がんエマージェンシー
化学療法の有害反応と緊急症への対応
がん緊急症へのよりよい対応をめざして
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がん診療の中で発生する高度な有害事象、「がん緊急症」。その重症化を防ぐためには、前段階での兆候を的確にとらえ、チームによるすばやい対応が求められる。本書は、化学療法実施時や、がんの進行に伴って想定される有害事象の発症要因・機序から、予防、発症後の実践的な対応までをわかりやすくまとめている。がん化学療法認定看護師はもちろん、がん診療にかかわるすべての医療スタッフの理解と実践に役立つ1冊。
著 | 中根 実 |
---|---|
発行 | 2015年03月判型:B5頁:320 |
ISBN | 978-4-260-01960-6 |
定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめに
近年,本邦においては,チーム医療や医療安全への取り組みが積極的に行われ,これらを基盤として,がんの診断と治療の標準化が確立してきました.そして,がん診療の中で発生する高度な有害事象,「がん緊急症」への対策も,それぞれの医療機関の状況に合わせて整備が進んできていることと思います.
「がん緊急症」の出現頻度は決して高くはありませんが,いざ直面すると,平常心で対応できていなかった体験を思い出すことがあります.がん診療チームが知識と経験を積み重ねていくと同時に,各分野の専門診療科との連携を円滑に行って,総合力で患者さんの治療とケアにあたる体制が求められています.
救急医療の分野では,重症化する前段階の兆候を捉えて院内の専門チームが介入を行うrapid response system(RRS)が導入され始めています.私たちは救急診療チームとの連携も深めて,こうした視点も学び,「がん緊急」へのよりよい対応をめざしていく必要もあるでしょう.
本書は,日本赤十字看護大学看護実践・教育・研究フロンティアセンターが企画・運営した認定看護師教育課程の「がん化学療法看護コース」において,2011年までに行った講義スライドを基に,アップデートを行って1冊にまとめたものです.
本書の執筆に際しては,日頃,病棟や外来化学療法室のスタッフなどから届く「なぜ?」に答える場面を意識して,図表を用いながらできるだけ平易な表現で,エビデンスを保つことにも留意をしながら解説するように心掛けました.少し詳しい内容はMEMO欄,実践的な内容はNote欄に記しましたのでご活用ください.
本書が,がん診療にかかわる看護師,薬剤師,臨床検査技師,ケースワーカーをはじめとする多くの医療スタッフの皆さんの理解や実践に役立つことがあれば嬉しいです.研修医の先生方にも概要を知るうえでは役立つかもしれません.
本書の刊行にあたりましては,医学書院看護出版部3課の近江友香様,染谷美有紀様,そして北原拓也様に多大なご尽力を賜りました.ここに,心から謝意を表します.ありがとうございました.
2015年1月
武蔵野赤十字病院腫瘍内科
中根 実
近年,本邦においては,チーム医療や医療安全への取り組みが積極的に行われ,これらを基盤として,がんの診断と治療の標準化が確立してきました.そして,がん診療の中で発生する高度な有害事象,「がん緊急症」への対策も,それぞれの医療機関の状況に合わせて整備が進んできていることと思います.
「がん緊急症」の出現頻度は決して高くはありませんが,いざ直面すると,平常心で対応できていなかった体験を思い出すことがあります.がん診療チームが知識と経験を積み重ねていくと同時に,各分野の専門診療科との連携を円滑に行って,総合力で患者さんの治療とケアにあたる体制が求められています.
救急医療の分野では,重症化する前段階の兆候を捉えて院内の専門チームが介入を行うrapid response system(RRS)が導入され始めています.私たちは救急診療チームとの連携も深めて,こうした視点も学び,「がん緊急」へのよりよい対応をめざしていく必要もあるでしょう.
本書は,日本赤十字看護大学看護実践・教育・研究フロンティアセンターが企画・運営した認定看護師教育課程の「がん化学療法看護コース」において,2011年までに行った講義スライドを基に,アップデートを行って1冊にまとめたものです.
