標準脳神経外科学 第13版

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構造的にも機能的にも豊富で奥深い脳神経外科学を学ぶための決定版テキスト。今版も医学生に必要な知識を精選・強化。ポイントをすぐにつかめる重要事項のアンダーライン、縦横無尽に本文を読み込めるクロスリファレンスが知識の定着を実現。医師国家試験出題基準・コアカリキュラム対照表、巻末演習問題も好評収載。何を学んでいるか俯瞰できる構成マップを追加、シェーマもより美しく。35年の歴史を刻む堂々の第13版!
シリーズ 標準医学
監修 児玉 南海雄 / 佐々木 富男
編集 峯浦 一喜 / 新井 一 / 冨永 悌二 / 宮本 享
発行 2014年03月判型:B5頁:506
ISBN 978-4-260-01843-2
定価 7,700円 (本体7,000円+税)
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第13版 序

 2011年3月11日,東日本を激震とともに大津波が襲い,無惨にも多くの尊い生命を奪い,さらに原発事故を引き起こした.現場における医療の実施は困難を極め,そればかりかすべてが地獄絵図であった.
 生活物資の不足が全日本に拡大したが,暴動・略奪らしきことも起きず,特に被災地では雪が降りしきる中,寒さに耐えながら人々が整然と列を作り,順番に食料や水を受け取る姿がテレビで配信された.忍耐強い素晴らしい日本人の一面が世界の人々に感銘を与えたことは,3年を経た今でも記憶に新しく,また誇りにも思う.
 さて,その被災現場では医療材料や薬剤の不足に加え,専門科という医療区分は全く機能せず,現場にあるものだけでとりあえず可能な手当をすることが最優先であった.破壊された環境と医療材料が欠乏している状況下では,基本的な原理原則を施すしかなく,高度ではないが幅の広い医学の基礎知識が如何に重要かを再認識した.
 体調が悪そうな方は見れば誰にもわかる.まず「お加減はいかがですか?」と声をかける.ただでさえ心細い状況がかなり変わる.一瞬にして表情が明るくなる方もいる.近づいて両手で握手をする.こちらの手も冷たいが,相手の手指はもっと冷たい.しかし手と手が触れ合うことは両者の気持ちを温かくする.
 これらのことは医療のほんの導入部分にすぎないが,それだけでも人の気持ちは大きく変わるものである.「看護」の「看」という文字の構築に「手」を入れた先人の知恵に驚嘆し,恥ずかしながら改めてその意味が腑に落ちたという実感があった.
 これらの経験も含め本書の改訂には,脳神経外科学の原理原則に徹するという気持ちで臨んだつもりである.終わってみて忸怩たる思いもあるが,その結果については読者諸氏からの忌憚なきさまざまな意見を戴きながら,今後につなげていきたい.
 脳は,若い時に鍛えに鍛え抜けば,信じられないほど大量の情報処理能力を持つ.それらをもとに思考を積み重ねることにより,これまで誰も知らなかった新事実を発見することも,そして永年人類が悩んできた難問をも解決できる可能性を有する臓器である.
 若い読者諸氏が,本書を通してまず原理原則を徹底的に脳に叩き込み,そのうえに「考える」というさらに高度な鍛錬を辛抱強く続けていけば,未来が少しでも明るくなることへの貢献をなし得るものとおおいに期待している.
 最後に,多忙な日々の中で本書改訂の編集ならびに執筆を担当して下さった諸先生方のご努力に敬意を表するとともに,心からの感謝を申し上げる.また,本書の上梓に向けて,常に真摯な態度で不断の努力を積み重ねてこられた医学書院の関係者諸氏にも深甚なる謝意を表する.

 2014年2月
 監修者 児玉南海雄

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総論
 第1章 緒論
  A 脳神経外科学
  B 医の倫理
 第2章 臨床解剖
  A 頭蓋と頭蓋内腔構造
  B 髄膜
  C 大脳
  D 脳幹・小脳
  E 脳動脈
  F 脳静脈
  G 脳室およびくも膜下腔
  H 脊柱
  I 脊髄
 第3章 神経学的検査法
  A 患者さんの診察にあたって
  B 神経所見のとりかた
  C 脳神経の診かた
  D 大脳の局在機能の診かた
  E 脳幹の局在機能の診かた
  F 小脳の局在機能の診かた
  G 脊髄の局在機能の診かた
 第4章 補助診断法
  A 頭部単純X線撮影
  B コンピュータ断層撮影(CT)
  C MRI(磁気共鳴画像法)
  D 脳血管撮影・デジタル血管撮影
  E 核医学検査
  F 脊椎・脊髄の検査
  G 超音波検査
  H 脳波
  I 誘発電位
  J 腰椎穿刺
 第5章 脳に特異な症候と病態
  A 頭痛
  B 精神症状と認知症
  C けいれん(痙攣)
  D 意識障害
  E 頭蓋内圧亢進
  F 脳ヘルニア
  G 血液脳関門と脳浮腫
  H 脳循環代謝異常

