胃内視鏡検診マニュアル

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胃がんの内視鏡検診は、受診希望者も年々増加傾向を示し、多くの施設で行われているが、標準的な検査法が未だ確立されていない。日本消化器がん検診学会の付置研究会「胃内視鏡検診標準化研究会」による検討を元に纏められた「胃内視鏡検診標準法」をベースに、本書はattractiveに、convenientに、usefulに仕上がり、マニュアルとして手元に置き、活用できるテキストである。
編集 日本消化器がん検診学会 胃内視鏡検診標準化研究会
発行 2010年02月判型:A4変頁:116
ISBN 978-4-260-00967-6
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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発刊にあたって

 わが国では,急速に高齢者社会を迎えてがん死亡の絶対数は大幅に増加しており,今や2人に1人ががんになって,3人に1人ががんで命を失う時代になっております.特にがんによる死亡率は50歳または60歳以降急激に上昇し,40~89歳で死亡順位の第1位を占めています.また,2006年における部位別の死亡率で胃がんが男女ともに第2位となっています.「がんをいかに撲滅するか」ということは,医学的のみならず社会的にも重要な課題でありますので,がんを未然に防ぐ一次予防が最も重要であります.しかし,すでに発がん現象が潜在的に始まっているであろう壮年・中年・老年者では,「何人と言えども絶対にがんにならない」という保証がない限り,「無症状の早期がんを救命可能な段階で発見して,早期治療に繋げることによってがんによる死亡を防ぐ」という二次予防,すなわちがんを早期に発見し,がん死亡を防ぎ,対象年齢のがん死亡率を減少させることを目的とするがん検診も大変重要な役割であります.
 本学会は,当初胃がんの集団検診の研究と実践を目的として創立されて,その後変遷を経て消化器がん検診に関する学術研究の進歩と正しい検診普及を図って,学術,文化と広く国民の福祉に大いに貢献してきましたが,まもなく50周年を迎えようとしております.今日,がん検診は,地域検診,職場検診,人間ドック,その他の様々な検診形態で実施されていますが,そもそもわが国のがん検診は1960年代より県や市町村事業として実施され,1982年より老人保健法に基づく保健事業として,それが1998年(平成10年)には国庫補助の廃止とその一般財源化により,法律に基づかない市町村事業として継続されてきました.また,2008年以降は,健康増進法に基づく事業として市町村が実施しています.
 わが国のがん検診では,これまで受診者数の伸び悩みと固定化,がん検診費用の一般財源化措置に伴う財源不足,精度管理の劣化,受診者へのサービス(教育・啓発,受診勧奨など)低下などが指摘されてきましたが,厚生労働省の「がん検診に関する検討会(2002年~)」と「がん検診の評価に関する委員会(2007年~)」などにおいて,①検診の受診率が低いこと,②集団の死亡率減少効果の観点から実施方法や対象年齢に問題のあること,③精度管理が十分になされていないこと,などの課題について検討が行われました.さらに,わが国の第3次対がん10か年戦略の一環として策定されたがん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画(2007年6月閣議決定,2009年4月から施行)では,5年以内にがん検診の受診率を50%にする目標が設定されて,対象集団の当該がんの死亡率を減少させる目的で,有効ながん検診をより多くの人に正しく実施することが強く求められています.本学会においても,早くから学会認定医と認定技師の制度の導入,全国消化器がん全国集計委員会による消化器がん検診の実態調査の実施の他,胃X線撮影法標準化委員会,胃がん検診方法の再検討委員会,胃がん検診精度管理委員会,大腸がん検診の精度向上に関する委員会,胃がん内視鏡検診標準化研究会,などの検討委員会,もしくは附置研究会を発足させて,消化器がん検診の新しいテクノロジーの開発とアセスメント,スクリーニングテストの精度向上,検診実施マネジメントの精度向上,NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構の設立など,消化器がん検診の充実と発展の礎となる学術研究活動と有効な正しい消化器がん検診の普及を目指して活動してきました.これらの結果,『新・胃X線撮影法(間接・直接)ガイドライン』の発刊が実現し(2005年3月,株式会社メディカルレビュー社),そして2006年6月に厚生労働省の「胃がん検診に関する検討会」から提出された胃がん検診チェックリストにおいて日本消化器がん検診学会の撮影の体位および方法の採用と読影医は本学会の研修修了者で認定修得を目標としている,また2名の医師のダブルチェックで1名は本学会認定であることなどが項目として挙げられるようになりました.
 わが国では,胃がん検診はこれまでほぼ半世紀にわたってバリウムを用いた間接X線撮影検査を主なスクリーニング手段として施行されてきた歴史がありますが,その間胃がんの死亡率減少の低下に寄与してきました.2006年に発行された厚生労働省研究班による「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」では,対策型の胃がん検診として行うための死亡率減少効果を判断する科学的証拠有効性が実証されているのは胃X線撮影法による胃がん検診のみであります.しかし最近,人間ドックをはじめ任意型検診などには内視鏡,特に極細径スコープを用いた胃がん検診を行う施設が急速に増加しています.しかし,内視鏡検査による胃がん検診は,まだ標準的方法は確立されていませんので,各施行者が独自の判断で行われているのが現状であります.胃がん内視鏡検診は,胃がん検診として行うための死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であるため,対策型検診として実施することは勧められていませんが,多くの会員の皆さんから胃内視鏡検診の標準的な実施マニュアルの作成が要望されています.そこで,本学会として,胃内視鏡検診標準化研究会が編集の中心となって,『胃内視鏡検診マニュアル』を出版することに至った次第です.胃内視鏡検診は,内視鏡施行医のマンパワーや設備,偶発症のリスクなどの点から直ちに対策型の胃がん検診一次スクリーニングの応用は容易ではないと考えますが,最近検査の安楽さもあって受容性の高い経鼻内視鏡による検診の普及が目覚しいです.H.pylori感染によって胃炎が惹起されて,胃炎⇒萎縮性胃炎・腸上皮化性⇒胃がん発生の自然史が明確にされて,胃炎の進展とともに胃がんのリスクが段階的に上昇することは明らかです.今後,高齢者社会における胃がん検診の効率化を目指して,血清ペプシノゲン値とH.pylori菌抗体検査を用いて各個人の胃がん発症リスクを評価した上で(胃がんリスクの層別化),内視鏡検診を行ういわゆるABC(D)検診の普及・発展が期待されています.
 本書が,今後地域検診,職域検診,人間ドック,その他の検診において,胃がん検診の第一線で活躍されている多くの先生方に座右の書として広く活用されて,胃内視鏡検診の標準的な知識と技能を修得してより安心・安全な胃がん内視鏡検診の実践と普及に大いに寄与することを期待してやみません.
 最後に,本書の出版にあたり企画と編集をご担当いただきました伊東 進先生,芳野純治先生をはじめ胃内視鏡検診標準化研究会の委員各位と,ご多忙のなか快く原稿執筆をお引き受けいただいた諸兄姉のご努力に心から敬意と感謝を申し上げます.また,株式会社医学書院の関係者にはいろいろとご無理をお聞き入れいただき,終始格別のご協力を賜りましたことに心から謝意を申し上げたいと思います.

