所見から考えるぶどう膜炎
「こだわりの所見」を多数掲載! 最新ぶどう膜炎診療アトラス、登場
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眼科診療のエキスパートを目指すための新シリーズの1冊。ぶどう膜炎の診断には、患者背景の把握や様々な検査結果の解釈に加え、眼所見を正確に評価し、その所見を診断に結びつける洞察力が重要である。本書ではぶどう膜炎の診断に直結するような所見につき、実際の症例写真を多数提示し、「この所見をみた時は何を考えるべきか」「どのような疾患を疑うべきか」に力点を置いた。すべての眼科医必携のテキスト&アトラス。
シリーズ | 眼科臨床エキスパート |
---|---|
シリーズ編集 | 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信 / 天野 史郎 |
編集 | 園田 康平 / 後藤 浩 |
発行 | 2013年04月判型:B5頁:308 |
ISBN | 978-4-260-01738-1 |
定価 | 16,500円 (本体15,000円+税) |
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序文
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眼科臨床エキスパートシリーズ 刊行にあたって/序
眼科臨床エキスパートシリーズ 刊行にあたって
近年,眼科学の進歩には瞠目すべきものがあり,医用工学や基礎研究の発展に伴って,新しい検査機器や手術器具,薬剤が日進月歩の勢いで開発されている.眼科医は元来それぞれの専門領域を深く究める傾向にあるが,昨今の専門分化・多様化傾向は著しく,専門外の最新知識をアップデートするのは容易なことではない.一方で,quality of vision(QOV)の観点から眼科医療に寄せられる市民の期待や要望はかつてないほどの高まりをみせており,眼科医の総合的な臨床技能には高い水準が求められている.最善の診療を行うためには常に知識や技能をブラッシュアップし続けることが必要であり,巷間に溢れる情報の中から信頼に足る知識を効率的に得るツールが常に求められている.
このような現状を踏まえ,我々は≪眼科臨床エキスパート≫という新シリーズを企画・刊行することになった.このシリーズの編集方針は,現在眼科診療の現場で知識・情報の更新が必要とされているテーマについて,その道のエキスパートが自らの経験・哲学とエビデンスに基づいた「新しいスタンダード」をわかりやすく解説し,明日からすぐに臨床の役に立つ書籍を目指すというものである.もちろんエビデンスは重要であるが,本シリーズで目指すのは,エビデンスを踏まえたエキスパートならではの臨床の知恵である.臨床家の多くが感じる日常診療の悩み・疑問へのヒントや,教科書やガイドラインには書ききれない現場でのノウハウがわかりやすく解説され,明日からすぐに臨床の役に立つ書籍シリーズを目指したい.
各巻では,その道で超一流の診療・研究をされている先生をゲストエディターとしてお招きし,我々シリーズ編集者とともに企画編集にあたっていただいた.各巻冒頭に掲載するゲストエディターの総説は,当該テーマの「骨太な診療概論」として,エビデンスを踏まえた診療哲学を惜しみなく披露していただいている.また,企画趣旨からすると当然のことではあるが,本シリーズの執筆を担うのは第一線で活躍する“エキスパート”の先生方である.日々ご多忙ななか,快くご編集,ご執筆を引き受けていただいた先生方に御礼申し上げる次第である.
本シリーズがエキスパートを目指す眼科医,眼科医療従事者にとって何らかの指針となり,目の前の患者さんのために役立てていただければ,シリーズ編者一同,これに勝る喜びはない.
2013年2月
シリーズ編集 吉村長久,後藤 浩,谷原秀信,天野史郎
序
ぶどう膜炎とは,狭義には“ぶどう膜組織の炎症”であるが,広義のぶどう膜炎(内眼炎)は,“眼内のすべての炎症”を指す.言うまでもないが,ぶどう膜炎は単一疾患ではなく,自己免疫疾患,感染症,造血器悪性腫瘍など多種多様な原因や背景をもとにして発症する.中には眼Behçet病など,放置すれば中途失明に至る疾患も数多く存在する.診断においては,問診によって得られた年齢・性別・職業・嗜好などの患者背景に加え,得られた眼所見と検査結果を照合し,包括的に原因疾患の鑑別を進める必要がある.治療においては,ぶどう膜炎の多くは再発する可能性のある慢性病であり,姑息的に眼炎症をコントロールするだけでなく,長期的観点から患者のquality of visionを考える必要がある.実際の診断に際しては複数の疾患の可能性を考えつつ,短時間で治療の舵取りをしていくことが要求され,そのためには多くの経験が求められる.こうした多くのハザードゆえに,ぶどう膜炎診療を苦手にしている眼科医は少なくないと思われる.
