小児科学 第4版

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本書ではPT・OTを目指す学生にとって必要十分な小児科学の基礎的知識を学習できるようになっている。基本構成は前版を踏襲しつつ、臨床での治療活動における重要度から小児の神経疾患、心身医学的疾患、虐待などの項目を刷新して、さらに充実度を高めた。
*「標準理学療法学・作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
シリーズ監修 奈良 勲 / 鎌倉 矩子
編集 冨田 豊
発行 2013年01月判型:B5頁:272
ISBN 978-4-260-01666-7
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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第4版 序

 本書の第3版が出てからのちも,技術としての医療分野は引き続き急速に進歩を遂げています.分子標的薬の開発,iPS細胞による希少疾患動物モデルの作製,画像診断の進歩,サイトカインの発見に基づく免疫・炎症機構の理解の前進,などなど.
 一方,社会政策としての医療分野は,一時曙光が見えるかに思えたのもつかの間,再び暗雲が垂れ込めています.この分野は,国民医療の内容がこれ以上後退しないように引き続き監視が必要です.さらに,社会的偏見からも目が離せません.最近も「発達障害の原因は親の養育にあり」という偏見が特定の社会集団からばらまかれました.少しでも事情を学んだ方には克服済みの事柄にもかかわらず,です.目を転じて,わが国のドラッグ・ラグ対策をきっかけに進められてきた臨床研究の機構の改変ですが,臨床研究に特定の研究施設のみがかかわってきたという歴史から脱却して,今後より広範囲の医療機関・医療者がその役割を果たすという姿が見えてくるかもしれません.リハビリテーションの実践分野がこれに多くの接点をもてることを願っています.
 さて,本書で扱うような小児の問題は,小児期のみにとどまらないテーマが多いといえます.発達,遺伝,二次障害,退行,家族,教育・支援など,高齢者にもつながる問題があります.国家試験の終了後どの分野に進もうと,時々は小児の問題に立ち返って考えることを,この際おすすめします.
 今版では,新たに鳥取大学医学部脳神経小児科の前垣義弘先生と,関西福祉科学大学保健医療学部の倉澤茂樹先生にも加勢をいただきました.前垣先生は急性中枢神経疾患の画像診断の造詣が深く,倉澤先生は訪問リハビリテーションの実践活動にも通じておられます.お陰で,本書の内容が一段と濃くなりました.

 2012年11月
 冨田 豊

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序説 PT・OTと小児科学のかかわり
 A コメディカルに必要な小児科学
 B 子どもを通して見える医療のかたち
第1章 小児科学概論
 A 小児科の特徴
 B 小児の成長・発育と発達
 C 栄養と摂食
 D 小児の保健
 E 理学・作業療法との関連事項
第2章 診断と治療の概要
 A 診断と検査
 B 小児の治療法
 C 理学・作業療法との関連事項
第3章 新生児・未熟児疾患
 A 胎児期,周産期,新生児期
 B 新生児の評価と問題
 C 早期産児(未熟児)の神経学的所見
 D 新生児・周産期異常症状
 E 代表的中枢神経障害と疾患
 F 理学・作業療法との関連事項
第4章 先天異常と遺伝病
 A 先天異常と遺伝
 B 遺伝と病気
 C 染色体異常
 D 先天奇形
 E 先天代謝異常症
 F 理学・作業療法との関連事項
第5章 神経・筋・骨系疾患
 A 診断と検査
 B 中枢神経疾患(急性疾患)
 C 中枢神経疾患(先天性疾患,その他)
 D てんかん
 E 発達遅滞を伴う疾患
 F 脊髄性疾患
 G 末梢神経性疾患
 H 筋疾患
 I 骨・関節疾患
 J 理学・作業療法との関連事項
第6章 循環器疾患
 A 心血管系の発生と胎外生活への適応
 B 症状と検査
 C 発症頻度と原因
 D 先天性心疾患
 E 後天性心疾患とその他の心疾患
 F 理学・作業療法との関連事項
第7章 呼吸器疾患
 A 発生と機能
 B 症状と検査
 C 治療と処置
 D 呼吸器疾患
 E 理学・作業療法との関連事項
第8章 感染症
 A 症状
 B 診断と治療
 C 各年代での代表的感染症
 D 理学・作業療法との関連事項
第9章 消化器疾患
 A 消化器の発生
 B 機能的発達と症状
 C 消化器疾患
 D 理学・作業療法との関連事項
第10章 内分泌・代謝疾患
 A 内分泌疾患
 B 糖代謝異常
 C 理学・作業療法との関連事項
第11章 血液疾患
 A 造血組織の発生
 B 血液の成分
 C 赤血球系の異常
 D 白血球系の異常
 E 出血性・血栓性疾患
 F 理学・作業療法との関連事項
第12章 免疫・アレルギー疾患,膠原病
 A 免疫
 B アレルギー
 C 自己免疫疾患,膠原病
 D 理学・作業療法との関連事項
第13章 腎・泌尿器系,生殖器疾患
 A 腎・泌尿器系疾患
 B 生殖器疾患
 C 理学・作業療法との関連事項
第14章 腫瘍性疾患
 A 悪性腫瘍の発生頻度
 B 各論
 C 理学・作業療法との関連事項
第15章 習癖・睡眠関連病態・心身医学的疾患・虐待
 A 習癖
 B 睡眠関連病態
 C 心身医学的疾患
 D 児童虐待
 E 理学・作業療法との関連事項
第16章 重症心身障害児
 A 重症心身障害児の定義および発達
 B 重症心身障害児特有の問題
 C 療育の体制
 D 理学・作業療法との関連事項
第17章 眼科・耳鼻科的疾患
 A 眼科
 B 耳鼻科
 C 理学・作業療法との関連事項

