地域理学療法学 第3版
地域理学療法の実際に即した最適テキスト
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理学療法士養成課程における「地域理学療法学」の講義に最適のテキスト。介護保険制度下の理学療法については、新たに「入所サービス」「通所サービス」「訪問理学療法」「介護予防」のそれぞれの展開について、具体例を交えて分かりやすく解説している。また、地域理学療法の実際により即した内容とする観点から、認知症についての解説を増やすとともに、「終末期における在宅理学療法」と題する項目を新たに設けている。
*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 標準理学療法学 専門分野 |
---|---|
シリーズ監修 | 奈良 勲 |
編集 | 牧田 光代 / 金谷 さとみ |
発行 | 2012年01月判型:B5頁:304 |
ISBN | 978-4-260-01224-9 |
定価 | 5,170円 (本体4,700円+税) |
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- 目次
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序文
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第3版 序
初版,第2版の序でも述べているように,近年,日本の社会保障の枠組みは大きく変わってきた.本書はこのたび第3版を出版することになったが,このように比較的早期に版を重ねる背景の1つには,理学療法士が医療施設だけでなく,いわゆる地域で活躍し始めたことによって,理学療法の目指すものが当初に比べて明確になってきたことや,先に述べた社会保障制度の改正がまだ発展途上であることにもよる.
従来,医療施設の中で研鑽と発展を遂げてきたわが国の理学療法界にとっては,地域という概念は新しい枠組みであった.特に理学療法士にとっては医療技術者としての位置づけはゆるぎないものであったから,医療モデルから生活モデルへの変換にはとまどいも大きかったであろう.
初版発行当時には,まだ地域への理学療法士の参入も限られたものであったが,この数年の間にその数は飛躍的に増加した.すなわち,介護保険制度の制定や改正,およびそれらに伴う病院入院期間の短縮などの変化が,私たちの働き場所にも大きな影響を及ぼしたのである.そして,この領域での理学療法士の働き方も変化・発展してきている.
そのなかでも,医療技術者として医療モデルと生活モデルの2つの枠組みをそのアプローチの中に取り入れることが可能となったことは,特筆すべきである.さらにいえば,入院急性期から維持期(生活適応期)である地域生活まで,理学療法の可能性や必要性を実践として広げることができたのである.
生活モデルを取り入れることにより,リハビリテーションの本来の目的である障害者の復権が,理学療法士にとっても,より身近なものとなったといえる.従来も理学療法の目的として家庭復帰や社会復帰があげられることは多かった.しかし,それはどちらかといえば,医療施設の中で家庭や社会に送り出すまでを支援するというものであった.より質の高い生活を送るために,身体状況はもちろんのこと,その生活環境,個人因子を考え,その生活を支えるという視点は医療施設にとどまっていると見えてこないものである.
医療施設での理学療法士は,たとえば下肢の運動や歩行練習をする職種というように,身体もしくは機能の一部にのみ働きかけているような誤解を生じてきた.しかし,地域という概念の中で,われわれの対象者への視点がより多様化したことは,まさに全人間的なアプローチを必要とすることにも通じる.
理学療法が地域にまでシステマティックに広がり,その医療知識や医療技術を踏まえた対象者への生活支援がより充実していくことは,理学療法の新たな,しかし,根源的な一面を確立していくものとなるであろう.
2011年10月
牧田 光代
金谷さとみ
初版,第2版の序でも述べているように,近年,日本の社会保障の枠組みは大きく変わってきた.本書はこのたび第3版を出版することになったが,このように比較的早期に版を重ねる背景の1つには,理学療法士が医療施設だけでなく,いわゆる地域で活躍し始めたことによって,理学療法の目指すものが当初に比べて明確になってきたことや,先に述べた社会保障制度の改正がまだ発展途上であることにもよる.
従来,医療施設の中で研鑽と発展を遂げてきたわが国の理学療法界にとっては,地域という概念は新しい枠組みであった.特に理学療法士にとっては医療技術者としての位置づけはゆるぎないものであったから,医療モデルから生活モデルへの変換にはとまどいも大きかったであろう.
初版発行当時には,まだ地域への理学療法士の参入も限られたものであったが,この数年の間にその数は飛躍的に増加した.すなわち,介護保険制度の制定や改正,およびそれらに伴う病院入院期間の短縮などの変化が,私たちの働き場所にも大きな影響を及ぼしたのである.そして,この領域での理学療法士の働き方も変化・発展してきている.
そのなかでも,医療技術者として医療モデルと生活モデルの2つの枠組みをそのアプローチの中に取り入れることが可能となったことは,特筆すべきである.さらにいえば,入院急性期から維持期(生活適応期)である地域生活まで,理学療法の可能性や必要性を実践として広げることができたのである.