眼科の強みは「見てわかる」ことである.角膜,水晶体,硝子体は原則透明であり,細隙灯顕微鏡などの診察機器を用いて多くの眼疾患を「見た目」で診断できる.たとえば白内障,緑内障,網膜剥離,糖尿病網膜症など,多くの眼科疾患の診断は一目瞭然で,あとは治療に専念できるわけである.しかし,ぶどう膜炎患者においては,診察によって眼炎症所見の存在が確認できたとしても,それが原因疾患の同定に直接結びつくわけではない.それはぶどう膜炎に合併した白内障や緑内障を診断することができた場合も全く同様である.
一言で眼炎症といっても,実はさまざまな形やパターンがある.個別に各ぶどう膜炎における眼炎症所見のクセがわかっていれば,他の眼疾患と同様に診察所見から診断・治療へのヒントが導き出せるのではないか? どうしてそのような眼炎症を呈しているのかを考えるヒントが整理されれば,同じ眼所見を見ても考える楽しさが沸いてくるのではないか? 本書はまさにこの点を追求し,実際に目に見える眼所見にこだわり,そこから導き出せる可能性や診療に対する考え方を系統的に整理することを目的とした.コツと要領がわかれば,ぶどう膜炎診療は決して難しくも面倒でもない.推理を進める楽しさ,治療の手応えなど,ぶどう膜炎の診療で感じることのできる喜びも多く存在する.本書が明日からの実践的ぶどう膜炎診療に役立つことを著者一同願って止まない.
2013年2月
編集 園田康平,後藤 浩
眼科臨床エキスパートシリーズ 刊行にあたって
近年,眼科学の進歩には瞠目すべきものがあり,医用工学や基礎研究の発展に伴って,新しい検査機器や手術器具,薬剤が日進月歩の勢いで開発されている.眼科医は元来それぞれの専門領域を深く究める傾向にあるが,昨今の専門分化・多様化傾向は著しく,専門外の最新知識をアップデートするのは容易なことではない.一方で,quality of vision(QOV)の観点から眼科医療に寄せられる市民の期待や要望はかつてないほどの高まりをみせており,眼科医の総合的な臨床技能には高い水準が求められている.最善の診療を行うためには常に知識や技能をブラッシュアップし続けることが必要であり,巷間に溢れる情報の中から信頼に足る知識を効率的に得るツールが常に求められている.
このような現状を踏まえ,我々は≪眼科臨床エキスパート≫という新シリーズを企画・刊行することになった.このシリーズの編集方針は,現在眼科診療の現場で知識・情報の更新が必要とされているテーマについて,その道のエキスパートが自らの経験・哲学とエビデンスに基づいた「新しいスタンダード」をわかりやすく解説し,明日からすぐに臨床の役に立つ書籍を目指すというものである.もちろんエビデンスは重要であるが,本シリーズで目指すのは,エビデンスを踏まえたエキスパートならではの臨床の知恵である.臨床家の多くが感じる日常診療の悩み・疑問へのヒントや,教科書やガイドラインには書ききれない現場でのノウハウがわかりやすく解説され,明日からすぐに臨床の役に立つ書籍シリーズを目指したい.
各巻では,その道で超一流の診療・研究をされている先生をゲストエディターとしてお招きし,我々シリーズ編集者とともに企画編集にあたっていただいた.各巻冒頭に掲載するゲストエディターの総説は,当該テーマの「骨太な診療概論」として,エビデンスを踏まえた診療哲学を惜しみなく披露していただいている.また,企画趣旨からすると当然のことではあるが,本シリーズの執筆を担うのは第一線で活躍する“エキスパート”の先生方である.日々ご多忙ななか,快くご編集,ご執筆を引き受けていただいた先生方に御礼申し上げる次第である.
本シリーズがエキスパートを目指す眼科医,眼科医療従事者にとって何らかの指針となり,目の前の患者さんのために役立てていただければ,シリーズ編者一同,これに勝る喜びはない.
2013年2月
シリーズ編集 吉村長久,後藤 浩,谷原秀信,天野史郎
序
ぶどう膜炎とは,狭義には“ぶどう膜組織の炎症”であるが,広義のぶどう膜炎(内眼炎)は,“眼内のすべての炎症”を指す.言うまでもないが,ぶどう膜炎は単一疾患ではなく,自己免疫疾患,感染症,造血器悪性腫瘍など多種多様な原因や背景をもとにして発症する.中には眼Behçet病など,放置すれば中途失明に至る疾患も数多く存在する.診断においては,問診によって得られた年齢・性別・職業・嗜好などの患者背景に加え,得られた眼所見と検査結果を照合し,包括的に原因疾患の鑑別を進める必要がある.治療においては,ぶどう膜炎の多くは再発する可能性のある慢性病であり,姑息的に眼炎症をコントロールするだけでなく,長期的観点から患者のquality of visionを考える必要がある.実際の診断に際しては複数の疾患の可能性を考えつつ,短時間で治療の舵取りをしていくことが要求され,そのためには多くの経験が求められる.こうした多くのハザードゆえに,ぶどう膜炎診療を苦手にしている眼科医は少なくないと思われる.
