NANDA-I看護診断
定義と分類 2009-2011

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2008年のNANDAインターナショナル総会で承認された看護診断を収めたハンドブック。新しい看護診断が21追加され、9つの看護診断が改訂された。原書の変更に合わせて日本版も少し大き目のA5判変型に変更した。臨床でのレファレンスに、また看護診断の学習に役立つナース必携の書。
編集 T.ヘザー・ハードマン
監訳 日本看護診断学会
中木 高夫
発行 2009年07月判型:A5変頁:536
ISBN 978-4-260-00864-8
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
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訳者まえがき(中木 高夫)/序文(T.ヘザー・ハードマン)

訳者まえがき
 今回も無事にNANDAインターナショナルの『NANDA-I看護診断 定義と分類 2009-2011』をお届けすることができました。
 原著が発売になったのは2008年11月10日ということですから,新学期に間に合う出版という長年の夢が可能であったのですが,勤めている大学が7年に一度の認証評価の審査を受けるために,年末ぎりぎりまでそのための自己点検・評価報告書にかかりっきりになり,2009年の1月から翻訳を開始することになってしまいました。本当に申しわけありません。
 本書2009-2011年版を手にして最初に気づかれたのは,おそらくそのサイズでしょう。いままでは看護師のポケットに入ることを意識して(とくに日本語版は),コンパクトなサイズで本作りをしてきましたが,この版から原著が縦23×横15×厚さ2.5cmと大きくなったからです。もちろん,大きくなるからにはそれだけの理由があります。
 原著は1992年版から2007-2008年版までNANDAおよびNANDAインターナショナルという学会から出版されていました。ところが,この2009-2011年版からは学会からではなくWiley-Blackwell社から出版されることになりました。出版および販売にかかわる膨大な作業を考えると,これによって全世界に迅速に送り届けるシステムができあがったということになります。
 そのためでしょうか,単に診断をつけるためのマニュアルとしてでなく,看護診断に関する本として内容のあるものにする工夫がほどこされました。気がついた点をあげてみましょう。

1.新しく21の看護診断が採択された
 2009-2011年には新しく採択された21の看護診断が収載されています。
 〈セルフネグレクト〉は「自己無視」とも訳せますが,すでに心理学や公衆衛生学領域ではカタカナ表記が定着しています。必要な医療や介護サービスを受けていない,非衛生的な住居に住んでいる,身体的ニーズが満たされていない,家に閉じこもっている,地域から孤立しているというような人を表しています。
 〈新生児黄疸〉と〈電解質平衡異常リスク状態〉,そして「消化管運動」に関する2つの診断は病態生理学的診断です。
 〈睡眠パターン混乱〉については,以前から看護診断に親しんでいる方なら「これって〈不眠〉に変更になったのでは?」と不審に思われるかもしれません。NANDAインターナショナルに存続を希望する意見がたくさん寄せられたために,〈不眠〉はそのままにして,新たに〈睡眠パターン混乱〉が採択されたという次第です。
 〈出血リスク状態〉と〈ショックリスク状態〉も病態生理学的診断です。
 〈非効果的消化管組織循環リスク状態〉〈心臓組織循環減少リスク状態〉〈非効果的腎臓組織循環リスク状態〉〈非効果的脳組織循環リスク状態〉〈非効果的末梢組織循環〉の5つは,以前の〈非効果的組織循環:消化管・心肺・腎臓・脳・末梢血管〉をバラバラに分解したものです。なぜ「心臓組織循環」の判断軸の用語だけが「減少」で,なぜ「末梢組織循環」だけがリスク型看護診断でないのかは不明です。
 〈非効果的活動計画〉という訳語については,校正をやり終えて,まえがきを書いているこの時点でも「非効果的活動計画立案」のほうがよかったかもと迷っています。
 〈パートナーシップ促進準備状態〉と〈出産育児行動促進準備状態〉は,助産診断について研究をされてきた青木康子先生のグループによる日本発,そして日本初の診断です。
 〈母親/胎児二者関係混乱リスク状態〉も病態生理学的診断です。
 「レジリエンス」という聞き慣れない診断概念に関する3つの診断が採択されましたが,すでに日本の雑誌や学会でもとりあげられています。
 〈血管外傷リスク状態〉は臨床で看護師が気をつかっている現象です。
 〈安楽障害〉の「安楽」はコルカバの「コンフォート理論」にもとづいています。全人的安楽という,一般人が使用する安楽よりも深い概念です。