本書の執筆に際しては,日頃,病棟や外来化学療法室のスタッフなどから届く「なぜ?」に答える場面を意識して,図表を用いながらできるだけ平易な表現で,エビデンスを保つことにも留意をしながら解説するように心掛けました.少し詳しい内容はMEMO欄,実践的な内容はNote欄に記しましたのでご活用ください.
本書が,がん診療にかかわる看護師,薬剤師,臨床検査技師,ケースワーカーをはじめとする多くの医療スタッフの皆さんの理解や実践に役立つことがあれば嬉しいです.研修医の先生方にも概要を知るうえでは役立つかもしれません.
本書の刊行にあたりましては,医学書院看護出版部3課の近江友香様,染谷美有紀様,そして北原拓也様に多大なご尽力を賜りました.ここに,心から謝意を表します.ありがとうございました.
2015年1月
武蔵野赤十字病院腫瘍内科
中根 実
目次
開く
はじめに
第1章 がん緊急症-総論
がん緊急症の分類
●がんの進行に伴う緊急症
●がん治療に伴う緊急症
重症度の評価
がん緊急症と緊急度判定
ショック
意識障害
患者・家族との対話(特にDNARに関して)
第2章 抗がん剤の血管外漏出
病態生理と症候
●起壊死性抗がん剤(vesicant drugs)
●起炎症性抗がん剤(irritant drugs)
●非起壊死性抗がん剤(non-vesicant drugs)
[MEMO 1] 抗がん剤の血管外漏出に対する薬剤
[MEMO 2] 抗がん剤による皮膚のリコール現象(recall phenomenon)
実践的対策
●血管外漏出のリスクと予防策
●抗がん剤投与中の観察と評価
[MEMO 3] 抗がん剤投与に伴う血管痛とフレア反応
●血管外漏出への対応
[Note 1] ボルテゾミブおよびアザシチジンの皮下注射
[Note 2] ガベキサートメシル酸塩と抗がん剤の投与が重なる場合の注意点
[Note 3] 中心静脈ラインにおける血管外漏出の注意点
第3章 過敏反応・インフュージョンリアクション
病態と症候
[MEMO 1] 即時型アレルギーに関する主な用語
●HSRの病態
[MEMO 2] 製剤の溶媒がHSRの原因となる薬剤
[MEMO 3] L-アスパラギナーゼ製剤
●HSRの症候
●IRの病態生理
[MEMO 4] モノクローナル抗体薬の種類
●IRの症候
HSRとIRのマネジメント
●HSR/IRに対する予防策
●抗がん剤投与中の観察と評価
●HSR/IRへの対応
[Note] HSR/IRの発症リスクが高まる場面
第4章 腫瘍崩壊症候群
病態と症候
●TLSの発症にはさまざまなリスク因子がかかわる
●腫瘍の崩壊に伴って検査値異常と臨床症候が出現する
TLSのマネジメント
●STEP 1 ベースラインの把握とリスク評価
●STEP 2 TLSに対する予防策とモニタリング
[MEMO 1] プリン骨格を有するヌクレオチドの構造
[MEMO 2] キサンチン酸化酵素阻害剤
[MEMO 3] アザチオプリンおよびメルカプトプリンの代謝
[MEMO 4] ラスブリカーゼの作用機序
●STEP 3 TLSの診断と重症度評価
●STEP 4 TLSへの対応
患者・家族への情報提供
[Note] 悪性リンパ腫の病期分類
第5章 発熱性好中球減少症
病態生理
●がん患者の免疫機能は低下している
●骨髄抑制によって好中球減少が生じる
●粘膜が脆弱化すると病原菌が侵入しやすくなる
●菌血症に伴って高度の炎症反応が生じる
[MEMO 1] 好中球の殺菌過程
[MEMO 2] 急性期反応物質
●肺炎や腸炎などを併発することもある
●FNから敗血症へと悪化することがある
[MEMO 3] 敗血症→重症敗血症→敗血症性ショック
FNのマネジメント
●STEP 1 FNの発症リスクを検討
[MEMO 4] 治療強度
●STEP 2 感染予防策の開始
