周術期管理ナビゲーション

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周術期の患者管理に必要な知識・技術、モニターの見方、薬の解説などを1冊に凝縮。術前の患者状態把握から、緊急時の対応、術後合併症の予防と対応までが流れに沿って解説されている。術前・術中・術後管理に携わる看護師、医師、薬剤師、臨床工学技士の必携書。
編集 野村 実
発行 2014年02月判型:B5頁:284
ISBN 978-4-260-01550-9
定価 4,290円 (本体3,900円+税)

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序文 チーム医療としての周術期管理

◎周術期チーム医療をとりまく現状

 患者の高齢化が進み、合併症を抱える患者が増えるなかで、手術の長時間化や再手術が増加しています。
 周術期における望ましいチーム医療のあり方について、各学会などでの話し合いが開始されてから一定の時間が経過していますが、方向性の一本化には至っていません。医師の偏在が問題となるなか、各施設において周術期を担う医療者数は異なっているのが現状です。
 長らく麻酔科医の不足がさけばれていますが、米国に比べて手術件数に対する麻酔科医の人数が少ないのは明らかです。日本麻酔科学会の会員数は増加してはいますが、麻酔科といっても、ICU、ペインクリニックおよび心臓麻酔などのサブスペシャリティ、女性麻酔科医が増加していますので、会員数が増えたとはいっても、手術麻酔に直接携わる医師は決して増えていないと思います。さらに、DPC導入が本格化し、どの急性期病院でも手術件数の増加が大きなテーマとなっていますので、麻酔科医が相対的に不足している状況は変わっていません。
 そういった状況のなかで、周術期における術前・術後のアセスメントや、麻酔のモニタリング、術後鎮痛や呼吸・循環管理などの術後管理にたずさわることのできる医療スタッフをトレーニングし、多職種がかかわることで、より安全な患者の全身管理をチームで関わっていこうという流れがでてきています。

◎看護師、コメディカルの役割拡大の実態

 看護師、コメディカルの医療における裁量権は国によって異なり、麻酔看護の定義もまた大きく異なっています。米国のCRNA(Certified Registered Nurse Anesthetist:看護麻酔師)のように厳しい養成教育を経て、基本的には医師の監督下において、直接、麻酔をかけられる資格を付与している国もあります。この言葉や内容がひとり歩きしておりますが、米国はむしろ特殊で、世界麻酔看護協会では麻酔科医の補助や指導のもとで麻酔を担当しているのが多くの諸外国の現状であり、術中だけではなく、術後のICU管理を同時に行っている国や施設は多く存在しています。
 日本では職種創設議論だけが先行し、職務範囲の定義がはっきりしていませんので、医師、看護師からさまざまな意見が出ています。その過程で日本麻酔科学会は「周術期管理チーム」を構想しました。周術期管理医師(perioperative physician)という考え方も生まれているそうですが、手術室がコアとなって術前から術後まで多職種がかかわり、患者の全身管理をチームでトータルマネジメントしようという構想です。このチーム構想では、術中の麻酔業務への多職種の関与も重視しました。日本では一般的に麻酔科医が単独で手術麻酔を行う状況にありますが、医療安全面、質の向上といった意味から問題があります。そこで薬剤準備や使用時のダブルチェックを実施できる体制の確立や、麻酔器や人工呼吸器のチェックもチームで行うことを前提とし、そこには看護師、薬剤師、MEも参加するという想定で作成されていますが、現在の活動は学会で教科書を作製するというところでとまっていて認定制度は存在しません。

◎周術期のトータルケアができる看護師を目指して

 多くの国の状況を見ると周術期看護師は、ICUの経験は必須ですが、手術室の経験は問われません。現在手術室にいる方々や手術看護経験がない方も対象になると思いますが、クリティカルな場面におけるフィジカルアセスメント能力をまずはしっかりと身に着けてもらいたいと思っています。術前のアセスメントや、重症例の術前把握と麻酔科医への的確な情報伝達、また術後の疼痛管理をまずは主眼にしたいと思っています。
 侵襲的な業務は担わなくても、麻酔科医の傍で業務を見たり、手伝ったりしていれば、麻酔科医の動線で看護師は見られるようになります。片肺麻酔を行うと、サチュレーションが下がり、低酸素状態になり、血圧が降下する、という麻酔科医が常にチェックしている一連の流れや、特に注意を払っているポイントを、臨場感をもって体感するというのが、まず一歩です。麻酔科医の後ろにいながら情報と責任を共有していかないと、この構想はなかなか完成しません。麻酔科医と動線を共有することからスタートと考えております。

