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一般臨床医のための
メンタルな患者の診かた・手堅い初期治療

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メンタルな疾病・問題を抱える患者は近年増加傾向にあり、精神科・心療内科が併設されていない、または併設されていてもコンサルトしがたい状況の内科・外科の臨床医、研修医にとっては、彼らへの対応に困ることがよくあるのではないだろうか? 本書では、ケースをあげて診断から手堅い初期治療まで、わかりやすく解説。苦手意識を持つ前に、是非読んでおきたい1冊。
児玉 知之
発行 2011年05月判型:B5頁:200
ISBN 978-4-260-01215-7
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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推薦の序(篠原 学/太田大介)/(児玉知之)

推薦の序
 時代の変化に伴って,うつ病を中心とした気分障害や不安障害はcommon diseaseとなり,また急速な高齢化社会とあいまって昨今,認知症も急増している.そのため精神科以外の各科医師もこれら精神疾患を持つ患者さんを日常的に診療する機会が増えてきている.そして100人に1人という高頻度の統合失調症についても社会復帰の促進により同様のことがいえる.

 本書は,精神疾患を有する患者さんの診断・治療に関して,各科医師向けに書かれたものであるが,既存の書物と異なり内科も熟達している筆者が各科医師の立場に立って,具体的な対応の仕方・評価・治療法についてきわめてわかりやすく説明していることが特徴である.

 本書は研修医のみならず,各科一般医・専門医にとってもきわめて有益である.
 また明確な評価と治療方針がこれほど丁寧に書かれている書は,ほとんどないといってよいであろう.われわれ精神科医もぜひ一読したい名著であり,ここに推薦する次第である.

 2011年3月
 青梅市立総合病院精神科副部長
 篠原 学


推薦の序
 このたび医学書院から,児玉知之先生による身体科各科の医師を対象にした精神症状をもつ患者の診断・治療についてのテキストが刊行された.
 これまでにも,身体科各科の医師を対象とした精神症状の診かたについて類書が出版されているが,診断マニュアル的な側面が強いものや,網羅的過ぎるものが多かった.一方,本書は,症状編,各科別編に分かれたユニークな構成となっており,症状編では,不眠や抑うつなど一般的な症状にテーマを絞り込んでいる.そしてそれら症状の理解と解釈,考え方にまで踏み込んで解説している.さらに本書の特徴は,各症状についてのこれまでの一般的な知見を踏まえつつ,抑うつ患者のスクリーニング,患者への説明例など,著者独自の私見を随所に取り入れている点である.実証的研究の俎上にはまだ載っていないけれども,臨床の現実に即した見解が盛り込まれている.
 著者は,聖路加国際病院で内科研修,心療内科の初期専門研修を受け,チーフレジデントも務められた.チーフレジデントには,各専門医の要望に応えつつ研修医の指導と取りまとめを行う役割があり,上級医と研修医との橋渡し役を担っている.患者や一般臨床医にわかりやすく説明しようとする著者の姿勢には,彼の当院での後輩への指導経験を重ねることができる.彼は内科全般の研修から医師としてのスタートを切り,今日は精神科医として活躍されている.両者の間には心身医学が橋渡し役として介在し,精神医学を専攻された著者が,日常的に心身医学的視点を大切にしていることが本書からはうかがえる.著者が臨床経験の中で果たしてきた橋渡し役の延長線上に本書があるといってよいだろう.
 本書は,身体科各科の医師を対象に執筆されたものであるが,コメディカルの方にも理解しやすい内容となっている.本書が,身体科各科の医師と精神科・心療内科専門医との間の橋渡し役として,さらには医師とコメディカル,患者との間の橋渡し役として,広く読まれることを望み,ここに推薦する次第である.

 2011年3月
 聖路加国際病院心療内科
 太田大介



 「初学者や専門外の医師のための本が少ないなあ…」というのが,内科医であった筆者が精神科を志すにあたり,思った率直な感想でした.
 他の身体的なプロブレムを扱う科と異なり,症例ごとの個別性がより重視され,かつ血液検査などの客観性・再現性のよい指標がほとんどないという精神科の特性を考えれば,納得すべきところなのかもしれませんが,専門的な知識のない浅学な私ではとっつきにくい著作が多いような気がしたのです.