[MEMO 5] G-CSF製剤
●STEP 3 化学療法後の定期的観察
●STEP 4 FNの診断と培養検査など
●STEP 5 FNの重症化リスクを評価
●STEP 6 FNの初期治療
[Note 1] 血液培養の採取法
[Note 2] 外来化学療法におけるFNのセルフケア
第6章 低ナトリウム血症
病態と症候
[MEMO 1] 星状膠細胞(アストロサイト)
検査と診断
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
●概要
[MEMO 2] AVPとNa・水代謝
●病態と症候
●診断
●治療
第7章 急性腎障害
病態と症候
診断基準
急性腎障害のマネジメント
シスプラチンによる腎機能障害
第8章 急性肝不全
病態と症候
[MEMO] プロトロンビン時間(PT)
診断基準
急性肝不全のマネジメント
抗がん剤投与に伴うB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化
薬物性肝障害(DILI)
第9章 上大静脈(SVC)症候群
病態生理
●縦隔とSVC
●SVC症候群
症候・検査
診断・予後
治療
●すべての症例に対して対症療法が行われる
●病状次第では緩和ケアのみとならざるを得ないこともある
●緊急的にステント留置が行われることもある
●全身状態と重症度から原疾患(がん)に対する治療が検討される
●合併症などへの対応も検討される
第10章 がん性心嚢液貯留/心タンポナーデ
病態生理
●心膜と心膜腔
●MPEの病態
[MEMO 1] 急性心膜炎と収縮性心膜炎
●心タンポナーデの病態
症候・検査
[MEMO 2] 胸部X線とCTの正常像
診断と重症度分類
治療
●心膜穿刺と心嚢液ドレナージ
●心膜腔内への薬剤注入
●緩和的対応
患者・家族への情報提供
第11章 静脈血栓塞栓症
VTEの病態生理
●DVTの病態生理
●PTEの病態生理
VTEのマネジメント
●DVTのマネジメント
[MEMO 1] ヘパリン製剤
[MEMO 2] ワルファリン
[MEMO 3] 血栓溶解剤
●PTEのマネジメント
患者・家族への情報提供
第12章 播種性血管内凝固症候群
病態生理
[MEMO 1] 血管内における血小板系と血液凝固線溶系
症候
●虚血症状
●出血症状
●症状の観察
検査と診断
治療
●基礎疾患の治療
●抗凝固療法
[MEMO 2] 血液凝固線溶系の反応
●補充療法(輸血)
予後
[Note 1] DICの出血傾向に対するセルフケアの例
[Note 2] DICにおける採血時の注意点
[Note 3] DICにおける末梢静脈ルートの管理
第13章 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
病態生理
[MEMO 1] 生体内におけるCa調節機構の概要
●悪性腫瘍に伴う液性高Ca血症(HHM)
●局所骨溶解性の高Ca血症(LOH)
[MEMO 2] RANKLとデノスマブ(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体薬)
症候
検査
●血中Ca濃度には2通りの検査値がある
診断
治療
●高Ca血症の初期治療
[MEMO 3] ビスホスホネート製剤の比較
[MEMO 4] カルシトニン製剤とヒトカルシトニン
予後
[Note 1] 血清カルシウム濃度の補正計算例
[Note 2] 腎機能障害に伴うZOLの減量基準
第14章 悪性腫瘍に伴う脊髄圧迫症候群
病態生理
●脊椎と脊髄
●MSCCの病態
症状と画像検査
●さまざまなタイプの疼痛と神経症状が出現する
●画像検査ではMRI検査が重視される
[MEMO 1] 骨シンチグラフィーで検出されにくい骨転移もある
MSCC診断へのアプローチ
