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小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ

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本邦でトップクラスの小腸疾患症例数を誇る編者らのグループによりまとめられた本書は、内視鏡所見を提示し、その後に疾患(症例)の解説をするところに特徴がある。内視鏡所見からみた鑑別診断のポイントをはじめ、診断にあたって必要な分類などの基礎知識に関しても解説されている。馴染みの浅かった小腸領域だが、ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡などの登場で多種多様な内視鏡所見を捉えられるようになった。美麗かつ多彩な小腸内視鏡像が数多く掲載された本書から、診断へと結びつけるための、「所見のよみ方・捉え方」も習得できる。
編集 松井 敏幸 / 松本 主之 / 青柳 邦彦
発行 2011年10月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-01446-5
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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 本書の企画は約1年前に立てた.その契機は,カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡をしていて,所見はあるが診断に結びつかない例が多いことに気づいたことである.また,潰瘍性大腸炎の小腸内視鏡所見がCrohn病や他疾患の所見と区別がつきにくいことに気づいたためでもある.もちろん,多くの研究会で症例提示をみてきた.小腸内視鏡に関する類書も数冊みてきたが,網羅的に多くの疾患を挙げ,細かな所見の分析を採用していないものが多い.また,欧米の類書はX線検査との対比などしてくれそうもない.また,数年前わが国でダブルバルーン内視鏡の国際会議が開催され内視鏡所見が討論になったが,そのとき欧米の一流の研究者はCrohn病の小腸潰瘍が腸間膜付着側に存在すること,結核では逆の部位に存在することなど基本的な事項も知らなかった.それは正確な切除標本肉眼像を見ていないことが大きな理由と考えた.カプセル内視鏡は欧米が先進国であるが,上記の理由により欧米人の画像診断にはかなり問題がある.そこで,わが国の精選した小腸病変を多数例集めて一定の所見,形態を呈する小腸病変にどのような違いがあるか比べてみたいと考えた.
 本書の基本は,内視鏡所見から見た鑑別診断であり,まず書籍の見開きページ左半分で1例1例内視鏡所見を見てじっくり考えてほしい.次に,右半分にその所見の解説と,対比できるX線検査や切除標本肉眼像を追加した.この提示順は日常臨床の実践に即したもので,内視鏡所見を構成する要素を解釈しその疾患の病態や鑑別に迫っていただきたい.X線検査所見との対比も重要な柱である.長大な病変や大きな病変では屈曲が多い小腸の内視鏡観察には限界がある.そこで本書ではX線検査所見も重要視している.わが国では,現在でもまだ多くの施設が二重造影を実践し美麗な写真を見ているので,この点にも共感していただける読者は多いと考える.同一疾患にも多くのバラエティが存在するので,本書では何回も同じ疾患が現れることがある.また,活動期のみならず非活動期病変も採用した.実際の臨床ではそれらが混在する可能性も高いためである.これら提示例を全体のバランスよく配置することを考えると,非常に膨大な頁が必要になる.したがって,所見提示枚数は限定し,精選した症例を集めることにした.このような書籍を作るに際し,書名に考え方を反映させたいと苦慮した.編集者一同で意見を出し合い「小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ」とした.
 本書は,本年秋の福岡でのJDDW開催までに出版することにしたため,約半年間で作成したことになる.そのため,日ごろから交流し,共通する診断学をもつ仲間に集まっていただいた.すなわち,九州大学消化管内科,福岡大学消化器内科と福岡大学筑紫病院消化器内科の3施設合同で症例を持ち寄り,本書を構成した.適切な例の持ち合わせがない場合,一部の症例は外部の有力な研究者にも依頼した.われわれのグループでは普段合同で研究会を開催したり合同で臨床試験を動かしたりしている.もともとの小腸疾患の診断方法とX線撮影手順や治療方法も共通しているため,同一歩調で症例が集まった.結果的には各々が負担する分量をほぼ同じにすることができた.
 われわれのグループには共通した先達を有しているため,Crohn病などの小腸疾患の共同研究の長い歴史がある.それとともに症例の集積も多い.過去に,八尾恒良先生と飯田三雄先生編集の『小腸疾患の臨床』も2004年に医学書院より出版され,多くの疾患が集大成された.この後,小腸内視鏡の進展は著しい.また,診断操作が簡便であるため多くの施設が共有する画像も多くなった.しかし,X線診断との対比や病理診断や症例の取り扱いに不十分さを感じることも多くなった.このため,内視鏡所見に忠実な診断と鑑別の進め方に着目した本書を出版する意義は大きいと考えた.
 本書の成立には,医学書院医学書籍部の阿野慎吾氏に頑張っていただいた.企画の成立,素早い編集,原稿集めなど多くの問題点を克服していただいた.感謝申し上げる.また,日ごろから診断面でわれわれを支えていただいている病理の先生にも厚く御礼申し上げる.本書に取り上げた症例の診断のみならず,長年小腸疾患の肉眼診断と組織診断に情熱を傾けてこられた岩下明徳先生(福岡大学筑紫病院病理部),平橋美奈子先生(九州大学大学院形態機能病理),二村聡先生(福岡大学医学部病理学講座),八尾隆史先生〔順天堂大学医学部人体病理学(前九州大学大学院形態機能病理)〕に深く感謝申し上げる.これらの方々の努力の結果が本書には集積されている.本書立案の意図が広く理解され,単なるまれな症例集ではなく,所見の読み方が面白いと感じていただけるなら,本書が望外の評価を受けたことになる.