眼科の強みは「見てわかる」ことである.角膜,水晶体,硝子体は原則透明であり,細隙灯顕微鏡などの診察機器を用いて多くの眼疾患を「見た目」で診断できる.たとえば白内障,緑内障,網膜剥離,糖尿病網膜症など,多くの眼科疾患の診断は一目瞭然で,あとは治療に専念できるわけである.しかし,ぶどう膜炎患者においては,診察によって眼炎症所見の存在が確認できたとしても,それが原因疾患の同定に直接結びつくわけではない.それはぶどう膜炎に合併した白内障や緑内障を診断することができた場合も全く同様である.
一言で眼炎症といっても,実はさまざまな形やパターンがある.個別に各ぶどう膜炎における眼炎症所見のクセがわかっていれば,他の眼疾患と同様に診察所見から診断・治療へのヒントが導き出せるのではないか? どうしてそのような眼炎症を呈しているのかを考えるヒントが整理されれば,同じ眼所見を見ても考える楽しさが沸いてくるのではないか? 本書はまさにこの点を追求し,実際に目に見える眼所見にこだわり,そこから導き出せる可能性や診療に対する考え方を系統的に整理することを目的とした.コツと要領がわかれば,ぶどう膜炎診療は決して難しくも面倒でもない.推理を進める楽しさ,治療の手応えなど,ぶどう膜炎の診療で感じることのできる喜びも多く存在する.本書が明日からの実践的ぶどう膜炎診療に役立つことを著者一同願って止まない.
2013年2月
編集 園田康平,後藤 浩
目次
開く
第1章 総説
ぶどう膜炎の診療概論
I.ぶどう膜の解剖・生理
II.定義
III.分類
IV.問診
V.診察
VI.検査・診断
VII.治療
第2章 総論
I 目で見るぶどう膜の解剖・生理
I.発生および先天異常
II.解剖と組織
III.生理機能とその制御
IV.免疫機能と役割
V.病理
II 目で見るぶどう膜炎の疫学
I.大学病院における統計
II.市中病院と大学病院の比較
III.年代別変化
IV.地域による差
III ぶどう膜炎の画像検査
I.フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)
II.インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)
III.光干渉断層計(OCT)
IV ぶどう膜炎の機能検査
I.視野検査
II.マイクロペリメータ(MP-1)
III.網膜電図(ERG)
V 診断に役立つ全身検査
I.基本検査と特異的検査項目の選択
II.診断のための全身検査
III.臨床経過を追うための全身検査
VI 眼所見からみるぶどう膜炎の診断と鑑別
A 角膜後面沈着物
I.角膜後面沈着物における原則と例外
II.角膜後面沈着物を観察する際のポイント
III.角膜後面沈着物と疾患
B 虹彩癒着,虹彩結節
I.眼所見の特徴
C 前房蓄膿
I.前房蓄膿とは
II.前房蓄膿をきたす疾患
III.観察する際のポイント-“サラサラしている”か“ネバネバしている”か
IV.治療と予後
D 隅角所見
I.隅角鏡の使い方
II.隅角所見のポイント
E 硝子体混濁
I.炎症の活動性の指標となる硝子体混濁
II.硝子体混濁の定量
III.部位からみた硝子体混濁
IV.形状からみた硝子体混濁
V.病状とともに変化する硝子体混濁
F 網膜血管炎
I.網膜血管炎とは
II.網膜血管炎の鑑別のポイント
III.網膜血管炎の原因疾患
Advanced Studies
1 いわゆる網膜色素上皮症について
2 癌関連網膜症について
第3章 各論
I 内因性ぶどう膜炎
A Behçet病
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
B サルコイドーシス
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
C Vogt-小柳-原田病
I.眼所見の特徴
II.画像検査
III.眼外症状
D 急性前部ぶどう膜炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.鑑別診断
IV.脊椎関節炎(HLA-B27関連全身疾患)
E Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎
I.眼所見の特徴
II.診断および治療上の注意
F Posner-Schlossman症候群
I.眼所見の特徴
II.鑑別疾患と鑑別のポイント
III.治療と経過・予後
G 間質性腎炎ぶどう膜炎症候群
I.眼所見の特徴
II.全身検査所見
III.診断
IV.治療と予後
H 若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見
III.続発症・合併症
IV.全身所見
I 糖尿病虹彩炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.診断と鑑別診断
IV.治療
V.予後
J 水晶体起因性眼内炎
I.眼所見の特徴
II.診断および鑑別診断
II ウイルス感染によるぶどう膜炎
A ヘルペス性虹彩毛様体炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見および鑑別診断
