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がん診療レジデントマニュアル 第5版

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国立がん研究センター内科レジデントが中心となり、腫瘍内科学を主体とした治療体系をコンパクトにまとめたマニュアル。①practical(実際的)、②concise(簡潔明瞭)、③up to date(最新)を旨とし、可能な限りレベルの高いエビデンスに準拠。がん対策基本法が制定され、がん薬物療法に関する専門医・専門スタッフの育成は待ったなしである。日本人の2人に1人ががんになる時代、がんに関わる多くの臨床医、看護師、薬剤師、必携の書。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
国立がん研究センター内科レジデント
発行 2010年06月判型:B6変頁:504
ISBN 978-4-260-01018-4
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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  • 序文
  • 目次
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第5版の序

 「がん対策基本法」が2006年に施行され,その中に「がん薬物療法の専門医の育成」が記載され,「腫瘍内科医」に対する期待もますます大きくなっていると思われます。このレジデントマニュアルも初版発行以後,3年ごとの改訂をしてきましたが,近年のがん薬物療法の進歩は目ざましく,正に日進月歩で新しいエビデンスが生み出され,次々と新しい薬剤が承認されています。執筆を終え,編集作業をしている間にも,新薬が承認される,ということがありましたが,2010年5月現在までの最新の状況を基に仕上げました。執筆作業は,初版からの伝統を守り,「レジデントによるレジデントのためのマニュアル」の姿勢を保っています。そのため,このレジデントマニュアルはより実践で使えるマニュアルとして,腫瘍内科を現在研修中の先生方はもちろん,初期臨床研修中の先生方,また,看護師や薬剤師の皆さんにも使ってもらえる内容であると思います。
 Evidence-based Medicine(EBM)の時代となり,腫瘍内科医はより質の高いEvidenceを元にした専門性の実践が要求されるため,最新のがん医療に追いついていくのは大変なことと思います。しかし,Evidenceばかりを振りかざして,患者を思いやる気持ちを忘れてはいけません。EBMの提唱者であるカナダのDr. Sackettは,EBMの実践とは,「Evidence,医師の専門性,患者の価値観の3つを統合することである」と言っています。これから腫瘍内科医を目指そうとする若き先生方には,Evidenceのみを振りかざす冷たい医師になるのではなく,常に患者の味方であり,患者のためにどのような医療が適切なのかを真剣に考え,実践しようとする「プロフェッショナルな医師」になることを願ってやみません。

 2010年5月
 国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科医長 勝俣範之

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1 がん診療とインフォームド・コンセント
2 がん薬物療法の基本概念
3 臨床試験
4 肺がん・胸膜中皮腫
5 乳がん
6 胃がん
7 食道がん
8 大腸がん
9 肝・胆・膵がん
 肝臓がん / 胆道がん / 膵がん
10 婦人科がん
 子宮頸がん / 子宮内膜がん / 卵巣がん(上皮性卵巣がん)
11 泌尿器・胚細胞腫瘍
 前立腺がん / 膀胱がん/上部尿路がん / 腎細胞がん / 胚細胞腫瘍
12 造血器腫瘍
 急性白血病/骨髄異形成症候群 / 慢性白血病 /
 成人T細胞白血病/リンパ腫 / 多発性骨髄腫 / 悪性リンパ腫
13 造血幹細胞移植
14 骨・軟部肉腫,その他の非上皮性腫瘍
 悪性骨腫瘍/悪性軟部腫瘍
15 皮膚がん
16 頭頸部がん
17 原発不明がん
18 脳腫瘍
19 HIV関連腫瘍
20 がん性胸膜炎・がん性腹膜炎・がん性髄膜炎・がん性心膜炎
 がん性胸膜炎 / がん性腹膜炎 / がん性髄膜炎 / がん性心膜炎
21 感染症対策
22 がん疼痛の治療と緩和ケア
 緩和ケア / 精神的ケア
23 骨髄抑制
24 消化器症状に対するアプローチ
25 抗がん剤の調整・投与方法と漏出性皮膚障害
26 がん治療における救急処置─オンコロジック・エマージェンシー
27 腫瘍随伴症候群
28 転移性骨腫瘍

付録1 抗がん剤の種類
付録2 抗がん剤の略名
付録3 体表面積算定表

あとがき
索引

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その「迷い」が役に立つ
書評者: 高野 利実 (虎の門病院臨床腫瘍科部長)
 『がん診療レジデントマニュアル』は,オンコロジストのバイブルである――。

 なんていうのは間違いである。本書がバイブルであってはならない。でも,オンコロジストをめざす若手医師が,何か1冊,白衣のポケットに入れておくとすれば,本書であろう。

 バイブルではないが,役に立つ。役に立つが,書いてあることをただ信じてしまうのは,本書の正しい読み方ではない。

 バイブルは書かれてから何千年経とうとも,信じる人にとっての「絶対的真理」を常に示してくれるが,医学書はどんなに権威があろうとも,活字になった時点ですでに「過去の情報」である。それは,新しいエビデンスが日々標準治療を書き換えていくEBMの時代にあってはやむを得ない。そもそも最先端の最高レベルのエビデンスであっても,「現時点での相対的な事実」にすぎないのであって,「絶対的真理」はどこにもない。