2.読み物が増えた
 第1章にMargaret Lunney博士のアセスメントに関する論文とLeanne Scroggins氏の看護診断の提案の手続きについての論文が新たに加わりました。NANDAインターナショナルは「分類法IIが看護アセスメントのための唯一の方法として用いられるべきであると求めるものでも提案するものでもない」という声明を出しています。Lunney博士はGordon博士のFunctional Health Patternを用いていますが,これについても「これに限定されるということではない」と声明は述べています。

3.文献リストが長くなった
 2005-2006年版から新しく採択された診断と改訂された診断には,その診断を裏づける文献のうち代表的な3つを掲載するようになりましたが,2009-2011年版からはそれが数ページにもおよぶ長大なものとなりました。非英語圏である日本では,軽便なマニュアルとして使用するうえで今後に課題を残しました。

4.診断ラベルがいくつか変更されている
 改訂された看護診断のリストにはないのですが,いくつかの診断ラベルが変更されて使いやすくなっています。
 〈非効果的自己健康管理〉←〈非効果的治療計画管理〉
 〈自己健康管理促進準備状態〉←〈治療計画管理促進準備状態〉
 〈愛着障害リスク状態〉←〈親/乳児/子間愛着障害リスク状態〉
 〈家族機能障害〉←〈家族機能障害:アルコール症〉
 
5.気になっていた間違いがやっと訂正された
 日本語版では訂正していたので問題はなかったのですが,〈急性疼痛〉の診断指標に含まれる「苦悶様顔貌」にあがっている「輝きのない目,打ちひしがれた外観,固定された動き,散漫な動き,しかめ面」という内容が,英語版では1997-1998年版以来(当時は〈疼痛〉だった)ずっと「睡眠障害」という診断指標にくっついていました。おそらく,コピー&ペーストのしそこないと考えられますが,このたびやっと訂正されました。
 
 翻訳の作業は英語版の校正の作業でもあります。今回もNANDAインターナショナルと連絡をとりつつ,正確な訳につとめたつもりです。医学書院の石井伸和さんと森本成さんには,原著の綿密なチェックおよび翻訳を助けていただきました。感謝します。
 さて,2009-2011という数字が示すように,隔年に刊行されてきた習慣が,今回からは3年ごとになるようです。それまで,十分に活用していただければ幸いです。翻訳に対するご意見は日本看護診断学会のホームページ内のパブリック・コメントにお寄せください。

