電子カルテ時代のPOS
患者指向の連携医療を推進するために
POS方式の電子カルテへの導入は医療者の医療姿勢を一変させる
もっと見る
電子カルテによるPOS実践は、多職種がとらえた患者の多面的な問題(プロブレム)の共有を容易にし、病気をもった生活者としての患者を浮かび上がらせる。医療者の医療姿勢を一変させるPOS実践を電子カルテで行うには、何に気をつけ、どうすれば良いかを具体例をあげて解説。名著『POS』(日野原重明著)の赤本から39年。POSの今日的意義を明確に提示した第二の赤本。医師・看護師、コメディカルスタッフ必読書。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
監修の言葉
本書は,私が1973年10月に医学書院から発刊したPOSに関する日本最初の書籍,「POS—医療と医学教育の革新のための新しいシステム」の実質的な改訂版ともいうべきものである。1973年に出版した「POS」はB5判144ページの深紅の表紙に「POS」と書かれていたため,通称「赤本」ともよばれ,発刊以来2010年までに30刷りを重ね,医学書院の出版物のベストセラーの一つとされ,現在も売れ続けているものである。
米国の医師,Lawrence. L. Weedは1969年11月にMedical Records, Medical Education and Patient Careと題した本を出版し,患者の持つ健康上の問題の本体を明確にするための手法を解説した。これは医師(病院勤務医),開業医や看護師のために書かれたものである。コンピュータが今のように日常的に使われていない43年前にDr. Weedにより考案された診療記録は,コンピュータに打ち込まれて,チーム医療に関わるすべての職種に活用されるべきものと考えられた。このシステムを医療界に広めたDr. J.W. Hurstエモリー大学医学部教授は,これを全米の医療職や医療関係の学生にも広げた。彼がH. Kenneth Walker助教授と共に編集した“The Problem Oriented System”と題したテキストは,私のPOSの著書の台本となったものである。
Weed教授の最初のPOMR(Problem Oriented Medical System)の本にはこう書かれている。「在来の診療記録は,雑然と担当医によって書かれていたが,これを科学的原稿(Scientific Manuscript)として,簡明かつ正確に,整理して書けば,これはいつでもコンピュータに出力され,医師だけでなく,看護師,その他のコメディカルスタッフもこれを共用して,患者中心の総合的医療がなされる」。またこの記録は患者の入院中の主治医だけでなく,紹介される開業医にも活用される「患者のための診療記録」となるのである。
渡辺 直(すなお)博士は,私と一緒に長年聖路加国際病院で働き,現在,病院の教育研修部長として,医師,看護師,その他コメディカルの部門のスタッフの教育・指導に携わっている。その渡辺博士が,これら医療職のために,極めて理解しやすい文体で執筆されたのが,本書である。
第34回日本POS医療学会・日野原百寿記念大会,大会長は,福井次矢聖路加国際病院長がつとめられるが,その開会式直後に渡辺博士による発題講演が行われる予定である。
極めて厳しいスケジュールの中,渡辺博士のこの著書が,私の百寿記念大会時に頒布されるよう株式会社医学書院の専務取締役・編集長である七尾清氏には特別な配慮をいただき,出版をこの日に間に合わせてくれた。そのご厚意に対し,満腔の感謝の意を表したい。
日野原 重明
聖路加国際病理事長
日本POS医療学会会頭
本書は,私が1973年10月に医学書院から発刊したPOSに関する日本最初の書籍,「POS—医療と医学教育の革新のための新しいシステム」の実質的な改訂版ともいうべきものである。1973年に出版した「POS」はB5判144ページの深紅の表紙に「POS」と書かれていたため,通称「赤本」ともよばれ,発刊以来2010年までに30刷りを重ね,医学書院の出版物のベストセラーの一つとされ,現在も売れ続けているものである。