 精神科の診療所・クリニックは新規開業が増加している一方で,総合病院の精神科は,不採算部門とみなされ,閉鎖あるいは人員が削減される傾向にあります.精神科という診療科を残していたとしても病棟を閉鎖して外来診療のみとしたり,精神科という標榜自体を取り下げて,「そういった患者は当院ではお断りします」という方針を示す医療機関も存在するようです.
 各医療機関ごとに採算を重視することは当然の流れであり,採算の合わない診療科よりも,より収入を得られる診療科に軸足を置くことは非難されるべきことではありませんが,患者さんの視点に立てば,そうドライに進められるものでもないでしょうし,実際に診療行為に当たるわれわれ医師からしても,「心(精神)のない患者」なんていないわけですから,たとえ勤務している病院が精神科を標榜しなくなったとしても,必ずある一定の頻度でメンタルな問題を抱えた患者はやってくるわけです.
 こういった事実を鑑みれば,初学者や専門外の医師が手軽に学べ,ある程度の初期対応ができるような本が必要だろうと思い,これが執筆動機となりました.

 本書は以下のコンセプトに基づき,まとめてあります.
専門外の先生方でもわかりやすい表現にするように努める
何冊も専門科以外の本を購入しなくてもよいように,「これ1冊で広く浅く網羅できる」内容にするように努める
明日から使用できるように,処方例には,一般名ではなく代表的な商品名を記載し,初期投与量・一般的に使用が推奨される処方量を記載する
特に,患者の絶対数が多く身体科の先生方も初期治療可能と思われる,身体表現性障害,うつ状態の記載を充実させる

 医学的には間違いのないように校閲を重ねたつもりですが,なるべくわかりやすく平易な記載にするため,ややもするとお叱りを受けるような表現もあるかもしれません.お気づきの点がございましたら,ご指摘賜れば幸いでございます.
 本書作成にあたり,構成から監修に至るまでご指導くださり,2010年9月に他界された元青梅市立総合病院精神科部長塩江邦彦先生のご冥福をお祈りするとともに,この場を借りて深く感謝申し上げます.
 また,お忙しい中,本書を推薦くださった青梅市立総合病院精神科 篠原 学先生,聖路加国際病院心療内科 太田大介先生に感謝申し上げます.
 最後に医学書院の担当者の方にも文章校正からレイアウトに至るまで丁寧にみていただきました.ここに感謝いたします.

 2011年3月
 児玉知之

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症状編
1 不眠症 眠れないけど,どうしたらいいですか?
 症例1 肺気腫の高齢男性が発症した急性の不眠症
 症例2 睡眠薬の効果がない中年女性の不眠症
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
  やってはいけない処方!
2 身体表現性障害,疼痛性障害 原因不明の症状があります
 症例1 若年女性の感覚障害.精神疾患?
 症例2 さまざまな症状を訴える中年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
3 うつ状態 適応障害からうつ病まで 涙ぐむ・表情が暗い…
 症例1 疲れやすい中年女性.本当にうつ病?
 症例2 身体検査上,異常のない食欲不振の中年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  うつ病のその他の症状
  うつ病のサブタイプ
  手堅い初期治療
  休養の勧めと診断書の書き方について
  治療効果判定法について
4 希死念慮 「死にたい」といわれたら
 症例1 リストカットして,興奮している若年女性
 症例2 電車への飛び込みを疑われた中年男性
  希死念慮の評価方法
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
5 認知症かもしれない? 物忘れがあります!
 症例1 比較的急性に発症した物忘れの高齢男性.認知症?
 症例2 自覚のない物忘れを呈する高齢女性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
  認知症のようだなと思ったら?
  認知症の精神症状・行動異常(BPSD)について
  認知症の予防法,リハビリテーションについて
6 幻視 おかしなことをいっています(1)
 症例1 感冒症状後に錯乱.精神疾患?
 症例2 肺炎加療中の高齢男性.夜間に不明言動あり
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
  お勧め初期治療!
7 幻聴・妄想 おかしなことをいっています(2)
 症例1 抗うつ薬投与後に幻聴を訴える中年女性
 症例2 幻聴を訴える若年男性.総合内科受診
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  統合失調症とは?
  統合失調症と一級症状
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
8 コンサルトする際の注意点 精神科・心療内科にうまくコンサルトしたいけど
  コンサルト例・1
 症例1 うつ状態が疑われる高齢男性.精神科に紹介希望
  コンサルト例・2
 症例2 うつ病を抗うつ薬で治療したものの反応不良.精神科に紹介したい