 第15回日本看護診断学会学術大会を前にして
 中木 高夫


序文
 本書2009-2011年版は,『NANDA-I看護診断―定義と分類』に新たな外観と雰囲気を与えています。おそらく,いちばん明らかなのは本書の物理的なサイズの変更でしょう。この変更により,圧縮された以前のポケットサイズ判に収められるよりも多くの内容を提供できるようになりました。21の新しい看護診断が追加され,また9つの診断が改訂されたことをお伝えできることは喜ばしい限りです。6つの診断が分類法から削除されましたが,これらの診断を改訂し,再提案をしていただくことを考慮していただくために,本書では第4部として残してあります。〈睡眠パターン混乱〉という看護診断は2007-2008年版で削除されましたが,この版では戻されました。とくに,新しい診断が20以上追加された版としては今度の版が2番目であることをお伝えすることで心躍る気持ちです。専門の領域や実践の場,文化的な問題のためになじまない診断もあるので,これらすべての診断をすべての人が使用するわけではないかもしれませんが,新しい診断を分類法に取り入れる際には看護実践の全世界規模の範囲を考慮する必要があります。
 さらに,NANDA-I診断分類法の領域(ドメイン)と類(クラス)に沿って,各診断の後(日本版では診断ラベル下線の右下)に括弧でくくられたすべての看護診断のコード番号が記されていることにお気づきのことと思います。また,前の2007-2008年版から始めて,提案者がいちばん重要であると指定した3つの文献だけ載せていたのですが,この版からは新しい診断と改訂された診断に提案された文献をすべて付記することにしました。このことですべての読者のみなさんに,特に診断概念をもっと詳しく調べてみたいという人々に,重要な情報を提供できるようになったと思います。
 今度の版での変化は,臨床判断とアセスメントについてと,臨床で看護診断を適切に使用する際の臨床判断とアセスメントの役割についてのMargaret Lunney博士による章を追加したことです。また,Leanne Scroggins氏による新しい章では,NANDA-I診断開発委員会(Diagnosis Development Committee: DDC)への看護診断の提案手続きが詳しく述べられています(NANDA-Iの機関紙に掲載されたもの)。追加された章は,看護教育や看護情報学,看護研究,看護管理への看護診断の活用と適用可能性に関する理解を深めてくれます。こうした情報は,看護専門職にとって重要な分野での看護診断の重要性に関する短い紹介となります。特に,看護診断のより明確な臨床応用の必要性に注目している分野の人々による強い関心が集まっているからです。
 NANDAインターナショナルの組織として,この他の重要な変更は,『NANDA-I看護診断―定義と分類』をBlackwell社との提携のもとに発行し,世界中で販売することを決定したことです。NANDAインターナショナルの機関紙である『The International Journal of Nursing Terminologies and Classification』の発行に加えて,2冊の書籍『NANDA-I看護診断―定義と分類』と『事例に基づく看護診断の検証』(邦訳はブレーン出版発行,2002)の新版『Critical thinking, nursing diagnoses, intervention, and outcomes: Case studies and analyses』を含め,Blackwell社との提携を広げることができたことに大きな喜びを感じています。Blackwell社が提供してくれる専門知識や技術,そしてとくに私たちの成果を世界規模で,また多言語で流布させる支援によって,NANDAインターナショナルが大きな恩恵を受けると確信しています。Blackwell社との提携がうまくいくことを期待しています。
 看護の知を明らかにし,その存在がとらえられるようにする標準化された看護用語と,情報システムによって測定されるその効果に対する必要性の認識が高まってくることから,現在まだNANDAインターナショナルの会員になっておられない方々に,今すぐ入会の時間をとってくださるようにお願いします。また,協会の仕事を継続するためにも,同僚である現場の看護師,学生,管理者,教育者,研究者,情報学を専門とする看護師の方々に入会を勧めてくださるようにお願いします。さまざまな実践の場にいる看護師やさまざまな背景の看護師の賢明な意見に,すべての患者が恩恵を受けることと思います。NANDAインターナショナルへの入会案内は495ページに載っています。あるいはNANDAインターナショナルのウェブサイト(www.nanda.org)でも見ることができます。
 実践の場で働く看護師や,ブラジルやカナダ,イタリア,日本,スペイン,そして合衆国など数か国の看護師から提案された看護診断を検討する間に,私はたいへん力づけられました。看護の標準言語に対するこうした方々の献身がなかったら,何も発刊することがなかったと思います。この版で,看護診断の数は188から206へ増えました。しかし,看護実践の豊かさを説明する努力はまだまだ不足しています。今こそ,この点でのあなたの力添えがあれば,さまざまな場や患者,文化におよぶ看護実践を説明できるようになることでしょう。Leanne Scroggins氏による章に目を通し,今年少なくとも1つの診断についての作業に関与してくださるようにお願いします。審査のプロセスを通して先導してくれる指導者が割り振られるように,どうぞご遠慮なく診断開発委員会へ連絡をとってください(診断開発委員長にはNANDAインターナショナルのウェブサイトから連絡できます)。あるいは www.nlinks.org にログオンして,概念分析を進めるためにそこに示してあるツールを使ってください。私たちの学問へのあなたの貢献,すなわちNANDAインターナショナルの診断開発委員会への提案をこころからお待ちしています。
 この版はすべての新しい診断と改訂する診断に対する初めてのeメール投票の結果できあがったものです。この形式をとることで,2年に1回開催されるNANDAインターナショナルの総会に出席できない会員の方々も,新しい診断と改訂する診断の提案に対して,示唆に富む審査と投票を行うことによって協会の仕事に貢献できるようになりました。診断の審査のための電子フォーマットを立ち上げることを可能にした彼女の仕事に対して,有限責任会社Coherence CommunicationのオーナーであるMary Hemminger氏にお礼を申し上げます。この方法によって,以前行っていたように2年後まで待つこともなく,診断開発委員会の審査過程に沿うことで,これからは診断の審査が可能になります。そして,承認された新しい診断と改訂された診断をNANDAインターナショナルのウェブサイトで,会員はいつでも閲覧することができるようになるでしょう。
 私は,2年間にわたって協会の仕事に精力と熱意を注いでくださいましたことに対して,理事会のメンバーやNANDAインターナショナルの委員会の委員の全員,そして委員長に賞賛の気持ちを表したいと思います。NANDAインターナショナルは,会員とエンドユーザーの方々の専門的な知識に信頼を置いた,会員主導のボランティア組織です。理事会のメンバーに求められる時間的拘束はかなりのものであり,それは委員会のメンバーでも委員長でも同様です。私はこのようなすばらしい組織の理事長としての役割を果たすことができ,たいへん名誉に思っています。そして,このような形で会員の代表となる機会をもてたことに感謝しています。
 最後になりましたが,今回の版で診断開発委員会が診断の提案の指導と,新しい診断と改訂する診断の提案の審査の役割に加えて,いくつかの看護診断の改訂に果たした重要な役割を強調しておきたいと思います。こうした方々は協会の仕事を前進させるのに重要な役割を演じ,その努力は決して少ないものではありません。本書に掲載されている看護診断の継続的な改善への献身と参画,傾倒に対して,とくに共同委員長であるLeann Scroggins氏とGeralyn Meyers博士に感謝の意を表したいと思います。Scroggins氏は今年でもって診断開発委員会の2期目の委員長を終えることになります。彼女のここ数年間のNANDAインターナショナルでの功績,とくに診断開発委員会への献身と傾倒に対してお礼を申し上げます。診断審査の過程で,委員は最終的に21の新しい診断のすべてに対して賛否を投じましたが,実際にはもっと多くの診断とその提案者の作業をしてきたことは明記しておくべきでしょう。その仕事の中には現在もまだ進行中のものがあり,それについては次の審査期間で継続されることになります。こうしたことから,理事会を代表して本書を診断開発委員会の委員と共同委員長に捧げることにします。
 私は読者の方々が,学生であれ教員であれ,現場の看護師であれ,情報学の研究者であれ,管理者であれ,さらには研究者であれ,『定義と分類』のこの版が看護実践に欠かせないことに気づかれるように願っています。“看護の知識を明らかにすること”こそがNANDAインターナショナルの仕事であることは明らかです。