米国の医師,Lawrence. L. Weedは1969年11月にMedical Records, Medical Education and Patient Careと題した本を出版し,患者の持つ健康上の問題の本体を明確にするための手法を解説した。これは医師(病院勤務医),開業医や看護師のために書かれたものである。コンピュータが今のように日常的に使われていない43年前にDr. Weedにより考案された診療記録は,コンピュータに打ち込まれて,チーム医療に関わるすべての職種に活用されるべきものと考えられた。このシステムを医療界に広めたDr. J.W. Hurstエモリー大学医学部教授は,これを全米の医療職や医療関係の学生にも広げた。彼がH. Kenneth Walker助教授と共に編集した“The Problem Oriented System”と題したテキストは,私のPOSの著書の台本となったものである。
Weed教授の最初のPOMR(Problem Oriented Medical System)の本にはこう書かれている。「在来の診療記録は,雑然と担当医によって書かれていたが,これを科学的原稿(Scientific Manuscript)として,簡明かつ正確に,整理して書けば,これはいつでもコンピュータに出力され,医師だけでなく,看護師,その他のコメディカルスタッフもこれを共用して,患者中心の総合的医療がなされる」。またこの記録は患者の入院中の主治医だけでなく,紹介される開業医にも活用される「患者のための診療記録」となるのである。
渡辺 直(すなお)博士は,私と一緒に長年聖路加国際病院で働き,現在,病院の教育研修部長として,医師,看護師,その他コメディカルの部門のスタッフの教育・指導に携わっている。その渡辺博士が,これら医療職のために,極めて理解しやすい文体で執筆されたのが,本書である。
第34回日本POS医療学会・日野原百寿記念大会,大会長は,福井次矢聖路加国際病院長がつとめられるが,その開会式直後に渡辺博士による発題講演が行われる予定である。
極めて厳しいスケジュールの中,渡辺博士のこの著書が,私の百寿記念大会時に頒布されるよう株式会社医学書院の専務取締役・編集長である七尾清氏には特別な配慮をいただき,出版をこの日に間に合わせてくれた。そのご厚意に対し,満腔の感謝の意を表したい。
日野原 重明
聖路加国際病理事長
日本POS医療学会会頭
目次
開く
監修の言葉
序章 はじめに-なぜ今,POSか?
1.POSのPは患者にとってのproblemである
2.POSによる医療の可視化はチーム医療に寄与する
3.POSによる医療の可視化は臨床教育に寄与する
4.POSによる医療の可視化は患者側への情報提供にも有用
5.POSを通じた医療記載の標準化
6.電子カルテにおけるPOSの適用
第1章 POSの沿革
1.Weedから始まったPOS
2.わが国におけるPOSの導入
第2章 POSの意義
1.従来型のカルテ-SOMR
2.POMRによるフレーム設定
3.POMRの臨床教育上の利点
第3章 POSの構造
1.基礎データ
2.問題リスト
3.初期計画
4.経過記録
5.退院時要約
6.監査
第4章 基礎データ
1.患者識別情報
2.生活像
3.現病歴
4.既往歴
5.家族歴
6.診察所見
7.検査データ
第5章 問題リスト
1.プロブレムのリストアップと変遷
2.activeなプロブレムとinactiveなプロブレム
3.一時的なプロブレム
4.“仮の”プロブレム
5.病名とならないが大切なpara-problemの存在
6.プロブレム列からショートサマリーへ
-時間軸を考慮した病歴列への包摂化の取組み
第6章 初期計画と経過記録
1.初期計画
2.経過記録
3.説明と同意の記録-Informed consent template(ICテンプレート)の設置
第7章 退院時要約
1.退院時要約記載の姿勢
2.退院時要約の構造および構造への電子的埋め込み
3.退院時要約の質
4.退院時要約の意義
5.中間的サマリー
第8章 外来におけるPOS
1.外来診療におけるプロブレムリスト
2.外来診療におけるPOMR;中間的サマリーの活用
3.診療情報提供書
第9章 監査
1.監査の意義
2.サマリーにおける監査
第10章 多職種によるPOS,クリニカルパスとPOS
1.多職種によるPOS
2.クリニカルパスとPOS
あとがきに代えて
序章 はじめに-なぜ今,POSか?
