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消化管造影ベスト・テクニック 第2版

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消化管造影検査の手技を習得するための基本的事項を簡潔に、かつ必要十分の情報でまとめあげている。コンパクトさと読みやすさを備えつつ、さらに著者の経験を踏まえた的を射た解説は、消化管造影の「基本」を学ぶには最適。また、既に検査に関わっている医師・技師には、気になる点の再確認などに活用できる。まさに使い勝手のよい1冊といえよう。
齋田 幸久 / 角田 博子
発行 2011年04月判型:A5頁:128
ISBN 978-4-260-01188-4
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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第2版の序

 “ベス・テク”の名で親しまれた『消化管造影ベスト・テクニック』は,20年におよぶロングセラーとなりました.振り返ってみると,この間,医学,医療は大きく変化しました.改訂もせずに20年間も,よくも14刷という部数を重ねたともいえますが,20年存続する価値があったのかもしれないと思うと,嬉しい限りです.
 胃癌の発生にはH. pylori 感染が強く関与することが広く認識されるようになり,胃癌の発生頻度は徐々に低下し,その分,大腸癌が増えています.経鼻内視鏡やカプセル内視鏡の開発と応用,各種の色素散布法の開発やNBIの導入,顕微鏡的拡大観察など新しい内視鏡技術が導入され,内視鏡的治療にも大きな変革があり,華麗な内視鏡時代を迎えています.一方,放射線医学における画像診断の領域でもCTやMRIがその時間と空間分解能の大幅な向上でそれぞれの診断範囲を急速に拡大し,従来の消化管造影のアナログの世界にもじわりと迫ってきています.CT-colonographyがその代表です.
 ここで,日本が世界に誇る二重造影の開発者であり歴史的人物でもある白壁彦夫,市川平三郎の両先生の業績を振り返ってみましょう.30余年前の小生のドイツ留学の際には,検査室前のドアに白壁先生直筆のクリスマスカードを貼っていました.これを心強い応援団として,日本代表の気概でドイツ人医師たちに二重造影法を示したのです.白壁先生は,胃の形態診断の考え方を食道や大腸にも広く応用すべしと,“比較形態学”の概念を後に提唱され,胆道系や膵臓,気管支などでも同じことだと,その意を強くしたことがあります.市川先生には国立がんセンターで直接教わる機会を得たこともあり,小生は末席の不肖の弟子の一人です.ある医師会での勉強会風景を若い先生たちに是非ご紹介したいと思います.フィルムで20例ほどの立位充像を壁際にずらりと並べ,順に1枚ずつ市川先生が見ながらリアルタイムで解説します.たった1枚の画像のみです.“これは胃角小彎が丸くて小彎が短縮しているので多発潰瘍の瘢痕である”“限局した陰影欠損で進行癌の直接所見”あるいは“これは限局するわずかな変形なので平坦な早期癌かも”などなど.皆が取り囲んでそれを聞きながらぞろぞろ移動し,引き続いて二重造影や内視鏡所見で順次その結果が説明され,それが驚くほどよく当たるので,二度びっくりするのです.当たるというのは実は失礼で,市川先生にとっては客観的論理的な帰結だったのでしょう.先生は“葉を見て枝を見ず,木を見て森を見ず.”といつも警鐘を鳴らしておられました.内視鏡で微小なものを求め過ぎると,いつか足元がおろそかになって転落する.これを防ぐには,大きくものを捉える造影検査による診断を大切にしなければならない.この言葉は,実は内視鏡と消化管造影の対峙だけでなく,人生の教訓としての言葉でもあったようです.
 初版から20年を経て,デジタル技術の進歩とともに改訂すべき部分が目につくようになりました.大事なことについては敢えてそのままにし,足りない部分のみを補って,時代に相応しい内容に変更を加えました.あと20年,この改訂版がさらに生き延びることを大いに期待したいと思います.改訂版発行にあたって,多大な支援を戴いた医学書院医学書籍編集部の阿野慎吾氏に深甚なる感謝を表します.また,本書“ベストテクニック”の命名者である中川芳郎氏に,再びこの場を借りて御礼申し上げます.

 2011年2月7日
 齋田幸久

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I 上部消化管の造影検査
 A ルーチン検査の進め方
 B 胃の形に応じた撮り方と工夫
 C よい写真と悪い写真
 D 呼吸のコントロールと透視撮影の方法
 E こんな場合には,ちょっとした工夫が必要
 F 術後胃の撮り方
 G 精査における二重造影の撮り方
 H 知っておくと役に立つ知識

II 注腸造影
 A 前処置
 B ルーチン検査-Baとairを注入するまで
 C Baを上手に送るコツ
 D Baの抜き方と撮影
 E こんな場合にどうするか
 F Rectumのよりよい検査のために
 G Colostomyからの造影
 H 付録:大腸模型であそぶ

III 咽頭食道造影
 A 下咽頭造影
 B 食道造影

IV 小腸の造影検査
 A 低緊張性十二指腸造影
 B 小腸二重造影
 C 経口小腸造影法(小腸造影三回法)
 D  その他の小腸造影法
 E チューブの入れ方

 索引

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日常の消化管撮影,診断の向上に貢献する良書
書評者: 森山 紀之 (国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長)
 『消化管造影ベスト・テクニック』は1991年に初版が刊行され20年にわたって広く愛読された良書であり,今回,改訂され新たに第2版が出版されることとなった。著者の齋田幸久先生,角田博子先生は放射線学会でもこの方面での著名な方々であり,齋田先生はライフワークとして消化管のX線診断に長年携わってきたこの領域の第一人者である。

