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どうする? 家庭医のための“在宅リハ”

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家庭医(一般医)にとって、在宅でのリハは「関心はあるが手を出しにくい」領域である。本書は、在宅リハ成功のための指南書。何かととっつきにくいリハ領域の事柄について、必要最低限の情報をコンパクトに、かつ平易にまとめた。「どうする? 在宅でのリハ。在宅に向けてのリハ」。その疑問にリハ医であり、家庭医でもある著者がお答えいたします!
シリーズ 総合診療ブックス
佐藤 健一
発行 2012年09月判型:A5頁:216
ISBN 978-4-260-01623-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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  • 序文
  • 目次
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まえがき

 この本には,筆者が家庭医として
 (1)クリニックで外来診療や訪問診療を行い,患者さんの生活環境がどのようなものか診たり,評価したり,住宅改修にかかわってきた経験
 (2)リハビリテーション医として病院内外でのリハや退院調整,住宅改修にかかわってきた経験
 (3)患者さんが自宅で安心して生活することを目標に,さまざまな文献や本を読んだり,自分なりに考え,工夫してきた経験
 が盛り込まれています.

 家庭医として高齢者にかかわったことがあるかたにとって,高齢者が自宅で生活を続けること,退院して自宅でもとの生活に戻ることは簡単なようで実は大変だと感じるのではないでしょうか.
 筆者が上記の経験を積むにあたって,当時は自分の知りたい内容がまとまって具体的に書かれている文献は少なく,さまざまな領域の知識を集め,頭のなかで組み立てながら実践し,その結果をもとに振り返りを行い,実践方法を修正して再び実践にもっていって試してみるしか方法がありませんでした.さらに,こうした自分の経験を人に伝えられるまでに整理し,まとめるのはさらに時間を要します.必要な知識の範囲が膨大であるばかりか,それらを「在宅でのリハと在宅に向けてのリハ」と関連づけてまとめあげるのが困難だったのです.
 どのようにしたら皆さんにわかりやすく伝えることができるのだろうか?
 それを考えるうちに,家庭医にとって身近なCGA(Comprehensive Geriatric Assessment,日本語名:高齢者総合的機能評価)をベースにして,「在宅でのリハと在宅に向けてのリハ」に必要となる知識を整理する,という考えにたどり着きました.本書は,家庭医が臨床現場ですぐに使えるように,各章をCGAに対応するように構成しています.各章は独立していますが,お互いに影響し合う部分も多いので,どこに関係し合うかも考えながら読み進めるのもいいでしょう.
 読者の皆さんには,本書をとおして,家庭医にとってこの先重要となるリハビリテーションの知識を自分のものとし,さらに実際の経験をその知識と結びつけることで,新たな知識と経験を生み出していくサイクルを創ることができるようになっていただければと思っています.
 本書が家庭医が行う「在宅でのリハ,在宅に向けてのリハ」の一助となれば,それは筆者にとって望外の喜びです.

 2012年7月
 佐藤健一

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序章

第1章 どうする? 「在宅でのリハ,在宅に向けてのリハ」の考えかた
 1-1 この先の最先端医療は「在宅」で提供される
 1-2 そもそもリハってなんだろう?
 1-3 リハ医以外でも知るべき理由
 1-4 理学療法と作業療法は何が違う?
 1-5 物理療法はリハ?
 1-6 地域にかかわる家庭医がもつべきリハの視点
 1-7 リハビリテーション処方箋はどうする?

第2章 どうする? 「住宅改修」の進めかた
 2-1 環境面への介入
 2-2 いつもの診療のなかに「ホームズの視点」を取り入れる
 2-3 「ホームズの視点」で診にいこう
 2-4 街中でも気づく「ホームズの視点」
 2-5 「ホームズの視点」をどう活用し,維持・向上する?
 2-6 基本的な心構え:生活の場として住居を診る
 2-7 生活の場は地域ごとに特徴がある
 2-8 劇的に変えるか,昔を残すか
 2-9 過ぎたるは及ばざるがごとし

第3章 どうする? 「廃用症候群」の予防
 3-1 身体機能面の評価
 3-2 見逃せない! 廃用症候群
 3-3 廃用症候群としての筋力低下をどう考える?
 3-4 筋力維持・向上への具体的アプローチ
 3-5 関節拘縮をつくらない
 3-6 安静度より活動度
 3-7 廃用は病棟だけでおきているのではない
 3-8 廃用症候群は診断をつけることができる?
 3-9 看護ケアとお世話を間違えない
 3-10 病院では気づけない本人の能力
 3-11 高齢者の「姿勢」と「歩行」の診かた
 3-12 家庭医のための歩行の評価
 3-13 運動の質と筋肉の関係
 3-14 マクロ・ミクロの視点からみた栄養の基礎知識
 3-15 リハビリテーションを栄養の視点で考える

第4章 どうする? 「認知症・うつ・高次脳機能障害」の評価
 4-1 精神面の介入
 4-2 認知症
 4-3 うつ,うつ状態
 4-4 高次脳機能障害

第5章 そうだ,こうしよう! 「在宅リハ」を成功させるために
 5-1 地域での主体は地域住民(≠患者さん)
 5-2 病院と在宅では気持ちが大きく違う
 5-3 真のチーム医療の実現へ
 5-4 リハビリテーションに対する苦手意識の克服
 5-5 地域で報われない気持ちになったら