 それでも,オンコロジストは持てる限りの力を尽くして,がん患者に向き合わなければならない。次々と生じる「臨床上の疑問」に直面しながらも,迷える患者の道案内役となり,チーム医療のかじ取り役とならなければならない。そんなオンコロジストの強い味方が,本書である。簡単な疑問であれば,本書で当座の答えが見つかるかもしれない。ただ,そのためだけに本書を持ち歩くのは,肩こりが悪化するリスクも考慮すれば推奨できない。本書の真の存在意義は,活字の裏にある著者(国立がん研究センターの内科レジデント)たちの想いや迷い,あるいはこの本をきっかけに広がるEBMの世界にあると,私は思っている。

 本書では,治療法の信頼度を★の数(1~3個)で示しているが,この★の付け方や,説明文のニュアンスには,著者たちの想いや迷いが読み取れる。★にこめられた重さが伝わってくるというのは,星の重さが年々軽くなっていると言われる「ミシュランガイド」とは大きく違う点である。若手医師の皆さんには,同世代のレジデントたちが,日々の疑問と向き合い,エビデンスと格闘しながら書き上げた本書のページをめくって,そこから疑問解決の糸口を見つけていただきたい。疑問は解決しないことのほうが多いし,本書だけで疑問が解決してしまったような場合は,その答えを疑ったほうが良いかもしれない。むしろ大事なのは,本書のページの裏側にある広大な「エビデンス」の海に自ら飛び込むことであろう。エビデンスが十分でなくても意思決定はしなければならないが,そんなときにこそ,本書で読み取れる「迷い」が役に立つ。

 本書は1997年に第1版が刊行されて以降,レジデントが執筆するという伝統を守りながら,3年ごとに改訂を繰り返し,第5版となった。実際に執筆したレジデントに聞くと,「研修の集大成としてこれ以上ない貴重な経験ができた」という声もあった。最先端の情報という点ではインターネットにかなわないし,今どき,紙媒体を持ち歩くこと自体が時代遅れなのかもしれないが,それでも,「レジデントの情熱」がつまった本書は,(肩こりが悪化しようとも)白衣のポケットに入れておく価値がある。
難解な領域ではじめに目を通しておきたい書
書評者: 佐藤 温 (昭和大准教授・腫瘍内科学)
 『がん診療レジデントマニュアル』も第5版となった。初版から既に13年を数え,とても息の長い本である。いかにがん診療医に必要とされつづけている本であるかがうかがえる。私の仕事部屋の本棚にも初版から全版が揃えられている。各版の表紙の色が異なることもあり(徐々に厚くもなっている),並べると案外きれいなものである。マニア心をくすぐるのでプレミアでも付かないかなぁなどと不謹慎なことまで考えてしまう。実は大変お世話になっているので捨てられないのである。がん薬物療法を診療の主とする医師にとっては,複雑で解釈しにくいこの領域における実臨床的な内容が,非常に分かりやすく整理されているため,初めに目を通す本としては最適である。

 第3版までは,常に白衣のポケットに入れて,日常診療にあたっていた。治療方針が分からない症例に出会うとすぐ調べた。治療計画をたてて再び内容を確認した。症例を検討するときにも本マニュアルを開きながら議論した。

 第4版は,地方での学会会期中が発売日であったため,発表に来ていた医局員とわざわざ医学専門書を取り扱う書店を探して,発売日当日に購入した。まるで,人気ゲームソフトの販売みたいである。さらに,第4版は2冊所有している。別に他からプレゼントされたわけではない。自分のポケットから支払って購入している。実は,この時私は,臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医の試験を受けるため,このマニュアルを試験合格に向けて覚えるべき知識を整理するために使用していたのである。まるで学生時代のように赤線をたくさん引いているうちに,真っ赤になってしまい,日頃の臨床時に調べにくくなってしまったので追加1冊購入した次第である。結論から言えば,がん薬物療法専門医を受けようとしている医師にも,ぜひお薦めしたい。膨大な知識をこれだけコンパクトにまとめている本はない。本書を読んでから,臨床腫瘍学会の教育セミナーを聴くと,理解しにくい自身の専門外の領域のがんの知識がよく頭に入る。また,携帯可能であることも大きい。この件については後述でその意味を追加する。

 自分勝手な話ばかりでなく,書評として本来の意義である内容について触れる。本書の特徴は,肺がん,乳がん,胃がん,食道がん,大腸がん,肝胆膵がん,といった5大がんをはじめとする一般的ながんはもちろん,婦人科がん,泌尿器,造血器,骨盤軟部腫瘍,皮膚,頭頸部,脳腫瘍そして原発不明がんに至るすべての臓器がんの疫学,診断,臨床症状,病理分類,Staging,予後とともに治療方法が簡潔明瞭に記載されている。

 また,推奨される薬物療法のレジメンは具体的に投与方法が見やすいように表わされ,かつすぐにオリジナルの論文に当たれるように文献も一緒に記載されている。さらに,この本の特徴であるが,治療法に関する信頼度を★印で表現(3段階)していることにより,EBMの理解に大いに役立つようになっている。そして,版を重ねるようになってから,各論以外の,インフォームド・コンセント,薬物療法の基本概念,臨床試験,さらに副作用対策や合併症等についての内容が充実してきている。がん告知はコミュニケーションスキルに変わっているなど,その時代背景もよく反映している。つい,読み飛ばしてしまうこれらの総論的内容がかなり充実しているのである。この部分については,日頃病棟や,診療室で目を通すのではなく,単行本の小説を読むがごとくに読んでいただきたい。大きさもポケットサイズであり,病院との行き帰りの移動時間に読むこともできるのである。もちろん,医師に限らず,医師以外の医療者にも同様に役立つはずである。ぜひ皆さん,購入されることをお勧めする。

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