●無症状の時点で気づかれることがある
●疼痛や神経症状からMSCCの診断へ
●がんの診断が確定していない段階で発症することもある
診断と重症度分類
予後の推定
治療
●診断直後から局所浮腫と疼痛に対する治療が行われる
●病状次第では緩和ケアのみとならざるを得ないこともある
●脊髄圧迫部位に対する治療は集学的に行われる
●全身的・長期的な治療も併行して行われる
患者・家族への情報提供
[MEMO 2] ストロンチウム89製剤(メタストロン®)は骨転移の疼痛緩和に有用
第15章 頭蓋内圧亢進症
病態と症候
検査と診断
頭蓋内圧亢進症のマネジメント
転移性脳腫瘍・がん性髄膜炎
●最近の傾向
●症候と検査
●予後の推定
●治療法の選択
付録
索引
第1章 がん緊急症-総論
がん緊急症の分類
●がんの進行に伴う緊急症
●がん治療に伴う緊急症
重症度の評価
がん緊急症と緊急度判定
ショック
意識障害
患者・家族との対話(特にDNARに関して)
第2章 抗がん剤の血管外漏出
病態生理と症候
●起壊死性抗がん剤(vesicant drugs)
●起炎症性抗がん剤(irritant drugs)
●非起壊死性抗がん剤(non-vesicant drugs)
[MEMO 1] 抗がん剤の血管外漏出に対する薬剤
[MEMO 2] 抗がん剤による皮膚のリコール現象(recall phenomenon)
実践的対策
●血管外漏出のリスクと予防策
●抗がん剤投与中の観察と評価
[MEMO 3] 抗がん剤投与に伴う血管痛とフレア反応
●血管外漏出への対応
[Note 1] ボルテゾミブおよびアザシチジンの皮下注射
[Note 2] ガベキサートメシル酸塩と抗がん剤の投与が重なる場合の注意点
[Note 3] 中心静脈ラインにおける血管外漏出の注意点
第3章 過敏反応・インフュージョンリアクション
病態と症候
[MEMO 1] 即時型アレルギーに関する主な用語
●HSRの病態
[MEMO 2] 製剤の溶媒がHSRの原因となる薬剤
[MEMO 3] L-アスパラギナーゼ製剤
●HSRの症候
●IRの病態生理
[MEMO 4] モノクローナル抗体薬の種類
●IRの症候
HSRとIRのマネジメント
●HSR/IRに対する予防策
●抗がん剤投与中の観察と評価
●HSR/IRへの対応
[Note] HSR/IRの発症リスクが高まる場面
第4章 腫瘍崩壊症候群
病態と症候
●TLSの発症にはさまざまなリスク因子がかかわる
●腫瘍の崩壊に伴って検査値異常と臨床症候が出現する
TLSのマネジメント
●STEP 1 ベースラインの把握とリスク評価
●STEP 2 TLSに対する予防策とモニタリング
[MEMO 1] プリン骨格を有するヌクレオチドの構造
[MEMO 2] キサンチン酸化酵素阻害剤
[MEMO 3] アザチオプリンおよびメルカプトプリンの代謝
[MEMO 4] ラスブリカーゼの作用機序
●STEP 3 TLSの診断と重症度評価
●STEP 4 TLSへの対応
患者・家族への情報提供
[Note] 悪性リンパ腫の病期分類
第5章 発熱性好中球減少症
病態生理
●がん患者の免疫機能は低下している
●骨髄抑制によって好中球減少が生じる
●粘膜が脆弱化すると病原菌が侵入しやすくなる
●菌血症に伴って高度の炎症反応が生じる
[MEMO 1] 好中球の殺菌過程
[MEMO 2] 急性期反応物質
●肺炎や腸炎などを併発することもある
●FNから敗血症へと悪化することがある
[MEMO 3] 敗血症→重症敗血症→敗血症性ショック
FNのマネジメント
●STEP 1 FNの発症リスクを検討
[MEMO 4] 治療強度
●STEP 2 感染予防策の開始
[MEMO 5] G-CSF製剤
●STEP 3 化学療法後の定期的観察
●STEP 4 FNの診断と培養検査など
●STEP 5 FNの重症化リスクを評価