III.起炎ウイルスによる特徴
B 急性網膜壊死
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
C サイトメガロウイルス網膜炎
I.眼所見の特徴
II.網膜所見の臨床経過
III.続発症:免疫回復ぶどう膜炎
D サイトメガロウイルス虹彩炎・角膜内皮炎
A CMV虹彩炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
B CMV角膜内皮炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.診断
E HTLV-1関連ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
III 原虫・寄生虫感染によるぶどう膜炎
A 眼トキソプラズマ症
I.眼所見の特徴
II.眼外症状
III.検査所見
IV.治療
B 眼トキソカラ症
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
IV 細菌感染によるぶどう膜炎
A 結核性ぶどう膜炎
I.病型別分類
II.眼所見の特徴
III.診断
IV.続発症・合併症
B 梅毒性ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見
III.眼外所見
C 猫ひっかき病
I.眼所見の特徴
II.全身症状と血液検査所見
III.予後
IV.治療
V 内因性眼内炎
I.眼所見の特徴
II.全身所見の特徴
III.疾患背景と起炎菌
IV.鑑別診断
VI 仮面症候群
A 眼内リンパ腫
I.眼所見の特徴
II.画像検査
III.中枢神経系リンパ腫について
B 白血病に伴うぶどう膜炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.続発症・合併症
IV.治療と予後
C 転移性ぶどう膜腫瘍
I.眼所見の特徴
II.原発巣
III.治療
VII 強膜ぶどう膜炎
A 前部強膜ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.原因
III.続発症・合併症
B 後部強膜ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.鑑別診断
III.続発症・合併症
C 再発性多発軟骨炎
I.眼所見の特徴
II.眼外症状
III.生化学データ
VIII 視神経炎を伴うぶどう膜炎
I.特発性視神経炎との鑑別
II.視神経所見をきたす三大ぶどう膜炎
III.感染による網膜視神経炎
IV.小児ぶどう膜炎
V.眼窩内炎症
Advanced Studies
3 実験的ぶどう膜炎
和文索引
欧文索引
ぶどう膜炎の診療概論
I.ぶどう膜の解剖・生理
II.定義
III.分類
IV.問診
V.診察
VI.検査・診断
VII.治療
第2章 総論
I 目で見るぶどう膜の解剖・生理
I.発生および先天異常
II.解剖と組織
III.生理機能とその制御
IV.免疫機能と役割
V.病理
II 目で見るぶどう膜炎の疫学
I.大学病院における統計
II.市中病院と大学病院の比較
III.年代別変化
IV.地域による差
III ぶどう膜炎の画像検査
I.フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)
II.インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)
III.光干渉断層計(OCT)
IV ぶどう膜炎の機能検査
I.視野検査
II.マイクロペリメータ(MP-1)
III.網膜電図(ERG)
V 診断に役立つ全身検査
I.基本検査と特異的検査項目の選択
II.診断のための全身検査
III.臨床経過を追うための全身検査
VI 眼所見からみるぶどう膜炎の診断と鑑別
A 角膜後面沈着物
I.角膜後面沈着物における原則と例外
II.角膜後面沈着物を観察する際のポイント
III.角膜後面沈着物と疾患
B 虹彩癒着,虹彩結節
I.眼所見の特徴
C 前房蓄膿
I.前房蓄膿とは
II.前房蓄膿をきたす疾患
III.観察する際のポイント-“サラサラしている”か“ネバネバしている”か
IV.治療と予後
D 隅角所見
I.隅角鏡の使い方
II.隅角所見のポイント
E 硝子体混濁
I.炎症の活動性の指標となる硝子体混濁
II.硝子体混濁の定量
III.部位からみた硝子体混濁
IV.形状からみた硝子体混濁
V.病状とともに変化する硝子体混濁
F 網膜血管炎
I.網膜血管炎とは
II.網膜血管炎の鑑別のポイント
III.網膜血管炎の原因疾患
Advanced Studies
1 いわゆる網膜色素上皮症について
2 癌関連網膜症について
第3章 各論
I 内因性ぶどう膜炎
A Behçet病
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
B サルコイドーシス
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
C Vogt-小柳-原田病
I.眼所見の特徴