 2011年8月
 編者を代表して
 松井敏幸

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1 総論
 1 小腸疾患診断の進め方
  I.小腸疾患の症候学
  II.小腸疾患診断のポイント
  III.小腸疾患診断のアルゴリズム
 2 小腸X線検査(CT,MRIを含む)
  I.小腸画像診断におけるX線検査の位置づけ
  II.小腸X線検査
  III.CT,MRI
 3 カプセル内視鏡
  I.カプセル内視鏡機器の構成
  II.カプセル内視鏡検査の実際
  III.カプセル内視鏡の適応・禁忌・問題点
 4 ダブルバルーン小腸内視鏡検査
  I.従来の小腸検査
  II.DBEの原理と特徴
  III.DBE施行にあたって
  IV.挿入法
  V.DBEを用いた治療(止血,ポリープ切除,バルーン拡張術)
  VI.合併症

2 各論
 1 隆起をきたす疾患
 2 粘膜下腫瘍をきたす疾患
 3 潰瘍をきたす疾患
 4 アフタをきたす疾患
 5 狭窄をきたす疾患
 6 出血をきたす疾患
 7 びまん性疾患
 8 発赤をきたす疾患
 9 浮腫をきたす疾患
 症例提示
  平坦・小隆起
  陥凹
  隆起
  潰瘍
  狭窄
  出血
  発赤
  浮腫
  びらん
  びまん性顆粒・粗ぞう粘膜
  白色多発隆起
  管腔内発育

3 小腸疾患診断に必要な基礎的知識
 1 腫瘍に関するもの
 2 炎症に関するもの

索引

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この1冊で,小腸疾患診療の実際が手に取るように理解できる
書評者: 田中 信治 (広大病院教授・内視鏡診療科)
 松井敏幸,松本主之,青柳邦彦先生の編集による『小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ』という著書が医学書院から2011年10月に発刊された。八尾恒良先生,飯田三雄先生による『小腸疾患の臨床』(2004年発刊,医学書院)に続く,形態学のリーダーシップを取る九州大学/福岡大学グループの小腸疾患診断学のバイブル第2弾である。『小腸疾患の臨床』が発刊されたとき,なかなか経験することが少ない小腸疾患を美しい画像で系統的にまとめた教科書として強いインパクトがあったが,本書は,また違った意味で,非常に個性のある素晴らしいテキストに仕上がっている。

 近年,バルーン内視鏡やカプセル内視鏡が広く普及・一般化して以来,多くの小腸病変が診断されるようになってきたが,所見はあるものの意外と診断に至らない症例が多く,小腸病変の病態の奥深さを感じる今日このごろである。一方,最近X線造影検査が不得手な若い先生が増えて小腸内視鏡検査ばかりに走り,小腸X線画像診断がやや軽視されている傾向がある。もっとも,これは小腸に限らず全消化管共通の極めて深刻な課題であるが……。

 本書の特徴は,基本が内視鏡所見から構成されており,またその画像が非常に美しいことである。そして,その解説に始まり,内視鏡画像にリンクするように美しい完璧なX線造影所見,切除標本所見,病理所見が呈示され,病態を含めて詳細に解説されるという形式をとっている。しかも非常に読みやすい。この形式は,内視鏡診療から始まる最近の消化管診療実態に極めて合致している.日ごろ,内視鏡検査を中心に行われている先生方にとっても,個々の症例に関連した美しいX線造影画像との対比が堪能できるとともに,X線造影検査の臨床的有用性を深く理解でき勉強できると思う。