●STEP 6 FNの初期治療
[Note 1] 血液培養の採取法
[Note 2] 外来化学療法におけるFNのセルフケア
第6章 低ナトリウム血症
病態と症候
[MEMO 1] 星状膠細胞(アストロサイト)
検査と診断
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
●概要
[MEMO 2] AVPとNa・水代謝
●病態と症候
●診断
●治療
第7章 急性腎障害
病態と症候
診断基準
急性腎障害のマネジメント
シスプラチンによる腎機能障害
第8章 急性肝不全
病態と症候
[MEMO] プロトロンビン時間(PT)
診断基準
急性肝不全のマネジメント
抗がん剤投与に伴うB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化
薬物性肝障害(DILI)
第9章 上大静脈(SVC)症候群
病態生理
●縦隔とSVC
●SVC症候群
症候・検査
診断・予後
治療
●すべての症例に対して対症療法が行われる
●病状次第では緩和ケアのみとならざるを得ないこともある
●緊急的にステント留置が行われることもある
●全身状態と重症度から原疾患(がん)に対する治療が検討される
●合併症などへの対応も検討される
第10章 がん性心嚢液貯留/心タンポナーデ
病態生理
●心膜と心膜腔
●MPEの病態
[MEMO 1] 急性心膜炎と収縮性心膜炎
●心タンポナーデの病態
症候・検査
[MEMO 2] 胸部X線とCTの正常像
診断と重症度分類
治療
●心膜穿刺と心嚢液ドレナージ
●心膜腔内への薬剤注入
●緩和的対応
患者・家族への情報提供
第11章 静脈血栓塞栓症
VTEの病態生理
●DVTの病態生理
●PTEの病態生理
VTEのマネジメント
●DVTのマネジメント
[MEMO 1] ヘパリン製剤
[MEMO 2] ワルファリン
[MEMO 3] 血栓溶解剤
●PTEのマネジメント
患者・家族への情報提供
第12章 播種性血管内凝固症候群
病態生理
[MEMO 1] 血管内における血小板系と血液凝固線溶系
症候
●虚血症状
●出血症状
●症状の観察
検査と診断
治療
●基礎疾患の治療
●抗凝固療法
[MEMO 2] 血液凝固線溶系の反応
●補充療法(輸血)
予後
[Note 1] DICの出血傾向に対するセルフケアの例
[Note 2] DICにおける採血時の注意点
[Note 3] DICにおける末梢静脈ルートの管理
第13章 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
病態生理
[MEMO 1] 生体内におけるCa調節機構の概要
●悪性腫瘍に伴う液性高Ca血症(HHM)
●局所骨溶解性の高Ca血症(LOH)
[MEMO 2] RANKLとデノスマブ(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体薬)
症候
検査
●血中Ca濃度には2通りの検査値がある
診断
治療
●高Ca血症の初期治療
[MEMO 3] ビスホスホネート製剤の比較
[MEMO 4] カルシトニン製剤とヒトカルシトニン
予後
[Note 1] 血清カルシウム濃度の補正計算例
[Note 2] 腎機能障害に伴うZOLの減量基準
第14章 悪性腫瘍に伴う脊髄圧迫症候群
病態生理
●脊椎と脊髄
●MSCCの病態
症状と画像検査
●さまざまなタイプの疼痛と神経症状が出現する
●画像検査ではMRI検査が重視される
[MEMO 1] 骨シンチグラフィーで検出されにくい骨転移もある
MSCC診断へのアプローチ
●無症状の時点で気づかれることがある
●疼痛や神経症状からMSCCの診断へ
●がんの診断が確定していない段階で発症することもある
診断と重症度分類