索引

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書評 (雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 涌波 満 (医療法人アガペ会ファミリークリニックきたなかぐすく、医師)
 「バリアがありながらも本人にとって自宅は天国」。本書は、できるだけ住み慣れた自宅で1日でも長く療養させたいと願う家庭医としての視点から、(1)自宅で生活できるだけの体力を保つ、(2)少しでも生活に支障をきたす部分を軽減できるよう自宅の環境を整えることを目的に仕上げられています。

 筆者の(1)クリニックで外来診療や訪問診療を行ない、患者さんの生活環境がどのようなものかを診たり評価したり、住宅改修に関わった経験、(2)リハビリテーション医として病院内外でリハビリや退院調整、住宅改修に関わってきた経験、(3)患者さんが自宅で安心して生活することを目標に、さまざまな文献や本を読んだり、自分なりに考え工夫してきた経験により、実に多様な情報が盛り込まれています。さらに、私たち家庭医になじみ深い、CGA(Comprehensive Geriatric Assessment、高齢者総合的機能評価)をもとに、全体を4章(第1章:医学面、第2章:環境面、第3章:身体機能面、第4章:精神面)に分けることで、実際を想定しながら読み進めることができます。

◆“在宅リハ”成功に最も大切なことは?

 第1章では、家庭医にとって重要なリハビリテーションとは、専門医と同じレベルのものではなく、“一般的なアプローチ”で身体機能を向上させるものであるということを説いています。第2章では、シャーロック・ホームズの視点と称して、訪問時に患者・家族の状態の“過去”と“未来”を予測する実践的なポイントが列挙されています。第3章では、廃用症候群を系統的に振り返り、「生活能力/身体能力が低いほど、病気の発症から入院に要する期間が長くなり、退院するまでの期間も非常に長くなる」という経験から、発症から入院までの日数を考慮したリハビリテーションを計画する重要性を強調しています。第4章では、「認知症・うつ・高次機能障害の評価」が紹介されています。そして“在宅リハ”を成功させるため最も大切なことは、「さまざまな職種、施設、サービス、家族、そして患者さん自身をも動員していく」ことであると締めくくっています。

 最近、沖縄でも、自宅で療養する高齢者だけではなく、老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで共同生活をする高齢者が増えています。そこでは、家族だけではなく、施設の職員、訪問看護師、ヘルパーなどが、身近にいて療養を支える人としての役割を担っています。残念ながら多くの場合、これらの施設には理学療法士などは配置されていません。そのため、入所後に日常生活動作が低下していく可能性があります。そこで、このような人たちが、本書で紹介されているリハビリ的な視点を養っていくならば、できるだけ早い段階で、リハビリテーションのニーズを見つけ出し、主治医やセラピストと連携することができることでしょう。そして、地域にセラピストが出向く機会が増えれば、自主トレーニングをお手伝いしようとする看護・介護に携わる人たちの意欲も高まり、地域全体の介護予防活動にも拡大していくはずです。本書は在宅医療に携わるすべてのスタッフにとって、必読の書と言えます。

(『訪問看護と介護』2012年12月号掲載)
家庭医をめざすすべての医師がリハビリテーションを学ぶ際の入門書
書評者: 葛西 龍樹 (福島医大主任教授・地域・家庭医療学)
 「在宅でのリハと在宅に向けてのリハ」を家庭医が準備し実践する際に役立つ本が出版された。しかも著者の佐藤健一先生は,北海道家庭医療学センターで家庭医療学専門医コースを第一期生として修了した家庭医である。本書は,臨床的な事項の合間に,佐藤先生がより良い家庭医療を求めて旺盛に学びの機会を広く探求していったエピソードやその成果も含まれていて,いわば物語を読むような面白さで読み進めることができる。

 家庭医としての必須のアプローチである高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment)と患者中心の医療の方法(patient-centered clinical method)をベースにした上で,そこに生活の場,予防,精神面のケア,そしてチーム医療にこだわった数多くの在宅リハビリテーションで有用なヒントが盛り込まれている。

 本書では,随所に読者を刺激する問いかけがあり,その答えを探しながら読むこともできる。中には従来行われていたケアについての健全な批判が述べられていたり,ケアについての根源的な問題も含まれていたりしてはっとさせられる。そのような問いかけは,例えば,「そもそもリハってなんだろう?」「物理療法はリハ?」「どの時点の能力を基準にするのか?」「廃用症候群としての筋力低下をどう考える?」「なぜ身体を動かすのか?」「廃用症候群は診断をつけることができる?」などである。

 これらの問いかけすべてに本書が十分な答えを提示しているわけではないが,読者は本書によって興味を刺激されて,答えを見出すためにさらに自分で情報を集めたり,そうしたまだ答えのない臨床現場の疑問に答えを出す臨床研究へとチャレンジしたりしていくかもしれない。もしかしたら,そんなことも佐藤先生が本書を執筆した隠れた狙いなのかもしれない。

 通常の書評の範囲を越えるかもしれないが,筋力維持・向上や間接拘縮の予防のための訓練については,なかなか書籍だけでは十分に理解して実践しにくいものである。DVDなどによる画像での情報提供や講習会などの学習の機会をぜひ佐藤先生が中心となって企画していただけることも期待したい。

 日本の医療制度の最大の課題はプライマリ・ケアをどのように組織化するかということである。プライマリ・ケアはチームで行われるもので,そのチームで専門医としての役割を果たす医師が家庭医である。リハビリテーションの分野のケアでも約8割はプライマリ・ケアで安全に対応できなくてはならない。こうしたコンテクストの中で,今後日本でも家庭医をめざすすべての医師がリハビリテーションを学ぶ際の入門書として,本書は最適である。

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