アトラス 細胞診と病理診断

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細胞診と病理診断を比較しながら、疾患概念の整理と実際の診断に役立つアトラス。細胞診専門医研修ガイドライン(細胞診専門医資格認定試験ガイドライン)に準拠した内容で、細胞診フォトサーベイに必出の症例も満載。症例ごとに、中拡大・強拡大画像を主体とし、解説を1ページにまとめて示した。
編集 亀井 敏昭 / 谷山 清己
発行 2010年06月判型:A4頁:200
ISBN 978-4-260-00941-6
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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推薦のことば(長村義之)/『アトラス 細胞診と病理診断』刊行に寄せて(谷山清己・亀井敏昭)

推薦のことば
細胞像および組織像ともに美麗,
よき教科書であり実践の書

 このたび,亀井敏昭氏と谷山清己氏が編集された『アトラス 細胞診と病理診断』が刊行される運びとなり,待望していた内容が実際に書籍としてまとめられたことは実に意義あることと思う.本書は,全体にわたり編集者,執筆者のパッションが感じられる素晴らしい内容である.そしてページをめくる毎に楽しくなる教科書である.最高の賛辞を贈りたい.
 本書は,細胞診を学ぶ人,細胞診を日常的に行う人,そして細胞診の結果から臨床診断や治療を考える人など,それぞれの立場で使える参考書として企画された.細胞診に対する疑問を解決したい,あるいは細胞診と病理診断を比較したい場合にも参考になるように工夫されている.日頃,細胞像は組織像をよく反映するものとして両者の比較が推奨されてきているが,本書はそのよき実践書といえるし,示されている実例も極めて的確である.
 総論25ページ,各論150ページにわたり構成されている本書は,総論では,病理学的理解,検体採取と標本作製,スクリーニング,報告様式,周辺技術,精度管理,医療安全対策,医療倫理など,まずわれわれが知っておくべき基礎知識が簡潔にまとめられている.各論は,婦人科,呼吸器,消化器,内分泌,泌尿器,体腔液,乳腺,中枢神経,血液・骨髄・リンパ節,骨・軟部の領域に分けられ,具体的な説明が細胞診と病理診断を対比させながら進められている.随所に挿入されるTopicsもタイムリーで興味ある内容である.
 大きな特徴は,それぞれの分野で重要な疾患ごとに,解説および図を1ページに簡潔にまとめている点である.代表的なページとして「肺⑦ 腺癌─乳頭型腺癌」と「乳腺⑥ 硬癌」を開いてみる.ページの上1/3には,左に細胞診像,右に組織像が示され,真ん中にそれぞれの形態像がシェーマで示されている.その説明文として,「定義・概念」「頻度」「臨床所見」「細胞所見」「組織所見」が簡潔に述べられている.すべてのページが同様に整備されていて,細胞像および組織像ともに美麗であり,かつ非常に教育的である.執筆者のみならず編集者の“なみなみならぬ”意気込みおよび献身的な努力が感じられる.
 執筆者一覧を拝見すると,いずれも細胞診と病理診断に造詣の深い方々ばかりであり,本書の目的に最適な人選といえる.本書を活用するのは,細胞診と病理診断の,日常の診断を担っている細胞検査士,細胞診専門医のみならず,修学中の若手の諸君にも最適な教材となるものと確信する次第である.