 NANDAインターナショナル理事長
 T.ヘザー・ハードマン
 T. Heather Herdman, PhD, RN
 President, NANDA International

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NANDAインターナショナルの版権許諾取得のためのガイドライン
《分類法II 》の診断概念
訳者まえがき
序文
はじめに
本書の使い方
凡例
2009-2011年版で新たに採択された看護診断と提案者
2009-2011年版で改訂された看護診断と提案者
2009-2011年版で削除された看護診断
分類法II:領域(ドメイン)・類(クラス)・診断概念・看護診断による目次

第1部 看護診断入門:正確性,さまざまな実践の場への適用,
    『NANDA-I看護診断 2009-2011』への看護診断の提案

 アセスメント,臨床判断,看護診断:正確な看護診断の決定方法
 付録:機能的健康パターンアセスメント枠組み
 教育分野における看護診断
 電子健康記録システムにおける看護診断の価値
 看護診断と看護研究
 看護管理における看護診断
 採択されるNANDA-I看護診断の開発のプロセス
第2部 NANDA-I看護診断 2009-2011
第3部 分類法II 2009-2011
 《分類法II 》の開発経緯
 《分類法II 》の構造
 多軸システム
 各軸の定義
 看護診断の記述の構造
 看護実践のNNN分類法
 《分類法II 》の今後の発展
第4部 NANDA-I分類法II 2009-2011で削除された看護診断
第5部 NANDAインターナショナル 2009-2011
 詳細審査過程
 迅速審査過程
 新しい診断の提案過程
 診断改訂の過程
 診断開発委員会の決定に対する不服申請過程
 NANDA-I看護診断の提案:根拠レベルの判断基準

用語解説
NANDAインターナショナル 2009-2012
 NANDAインターナショナル理事会
 NANDAインターナショナル診断開発委員会
 NANDAインターナショナル分類法委員会
NANDAインターナショナル入会案内
NANDAインターナショナル:会員主導の組織
NANDAインターナショナル分類法
NANDAインターナショナルのサービス
提案したい看護診断がありますか?

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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