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誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた

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見えかたのメカニズムから理解する目からウロコが落ちること間違いなしの胸部画像診断の入門書がついに登場! 胸部X線写真は、その仕組み、陰影の写り方、見方がわかれば、たった1枚の画像からより多くの情報を取り出すことができる。本書では、「疾患ありきではなく、どうしてその陰影・線が見えるのか?」「反対にどうして見えないのか?」から紐解き解説。医学生、研修医をはじめ、すべての臨床医必読書。読影時必携! お役立ちシート付き。
小林 弘明
発行 2017年10月判型:B5頁:266
ISBN 978-4-260-03008-3
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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 みなさんのなかに「胸部X線写真を一度も見たことがない」という人はいないでしょう.医学生にとっては放射線科の講義でおそらく最初に出会う画像であり,医師にとっても日常診療,救急医療,人間ドックなど,何をしていても出会う画像です.CT全盛期とはいえ,何でもいきなりCTというわけにはいきませんし,繰り返し撮影できるものでもありません.どんな施設においても撮影可能で,簡便で,安価で,被曝もわずかな胸部X線写真は,今なお多くの疾患の診断に役立っているのです.永久に色あせることのない大切な検査なのに,どうも苦手という人が多いことはとても残念です.でもそれは,わからないから苦手なのでしょう.
 さて,神の手を持たない外科医にとって,診断は放射線科医や内科医任せで,手術だけをし,後は病理医任せでは面白くありません.私は長く,胸部X線写真やCTを見て,気管支鏡をして,細胞診を見て,手術をして,切除肺の切り出しをし続けてきました.本書で用いた写真はごく一部を除き,組織像まで含めて私自身が撮影したものです.がん細胞は人の顔と同じように十人十色であり,自分で細胞診を見ていればその顔つきから悪性度が推測できます.陰性の場合にも,命中して陰性なのか,外れて陰性なのかわかります.画像診断との不一致が生じても動じることはありません.術前未確診例は原則として術中穿刺細胞診をその場で見て手術を進めてきました.そうして,各段階でのいろいろな情報をその都度画像へフィードバックしていくことにより画像診断に磨きをかけてきました.
 本書では,こうした経験をもとにまとめあげた「画像の見えかたのメカニズム」から考える読影法を紹介します.疾患ありきではなく,どうしてその陰影・線が見えるのか? 反対にどうして見えないのか? といったところを紐解いて解説します.胸部X線写真の仕組み,陰影の写りかた,その見かたがわかれば,見るべきポイントがわかり,たった1枚の画像からより多くの情報を取り出すことができるようになります.つまり,胸部X線写真は見かた次第で見えるものが変わる宝の山なのです.そして,見えるようになれば読影は間違いなく楽しくなります.
 また,私は1998年の肺癌診断会での読影指導をきっかけに,院内での胸部X線写真読影会や,福井大学の学生実習の受け入れ,大学へ出向いての学生向け読影会などを通して,肺癌を的確に診断・治療してもらえる仲間(若手医師)作りに力を注いできました.本書では,その講演・講義の雰囲気に少しでも近づくように,本文は口語体とし,息抜きとして通常掲載しないような写真も散りばめました.読みやすいようにレイアウトにも配慮してあります.
 それでは,胸部X線写真読影の達人を目指して一緒に宝探しの旅に出かけましょう.

 2017年9月
 小林弘明

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Introduction 読影の達人になるために押さえておきたい図

Lecture 1 胸部X線写真について知ろう
 胸部X線写真の撮影原理
 推奨される撮影条件
 拡大とボケ
 胸部X線写真のさまざまな撮影法
 アナログシステムとデジタルシステム
 Column
  肺野の濃度って!?
  高圧撮影と低圧撮影
  モニターの性能

Lecture 2 胸部CTについて知ろう
 CTの撮影原理
 CT画像のいろいろ
 partial volume effect
 Column
  ヨード造影剤の副作用
  気管支樹模型について(1)

Lecture 3 外科医が教える胸部の解剖
 胸郭・胸膜・肺葉
 気管気管支・肺動静脈
 肺葉・気管支・肺動静脈の命名について
 肺の内側面と肺靱帯
 Column
  胸壁と呼吸運動
  完全分葉と不全分葉
  気管・気管支と軟骨
  外科医から見た肺血管・区域
  大動脈弓と奇静脈弓の役割
  肺靱帯の役割
  外科医から見た肺靱帯
  気管支樹模型について(2)