予後の推定
治療
●診断直後から局所浮腫と疼痛に対する治療が行われる
●病状次第では緩和ケアのみとならざるを得ないこともある
●脊髄圧迫部位に対する治療は集学的に行われる
●全身的・長期的な治療も併行して行われる
患者・家族への情報提供
[MEMO 2] ストロンチウム89製剤(メタストロン®)は骨転移の疼痛緩和に有用
第15章 頭蓋内圧亢進症
病態と症候
検査と診断
頭蓋内圧亢進症のマネジメント
転移性脳腫瘍・がん性髄膜炎
●最近の傾向
●症候と検査
●予後の推定
●治療法の選択
付録
索引
書評
開く
「痒いところに手が届く」がん緊急症対応のポイントが過不足なくまとめられた一冊
書評者: 相羽 惠介 (東京慈恵会医科大附属病院腫瘍センター長)
本書を良書と呼ばずして何を良書と呼ぶのでしょう? 秀でた書物,優れた書物であることに異論を挟む読者はいないと思います。がん薬物療法の最前線で患者ケアに携わる医療者には,是非一冊お手元に置くことを万感の想いから強くお勧めします。著者のシャイな気質を反映してか,一見マニュアル本的な印象を受ける書名と装丁ですが,その内容は成書以上です。すなわち,成書にありがちな総花的で,内容に濃淡もなく,やたらに詳しい余分な記述といったものが一切ありません。臨床上のポイントを的確に抽出,詳述し,そして理解を助けるために美しいイラストと表を多用しています。知っておくべきキーワードは欄外に簡潔に説明されています。またMEMO欄とNote欄も設け,前者では大切な「用語」や「コンセプト」について詳解されていますし,後者では臨床上実際の場面で「どうしたら良いのか?」について指南されています。
本書は「がんエマージェンシー」というくくりから,15項目にわたる章立てとなっています。確かに内容は,緊急的,救急的な病態・事象についての解説となっていますが,その病態を理解するために,腎臓内科,内分泌内科といった単子眼的,臓器診療科的見地からの狭い解説ではなく,広く臓器横断的であることはもちろん,生化学,分子生物学,臨床薬理学といったように基礎・臨床の双方を背景として詳述されているため,精緻な解説書となっています。さらには,患者教育やいわゆるムンテラと言われるIC(インフォームドコンセント)や情報提供にまで解説は及んでいます。例えば第2章「抗がん剤の血管外漏出」を見ると,通常のマニュアル書ではその対応法が形ばかり述べられる程度であるのに反し,本書では通常のマニュアル書が触れない皮静脈穿刺法を正統的に説明し,さらにはそのコツともいうべきノウ・ハウと終了までの観察法や記録方法にまで言及しています。これは,いかに著者が臨床医として優れて稀有な存在であるかを物語ると同時に,医療者教育に対する並み並みならぬ決意の表出でもあると思えます。目の前のがんエマージェンシーの患者さんをどうするか? 教科書の硬直した理屈・知識ではなく,ベッドサイド重視で実践を重んじ,柔軟でかつ即応できる医療者育成には本書のようなテキストが必要と考え,著者は執筆されたことと思います。
とにかく常人では気付かぬ痒いところに手が届く解説書です。「必要にして十分」という言葉がありますが,本書は「必要にして十分以上」です。研修医,レジデントをはじめ若手医師,看護師,薬剤師の皆さんは,本書の知識を医療チームとして共有し,明日からのがん治療に役立てていただきたいと思います。
理解を助ける図表が満載。この一冊でがん緊急症に強くなれる
書評者: 冨永 知恵子 (福井赤十字病院・がん化学療法認定看護師)