 2010年4月
 日本臨床細胞学会理事長
 国際医療福祉大学病理診断センター長
 長村義之


『アトラス 細胞診と病理診断』刊行に寄せて
 この度,株式会社医学書院のご協力の下に『アトラス 細胞診と病理診断』を刊行する運びとなりました.細胞診を学ぶ人細胞診を日常的に行う人,そして細胞診の結果から臨床診断や治療を考える人,それぞれが等しく参考にできる書籍となるように編集いたしました.
 1人でも多くの人が本書を学び舎や病院現場に置き,細胞診に対する疑問を解決したい,あるいは細胞診と病理診断を比較したいと思うときに参考にしていただきたいと願っています.
本書の特色の第1は,日本臨床細胞学会が策定した細胞診専門医研修ガイドライン(細胞診専門医資格認定試験ガイドライン)に準拠していることです.第2は,細胞診と組織診の代表的写真を並べて提示することによって,病態の理解と概念の整理が簡単にできることです.代表的写真とは,その病態を最も的確に表現している写真を意味します.そして,第3は,各論の執筆を,細胞診専門医,病理専門医,病理に対して造詣の深い臨床医,細胞診業務に長くかかわっておられる細胞検査士の方々など,病理診断との関係において経験が深く,かつ日常業務として細胞診を実践している人たちに執筆をお願いしていることです.したがって,前述した代表的写真には,実際の現場で細胞診検査を行う際に最も基本となる所見が含まれています.それに対応する組織写真も病理診断の最も基本となる所見を含んでいます.その両者を比較することで,疾患ごとに細胞診と病理診断のエッセンスをコンパクトに学ぶことができます.その点で,多数の写真と細かな所見を提示する他の細胞診関連書籍とは大きく異なっています.その代わり,細胞診にあたって何が大切か,そして,その診断が患者に対してどのような影響や関係をもつかを簡潔な文章で説明しています.
 また,本書で提示される写真は,基本的に中拡大像以上としています.形態診断(組織診・細胞診)では,弱拡大像で全体を把握することが大事なことはいうまでもありません.しかし本書では,単刀直入にポイントを絞るという意味から敢えてこのような構成にしています.
 細胞診は,組織診より信頼性がやや低く評価されがちであり,過去には,細胞診を軽視する傾向が皆無とはいえない状況が少なからず存在していました.現在でも最終診断として病理診断が最も重視されていることに変わりなく,治療法と形態診断の関係が重視される現在の新しい癌診療においては,さらにその傾向が強くなってきています.しかし,細胞診が基本的に有している低侵襲性,経済性,迅速性は,多忙を極める日常臨床の場において大きな魅力でもあり,治療方針を迅速に判断することを願う臨床医が今まで以上に高頻度に,そして広範囲に,細胞診を利用する場面がみられます.また,組織診材料を採取することが困難で細胞診のみが有力な診断情報を与える状況にもしばしば遭遇します.現在の病理医が,細胞診の知識と経験無しで臨床医の要求に応えることは困難になっているといっても過言ではないでしょう.とりあえずの「診断」として材料が提出されたとしても,その「診断」がより高いレベルで行われることが求められていくのは自明です.
 本書は,経験豊富な細胞診断医・技師が,長年の経験と最新の知識を踏まえてまとめた,細胞診と疾患のポイント集とも位置づけられるものです.手にとって眺めてみてください.写真の美しさ,わかりやすさが必ずあなたの役に立つでしょう.

 最後に,医学書院の絶え間ないご助力に感謝の気持ちを表して筆を置きます.

 2010年4月吉日
 編集
  谷山清己
  亀井敏昭

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総論
 1 病理学的理解
 2 検体採取と標本作製
 3 スクリーニング
 4 報告様式
 5 周辺技術
 6 精度管理
 7 医療安全対策
 8 医療倫理

各論
 1 婦人科領域
 2 呼吸器領域
 3 消化器領域
 4 内分泌領域
 5 泌尿器領域
 6 体腔液
 7 乳腺領域
 8 中枢神経領域
 9 血液,骨髄,リンパ節
 10 骨・軟部

索引

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細胞像と組織像が対をなして,使い勝手のよいアトラス
書評者: 根本 則道 (日大教授・病理学)
 このたび,亀井敏昭先生(山口県立総合医療センター)と谷山清己先生(呉医療センター・中国がんセンター)編集による『アトラス 細胞診と病理診断』が医学書院から刊行された。

 改めてご紹介するまでもなく,両氏は病理学会ならびに臨床細胞学会において指導的な立場で活躍されている現役の病理医であり,細胞診と病理診断の実務においては豊富な経験と貴重な症例を沢山お持ちの,いわば細胞診と病理の鉄人である。

 本書の特徴の1つは編者の豊富な人脈を駆使した90名にものぼる実務家(病理医,臨床医,細胞検査士)による,総論(病理学的理解,検体採取と標本作製,スクリーニング,報告様式,周辺技術,精度管理,医療安全対策,医療倫理)と各論(婦人科,呼吸器,消化器,内分泌,泌尿器,体腔液,乳腺,中枢神経,血液・骨髄・リンパ節,骨・軟部)の執筆である。