II.画像検査
III.眼外症状
D 急性前部ぶどう膜炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.鑑別診断
IV.脊椎関節炎(HLA-B27関連全身疾患)
E Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎
I.眼所見の特徴
II.診断および治療上の注意
F Posner-Schlossman症候群
I.眼所見の特徴
II.鑑別疾患と鑑別のポイント
III.治療と経過・予後
G 間質性腎炎ぶどう膜炎症候群
I.眼所見の特徴
II.全身検査所見
III.診断
IV.治療と予後
H 若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見
III.続発症・合併症
IV.全身所見
I 糖尿病虹彩炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.診断と鑑別診断
IV.治療
V.予後
J 水晶体起因性眼内炎
I.眼所見の特徴
II.診断および鑑別診断
II ウイルス感染によるぶどう膜炎
A ヘルペス性虹彩毛様体炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見および鑑別診断
III.起炎ウイルスによる特徴
B 急性網膜壊死
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
C サイトメガロウイルス網膜炎
I.眼所見の特徴
II.網膜所見の臨床経過
III.続発症:免疫回復ぶどう膜炎
D サイトメガロウイルス虹彩炎・角膜内皮炎
A CMV虹彩炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
B CMV角膜内皮炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.診断
E HTLV-1関連ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
III 原虫・寄生虫感染によるぶどう膜炎
A 眼トキソプラズマ症
I.眼所見の特徴
II.眼外症状
III.検査所見
IV.治療
B 眼トキソカラ症
I.眼所見の特徴
II.続発症・合併症
III.眼外症状
IV 細菌感染によるぶどう膜炎
A 結核性ぶどう膜炎
I.病型別分類
II.眼所見の特徴
III.診断
IV.続発症・合併症
B 梅毒性ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.検査所見
III.眼外所見
C 猫ひっかき病
I.眼所見の特徴
II.全身症状と血液検査所見
III.予後
IV.治療
V 内因性眼内炎
I.眼所見の特徴
II.全身所見の特徴
III.疾患背景と起炎菌
IV.鑑別診断
VI 仮面症候群
A 眼内リンパ腫
I.眼所見の特徴
II.画像検査
III.中枢神経系リンパ腫について
B 白血病に伴うぶどう膜炎
I.疾患の特徴
II.眼所見の特徴
III.続発症・合併症
IV.治療と予後
C 転移性ぶどう膜腫瘍
I.眼所見の特徴
II.原発巣
III.治療
VII 強膜ぶどう膜炎
A 前部強膜ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.原因
III.続発症・合併症
B 後部強膜ぶどう膜炎
I.眼所見の特徴
II.鑑別診断
III.続発症・合併症
C 再発性多発軟骨炎
I.眼所見の特徴
II.眼外症状
III.生化学データ
VIII 視神経炎を伴うぶどう膜炎
I.特発性視神経炎との鑑別
II.視神経所見をきたす三大ぶどう膜炎
III.感染による網膜視神経炎
IV.小児ぶどう膜炎
V.眼窩内炎症
Advanced Studies
3 実験的ぶどう膜炎
和文索引
欧文索引
書評
開く
ぶどう膜炎全体をとらえる通読しやすい教科書
書評者: 荻野 公嗣 (荻野眼科医院院長)
医学書に教科書型と参考書型があるとすれば,本書は教科書型といえる。ぶどう膜炎の専門的な詳しい知識を網羅したというより,「所見」に的を絞った本である。ぶどう膜炎を診るとき,まず,疾患の候補名がいくつか頭に浮かばなければならない。そのためには,ぶどう膜炎の全体を通して勉強しておく必要がある。「所見」をカギにして要領よくまとめられた本書は,通読も容易で全体をとらえる教科書として最適といえる。
総説は「ぶどう膜炎の診療概論」。肉芽腫性炎症と非肉芽性炎症の違いの説明はわかりやすい。少なくとも私が医局員の昔はこのような明快な解説はなかった。
総論では「診断に役立つ全身検査」「眼所見からみるぶどう膜炎の診断と鑑別」「いわゆる網膜色素上皮症について」などの内容がよくまとまっていてわかりやすい。例えば,ヘルペス性角膜裏面沈着物は「豚脂様だが厚みはなく,濃密かつ整然とした配列のKP」と記されている。
