した内容をコンパクトにまとめた1冊である。
 各章は,世界中のエキスパートの医師たちが多くの時間を執筆に費やし,この分野の発展のためにさまざまな責務を負いながら書き上げてくれている。編者として,皆の功績と尽力に,心より感謝する。
 本書は,下記5つのセクションで構成されている。

 I:SHDインターベンションの基礎知識
 II:SHDインターベンションに必要なスキル
 III:成人における先天性/後天性心疾患の閉鎖療法
 IV:弁疾患へのカテーテル治療
 V:その他の治療

 また,本書の特徴として,実際の臨床で必要な情報を取り上げ,教育的価値を高めるようグラフィックをうまく活用している。心臓解剖の3Dグラフィックスはコロラド大学の3D研究室のAdam Hansgen医師によって作り上げられた特殊なイメージである。さまざまなSHDの形態を3次元のイメージで理解するためには有用であろう。

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Section 1 SHDインターベンションの基礎知識
 1章 SHDインターベンション治療プログラムの導入に際して
 2章 SHDインターベンションに必要な施設(カテラボとハイブリッド手術室)
 3章 インターベンション治療医のための心臓弁の解剖学
 4章 インターベンション治療医のための心腔内の解剖学
 5章 SHDにおける心臓CT/MRIによる術前評価と適応
 6章 心エコーによる患者評価と術中ガイド

Section 2 SHDインターベンションに必要なスキル
 7章 心腔内心エコー
 8章 カテーテルによる血行動態の評価
 9章 経中隔カテーテル法
 10章 血管アクセスと止血法

Section 3 成人における先天性/後天性心疾患の閉鎖療法
 11章 卵円孔開存のカテーテル閉鎖
 12章 心房中隔欠損症の閉鎖療法
 13章 成人における心室中隔欠損の閉鎖療法
 14章 冠動脈瘻,肺動静脈奇形,動脈管開存症の閉鎖術
 15章 パラバルブ・リーク(弁周囲逆流)閉鎖療法
 16章 左心耳閉鎖療法

Section 4 弁疾患へのカテーテル治療
 17章 バルーン大動脈弁形成術:基本テクニックと臨床的役割
 18章 SAPIEN大動脈弁植込み術
 19章 CoreValve大動脈弁植込み術
 20章 経カテーテル大動脈弁植込み術の臨床成績
 21章 新しい経カテーテル大動脈弁植込み術
 22章 経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)
 23章 経皮的僧帽弁形成術:edge-to-edgeアプローチ
 24章 僧帽弁形成術/置換術の実験的なアプローチ
 25章 成人における肺動脈弁植込み術

Section 5 その他の治療
 26章 大動脈縮窄症の経皮的治療
 27章 閉塞性肥大型心筋症に対する中隔アブレーション

索引

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SHDインターベンションのコンテンポラリーテキスト
書評者: 光藤 和明 (倉敷中央病院副院長/心臓病センター長)
 SHD(structural heart disease)とは栄養血管である冠動脈や電気的活動や心筋の動きではなく,心臓の機械的な構造的異常が病態の原因となっている疾患を一括包含して称するようである。先天性心疾患から,弁膜症,心筋症など多くの疾患が含まれるが,かつては治療のためには外科的手術が必要であった領域である。

 SHDインターベンションは,カテーテルによるSHD治療のことを意味し,手術をしなくても治療ができるようにしたことで大きなインパクトを与えた。イノウエバルーンによる僧帽弁裂開術(PTMC)がその先駆けといえる。複数の病態での構造的インターベンション治療が可能になったために,SHDという言葉が脚光を浴びることになった。その後,さまざまな分野でデバイスや技術が開発され発展して一冊の教科書を形づくるほどになったことは感慨深い。

 このテキストは,手技とそれを裏打ちする解剖生理学に関しての広範囲の現在的なかつ極めて有用な唯一のテキストといえる。記述は極めて丁寧で実際的であり,治療にあたる医師から技師,看護師などのスタッフは必読ともいえる内容である。さらに訳文は正確平易で,写真や図版も美しくわかりやすいので,研修医や専門外の医療スタッフあるいは実地医家がSHDインターベンションの概念を大まかに認識するのにも有用であろう。