各科別編
1 外科全般 周術期管理(1) 患者に精神科疾患の既往があったら?
 症例1 慢性期の統合失調患者.胃がんを合併し,待機手術に
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
2 外科全般 周術期管理(2) 術後せん妄・術後のうつ状態
 症例1 心疾患術後の高齢男性の夜間不穏
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  せん妄増悪の事由
 症例2 術後,睡眠障害が出現した中年女性
 症例3 骨折術後,器質的に説明できない痛みを訴える高齢女性
3 内科全般 ステロイド長期使用,ステロイドパルス後の精神疾患
 症例1 亜急性甲状腺炎に対してステロイドの投薬を受けた高齢女性
 症例2 ステロイドを長期服用している潰瘍性大腸炎の中年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
4 終末期医療 ターミナルケアでの精神科
 症例1 乳がんの終末期患者の突然のせん妄
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
 症例2 膵がん終末期の高齢男性.悲観的な訴えあり
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
5 循環器内科・心臓血管外科 心臓神経症とパニック障害
 症例1 器質的異常のない動悸を訴える中年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
6 内分泌内科 甲状腺・副甲状腺,糖尿病に関連した精神疾患
 症例1 一般的な採血では異常がなかった中年女性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
 症例2 10年来の2型糖尿病患者のうつ疾患
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
7 腎臓内科・泌尿器科 腎障害時・透析で注意すべき向精神薬
 症例1 気分安定薬を服薬している双極性感情障害患者の腎障害時の対応
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
 症例2 透析患者の不眠症.一般的な睡眠薬は無効
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
8 神経内科 脳梗塞後うつ病,ドパミン調節異常症候群
 症例1 脳梗塞後,うつ状態を呈する高齢男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
 症例2 Parkinson病に対してドパミンアゴニスト内服中の中年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
9 消化器内科・外科 アルコール依存症・インターフェロン導入後精神症状
 症例1 アルコール性急性膵炎の中年男性が入院
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
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  手堅い初期治療
 症例2 C型慢性肝炎患者にインターフェロン導入
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
10 救急対応 リストカット,過量服薬,その他中毒患者の対応方法
 症例1 リストカットを繰り返し,救急受診する若年女性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療
 症例2 市販薬を過量服薬した青年男性
  担当医が今すぐやれること 非薬物治療を中心に
  コンサルトする前に!
  手堅い初期治療

索引

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精神科疾患に対応する一般臨床医の情報源として
書評者: 小路 直 (東海大八王子病院講師・泌尿器科)
 専門外の医師が慣れない他科領域の疾患を診療する際,不安を持つことが多い。特に,本書が対象としている精神科や,私の専門である泌尿器科など,専門性の高いとされる領域は敬遠されやすく,他科の医師から相談を受けることが多い。

 しかし,医師不足が問題となっている現在,総合診療医や開業医が精神科疾患への対応を迫られる状況が生じている。厚生労働省が「かかりつけ医推進事業」を掲げ,日本医師会が「最新の医療情報を熟知して,必要なときには専門医を紹介できる,地域医療,保健,福祉を担う総合的な能力を有する医師」をめざして,総合医・総合診療医認定制度をつくり,生涯教育制度の充実を図ろうとしている中,総合診療医や開業医が精神科疾患を診療する際のプライマリケアのためのガイドブックとして,本書の意義は高い。

 本書の著者である児玉知之医師は,私が聖路加国際病院で研修をして以来の親友であり,盟友である。研修医時代に,上手な点滴挿入方法から始まり,患者への対応,先輩医師とのコミュニケーションの取り方など,杯を交わしながら泥臭く語り合った日々が懐かしい。最近では,児玉医師が幹事を務める聖路加国際病院の同期会で,総合診療医や開業医と専門医との懸け橋になるような情報源の必要性について共有し,私も泌尿器科のプライマリケアに関する書籍の出版を間近に控えている。どの疾患をどの時点で,専門医に適切に依頼できるかは,極めて重要であり,これからの一般臨床医には不可欠な知識と考える。

 本書を開くと,理論と情熱を持った児玉医師らしいまなざしで,私にわかりやすく教えてくれているかのようである。私は,精神科疾患に対応する一般臨床医が,本書を「まず参考にする情報源」とされることをお薦めしたい。

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