各論では,各疾患の「所見」の特徴が詳しく記述されている。例えば,ベーチェット病で「発作時に毛様充血や結膜充血は必発ではない」「デスメ膜の皺襞は比較的少ない」,Vogt-小柳-原田病で「初発では前眼部炎症は軽微である」「硝子体の所見は乏しい」など特徴的所見だけでなくネガティブな所見まで記述されている。こういう情報は外来の現場で診断を絞りこむのに大いに役立つはずだ。各論の最後に「強膜ぶどう膜炎」「視神経炎を伴うぶどう膜炎」が登場する。「所見」を中心に眼炎症を考えれば,外せない項目であろう。
本書は読みやすい。文章は一段組み,文字フォントは細めで落ち着いた印象だ。各項の内容は簡潔である。所見を中心に記述され,個々の治療法,文献的考察は省略されている。写真が多く,アトラスとして使える。外来に置いて目の前の患者さんの所見と見比べるのもいいだろう。
ぶどう膜炎の診療は,近年,着実に進歩している。PCRを使ってウイルスや細菌の存在を証明できるようになった。7割くらいは診断がつくという。生物学的製剤によってベーチェット病の失明を救えるようになった。桐沢型ぶどう膜炎も治療法があり,初診医が見落としてはいけない最重要疾患となった。こうなってくるとステロイド点眼のワンパターンで対応していた一般眼科医もうかうかしていられない。もう一度,ぶどう膜炎を復習しなければならない。そう考えている諸氏に本書はお薦めである。
新しい知見に基づいた,眼科医必携の1冊
書評者: 安間 哲史 (愛知県眼科医会会長/安間眼科)
本書は《眼科臨床エキスパート》という新シリーズの1冊である。「ぶどう膜炎」というと,眼科臨床の中では「困った……」という症例が一番多い分野ではないだろうか。症状から一目瞭然で,すっきりと治療に反応する患者さんも結構多いが,一方で,なんとなくステロイドで軽快してしまう患者さんや,ひと通りの血液検査や全身チェックなどでは原因がわからず,だらだらと経過を見ている患者さんも多い。
園田康平先生と後藤浩先生が編集された『所見から考えるぶどう膜炎』を一読し,ぶどう膜炎の診療は,まず正確な所見を取ること,得られた所見を的確に解釈できる知識を持つこと,鑑別診断すべき疾患をできるだけ多く思い浮かべられるようにすることの大切さを教えられた。
最初の「診療概論」ではぶどう膜炎を見る時の基本的な考え方が詳細に述べられている。それに続く,この本の3分の1以上のスペースを占め,重点の置かれた「総論」にはさまざまな眼所見が詳しく記載されている。検査所見の読み方や,鑑別診断の考え方などが随所に述べられており,そこまで読み終えただけで「ぶどう膜炎のエキスパート」になった気にさせられてしまう。それに続く「各論」でその肉付けをするという構成が素晴らしい。
分担執筆であるにもかかわらず,鑑別診断に重点を置いた記載や,所見の読み方や考え方など,統一性がよく取れている。解説に沿った写真やOCT,図なども随所に配置され,綺麗でとても見やすく,実際に診療をしている気分になる。病態の理解に対する理詰めでわかりやすい解説が印象的であった。
各論ではまれな疾患にも十分なスペースが配分されている。10年前,20年前には聞かなかった疾患名も増えている。座右において教科書としても便利に調べられるし,いろいろな疾患の典型的な写真を見るだけでも十分に臨床に役に立つ。
ぶどう膜炎外来を標榜している大学病院と,眼科クリニックの一般外来でみる症例群との間には大きな隔たりがあるという暗黙の理解は以前からあったが,本書ではこの点にも触れられており,一般外来をこなしている多くの読者に対する配慮がうれしい。
最近のネット社会の発達により,断片的な知識ならいくらでも簡単に手に入るようになり,われわれ眼科医と対等あるいはそれ以上の知識を持った患者さんも時折みかけるようになった。そんな時代だからこそ,新しい知見に基づいた総論や,所見のよみ方,病態に対する考え方を教えてくれるこのような本が望まれていた。ぜひ,ご一読をお勧めしたい。
最善かつ最新の眼科医療を提供するために手元に置いておきたい一冊
書評者: 宇多 重員 (二本松眼科病院長)
眼免疫に詳しい園田康平教授,眼病理に詳しい後藤浩教授の編集の下,第一線で活躍するエキスパートの先生方のご執筆でまとめられた本書は「専門外であっても最新の知識のアップデートを容易にし,明日からすぐ診療に役立つ内容を」との目的で発刊された。
眼科の強みは「見てわかる」ことである。しかしぶどう膜炎患者においては,それぞれの所見が原因疾患の同定に直接結び付くわけではないのが難しいところである。疾病背景には自己免疫疾患,感染症,血液疾患,悪性腫瘍など,全身異常が関与していることが多いが,初診時に全身検査を行うことは臨床の現場では難しいのが実情である。それ故,診断が難しい。また軽症と思って加療していたら突然悪化することも少なくなく,放置すれば中途失明する疾患も数多い。さらに再発の可能性が高い慢性病でもあることから,ぶどう膜炎は眼科医泣かせの疾患といえる。
本書ではこうした悩みを解決すべく,写真素材を多く取り入れてわかりやすくまとめられている。画像写真をふんだんに盛り込み,実際に目に見えるぶどう膜炎の眼所見の特徴や特性を解説。そこから導き出せる可能性と診療に対する考え方をロジカルに示してくれている。