 ただ原著にはない「コンプリートテキスト」と呼ぶにはSHDインターベンションそのものがいまだ発展途上で,病態の守備範囲,治療概念,手技技術などに流動的な部分も多々あり,若干の無理がある。コンプリートとするためにはSHDインターベンションの標準化への努力とそのプロセスを含んだ,第2版,第3版の出版されることを将来に期待するところが大であろう。

 また,SHDインターベンションは医師も内科系インターベンション医,心臓血管外科医,心エコー専門医,麻酔科医など各分野の専門家,手術室およびカテラボ看護師,放射線技師,臨床検査技師,臨床工学技士など多くの職種によるチームが一体となって治療にあたらなければならない。こうした幅広い人たちが同じ知識と理解を共有することは必須であるが,必ずしも容易なことではない。

 日本では2013年10月1日よりTAVIの保険償還が承認され,今まさに新しいSHDインターベンションが始まろうとしている。このタイミングに合わせたように本書の日本語訳が出版されたことはSHDインターベンションに携わるチーム全体における,知識と理解の共有のために果たす役割は多大でありその意義は極めて深い。

 最後に,訳者が現在および将来の日本のインターベンションを担う若い世代の医師たちであることも大変意義深いものがあると考えられる。
このテキストを持つ循環器医は幸せである
書評者: 新井 英和 (鹿屋ハートセンター院長)
 1977年にGrüntzigによって始められた冠動脈インターベンションは,彼の情熱的な活動によって一気に世界に普及し循環器診療を一変させた。1980年代初めから冠動脈インターベンションに携わってきた私は,幸せであったとしみじみと感じる昨今である。バルーンやワイヤーの進歩,アテレクトミーデバイスの開発,ステントや薬剤溶出性ステントの登場,また血管内エコー(IVUS)や光干渉断層法(OCT)の登場によって,日々改善される治療成績の目撃者として現場に立てたからである。

 しかし,その冠動脈インターベンションの成熟に至る過程は平坦ではなかったとも思える。冠動脈CTによるインターベンション前の評価もなくIVUSもない状況で,手さぐりの治療を行ってきたからである。それ以前に冠動脈インターベンションを目的として設計されていないカテラボやアンギオ装置は,必ずしも冠動脈インターベンションにふさわしいものではなかったからである。

 本書『SHDインターベンション コンプリートテキスト』を一読しての感想は,「このようなテキストの存在する時代にインターベンションを始めたかった」というものである。どのようなカテラボやハイブリッド手術室を構築すべきか,SHDインターベンション治療医が知っておくべき解剖や,術前に行っておくべき検査(エコー・CT・MRI),カテラボに備えておくべきデバイス,血管アクセスと止血など,SHDインターベンションが成熟した暁には常識となってしまい,テキストには記載されないかもしれない機微が満載である。5年後,10年後により進歩したSHDインターベンションに携わる医師も,本書に記載された土台なしにインターベンションに携われないだろうと想像する。賞味期限の長いテキストになることを確信する。

 当然のことながら,冠動脈疾患は循環器病の一部にすぎない。循環器病学の土台の上に成り立っていると考えてきた冠動脈インターベンションの基盤は,循環器病総体ではなかったのである。真に循環器病の広範な知識と過去のインターベンションで構築されたテクニックを,すべて駆使してなされるSHDインターベンションこそがKing of Interventionと呼ぶにふさわしい。そのKing of Interventionに欠かせない道筋を決定づける本書を,すべてのインターベンション医にとどまらず,多くの循環器医に勧めたいと思う。またこの分野にかかわるコメディカル,診断機器メーカー,病院設計者にとっても必携のテキストとなるに違いない。

 暗闇の中で始まった心血管インターベンションが,本書を灯台としてより高みに完成されることを期待したい。本書で学び実践するインターベンション医は幸せである。

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