 知識はボーダーレスという意味で、本書は麻酔科医を中心に執筆されていますが、主な読者対象は看護師をはじめとする周術期管理を担うスタッフとしています。内容的には麻酔科の後期研修医でも充分役立つ内容に仕上がっていると自負しています。
 周術期をきちんと担えるチーム医療を実現するために、ともに質の高い周術期管理を目指していければと考えています。

 2013年11月
 著者を代表して
 野村 実

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第1章 周術期管理総論
 周術期管理に必要な基礎知識
 クリティカルな場面におけるフィジカルアセスメント
 薬剤の知識
   麻酔薬
   吸入麻酔薬
   静脈麻酔薬
   筋弛緩薬
   抗不整脈薬
   昇圧薬
   血管拡張薬
   術前投与薬
 輸液と輸血の基礎知識
 呼吸管理
   人工呼吸管理
   酸素マスク・カニューレ装着時の管理
   気道ケア
 体位変換と早期離床
 手術部位感染(SSI)対策
 栄養管理
 疼痛管理
 精神症状とその対策
 排液・ドレーン管理
   排液・ドレーン管理の実際【総論】
   排液・ドレーン管理の実際【各論】
 カテーテル管理
   カテーテル挿入の目的(注入・輸液等)
   カテーテル管理の実際

第2章 周術期循環動態管理(モニターの見方)
 [麻酔器/呼吸器]
   麻酔器
   人工呼吸器
 [各種モニター]
   循環器モニター
   血圧モニター
   心電図モニター
   呼吸モニター
   神経筋モニター
   体温モニター

第3章 術前・術中・術後トラブルシューティング
 [術前評価]
   呼吸器系
   循環器系
   血液凝固系機能
   内分泌系
   感染
   アレルギー
   骨格系
   中枢・末梢神経系
 [術中のトラブル]
   麻酔導入時のトラブル
   神経ブロック時のトラブル
   手術開始後のトラブル
 [術後のトラブル]
   覚醒遅延
   筋弛緩の延長
   抜管後呼吸困難
   過換気症候群
   嗄声
   手術創の疼痛
   悪心・嘔吐
   シバリング
   電解質異常(低ナトリウム血症)
   限局した運動神経麻痺・片麻痺
   術後精神症状

第4章 術後合併症予防と対策
   呼吸器合併症
   循環器合併症
   術後腸閉塞(イレウス)
   術後感染
   縫合不全
   肺塞栓症・深部静脈血栓症
   術後せん妄

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周術期医療にかかわる全ての職種に実用的なガイドブック
書評者: 溝部 俊樹 (京都府立医科大学大学院講師・麻酔科学)
 安全で質の高い周術期医療を提供するためには,多職種の連携によって,既往歴,内服歴や現在の治療内容などの患者情報を多層的に収集し,その情報を麻酔科医,主治医,執刀医に効果的に集約する必要がある。

 このたび発刊された『周術期管理ナビゲーション』では,周術期管理チームの一員として働くスタッフにとって,必要不可欠な知識が,網羅的にしかも実用的に,日々の臨床での疑問点を一目で解決してくれるよう記載されている。その内容は基礎からアップデートな知識まで,わかりやすい図表とともに提供されており,どこから読み始めても理解できるように編集者の配慮が行き届いている。

 日本麻酔科学会では,これまで日本手術看護学会,日本病院薬剤師会,日本臨床工学技士会と検討を重ね,「周術期管理チーム」を提唱してきた。折しも2014年度より,日本麻酔科学会は,まず日本手術看護学会と共同で,「周術期管理チーム看護師」の認定を開始することになった(申請資格などの詳細については,両学会のHP参照)。本年11月には第1回の認定試験が実施されることから,本書の出版はまさしくタイムリーで,受験される看護師にとっては必須の参考書となるであろう。日本麻酔科学会が誇る第一級の執筆陣によって選択された項目を効率よく勉強することで,最小時間で最大効果を上げられることを保証する。

 なお,本書を手に取るべきは,看護師だけにとどまらない。本書は,周術期医療に関わる全ての職種,麻酔科医,臨床工学技士,薬剤師,歯科衛生士などを対象として書かれたガイドブックであり,周術期ケアを理解したい研修医にとっても格好の入門書である。急性期病院の第一線で診療しながら若いスタッフへの教育に熱心な執筆陣によって書かれた本書は,まさしく周術期管理学テキストの嚆矢となるであろう。

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