1.POSのPは患者にとってのproblemである
2.POSによる医療の可視化はチーム医療に寄与する
3.POSによる医療の可視化は臨床教育に寄与する
4.POSによる医療の可視化は患者側への情報提供にも有用
5.POSを通じた医療記載の標準化
6.電子カルテにおけるPOSの適用
第1章 POSの沿革
1.Weedから始まったPOS
2.わが国におけるPOSの導入
第2章 POSの意義
1.従来型のカルテ-SOMR
2.POMRによるフレーム設定
3.POMRの臨床教育上の利点
第3章 POSの構造
1.基礎データ
2.問題リスト
3.初期計画
4.経過記録
5.退院時要約
6.監査
第4章 基礎データ
1.患者識別情報
2.生活像
3.現病歴
4.既往歴
5.家族歴
6.診察所見
7.検査データ
第5章 問題リスト
1.プロブレムのリストアップと変遷
2.activeなプロブレムとinactiveなプロブレム
3.一時的なプロブレム
4.“仮の”プロブレム
5.病名とならないが大切なpara-problemの存在
6.プロブレム列からショートサマリーへ
-時間軸を考慮した病歴列への包摂化の取組み
第6章 初期計画と経過記録
1.初期計画
2.経過記録
3.説明と同意の記録-Informed consent template(ICテンプレート)の設置
第7章 退院時要約
1.退院時要約記載の姿勢
2.退院時要約の構造および構造への電子的埋め込み
3.退院時要約の質
4.退院時要約の意義
5.中間的サマリー
第8章 外来におけるPOS
1.外来診療におけるプロブレムリスト
2.外来診療におけるPOMR;中間的サマリーの活用
3.診療情報提供書
第9章 監査
1.監査の意義
2.サマリーにおける監査
第10章 多職種によるPOS,クリニカルパスとPOS
1.多職種によるPOS
2.クリニカルパスとPOS
あとがきに代えて
書評
開く
すべての医療関係者にとっての必読書
書評者: 岩崎 榮 (NPO法人卒後臨床研修評価機構・専務理事)
日野原重明の革新的著書であり深紅の表紙から“赤本”とも称され,1973年の初版刊行以来今日でもベストセラーの『POS――医療と医学教育の革新のための新しいシステム』の,実質的な改訂版ともいうべき『電子カルテ時代のPOS――患者指向の連携医療を推進するために』が,同著者の監修,渡辺直の執筆により医学書院より出版された。
監修者を師匠と仰ぐ著者は,実に柔らかなタッチで,“ですます調”に終始し,POSの真髄を心ゆくまでに求める。ややもすれば,この種の著書は書式とか技術に偏りがちだが,本書からは診療録,いわゆるカルテの“こころ”が伝わってくる。
患者の診療から得た診療情報は,医療情報の最たるもので,その記録が診療録(カルテ)といわれる。医療情報の情報化(IT化)が進展すると,診療記録を電子化し保存・更新するためのシステムとして,電子カルテシステムが構築された。カルテ記載の標準化が求められるなか,それに応えるものがPOSにおける診療録記載の基本構造である基礎データ,問題リスト,初期計画,経過記録,退院時要約なのである。
著者は,「診療録は単にrecordではなく,“診療録というデータベース”なのであり,診療録記載は電子カルテ時代では,writingではなく,data inputなのである」「あなたは端末に向かい,キーボードを利用して診療録内容をデジタル記載している。それは単純に記載しているのではなく,データベースのアイテムを入力している」のだと語る。実に巧みに,しかも丁寧に易しく,アナログからデジタルの世界へと導いてくれる。
本書は序章「はじめに――なぜ今,POSか?」において,POSのPは患者にとってのproblemであり,POSの根底には重要な医療哲学があり,患者協働参画医療のための重要ツールであると説く。さらに,チーム医療や臨床教育に寄与するとも述べている。続いて,第1章のPOSの沿革からはじまり,次章からはPOSの意義,構造,そして記載のための4つの基本構造を解説する。