生活モデルを取り入れることにより,リハビリテーションの本来の目的である障害者の復権が,理学療法士にとっても,より身近なものとなったといえる.従来も理学療法の目的として家庭復帰や社会復帰があげられることは多かった.しかし,それはどちらかといえば,医療施設の中で家庭や社会に送り出すまでを支援するというものであった.より質の高い生活を送るために,身体状況はもちろんのこと,その生活環境,個人因子を考え,その生活を支えるという視点は医療施設にとどまっていると見えてこないものである.
医療施設での理学療法士は,たとえば下肢の運動や歩行練習をする職種というように,身体もしくは機能の一部にのみ働きかけているような誤解を生じてきた.しかし,地域という概念の中で,われわれの対象者への視点がより多様化したことは,まさに全人間的なアプローチを必要とすることにも通じる.
理学療法が地域にまでシステマティックに広がり,その医療知識や医療技術を踏まえた対象者への生活支援がより充実していくことは,理学療法の新たな,しかし,根源的な一面を確立していくものとなるであろう.
2011年10月
牧田 光代
金谷さとみ
目次
開く
第1章 地域理学療法の概念
I.地域リハビリテーションの広がりとその社会的背景
II.地域理学療法とは何か
III.「地域理学療法学」で学ぶこと
第2章 地域理学療法を支えるシステム
I.福祉関連法的諸制度
II.介護保険制度
III.要介護認定とケアマネジメント
IV.介護予防
V.社会資源
VI.行政における理学療法士の役割
VII.関連機関との地域連携
第3章 地域理学療法の展開
I.生活者としての対象者
II.介護保険制度と理学療法:介護保険サービスとその評価
III.介護保険制度と理学療法:入所サービスの展開
IV.介護保険制度と理学療法:通所サービスの展開
V.介護保険制度と理学療法:訪問における理学療法の展開
VI.介護保険制度と理学療法:介護予防の展開
VII.介護保険制度と理学療法:集団への対応
VIII.地域における連携:入院・入所から在宅への準備
IX.地域における連携:地域の中での取り組み
X.地域における連携:他職種との連携
XI.成人障害者施設の取り組み
XII.小児施設の取り組み
第4章 生活環境の整備
I.住宅改修
II.福祉用具
III.シーティング
第5章 地域理学療法の実際
I.健康状態の評価
II.居宅高齢者の体力増進とリスク管理
III.脳血管障害
IV.骨折
V.慢性呼吸不全
VI.神経変性疾患
VII.脊髄損傷
VIII.成人脳性麻痺
IX.認知症
X.終末期における理学療法
第6章 QOLの増大に向けて
I.障害者とスポーツ
II.小児理学療法:乳幼児
III.小児理学療法:学齢期
IV.自主グループ活動への支援
索引
I.地域リハビリテーションの広がりとその社会的背景
II.地域理学療法とは何か
III.「地域理学療法学」で学ぶこと
第2章 地域理学療法を支えるシステム
I.福祉関連法的諸制度
II.介護保険制度
III.要介護認定とケアマネジメント
IV.介護予防
V.社会資源
VI.行政における理学療法士の役割
VII.関連機関との地域連携
第3章 地域理学療法の展開
I.生活者としての対象者
II.介護保険制度と理学療法:介護保険サービスとその評価
III.介護保険制度と理学療法:入所サービスの展開
IV.介護保険制度と理学療法:通所サービスの展開
V.介護保険制度と理学療法:訪問における理学療法の展開
VI.介護保険制度と理学療法:介護予防の展開
VII.介護保険制度と理学療法:集団への対応
VIII.地域における連携:入院・入所から在宅への準備
IX.地域における連携:地域の中での取り組み
X.地域における連携:他職種との連携
XI.成人障害者施設の取り組み
XII.小児施設の取り組み
第4章 生活環境の整備
I.住宅改修
II.福祉用具
III.シーティング
第5章 地域理学療法の実際
I.健康状態の評価
II.居宅高齢者の体力増進とリスク管理
III.脳血管障害
IV.骨折
V.慢性呼吸不全
VI.神経変性疾患
VII.脊髄損傷
VIII.成人脳性麻痺
IX.認知症
X.終末期における理学療法
第6章 QOLの増大に向けて
I.障害者とスポーツ
II.小児理学療法:乳幼児
III.小児理学療法:学齢期
IV.自主グループ活動への支援
索引
書評
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地域理学療法に求められる要素を凝縮
書評者: 金子 操 (自治医大病院リハビリテーションセンター室長)