各論
 第6章 脳腫瘍
  A 脳腫瘍とは
  B 脳腫瘍の診断
  C 脳腫瘍の鑑別診断
  D 脳腫瘍の治療
  E 神経上皮性腫瘍(神経膠腫)
  F 髄膜腫
  G 下垂体腺腫
  H 神経鞘腫
  I 頭蓋咽頭腫
  J 胚細胞腫瘍
  K 脊索腫
  L 血管系腫瘍
  M 原発性悪性リンパ腫
  N 転移性脳腫瘍
  O 頭蓋骨腫瘍と鑑別を要する疾患
 第7章 脳血管障害
  A 脳血管障害
  B くも膜下出血
  C 脳動脈瘤
  D 脳動静脈奇形・その他の血管奇形
  E 硬膜動静脈瘻
  F 脳内出血
  G 虚血性脳疾患(脳梗塞・一過性脳虚血発作)
  H もやもや病
  I 血管性認知症
  J 脳血管内治療
 第8章 頭部外傷
  A 頭部外傷の臨床
  B 重症頭部外傷の治療
  C 頭皮の損傷
  D 頭蓋骨損傷
  E 脳の損傷
  F 急性頭蓋内血腫(1):急性硬膜外血腫
  G 急性頭蓋内血腫(2):急性硬膜下血腫
  H 慢性硬膜下血腫
  I 脳神経の損傷
  J 頭部外傷後の感染症
  K 小児頭部外傷の特殊性
  L 頭部外傷による脳血管障害
 第9章 先天奇形
  A 先天奇形とは
  B 神経管閉鎖障害による奇形:二分脊椎
  C 神経管閉鎖障害による奇形:二分頭蓋
  D 大脳の奇形
  E 後頭蓋窩の脳奇形
  F くも膜嚢胞
  G 頭蓋縫合早期癒合症・狭頭症
  H 頭蓋頚椎移行部の奇形
  I 神経皮膚症候群
 第10章 水頭症
  A 水頭症とは
  B 小児の水頭症
  C 胎児水頭症
  D 正常圧水頭症(成人)
  E 硬膜下液体貯留
 第11章 機能的脳神経外科
  A 機能的脳神経外科
  B 頑痛
  C 不随意運動症
  D てんかん
  E 定位脳手術
  F 神経血管減圧術(神経血管減荷術)
 第12章 脊髄・脊椎疾患
  A 頚椎変性疾患(変形性頸椎症・頚椎椎間板ヘルニア)
  B 脊柱靱帯骨化症
  C 腰椎椎間板ヘルニア
  D 腰椎管狭窄症
  E 脊髄腫瘍
  F 脊髄硬膜外膿瘍
  G 脊髄動静脈奇形
  H 脊髄空洞症
  I 脊椎・脊髄の外傷
 第13章 末梢神経の外科
  A 末梢神経障害の診断
  B 末梢神経の外傷
  C 絞扼性末梢神経障害
  D 末梢神経の腫瘍
 第14章 炎症性疾患
  A 中枢神経系感染症とは
  B 化膿性髄膜炎
  C その他の髄膜炎
  D 急性ウイルス脳炎
  E その他のウイルス性脳炎・脳症
  F 脳膿瘍
  G 硬膜下膿瘍
  H 脳寄生虫症
 付録 医学生のための臨床実習の手引き
  1 脳神経外科の臨床実習に対する心構え
  2 手術見学の心構え,準備
  3 病歴のとりかた
  4 インフォームド・コンセント
  5 バイタルサイン
  6 脳神経外科における検査法
  7 症候
  8 脳神経外科領域における救急
  9 術前術後の管理

 演習問題
 演習問題・解答と解説
 医師国家試験出題基準対照表
 医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表

 索引

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