Lecture 4 実際の胸部X線写真を見てみよう
 読影を始める前に
 辺縁が見える仕組み
 正面像で見えるもの
 正面像で見える縦隔線と肺葉の広がり
 側面像で見えるもの
 胸部X線写真を使った病変部位の推定
 シルエットサイン
 Column
  「正常」と「異常」
  肋骨の数えかた
  合成陰影とは?
  「いわゆる横隔膜」のライン
  「肺葉」と「肺野」
  側面像で左右の横隔膜はどのように区別するか?
  リンゴの問題

Lecture 5 胸膜がつくる線状影を読む
 minor fissureがつくる線状影
 major fissureがつくる線状影
 胸膜陥入
 副葉間裂
 Column
  どれだけ一致すると見える?
  superomedial major fissureとsuperolateral major fissure
  major fissureとの位置関係から病変部位を推定してみよう!

Lecture 6 すりガラス陰影-それは半透明の葉っぱ
 二次小葉と肺胞
 すりガラス陰影
 Column
  Millerの二次小葉とReidの二次小葉
  肺腺癌の臨床に変革をもたらした「野口分類」
  radiologic-pathologic correlation

Lecture 7 肺癌を知ろう,そして見つけよう
 肺癌の組織分類
 典型的な高分化腺癌の画像と病理
 典型的な扁平上皮癌・低分化腺癌の画像と病理
 その他の肺癌
 肺癌に伴う所見・肺癌と鑑別を要する所見
 肺癌TNM病期分類
 Column
  主な肺癌の病理像
  免疫組織化学(immunohistochemistry;IHC)
  訂正腫瘍径
  呼吸器外科医の楽しみ
  胸壁浸潤と外科手術
  比較読影と経過観察

Lecture 8 こんなところを見逃しやすい
 どこに隠れているか探してみよう
 「物陰」と「暗がり」
 その他の障害物
 症例の解説
 Column
  どうしたら見える?
  student tumor

Lecture 9 無気肺を見つける
 無気肺の原因
 無気肺の胸部X線写真所見
 Column
  無気肺を見つける意義
  右上中葉無気肺は?
  肺葉性無気肺と肺葉切除術後の写真はうりふたつ

Lecture 10 気胸・ブラを極める
 気胸の原因
 気胸の胸部X線写真所見
 気胸・ブラに関連した特殊な状態
 Column
  気胸と仰臥位撮影の落とし穴
  気道異物と側臥位撮影
  気管支断端瘻と胸壁開窓術

Lecture 11 胸水にもいろいろある
 胸水の原因
 胸水の胸部X線写真所見
 特殊な状態の胸水
 Column
  被包化胸水の治療
  肺切除術後の胸腔について
  胸水細胞診

Lecture 12 縦隔・心陰影に隠れて何が見える?
 縦隔陰影と区分法
 主な縦隔腫瘤性病変
 縦隔・肺門リンパ節腫大
 その他
 Column
  縦隔腫瘍生検

Lecture 13 こんなものも見える
 肺結節と紛らわしい正常構造や精査不要な陰影
 精査・治療を要する異常陰影
 さまざまな石灰化陰影
 さらにこんなものまで見える
 Column
  手術直後の胸部X線写真のチェックポイント

Lecture 14 普段の胸部X線写真活用法
 呼吸器感染症のスクリーニング
 びまん性肺疾患の経過観察
 心不全の経過観察
 診断に役立つ検査データ
 Column
  肺胞性陰影と間質性陰影
  気腫合併肺線維症

Lecture 15 達人への第一歩-1枚の写真をじっくり読影しよう
 胸部X線写真の読影手順
 さいごに

あとがき
索引

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「見えかたのメカニズム」から考える必読の書
書評者: 芦澤 和人 (長崎大大学院教授・臨床腫瘍学)
 小林弘明先生のご執筆による胸部画像診断の入門書『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』が刊行された。胸部単純X線写真に関する数多くの教科書が存在するが,本書はこれまでの他書とは異なる視点で記載されている。すなわち「画像の見えかたのメカニズム」から考える読影法が紹介されている。どうしてその陰影・線が見えるのか,反対に見えないかを解説しながら,陰影・線の写り方,見かたを習得し,1枚の画像からより多くの情報を取り出すことを目標としている。