理学療法士・作業療法士は,日本にリハビリテーション理念を普及すべく開拓者としての役割を持って誕生した職種である。そして日本で本格的な教育が始まってから間もなく半世紀を迎えようとしている。理学療法士の先達は,医療の世界で理学療法士が確固たる位置を築くために日々の臨床から,後進の育成・教育から,自分自身・仲間との研究からさまざまな道を切り開いてきた。病院や施設における理学療法に関する興味の中心は,脊髄損傷・切断・骨折の患者さんに対する筋力強化,拘縮改善の治療手法,車いす・義足の適合に関すること,脳性麻痺,脳卒中後遺症の患者さんに対する特殊な各種治療手法など,理学療法知識,技術の習得,実践能力の向上であり,欧米にわたった理学療法士から多くの治療手法が紹介され,日本国内に広まっていった。
病院・施設におけるリハビリテーションは,1970年代にほぼ確立されたが,その後障害者が真に生き生きとした社会生活を営むにはCBR(Community-Based Rehabilitation)の有用性が提唱され,世界的にCBRが推進されるようになった。日本でも,1980年代の老人保健法による機能訓練事業,訪問指導の展開,病院と在宅の狭間を埋める老人保健施設の新設,2000年の介護保険法の施行と,理学療法士を取り巻く環境が大きく変革された。
そのような背景の中,この地域理学療法学は,2003年に初版が,2007年に第2版が,そして2012年改訂により第3版が出版された。これから理学療法士が,保健・医療・福祉その他の分野で生き抜くために,社会でどのようなことが望まれているのか,また期待されているのかを知ることは自己の将来決定に非常に重要である。本書では,地域で実際に行われている理学療法について具体的に,詳細に紹介されている。まず,第2章「地域理学療法を支えるシステム」の行政で働く理学療法士については,今後さらに期待される重要な職域であり,行政と地域住民のかかわり・役割を知る上で貴重である。そして,第3章「地域理学療法の展開」では,介護保険と理学療法について多角的な視点から詳述されている。さらに新しく加えられた第6章は「QOLの増大に向けて」と題して,障害者スポーツ,自主グループ活動についても解説されている。
近年,理学療法士に求められている役割は医療ばかりでなく,保健領域,福祉領域,スポーツ領域,一般健康領域へと拡大してきている。本書は,地域理学療法に求められる要素が凝縮された良書であり,これから養成校で地域理学療法を学ぶ方,病院以外の分野に挑戦しようと考えている方,もう一度初心に帰って地域理学療法を学びたい方の必携書である。
学生・現場の理学療法士に役立つ地域理学療法の知識や技術を網羅
書評者: 久富 ひろみ (多摩市健康福祉部高齢支援課相談支援担当)
超高齢社会の到来は待ったなしの状況にあり,さまざまな課題を提起している。国会では,毎日のように社会保障を持続していくために,消費税や年金問題,医療(診療報酬)や介護保険制度(介護報酬)の問題が取り上げられ,1人の高齢者を生産年齢の4人が騎馬戦のように支えていた時代から,肩車のように1人で支えなければならない社会が来ると言われている。また高齢者が増え,病院に入院することも難しくなり,最期を自宅で,という姿も増えるであろうと言われている。厚生労働省ではそのような社会を支える仕組みとして「地域包括ケアシステム」の実現に向けて,制度改正などの準備を進めている。
われわれ理学療法士は,昭和40年に国家資格として誕生し,その当時の主な勤務先は医療機関であったが,このような社会背景の変化に伴い,その職域は地域(在宅)や予防の領域へと拡大してきている。
いわゆる地域でのリハビリテーションの考え方は本書で紹介されているが,障がいがあっても高齢になっても,住み慣れた地域で生き生きと生活し続けられるよう支援ができる職種として,理学療法士は大きな役割を担える専門性を有しており,社会的なニーズは高いものと考えられる。しかしながら地域で展開する理学療法を学ぼうとするとき,その基本から応用までが紹介され,知識や技術を学ぶことができる書籍は少なく,現に出版されている書籍の多くは,著者自身の地域における実践的な活動が紹介されているため,社会資源や成り立ちが異なる他地域についての内容では,応用できないことも多くある。その点,本書は地域理学療法の概念から定義,そして社会背景から始まり,関連する法規や制度を紹介し,現場で必要な知識や技術が網羅されており,理学療法を学ぶ学生の方にとどまらず,地域理学療法に関心のある方や,就職先として地域を考えていらっしゃる方が,まず勉強するときに読む本として相応しい貴重な一冊である。
理学療法士として,これからどのような領域で仕事をしていくとしても,生活の場であり最期を過ごす場でもある地域(在宅)での理学療法を学ぶために,本書をぜひご一読いただきたい。
書評者: 金子 操 (自治医大病院リハビリテーションセンター室長)