 近年,CT,MRI,PETなどの新しいコンピュータ技術を駆使した新しい診断法の進歩には著しいものがあり,消化管X線診断を第一に志す者は減少傾向にある。さらに,この領域の検査としては内視鏡の有用性が高くなりこの領域の主力の検査となりつつある。しかしながら,消化管疾患の数の多さと比較すると,訓練された内視鏡医の数は十分ではなく,医師1人当たりの検査可能な人数も限られたものである。このため,検診の場など,多くの人数の検査を行う場合にはX線検査が主力となっている場合が多い。

 消化管X線診断学については,白壁彦夫先生,市川平三郎先生をはじめとして多くの諸先輩達が築き上げてきた世界に誇る二重造影法とその読影哲学がある。齋田先生と私も若いころにこれら先人諸先生の教えを共に受け,大きな影響を受けた。空気とバリウムを用いて行われる二重造影法によって得られた画像上に描出されている所見については,すべてがどのような現象によって描出されているのかを説明することが可能であり,このことは,ほかの多くの画像診断とは異なる画像上の特性と考えられる。二重造影画像における読影では,まず第一歩として,得られた画像上の所見をどれだけ多く拾い上げることができるかが問題となる。次に,これらの個々の所見がどのような病態,形態を反映しているのかを考え,組み立てることになる。これらの所見は消化管の前壁,後壁の位置によって異なり,folds,隆起,陥凹がX線の照射方向と粘膜面でのバリウムの厚さ,量によってどのように描出されているかを正しく理解することが要求される。これらの画像上の所見を拾い上げ,正しい診断を行うためには,多くの所見を含んだ優れた画像が必要となる。

 消化管X線診断がCTやMRIと大きく異なる点は,術者が自分の判断と技術によって画像を作るという部分が非常に大きな比率を占めていることである。このため,撮影者はできるだけ多くの画像情報を含む画像を要領よく撮影する技術を身につける必要がある。具体的には各消化管の立体的な解剖を熟知し,バリウムの特性と画像との関係,体位による画像の変化などを考えながら画像を作ることとなる。本書は,著者らの長年の経験に基づき,どのように消化管X線撮影を行うかを多くの図,写真を用いてわかりやすく,初心者から中級,上級の医師,技師に,その技術に応じて対応できる内容となっている。本書が読者諸氏の日常の消化管撮影,診断の向上に大きく貢献することを確信する。
鮮明な写真と的確なシェーマにより,消化管造影手技の1つ1つが根拠をもって示される
書評者: 角谷 眞澄 (信州大教授・画像医学)
 2011年4月に発行された,齋田幸久先生と角田博子先生による『消化管造影ベスト・テクニック 第2版』を手にしている。A5判の115ページからなる消化管造影テクニックの指南書である。

 本書は,「上部消化管の造影検査」,「注腸造影」,「咽頭食道造影」および「小腸の造影検査」で構成されている。102点の図が本書には掲載されているが,過半数の56点が実際の造影写真である。そして実に45点がシェーマである。ハンディなサイズであるため造影写真は小さくなっているが,それでも読影できるほど極めて鮮明だ。シェーマも秀逸で,解説文とともに,難しい消化管造影手技の理解を大いに助けてくれる本書の重要なコンテンツになっている。テクニックの会得に眉間にしわが寄ってしまいそうな箇所には,角田先生作とおぼしき,撮影体位を表す的確なイラストが配置されている。かわいい挿入図に,思わず癒されるのは私だけではないだろう。

 各ページの図に対しては,検査手技の記述が左側に配置され,そのテクニックのポイントが右側に記載されている。左サイドの解説のみなら通常のマニュアル本と大差はないが,右側の教えがこの本の神髄といえる。「検査のコツ」に加え,「なぜそうすべきか」という理由が端的に書かれている。筆者の指導者としての本領がうかがえる。

 第2版では,さらに理解しやすいよう解説文に配慮が加えられている。初版の記述の中から特に記憶にとどめて欲しい箇所が,「消化管造影の10原則」あるいは「一口メモ」として,囲み記事に修正されている。「消化管造影の10原則」は,遠い昔の,これだけは身につけるべき「鉄則」を思い出させる。さらに,20か所の「一口メモ」には,マニュアル本の域を超えた,かゆいところに手が届くコメントが満載である。

 筆者の齋田先生とは,腹部放射線医学を専門とする放射線科医として旧知の間柄であるが,この10年は学問に加え,サッカーを通じても親交を深めてきた。ゲームでは年功序列の暗黙のルールで,2人でツートップを組んだりするが,プレースタイルが全く違う。私は,がむしゃらにピッチを走りまわり,体力で勝負するタイプである。一方,齋田先生の背筋をピンと伸ばした走りは,とても綺麗で無駄がない。厳しい局面でも,仲間への正確なパスと的確な一言で,素早く打開する。そして,「ここぞ」というときに,確実にゴールをゲットする。長く培った豊富な経験で,サッカーを論破しているプレースタイルだ。本書の中に,ピッチを駆ける齋田先生の姿そのものが随所にみてとれた。

 本書は,消化管造影に関わる者にとっては必携である。これから検査手技を学ぼうとする若い臨床医や放射線技師の皆さんには,特にお薦めである。既に消化管造影に携わっている方々にも,気になる検査手技の再確認に最適である。

 本書を手にすれば,今なお現役の名プレーヤーが,その極意をいつでも教えてくれるのだ。ぜひとも携帯して,素晴らしいテクニックを繰り返し学び取っていただきたい。

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