本書は総説,総論,各論の3部からなる。瑠璃色にカラー化された目次は目にやさしく,引き込まれる雰囲気だ。総説,総論ではぶどう膜炎の基礎知識を解説。各論では疾患を細かく分類し,丁寧に説明するとともに診療のポイントが効率よく整理されている。疾患の特徴,眼所見の特徴,続発症・合併症,画像検査,眼外症状,診断と鑑別診断,予後など,臨床の第一線で活躍されている先生方によって執筆されたその内容は最前線のものだ。診療の実践ですぐに役立てる知識が凝縮され,専門医にとってはブラッシュアップに活用することもできるだろう。検査器具,手術器具,薬剤,各種レーザー治療など医療を取り巻く環境は日々目覚ましい進歩を遂げている。患者に最善かつ最新の眼科医療を提供するために,診療時に手元に置いておきたい一冊である。
すっきりとまとまった全眼科医必読の書
書評者: 前田 利根 (前田眼科クリニック院長)
そもそもぶどう膜炎は難しい。というか勉強がしにくい。原因不明のぶどう膜炎がそのほとんどであるから難しいのだろうか。医局員時代,先輩にステロイドの使い方をこまごまと指導されたからとっつきにくくなってしまったのだろうか。だいたいステロイドの使い方を別の先輩に尋ねると必ず違った使い方を指示されたものだ。ゴールデンスタンダードがないんだ,この世界は。
と思っていたところ,この本が出版された。聡明な人たちが作った本は大変面白い,というのが読み終わっての正直な感想だ。
この本のお薦めポイントは特に総論に力を入れているところだろう。総論だけ読んでも十分面白い。総論だけで1万円くらいの価値がある。疾患別にばらばらに治療法を記載するでなく,特にステロイドの使い方など,ぶどう膜炎ならどれも同じだろう,くらいの感じでバサッと総論でまとめているのがすがすがしい。その分,疾患別各論はのびのびと記述されており,読んでいてすっきり感がある。でもなかには大変珍しい疾患で治療法が記載されていないパートもある。これはおまえらには治療は無理だから大学に送れや,ということなのだろう。
PCRをはじめとする新しい検査法の出現をもって,ぶどう膜炎の世界は明らかに別世界に移行した。古き眼科医も,新人眼科医も全部まとめて眼科医必読の書だと思う。
書評者: 荻野 公嗣 (荻野眼科医院院長)
医学書に教科書型と参考書型があるとすれば,本書は教科書型といえる。ぶどう膜炎の専門的な詳しい知識を網羅したというより,「所見」に的を絞った本である。ぶどう膜炎を診るとき,まず,疾患の候補名がいくつか頭に浮かばなければならない。そのためには,ぶどう膜炎の全体を通して勉強しておく必要がある。「所見」をカギにして要領よくまとめられた本書は,通読も容易で全体をとらえる教科書として最適といえる。
総説は「ぶどう膜炎の診療概論」。肉芽腫性炎症と非肉芽性炎症の違いの説明はわかりやすい。少なくとも私が医局員の昔はこのような明快な解説はなかった。
総論では「診断に役立つ全身検査」「眼所見からみるぶどう膜炎の診断と鑑別」「いわゆる網膜色素上皮症について」などの内容がよくまとまっていてわかりやすい。例えば,ヘルペス性角膜裏面沈着物は「豚脂様だが厚みはなく,濃密かつ整然とした配列のKP」と記されている。
各論では,各疾患の「所見」の特徴が詳しく記述されている。例えば,ベーチェット病で「発作時に毛様充血や結膜充血は必発ではない」「デスメ膜の皺襞は比較的少ない」,Vogt-小柳-原田病で「初発では前眼部炎症は軽微である」「硝子体の所見は乏しい」など特徴的所見だけでなくネガティブな所見まで記述されている。こういう情報は外来の現場で診断を絞りこむのに大いに役立つはずだ。各論の最後に「強膜ぶどう膜炎」「視神経炎を伴うぶどう膜炎」が登場する。「所見」を中心に眼炎症を考えれば,外せない項目であろう。
本書は読みやすい。文章は一段組み,文字フォントは細めで落ち着いた印象だ。各項の内容は簡潔である。所見を中心に記述され,個々の治療法,文献的考察は省略されている。写真が多く,アトラスとして使える。外来に置いて目の前の患者さんの所見と見比べるのもいいだろう。
ぶどう膜炎の診療は,近年,着実に進歩している。PCRを使ってウイルスや細菌の存在を証明できるようになった。7割くらいは診断がつくという。生物学的製剤によってベーチェット病の失明を救えるようになった。桐沢型ぶどう膜炎も治療法があり,初診医が見落としてはいけない最重要疾患となった。こうなってくるとステロイド点眼のワンパターンで対応していた一般眼科医もうかうかしていられない。もう一度,ぶどう膜炎を復習しなければならない。そう考えている諸氏に本書はお薦めである。
新しい知見に基づいた,眼科医必携の1冊
書評者: 安間 哲史 (愛知県眼科医会会長/安間眼科)
本書は《眼科臨床エキスパート》という新シリーズの1冊である。「ぶどう膜炎」というと,眼科臨床の中では「困った……」という症例が一番多い分野ではないだろうか。症状から一目瞭然で,すっきりと治療に反応する患者さんも結構多いが,一方で,なんとなくステロイドで軽快してしまう患者さんや,ひと通りの血液検査や全身チェックなどでは原因がわからず,だらだらと経過を見ている患者さんも多い。
園田康平先生と後藤浩先生が編集された『所見から考えるぶどう膜炎』を一読し,ぶどう膜炎の診療は,まず正確な所見を取ること,得られた所見を的確に解釈できる知識を持つこと,鑑別診断すべき疾患をできるだけ多く思い浮かべられるようにすることの大切さを教えられた。