 2010年1月1日
 社団法人 日本消化器がん検診学会
 理事長 荒川 泰行

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 発刊にあたって
 胃内視鏡検診マニュアル作成の経緯

I 胃内視鏡検診検査手順
 1 検査医の資格
 2 消化器内視鏡検査技師
 3 内視鏡室の構造
 4 検査に使用する機器
 5 適応
 6 内視鏡検査における事故の報告
 7 検査前の受診者の準備
 8 問診
 9 抗凝固薬・抗血小板薬
 10 インフォームド・コンセント
 11 前処置
 12 受診者の検査室内誘導
 13 受診者の体位と呼吸法
 14 鎮静薬
 15 毎回行う機器の点検
 16 検査医の姿勢とスコープの把持
 17 検査の手順と画像
 18 内視鏡生検
 19 生検部位から噴出性出血がみられた場合
 20 検査のポイント
 21 内視鏡所見記載
 22 ダブルチェック
 23 無益な内視鏡画像
 24 内視鏡機器の洗浄・消毒

II 内視鏡検査の偽陰性とその対策・検査精度
 1 記録と点検,ファイリングシステム
 2 ダブルチェックおよび電子ファイリングシステムの有用性
 3 内視鏡検査の偽陰性とその対策
 4 内視鏡機種の選定
 5 検査間隔
 6 検査時間・医師1人当たりの検査数
 7 内視鏡医の養成,術者の技量

III 胃癌高危険群の設定と対象集約
 1 内視鏡検診における胃癌高危険群設定の意義
 2 胃癌高危険群について
 3 検体検査による高危険群設定方法
 4 今後の高危険群の設定の用い方

IV 偶発症と対策
 1 偶発症の実態
 2 胃内視鏡検査が関連した訴訟事例
 3 胃内視鏡検診標準化研究会での検討内容
 4 薬の副作用,禁忌および慎重投与
 5 偶発症発生時の対処法
 6 偶発症への備え

V 胃内視鏡検診標準化の問題点と今後の課題
 1 内視鏡検診の現状
 2 内視鏡検診の有効性
 3 内視鏡検診の精度
 4 偶発症
 5 経鼻内視鏡の役割

VI 症例提示
 症例1 初回発見癌
 症例2 初回発見癌
 症例3 初回発見癌
 症例4 初回発見癌
 症例5 逐年発見癌
 症例6 逐年発見癌
 症例7 逐年発見癌
 症例8 逐年発見癌
 症例9 逐年発見癌
 症例10 逐年発見癌
 症例11 X線未指摘癌
 症例12 ダブルチェック発見癌
 症例13 ダブルチェック発見癌
 症例14 興味ある症例
 症例15 興味ある症例
 症例16 興味ある症例

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