第8章では「外来におけるPOS」を加え,入院記録でもみられた事例を交えながら記述され,診療情報提供書にも触れている。第9章の「監査」では,その意義について,医療安全,臨床教育,良質な医療提供の確保にあること,と解説され,さらに,サマリーにおける監査は量的・質的監査に大別されることを示し,その実例による解説が続く。「この質的監査が日常的に,綿密に行われている施設こそ,真に教育的な,医療向上性に指向した,最終的には患者にとって最も有益な情報を提供できる医療機関である」と著者は述べている。
最終の第10章は,「多職種によるPOS,クリニカルパスとPOS」となっていて,その後,著者のあとがきが添えられている。いわゆる「日野原の赤本」では,当時の医学教育の革新を求めたが,いまだその域にない現状の医学教育界に向けての提言とも思われる。
本書は,診療情報管理士をはじめ,医学生や臨床研修医はもちろんのこと,医師,看護師らすべての医療関係者にとって必読の書といえよう。
書評者: 岩崎 榮 (NPO法人卒後臨床研修評価機構・専務理事)
日野原重明の革新的著書であり深紅の表紙から“赤本”とも称され,1973年の初版刊行以来今日でもベストセラーの『POS――医療と医学教育の革新のための新しいシステム』の,実質的な改訂版ともいうべき『電子カルテ時代のPOS――患者指向の連携医療を推進するために』が,同著者の監修,渡辺直の執筆により医学書院より出版された。
監修者を師匠と仰ぐ著者は,実に柔らかなタッチで,“ですます調”に終始し,POSの真髄を心ゆくまでに求める。ややもすれば,この種の著書は書式とか技術に偏りがちだが,本書からは診療録,いわゆるカルテの“こころ”が伝わってくる。
患者の診療から得た診療情報は,医療情報の最たるもので,その記録が診療録(カルテ)といわれる。医療情報の情報化(IT化)が進展すると,診療記録を電子化し保存・更新するためのシステムとして,電子カルテシステムが構築された。カルテ記載の標準化が求められるなか,それに応えるものがPOSにおける診療録記載の基本構造である基礎データ,問題リスト,初期計画,経過記録,退院時要約なのである。
著者は,「診療録は単にrecordではなく,“診療録というデータベース”なのであり,診療録記載は電子カルテ時代では,writingではなく,data inputなのである」「あなたは端末に向かい,キーボードを利用して診療録内容をデジタル記載している。それは単純に記載しているのではなく,データベースのアイテムを入力している」のだと語る。実に巧みに,しかも丁寧に易しく,アナログからデジタルの世界へと導いてくれる。
本書は序章「はじめに――なぜ今,POSか?」において,POSのPは患者にとってのproblemであり,POSの根底には重要な医療哲学があり,患者協働参画医療のための重要ツールであると説く。さらに,チーム医療や臨床教育に寄与するとも述べている。続いて,第1章のPOSの沿革からはじまり,次章からはPOSの意義,構造,そして記載のための4つの基本構造を解説する。
第8章では「外来におけるPOS」を加え,入院記録でもみられた事例を交えながら記述され,診療情報提供書にも触れている。第9章の「監査」では,その意義について,医療安全,臨床教育,良質な医療提供の確保にあること,と解説され,さらに,サマリーにおける監査は量的・質的監査に大別されることを示し,その実例による解説が続く。「この質的監査が日常的に,綿密に行われている施設こそ,真に教育的な,医療向上性に指向した,最終的には患者にとって最も有益な情報を提供できる医療機関である」と著者は述べている。
最終の第10章は,「多職種によるPOS,クリニカルパスとPOS」となっていて,その後,著者のあとがきが添えられている。いわゆる「日野原の赤本」では,当時の医学教育の革新を求めたが,いまだその域にない現状の医学教育界に向けての提言とも思われる。
本書は,診療情報管理士をはじめ,医学生や臨床研修医はもちろんのこと,医師,看護師らすべての医療関係者にとって必読の書といえよう。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。