最初の「診療概論」ではぶどう膜炎を見る時の基本的な考え方が詳細に述べられている。それに続く,この本の3分の1以上のスペースを占め,重点の置かれた「総論」にはさまざまな眼所見が詳しく記載されている。検査所見の読み方や,鑑別診断の考え方などが随所に述べられており,そこまで読み終えただけで「ぶどう膜炎のエキスパート」になった気にさせられてしまう。それに続く「各論」でその肉付けをするという構成が素晴らしい。
分担執筆であるにもかかわらず,鑑別診断に重点を置いた記載や,所見の読み方や考え方など,統一性がよく取れている。解説に沿った写真やOCT,図なども随所に配置され,綺麗でとても見やすく,実際に診療をしている気分になる。病態の理解に対する理詰めでわかりやすい解説が印象的であった。
各論ではまれな疾患にも十分なスペースが配分されている。10年前,20年前には聞かなかった疾患名も増えている。座右において教科書としても便利に調べられるし,いろいろな疾患の典型的な写真を見るだけでも十分に臨床に役に立つ。
ぶどう膜炎外来を標榜している大学病院と,眼科クリニックの一般外来でみる症例群との間には大きな隔たりがあるという暗黙の理解は以前からあったが,本書ではこの点にも触れられており,一般外来をこなしている多くの読者に対する配慮がうれしい。
最近のネット社会の発達により,断片的な知識ならいくらでも簡単に手に入るようになり,われわれ眼科医と対等あるいはそれ以上の知識を持った患者さんも時折みかけるようになった。そんな時代だからこそ,新しい知見に基づいた総論や,所見のよみ方,病態に対する考え方を教えてくれるこのような本が望まれていた。ぜひ,ご一読をお勧めしたい。
最善かつ最新の眼科医療を提供するために手元に置いておきたい一冊
書評者: 宇多 重員 (二本松眼科病院長)
眼免疫に詳しい園田康平教授,眼病理に詳しい後藤浩教授の編集の下,第一線で活躍するエキスパートの先生方のご執筆でまとめられた本書は「専門外であっても最新の知識のアップデートを容易にし,明日からすぐ診療に役立つ内容を」との目的で発刊された。
眼科の強みは「見てわかる」ことである。しかしぶどう膜炎患者においては,それぞれの所見が原因疾患の同定に直接結び付くわけではないのが難しいところである。疾病背景には自己免疫疾患,感染症,血液疾患,悪性腫瘍など,全身異常が関与していることが多いが,初診時に全身検査を行うことは臨床の現場では難しいのが実情である。それ故,診断が難しい。また軽症と思って加療していたら突然悪化することも少なくなく,放置すれば中途失明する疾患も数多い。さらに再発の可能性が高い慢性病でもあることから,ぶどう膜炎は眼科医泣かせの疾患といえる。
本書ではこうした悩みを解決すべく,写真素材を多く取り入れてわかりやすくまとめられている。画像写真をふんだんに盛り込み,実際に目に見えるぶどう膜炎の眼所見の特徴や特性を解説。そこから導き出せる可能性と診療に対する考え方をロジカルに示してくれている。
本書は総説,総論,各論の3部からなる。瑠璃色にカラー化された目次は目にやさしく,引き込まれる雰囲気だ。総説,総論ではぶどう膜炎の基礎知識を解説。各論では疾患を細かく分類し,丁寧に説明するとともに診療のポイントが効率よく整理されている。疾患の特徴,眼所見の特徴,続発症・合併症,画像検査,眼外症状,診断と鑑別診断,予後など,臨床の第一線で活躍されている先生方によって執筆されたその内容は最前線のものだ。診療の実践ですぐに役立てる知識が凝縮され,専門医にとってはブラッシュアップに活用することもできるだろう。検査器具,手術器具,薬剤,各種レーザー治療など医療を取り巻く環境は日々目覚ましい進歩を遂げている。患者に最善かつ最新の眼科医療を提供するために,診療時に手元に置いておきたい一冊である。
すっきりとまとまった全眼科医必読の書
書評者: 前田 利根 (前田眼科クリニック院長)
そもそもぶどう膜炎は難しい。というか勉強がしにくい。原因不明のぶどう膜炎がそのほとんどであるから難しいのだろうか。医局員時代,先輩にステロイドの使い方をこまごまと指導されたからとっつきにくくなってしまったのだろうか。だいたいステロイドの使い方を別の先輩に尋ねると必ず違った使い方を指示されたものだ。ゴールデンスタンダードがないんだ,この世界は。
と思っていたところ,この本が出版された。聡明な人たちが作った本は大変面白い,というのが読み終わっての正直な感想だ。
この本のお薦めポイントは特に総論に力を入れているところだろう。総論だけ読んでも十分面白い。総論だけで1万円くらいの価値がある。疾患別にばらばらに治療法を記載するでなく,特にステロイドの使い方など,ぶどう膜炎ならどれも同じだろう,くらいの感じでバサッと総論でまとめているのがすがすがしい。その分,疾患別各論はのびのびと記述されており,読んでいてすっきり感がある。でもなかには大変珍しい疾患で治療法が記載されていないパートもある。これはおまえらには治療は無理だから大学に送れや,ということなのだろう。
PCRをはじめとする新しい検査法の出現をもって,ぶどう膜炎の世界は明らかに別世界に移行した。古き眼科医も,新人眼科医も全部まとめて眼科医必読の書だと思う。
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