セルフアセスメント
索引

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小児科学を学ぶ意味を理解し,納得しながら学べる教科書
書評者: 近藤 敏 (県立広島大教授・作業療法学)
 本書の編集・執筆者である冨田豊氏は,1995年に開学した広島県立保健福祉短期大学の初代作業療法学科長として,現在の県立広島大学作業療法学科の礎を築かれた。冨田氏は臨床家,研究者,教育者の3つの立場を実にバランスよく持っておられる方である。当時,理学・作業療法士というご自身がこれまであまり接したことのないスタッフに囲まれながら,“医師にはない発想である”というADLに関心を持ち,「重症心身障害児・者の機能障害とADL」について研究されていた。その後,この研究は「リハビリテーション医学」に原著論文として掲載されている。また,助教の教育にことのほか熱心であった。大学の力は助教を育てることであると考え,学科全員の前で,よく助教への厳しい指導がなされていたが,これは間接的に講師以上の教員への教育でもあったと思われる。現在,小児領域の理学・作業療法士は,医療機関や福祉分野のみならず幼稚園や小学校などの教育機関に求められる職種となっている。4年前から始まった教員免許状更新講習において,本学では「特別支援教育講座」を開設しており,最も受講者の多い講座となっている。少子化にもかかわらず問題を抱える子どもはむしろ増えており,本学の附属診療所の小児科医は多忙を極めている状況にある。

 さて本書は,2000年の初版から今回で既に4版となる。つまり,理学・作業療法学生を対象としたテキストでありつつも,医療の進歩に即応した内容となっている。小児科学概論,診断と治療の概要,そして各疾患について臨床に即してコンパクトに説明されている。カンファレンスの場で蚊帳の外にならないためにも,まず医学的知識の修得を心がける必要があるが,リハビリテーションの主要な対象となる神経・筋・骨系疾患はもとより,多岐にわたる疾患を簡潔にできるだけ図表を用いて記述されているため,学生も学びやすいと思われる。循環器や消化器疾患,感染症の小児科学の知識はセラピストの危険予知センサーの感度を上げてくれるものであること,血液疾患,免疫・アレルギー疾患・膠原病における小児科学の知識はQOL向上のための知識であること,重症心身障害児の小児科学の知識は声なき声を聞くために必要となる知識であること,などが解説されている。自分たちが小児科学を学習する意味を理解し,納得しながら学べるものである。また,「理学・作業療法との関連事項」においては,子どもたちの感覚や感情を代弁しながら記述されており,学習意欲も高まるはずである。さらに,臨地実習で不安に陥ったときも,本書を読み返すことで何らかの示唆を与えてくれるに違いない。発達の遅れや異常がわかるだけでなく,両親から信頼され,相談に適切に応じることのできるようサポートしてくれる書籍である。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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