 本書は,単なるアトラスとしての内容だけではなく,総論として,小腸X線造影検査・小腸カプセル内視鏡検査・バルーン小腸内視鏡検査などの小腸内視鏡診療手技の実際が詳細に解説されており,さらに,内視鏡所見別の鑑別診断の考え方も詳しく説明されている。そして,巻末には,さまざまな分類や定義も簡潔かつ詳細に記載されており,この1冊があれば小腸疾患診療の実際が手に取るように理解できるし,若い先生たちの教科書・参考書として日々の臨床に役立つことを確信する。

 繰り返しになるが,これだけ美しく完璧な内視鏡画像,X線造影画像,手術標本や病理画像で構成されたシステミックな小腸診療に役立つテキストが発刊されたことは臨床医にとって非常に大きな福音である。小腸疾患の診療に携わる先生はもとより,そうでない先生にもぜひとも購入して読んでいただくことを強くお勧めする。

 このような素晴らしいテキストを発刊された松井敏幸,松本主之,青柳邦彦先生に敬意を表するとともに,心から御礼申し上げたい。
疾患の特徴が理解できる優れた教科書
書評者: 坂本 長逸 (日医大教授・消化器内科学)
 福岡大学の松井敏幸先生,青柳邦彦先生,九州大学の松本主之先生が『小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ』と題した小腸疾患診断学の教科書を医学書院から出版した。ご存じの方が多いとは思うが,福岡大学,九州大学は小腸疾患の診療ではわが国をリードする大学であり,消化器疾患症例を1例1例大事に解析する手法はいまや両大学の伝統と言ってもいいであろう。同じく福岡大学の八尾恒良先生,九州大学の飯田三雄先生は2004年度に両大学の膨大なデータを集約し,これまでとは比較にならないぐらい広範な小腸臨床に関する学術書『小腸疾患の臨床』を出版したが,今回の『小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ』はそれに続く両大学の小腸疾患診療に関する学術書第2編と言える。

 この2つの学術書の明確な違いは,2004年から7年を経て出版された『小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ』では,小腸疾患画像診断学がこの間にいかに進歩したかを見てとれることであろう。さらに付け加えるなら,私はこの学術書ほど小腸疾患に関する画像を豊富に掲載している書物を知らない。豊富な症例と画像が本書の特徴であり,特筆すべきことと言える。つまり,疾患単位で記述された最初の小腸疾患学術書『小腸疾患の臨床』を,より実臨床に即して,今日のダブルバルーン小腸内視鏡,カプセル内視鏡画像とともに記述したのが本書と言える。

 もう少し本書の内容を紹介すると,本書は診断の進め方,小腸X線検査,カプセル内視鏡検査やダブルバルーン内視鏡検査の実際を総論でかなり詳細に紹介し,次いで内視鏡所見ごとに,所見から見た診断へのアプローチ,その所見を呈する小腸疾患,および鑑別診断と鑑別診断のポイントが記載されている。X線や内視鏡所見から診断にアプローチしようとする試みであり,極めて実臨床に即して書かれている。所見は,例えば粘膜下腫瘍を来す疾患,アフタを来す疾患,浮腫を来す疾患など,小腸の画像診断に実際にかかわっている先生にしか記述できないであろうと思われる内容となっている。したがってこのような所見にしばしば遭遇する小腸を専門とする先生には,なるほどとうなずける内容であり,これから小腸疾患診断学を学ぼうとする先生には必須の学術専門書と言えるだろう。この点も本書の特徴であるが,さらに特筆すべきは,所見から見た診断へのアプローチに続いてそれぞれの所見を呈する症例の内視鏡画像が100ページ以上にわたって掲載されていることである。しかも,写真が実に美しく,症例が豊富で,おそらくこれ以上に多くの小腸疾患症例の内視鏡画像やX線画像を示した教科書は他にはないであろう。つまり,症例の内視鏡画像のページを見るだけで,疾患の特徴が理解できる優れた小腸疾患内視鏡診断学教科書と言える。

 このように本書は専門家,これから小腸疾患診断学を学ぼうとする先生,あるいは日常臨床で消化管内視鏡検査に携わる先生方には,ぜひ一読していただきたい専門教科書となっている。

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