 とりわけ総論の項においては,限られた紙数の中に極めて重要かつ基本的な事項が要領よくまとめられている。各論の項では,各領域において日常業務で遭遇する頻度の高いものは勿論のこと,比較的頻度は低いが鑑別診断として重要なものがほとんど網羅されている。執筆は個々の疾患ないし病態について,その定義・概念,頻度,臨床所見,細胞所見,組織所見が簡潔に解説されており,特徴的な細胞像と組織像が対をなして掲載されている。また,細胞像と組織像にはシェーマが付され,説明文を読んだだけでは理解に苦慮する初学者に対しての細やかな配慮がなされている。

 なお,本書に掲載されている細胞像ならびに組織像は,アトラスの使命である教科書的かつ典型的であるとともに非常に美しく,編著者らの本アトラスに対する並々ならぬ情熱を感じる。各論に関しては基本的に1ページ(時に半ページ)で参考文献を含めすべての解説が完結するため,ページをめくる必要がなく非常に読みやすい体裁となっている。

 さらに,本書のもう1つの特徴は,随所にTopicsがちりばめられていることである。Topicsに取り上げられている内容に一定のテーマはないが,広範囲に及び,アトラスのページには盛り込めなかった事柄や新しい疾患概念,診断に役立つクルーなどが解説されている。

 本書を通読して感じることは,何といっても読みやすいこと,アップデートな内容を含んでいること,さらに視覚素材としての細胞像ならびに組織像が適切であり非常にきれいなことである。すでに実務に携わっている病理医ならびに細胞検査士にはもちろんのこと,日常診療において細胞診を取り扱う臨床医,細胞診専門医資格の取得をめざす医師,また細胞診に興味をもっている研修医ならびに医学生にとっても非常に使い勝手の良いアトラスである。

 病理診断・細胞診断に関する知識の整理,日常の業務における知りたい事項や所見などを手短に確認したい時にも頼りになる。自室の書架,医局図書室,研究室ならびに医療現場にはぜひとも備えることをお薦めする一書である。
細胞像と由来した組織像をあわせて提示
書評者: 藏本 博行 (日本細胞診断学推進協会副理事長/北里大学名誉教授/(財)神奈川県予防医学協会婦人検診部部長)
 細胞病理診断の素晴らしい啓発書が刊行された。

 細胞診は,細胞所見を検鏡して病変全体を診断する,つまり海上に飛び出している一部の所見をもとに氷山の全体を見極めるに等しい診断法である。したがって,細胞診断にあたっては,目では個々の細胞の微細な変異を読み取りながら,これとは逆に頭の中では広角カメラの様に病変全体の組織像を思考する姿勢が求められる。そのため,細胞診断の専門家であるためには,細胞の微細な変異を読み取る能力ばかりでなく,病理組織像を理解しておくことが不可欠である。

 本書は,ともすれば細胞像の提示だけになりやすかったこれまでの細胞診の教本を脱却して,細胞像とこれらの由来した組織像をあわせて提示する,斬新なアイディアを基にして企画された,優れた啓発書である。両者の写真が美しく科学的であるばかりでなく,何処に着目すべきかを示す綺麗なイラストも付けられている。しかも,細胞所見と組織所見の説明に加えて,定義,頻度や臨床所見,果ては一層勉強したい読者用に文献まで提示されている。さらに驚いたことに,1ページで完結する記載で,1ページを理解すれば1疾患がわかる構成となっている。心憎いばかりに行き届いた気配りである。

 日本臨床細胞学会では細胞診断の専門家(細胞診専門医と細胞検査士)を認定しているが,近年,細胞診専門医研修ガイドラインを策定した。社会から細胞診断を任される専門家がどのような専門的知識を心得ておくべきかを示す指針である。本書の編集者はこのガイドライン策定委員会の中心的メンバーであった。本書に取り上げられた150例の癌・非癌病変は,ガイドラインに掲載されている,知っておくべき「必須」項目を細胞像と組織像で具現したものであるともいえる。また,本書の総論に記載された内容には,検鏡の前に心得ておくべき細胞に関する基礎知識が網羅されている。さらに,ガイドラインを超えて,各所に“Topics”として最新の知識がちりばめられているのには,正直,頭が下がる思いである。

 本書は,細胞診専門医をめざす医師にとって必見の教科書であるばかりでなく,細胞診専門医・細胞検査士や細胞診にかかわる臨床医のレベルアップのための,座右の書としてお薦めしたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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