「がんエマージェンシー」「がん緊急症」というと聞きなじみのない方もいると思いますが,これらを “血管外漏出” や “過敏反応” “発熱性好中球減少症” “上大静脈(SVC)症候群” “播種性血管内凝固症候群(DIC)” などに言い換えると,臨床でよく耳にする言葉となるのではないでしょうか。看護師はがん化学療法の治療管理に直接関わります。がん治療によって急性反応として現れる緊急度の高い有害事象に,迅速で適切な対応を求められます。また,がんの進行によって出現する “SVC症候群” や “DIC” などの理解も大切です。がん診療・がん化学療法に携わる看護師にとって,がん緊急症の知識を持って患者の病態をアセスメントできることや,がん緊急症への対応を考えていくことは必要不可欠ですので,本書はその理解を助けてくれる1冊となります。
本書はまず「がん緊急症」を “がんの進行” と “がんの治療” に伴うものとして分類,整理しながら論を進め,さらにがん緊急症の重症度,緊急度を評価するためのCTCAEやJTASの説明も行っています。有害事象をCTCAEのGrade,治療時期と時間経過の関係で表した “有害事象の経時的変化” の図では,有害事象にはさまざまなパターンがあると視覚で理解できます。続く各章では,病態,症候のメカニズムや治療,マネジメントなどを丁寧に解説しています。この “病態生理” が理解しやすく,がん治療に関わる看護師だけでなく,一般臨床に携わる看護師の頭の整理や実践にも十分に役立つ情報となっています。
著者は看護師向けの雑誌や書籍の監修に携わることが多く,看護の視点も大切にまとめてくれています。何と言っても,他にはないオリジナルのカラーの図表が多く用いられており,視覚的な理解を促してくれます。よく,「図表の意味・解説をもっと詳しく知りたい!」と感じることがあると思いますが,本書は図表の解説が詳しく,初心者でも理解できるように文章でも説明が加えられています。
さらに,著者は認定看護師教育課程の講義でもとても人気のあった講師で,“なぜこうするのか” “なぜこう考えられるのか” など最新の根拠を用いて疑問を解決に導いてくれる記載が本書でも随所にちりばめられています。その1つとして,各章内には「Note」や「MEMO」の記載があり,より専門的な解説や実践につなげる内容も多く含まれています。
このように本書は,今からがん化学療法やがん看護を深めようと思っている方から,がん化学療法分野を専門としてきたベテランの方まで幅広く活用できる内容が満載となっています。ぜひ,手にしていただきたい一冊です。
書評者: 相羽 惠介 (東京慈恵会医科大附属病院腫瘍センター長)
本書を良書と呼ばずして何を良書と呼ぶのでしょう? 秀でた書物,優れた書物であることに異論を挟む読者はいないと思います。がん薬物療法の最前線で患者ケアに携わる医療者には,是非一冊お手元に置くことを万感の想いから強くお勧めします。著者のシャイな気質を反映してか,一見マニュアル本的な印象を受ける書名と装丁ですが,その内容は成書以上です。すなわち,成書にありがちな総花的で,内容に濃淡もなく,やたらに詳しい余分な記述といったものが一切ありません。臨床上のポイントを的確に抽出,詳述し,そして理解を助けるために美しいイラストと表を多用しています。知っておくべきキーワードは欄外に簡潔に説明されています。またMEMO欄とNote欄も設け,前者では大切な「用語」や「コンセプト」について詳解されていますし,後者では臨床上実際の場面で「どうしたら良いのか?」について指南されています。
本書は「がんエマージェンシー」というくくりから,15項目にわたる章立てとなっています。確かに内容は,緊急的,救急的な病態・事象についての解説となっていますが,その病態を理解するために,腎臓内科,内分泌内科といった単子眼的,臓器診療科的見地からの狭い解説ではなく,広く臓器横断的であることはもちろん,生化学,分子生物学,臨床薬理学といったように基礎・臨床の双方を背景として詳述されているため,精緻な解説書となっています。さらには,患者教育やいわゆるムンテラと言われるIC(インフォームドコンセント)や情報提供にまで解説は及んでいます。