理学療法士・作業療法士は,日本にリハビリテーション理念を普及すべく開拓者としての役割を持って誕生した職種である。そして日本で本格的な教育が始まってから間もなく半世紀を迎えようとしている。理学療法士の先達は,医療の世界で理学療法士が確固たる位置を築くために日々の臨床から,後進の育成・教育から,自分自身・仲間との研究からさまざまな道を切り開いてきた。病院や施設における理学療法に関する興味の中心は,脊髄損傷・切断・骨折の患者さんに対する筋力強化,拘縮改善の治療手法,車いす・義足の適合に関すること,脳性麻痺,脳卒中後遺症の患者さんに対する特殊な各種治療手法など,理学療法知識,技術の習得,実践能力の向上であり,欧米にわたった理学療法士から多くの治療手法が紹介され,日本国内に広まっていった。
病院・施設におけるリハビリテーションは,1970年代にほぼ確立されたが,その後障害者が真に生き生きとした社会生活を営むにはCBR(Community-Based Rehabilitation)の有用性が提唱され,世界的にCBRが推進されるようになった。日本でも,1980年代の老人保健法による機能訓練事業,訪問指導の展開,病院と在宅の狭間を埋める老人保健施設の新設,2000年の介護保険法の施行と,理学療法士を取り巻く環境が大きく変革された。
そのような背景の中,この地域理学療法学は,2003年に初版が,2007年に第2版が,そして2012年改訂により第3版が出版された。これから理学療法士が,保健・医療・福祉その他の分野で生き抜くために,社会でどのようなことが望まれているのか,また期待されているのかを知ることは自己の将来決定に非常に重要である。本書では,地域で実際に行われている理学療法について具体的に,詳細に紹介されている。まず,第2章「地域理学療法を支えるシステム」の行政で働く理学療法士については,今後さらに期待される重要な職域であり,行政と地域住民のかかわり・役割を知る上で貴重である。そして,第3章「地域理学療法の展開」では,介護保険と理学療法について多角的な視点から詳述されている。さらに新しく加えられた第6章は「QOLの増大に向けて」と題して,障害者スポーツ,自主グループ活動についても解説されている。
近年,理学療法士に求められている役割は医療ばかりでなく,保健領域,福祉領域,スポーツ領域,一般健康領域へと拡大してきている。本書は,地域理学療法に求められる要素が凝縮された良書であり,これから養成校で地域理学療法を学ぶ方,病院以外の分野に挑戦しようと考えている方,もう一度初心に帰って地域理学療法を学びたい方の必携書である。
学生・現場の理学療法士に役立つ地域理学療法の知識や技術を網羅
書評者: 久富 ひろみ (多摩市健康福祉部高齢支援課相談支援担当)
超高齢社会の到来は待ったなしの状況にあり,さまざまな課題を提起している。国会では,毎日のように社会保障を持続していくために,消費税や年金問題,医療(診療報酬)や介護保険制度(介護報酬)の問題が取り上げられ,1人の高齢者を生産年齢の4人が騎馬戦のように支えていた時代から,肩車のように1人で支えなければならない社会が来ると言われている。また高齢者が増え,病院に入院することも難しくなり,最期を自宅で,という姿も増えるであろうと言われている。厚生労働省ではそのような社会を支える仕組みとして「地域包括ケアシステム」の実現に向けて,制度改正などの準備を進めている。
われわれ理学療法士は,昭和40年に国家資格として誕生し,その当時の主な勤務先は医療機関であったが,このような社会背景の変化に伴い,その職域は地域(在宅)や予防の領域へと拡大してきている。
いわゆる地域でのリハビリテーションの考え方は本書で紹介されているが,障がいがあっても高齢になっても,住み慣れた地域で生き生きと生活し続けられるよう支援ができる職種として,理学療法士は大きな役割を担える専門性を有しており,社会的なニーズは高いものと考えられる。しかしながら地域で展開する理学療法を学ぼうとするとき,その基本から応用までが紹介され,知識や技術を学ぶことができる書籍は少なく,現に出版されている書籍の多くは,著者自身の地域における実践的な活動が紹介されているため,社会資源や成り立ちが異なる他地域についての内容では,応用できないことも多くある。その点,本書は地域理学療法の概念から定義,そして社会背景から始まり,関連する法規や制度を紹介し,現場で必要な知識や技術が網羅されており,理学療法を学ぶ学生の方にとどまらず,地域理学療法に関心のある方や,就職先として地域を考えていらっしゃる方が,まず勉強するときに読む本として相応しい貴重な一冊である。
理学療法士として,これからどのような領域で仕事をしていくとしても,生活の場であり最期を過ごす場でもある地域(在宅)での理学療法を学ぶために,本書をぜひご一読いただきたい。
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