 その目標を達成するために,本書には多くの工夫がなされている。まず,Introductionのところで,本書で使用されている最低限押さえておきたい画像ないしシェーマが紹介されており,特に重要なものは付録の「読影時必携!お役立ちシート」に掲載され,実際の画像を読影する際に有用である。CTの横断像やMPR画像が適切に配置されており,読者が胸部単純X線写真上の「陰影や線の成り立ちを考える」ことを容易にしている。また,さまざまな知識の習得と整理を目的として,たくさんのコラムが散りばめられている。本書には極めて多数の手術写真や病理標本,細胞診,組織像が掲載されているが,これらは,ほぼ全てが著者によって撮影されたものである。呼吸器外科医でありながら,画像診断から病理診断までを一人で手がけてこられた著者だからこそなし得た偉業であり,著者の豊富な知識と経験に基づいた完成度の高い専門書である。

 本書は15章で構成されているが,いずれも興味あるタイトルが付けられている。胸部単純X線写真や胸部CTの撮像原理などの基礎知識に始まり,正常画像解剖や正常変異,線状影やすりガラス影,無気肺などの異常影について豊富なシェーマを交えてわかりやすく解説されている。肺癌では,読影のピットフォールや新しいTNM分類にまで言及されており,さらに胸膜や縦隔病変,実臨床での胸部単純X線写真の活用法が紹介されている。かなりのボリュームで力作であるが,通読して頂ければ,著者の意図する到達目標に達することが可能である。

 胸部領域の画像診断においてもCTは不可欠な検査法となったが,安価で簡便な胸部X線撮影が第一選択の検査法であり,その重要性は今後も変わらないと思われる。胸部単純X線写真の読影能力を高めるためには,CT所見を単純X線写真にフィードバックする作業が極めて重要である。胸部単純X線写真の読影に当たる若手の医師だけでなく,呼吸器疾患の診療に携わる専門医も含めて,CT画像が多く提示された本書を必読されることを期待する。
宝探しの旅に出かけよう
書評者: 亀井 三博 (亀井内科・呼吸器科・院長)
 胸部単純X線写真に含まれる情報は,極めて多い。単純とは名ばかり,である。一見,平坦なだけに見える海も,その水面下に,魚,鯨のような哺乳類,貝,クラゲ,海藻など,あらゆる生物が潜んでいる。同じように,plain filmともいわれる単純X線写真には,その奥に,骨,軟骨,筋肉,さらに気管支,肺,心臓,そしてそれらに紛れて結節影が潜んでいる。単純X線写真を見るとき,私たちは,主訴に関連した所見だけでなく,無意識のうちに,見落としがないように,癌に代表される結節を探している。

 ある日突然現れたかに見える癌を疑う結節が,いつから存在していたか。過去を振り返ると,既に,数年前のX線写真に,その萌芽が認められていたとき,冷たい汗が脇を伝う。これは年月を重ねても,あるいは年月を重ねた油断から,陥りやすい罠である。さらに,近年のデジタル化の波は,豊かな情報に満ちていたフィルム写真に変わり,情報をそぎ落とした液晶画面に投影される画像を見ることを,私たちに強いている。深海に眠る宝,ともいえる結節陰影を,的確に見つけるためには,宝探しには地図が必要なように,このデジタル化時代であるからこそ,私たちを導いてくれる地図が必要である。

 数年前,著者の小林弘明先生は,私の主催する「亀井道場」という学生・研修医・そして万年研修医を自認する医師たちのための勉強会に,はるばる福井から,大量のレントゲンフィルムを抱えておいでになり,私たちに胸部単純X線写真の見かた・考えかたを伝授してくださった。大量のレントゲンフィルムはまさに宝の山であった。伝授していただいた方法はまさに,“結節(宝)を見つけるための地図”であった。それが本になったらと願っていたら,このたび医学書院から発刊された。トレジャーハンターが,地図を見つけたような喜びと驚きを感じた。

 ここには,外科医として,多くの結節の実際の姿を目にしてきたからこそ展開できる,徹底的な所見の解析に裏打ちされた見かた,そして論理の展開がある。ただ地図を見るだけでは宝に到達しないように,胸部画像は,ただ漫然と見るだけでは,何も「見えて」こない。「考える」ことで初めて真の姿が見えてきて,宝に到達できることを伝えてくれている。

 内科医である私には,到底到達しえない境地である。この本では,それが惜しげもなく,私たちに公開されている。熟練のトレジャーハンターが,その技を伝授してくれているのである。これを手にしない法はない。
 さあ早速,入手して,一緒に宝探しの旅に出かけよう。

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