例えば第2章「抗がん剤の血管外漏出」を見ると,通常のマニュアル書ではその対応法が形ばかり述べられる程度であるのに反し,本書では通常のマニュアル書が触れない皮静脈穿刺法を正統的に説明し,さらにはそのコツともいうべきノウ・ハウと終了までの観察法や記録方法にまで言及しています。これは,いかに著者が臨床医として優れて稀有な存在であるかを物語ると同時に,医療者教育に対する並み並みならぬ決意の表出でもあると思えます。目の前のがんエマージェンシーの患者さんをどうするか? 教科書の硬直した理屈・知識ではなく,ベッドサイド重視で実践を重んじ,柔軟でかつ即応できる医療者育成には本書のようなテキストが必要と考え,著者は執筆されたことと思います。
とにかく常人では気付かぬ痒いところに手が届く解説書です。「必要にして十分」という言葉がありますが,本書は「必要にして十分以上」です。研修医,レジデントをはじめ若手医師,看護師,薬剤師の皆さんは,本書の知識を医療チームとして共有し,明日からのがん治療に役立てていただきたいと思います。
理解を助ける図表が満載。この一冊でがん緊急症に強くなれる
書評者: 冨永 知恵子 (福井赤十字病院・がん化学療法認定看護師)
「がんエマージェンシー」「がん緊急症」というと聞きなじみのない方もいると思いますが,これらを “血管外漏出” や “過敏反応” “発熱性好中球減少症” “上大静脈(SVC)症候群” “播種性血管内凝固症候群(DIC)” などに言い換えると,臨床でよく耳にする言葉となるのではないでしょうか。看護師はがん化学療法の治療管理に直接関わります。がん治療によって急性反応として現れる緊急度の高い有害事象に,迅速で適切な対応を求められます。また,がんの進行によって出現する “SVC症候群” や “DIC” などの理解も大切です。がん診療・がん化学療法に携わる看護師にとって,がん緊急症の知識を持って患者の病態をアセスメントできることや,がん緊急症への対応を考えていくことは必要不可欠ですので,本書はその理解を助けてくれる1冊となります。
本書はまず「がん緊急症」を “がんの進行” と “がんの治療” に伴うものとして分類,整理しながら論を進め,さらにがん緊急症の重症度,緊急度を評価するためのCTCAEやJTASの説明も行っています。有害事象をCTCAEのGrade,治療時期と時間経過の関係で表した “有害事象の経時的変化” の図では,有害事象にはさまざまなパターンがあると視覚で理解できます。続く各章では,病態,症候のメカニズムや治療,マネジメントなどを丁寧に解説しています。この “病態生理” が理解しやすく,がん治療に関わる看護師だけでなく,一般臨床に携わる看護師の頭の整理や実践にも十分に役立つ情報となっています。
著者は看護師向けの雑誌や書籍の監修に携わることが多く,看護の視点も大切にまとめてくれています。何と言っても,他にはないオリジナルのカラーの図表が多く用いられており,視覚的な理解を促してくれます。よく,「図表の意味・解説をもっと詳しく知りたい!」と感じることがあると思いますが,本書は図表の解説が詳しく,初心者でも理解できるように文章でも説明が加えられています。
さらに,著者は認定看護師教育課程の講義でもとても人気のあった講師で,“なぜこうするのか” “なぜこう考えられるのか” など最新の根拠を用いて疑問を解決に導いてくれる記載が本書でも随所にちりばめられています。その1つとして,各章内には「Note」や「MEMO」の記載があり,より専門的な解説や実践につなげる内容も多く含まれています。
このように本書は,今からがん化学療法やがん看護を深めようと思っている方から,がん化学療法分野を専門としてきたベテランの方まで幅広く活用できる内容が満載となっています。ぜひ,手にしていただきたい一冊です。