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新・胃X線撮影法ガイドライン 改訂版(2011年)

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胃がん検診で行われる胃X線検査は、死亡率減少効果を示す相応の証拠があるが、撮影法は必ずしも全国で統一されているわけではない。本書では、検査の質を上げるための撮影法についての解説、機器の保守管理の説明、また美麗な写真による症例検討も行われている。さらに、胃X線検査における偶発症・被曝についても解説が加えられた。胃がん検診に従事する医師・技師にとって必携の書である。
編集 日本消化器がん検診学会 胃がん検診精度管理委員会
発行 2011年03月判型:A4変頁:96
ISBN 978-4-260-01222-5
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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新・胃X線撮影法ガイドライン改訂版(2011年)発刊にあたって
─新なるものを求めて─

 高齢者社会を迎えてがんの生涯リスクは,男性が46.3%,女性が34.8%で,男性の2人に1人,女性の3人に1人ががんに罹患する時代になりました.したがって,がん対策のなかでも対象集団のがんを早期発見して死亡率減少を実現するための公的施策としてのがん検診(対策型検診)においては,技術・体制的評価(施設の設備体制,医師・技師の撮影,読影に関する要件事項),プロセス評価(検診受診率,要精検率,精検受診率,陽性反応適中度),アウトカム評価(死亡率の把握)の事業評価(がん検診実施マネジメント)が極めて重要なことであります.
 わが国では,胃がん検診はこれまでほぼ半世紀にわたってバリウムを用いた間接X線撮影検査を主なスクリーニング手段として施行してきた歴史がありますが,その間,撮影機器,造影剤,撮影体位,撮影枚数などの改良を図りながら精度管理向上への措置を講じて胃がんの死亡率減少に寄与してきました.厚生労働省の「がん検診の有効性評価に関する研究班」によって対策型の胃がん検診として行うための死亡率減少効果を判断する有効性の科学的証拠が実証されているのは,胃X線撮影法による胃がん検診だけであります.しかし,胃X線撮影法は必ずしも全国均一であるとは言えず,地域,施設,技師間の格差があり,したがって検診機関の事業精度格差を招き,今日なお胃がん検診方式の効率・効果の低下が指摘されています.消化管X線検査に関しては,機器の改良,撮影技術の向上,造影剤や撮影体位の工夫などに関しては種々検討されてきていますが,X線造影検査の質を上げるためには,「適切な造影剤の濃度と量」,「撮影体位の選択と順位」,「撮影技術の向上」,「読影力の向上」などの条件が揃うことが必要であると考えております.
 社団法人日本消化器がん検診学会では,粘膜付着の良好な高濃度・低粘性の粉末バリウムの開発とそれに伴う二重造影像主体の撮影法が多くの施設で検討されていたことなどを鑑み,2001年に胃がんX線標準化委員会を設置し,附置研究会などを通じて「胃X線撮影法(間接・直接)の実施方法の科学的評価,標準化の推進,及び精度管理の維持向上」などについて検討してきました.2002年には同委員会より新・胃X線撮影法(間接・直接)が答申され,さらに2003年には本学会の会員から同意を得るためにコンセンサスミーティングが行われました.また,胃がん検診精度管理委員会(委員長:今村清子先生)を設置して,胃がんX線検診の精度の評価・管理を目的とする体制の構築に努めてきました.これら一連の成果を踏まえて,受診者からみて安全で,安心と納得のできる胃がん検診の実現と普及を目指して,全国どの施設で胃がん検診を受けても一定基準にあった良質な画像が得られ,内視鏡に匹敵し,かつX線検査に優位な病変の診断の実現と普及を図るために,2005年3月25日『新・胃X線撮影法(間接・直接)ガイドライン』を株式会社メディカルレビュー社から発刊しました.2007年6月,厚生労働省の「がん検診に関する検討会」から提出された仕様書の「胃がん検診チェックリスト」に,撮影の精度管理では撮影枚数が最低で7枚で,胃がん検診の撮影の体位および方法に日本消化器がん検診学会の方式が採用され,また読影の精度管理では読影医は日本消化器がん検診学会の研修修了者で認定取得者を目標として,2名の医師のダブルチェックで1人は本学会認定医であること,などの項目としてあげられるようになりました.一方,学術集会や論文発表においても,すでに多くの施設から新・胃X線撮影法の基準の応用によって画質の向上とともに,要精検率の低下,陽性反応適中度,早期胃がん発見率の上昇,逐年発見進行胃癌の減少などが実証されたという報告が相次いでなされており,本書の出版の所期の目的は達成されたと確信しております.
 しかし,『新・胃X線撮影法(間接・直接)ガイドライン』が出版されて5年余りが経過して,同ガイドラインに基づく撮影や読影の評価に関する新しい知見も多く発表され,また間接撮影法と直接撮影法の相互に整合性のある撮影法を組み立てることの必要性など,いくつか改訂すべき問題点も明らかになりました.そこで,胃がん検診精度管理委員会においてガイドライン改訂版編集委員会を設置し,厚生労働省健康局がん対策推進室のご助言ご了解のもとに,改訂作業に着手しました.改訂のポイントは,「第I章 新・胃X線撮影法の基準」については,間接撮影法を基本とし,対策型検診ならびに任意型検診における撮影法を構築し,さらに,近年急速に普及し始めているデジタル装置での撮影に際しての留意点を加えています.そして,新たに,「第II章 新・胃X線撮影法の精度評価」,「第III章 胃X線検査の不利益」,「第IV章 機器の保守管理」の項目を追加し,「第V章 症例」も新しいものに編集し直すなど,内容の一新に努めました.また,今回の改訂に際して,本学会の消化器がん検診に関する実態調査「全国集計」の協力機関に偶発症のアンケート調査を行い,渋谷大助編集委員にまとめていただきました.
 編集委員長はじめ編集委員,各章の執筆担当者,症例提示協力者およびアンケート協力者など多くの皆さんの大変なご努力とご苦労のお陰でup-to-dateな内容の改訂版に編集していただきましたことに,心から敬意と感謝を申し上げたいと思います.
 今回の新・胃X線撮影法ガイドラインの改訂版を新たな糧として,日常の胃がん検診業務に実際に携わっておられる医師,放射線技師,および胃がん検診に関心をもっておられる諸兄にも大いに活用していただき,胃X線による画像や読影の精度レベルのさらなる向上と普及にお役に立てば幸甚です.
 なお,改訂版は,厚生労働省がん対策推進室から対策型検診のチェックリストの参考にしていただくため,胃がん検診を担う全国の市町村へも配布される予定です.
 最後に,本改訂版を刊行するにあたり,医学書院の関係者にはいろいろとご無理をお聞き入れいただいてご尽力賜りましたことに心から厚く御礼を申し上げます.さらに,日本消化器がん検診学会事務局の皆さんにも円滑に改訂の編集作業の進行に大変お骨折りいただきましたことに感謝致します.

 2011年3月
 社団法人日本消化器がん検診学会
 理事長 荒川 泰行

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I章 新・胃X線撮影法の基準
 A 対策型検診撮影法(従来の間接撮影法)
  1 撮影のポイントと留意点
 B 任意型検診撮影法(従来の直接撮影法)
  1 撮影のポイントと留意点
 C 撮影に際しての留意点
  1 DRおよびFPD(平面検出器)による撮影について
  2 高濃度低粘性造影剤について
  3 撮影体位および撮影時の注意点について
II章 新・胃X線撮影法の精度評価
 A 新・胃X線撮影法による胃がん検診の評価
  1 各施設の報告からの検討
  2 厚生労働省が指標としたプロセス評価
  3 厚生労働省が指標としたアウトカム評価
 B 新・胃X線撮影法の改訂と今後の課題
  1 対策型検診としての技術・体制的指標の強化
  2 直接撮影法,デジタル撮影への対応および危機管理体制の必要性
  3 読影体制の確立
III章 胃X線検査の不利益
 A 偶発症
  1 胃がん検診の不利益
  2 胃X線検査の偶発症
  3 偶発症への対策
 B 被曝
  1 被曝への関心
  2 被曝による影響
  3 低線量放射線による発がん
  4 胃X線造影検査による被曝線量
  5 被曝への今後の対応
IV章 機器の保守管理
 A 対策型検診(車検診など)
  1 概要
  2 対象
  3 管理体制
  4 検診車納入時の注意事項
  5 運用上の注意事項
  6 管理上の注意事項
  7 まとめ
 B 施設検診
  1 X線TVシステムの保守管理
  2 写真感材系と自動現像機の保守管理
 C DRおよびFPD(平面検出器)の保守管理について
  1 初期設定について
  2 出力系の保守管理
  3 読影LEDディスプレイの保守管理
V章 症例
 対策型
  1 早期胃癌の典型例
  2 早期胃癌の典型例
  3 早期胃癌の典型例
  4 逐年発見早期胃癌
  5 逐年発見早期胃癌
  6 逐年発見早期胃癌
  7 追加撮影が有効であった症例
  8 追加撮影が有効であった症例
  9 撮影中の透視観察,追加撮影が病変の存在診断に有用であった症例
  10 追加撮影が有効であった症例
  11 追加撮影が有効であった症例
  12 追加撮影が有効であった症例
  13 撮影に関する示唆に富む症例
   -前壁用フトンの適切な使用方法について
  14 撮影および読影に関する示唆に富む症例
   -胃辺縁線の異常の読影と横胃の撮影に関して
  15 撮影および読影に関する示唆に富む症例
  16 撮影および読影に関する示唆に富む症例
 任意型
  17 早期胃癌の典型例
  18 逐年検診で発見された噴門部早期癌
  19 追加撮影が有効であった症例
  20 撮影および読影に関して示唆に富む症例

 文献
 索引

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