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ナースのための統計学 第2版

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発売以来、25年を経た現在でも多くの読者が求めるロングセラーをリニューアル。判型を大きくし、2色刷りにしたことで、より見やすく、より使いやすくなった。x、y、Σといった記号はできるかぎり使わずに日本語で解説していることで、わかりやすさは前版と同様。統計学が苦手な方に、ぜひ手にとってもらいたい1冊。
高木 廣文
発行 2009年02月判型:B5頁:228
ISBN 978-4-260-00772-6
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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  • 序文
  • 目次
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――第2版に思うこと

 本書の初版が出版されてから,早いものでそろそろ25年が経とうとしている。夜中に手書きで原稿を書いていたのが,今はパソコンである。黒かった髪の毛は,今やすっかり白くなってしまった。月日の流れは,人を待ってはくれないし,学問の道も全く極まっていない。初めての単著でもあり,読者に受け入れられるかずいぶん心配したのだが,そんな著者の心配をよそに,結構長く売れ続けてくれた。さすがに少し手直しが必要になってきたので,時流に合わせた改訂を行うことになった。
 あらためて読み直してみると,用語に関してはほとんど変わりはないが,修正が必要な箇所がいくつかあった。しかし,例題などは変える必要を感じなかった。この理由は,統計学は方法論の学問であり,その基礎的な理論が変わるわけがないからである。
 一方では,統計学は多くの人たちには相変わらず馴染みにくい,難しいと思われていることも以前と変わっていないようである。本書がはじめから目指していた「わかりやすい統計学」というコンセプトは今も変わってはいない。なるべく平易な表現にするための文章の修正,表や図の見やすい表示,そして記号を用いない文字による計算式の表現などは,初版以上に理解しやすくなっていると思う。
 医療の分野でのエビデンス・ベースド・アプローチ(科学的証拠に基づくアプローチ)の浸透でわかるように,統計学は実用の学として,人間集団を対象とした科学的研究を推進する役目を担っている。統計学的解析結果の解釈が正しくできるようになるためには,実際に計算式を使って自分自身で計算するのが最良の方法である。電卓片手に計算式を頼りにデータを入力するのが本当はよいのだが,今は多くのパソコン用ソフトが利用できる。コーヒーブレークに,統計計算のためのソフトとインターネット上のサイトも紹介しておいた。本書を手がかりとして,統計学が正しく理解されるようになることを願っている。
 2009年1月
 高木廣文

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第1章 データ-研究および分析の最も重要な素
 データとは何か
 データと数
 データ解析と統計学
第2章 データの集め方-統計学に沿ったデータの選び方
 母集団と標本
 標本の抽出法
第3章 1変数についての解析-1つの事柄を分析するための方法
 変数とは
 分布を描く
 分布の代表値
 分布の散布度
 母集団での平均値(母平均)の推定
 割合について
 2グループの母割合(母比率)の差の検定
 2グループの母平均値の差の検定
 両側検定と片側検定
第4章 2変数についての解析-関係についての分析法
 相関図
 回帰直線と相関係数
 相関係数の検定と推定
 順位データの相関係数
 相関係数についての注意
 クロス集計
 クロス表の検定
 クロス表からの関連係数
 2×2のクロス表について
第5章 分散分析-いくつかの要因の効果を測定するための方法
 実験計画法の考え方
 一元配置法
 二元配置法
第6章 その他の分析法-分布を仮定しない検定法と多変量解析について
 マン-ウィットニーのU検定
 符号検定
 多変量解析の考え方

 コーヒーブレイク
 付表
 参考文献・図書
 索引

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統計学のミニマム・リクワイアメントがここにある (雑誌『看護教育』より)
書評者: 春名 めぐみ (東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学講師)
 高木廣文先生の『ナースのための統計学』といえば,看護を学んできた私のような者にとっては,まさしく統計のバイブルのような存在ですが,何と初版から25年の時を経て,第2版を出されたということで,真新しい本を拝見させていただきました。初版本とは,ずいぶん体裁が変わり,書棚にしまっておくのがもったいないような素敵なパステル調の装丁になっていました。私としては,思わず笑ってしまうような挿絵のイラストが大好きなのですが,何よりも中の構成がずいぶん読みやすく工夫されて,とにかく見やすく,さらにわかりやすくなったと思いました。内容はといえば,基本的な構成はそのままに,ほとんど変わっていないそうで,高木先生が「序」で述べられているように,用語に関していくつかの修正があったものの,基礎的な理論が変わるわけではないから,方法論としては変更の必要がなかったということをお聞きし,とても安心しました。

 統計の基本は,目の前にある数値をどう読み解くかということであり,研究に限らず,看護の臨床で,そして私たちの生活の中のあらゆる場面で必要とされることです。母集団や標本,統計的推論につきものの誤差といった基本的な概念を理解することは,数値の変動の特徴を捉え,論理的に解釈していくプロセスの第一歩です。

 統計学の本はデータ分析の際に必要に迫られて読むことが多いのですが,この本は研究を始める前にこそ読むべき本といえます。研究の目的を達成するために,どのような種類のデータがどれくらい必要かを考えて変数を選択し,収集したデータをどのように統計解析すべきかを考えて研究計画を立てる必要があります。私は,幸いにも今は,研究をする際には,統計学の専門家に相談できる環境にいますが,彼らが求めるミニマム・リクワイアメントは「基本的な用語や概念を理解しておいてほしい」というものです。この本はそれに応えるのに十分な統計の知識と素養を身に着けるのに役立つ本であるといえるかもしれません。多くのパソコン用統計ソフトが利用できるようになった今こそ,適切な統計手法を選択し,解析結果を正しく解釈することが重要となっています。この本は基本的な概念から応用のしかたまで,わかりやすく書かれていますので,すでにいくつかの統計手法を使ったことのある人こそ,改めて読み直すと,より理解が得られてよいのではないかと思います。とかく難解な説明になりがちな統計学を“わかりやすい統計学”というコンセプトでここまでわかりやすく説明していただけるのは,とても有難いことです。ここでは扱いきれなかった項目や統計手法についての続編を高木先生のわかりやすい説明で出していただきたいと思うのは私だけではないような気がします。

(『看護教育』2009年10月号掲載)
調査結果をどう読むか,論理的思考のプロセスをわかりやすく解説
書評者: 萱間 真美 (聖路加看護大教授・精神看護学)
 名著にしてベスト&ロングセラーである『ナースのための統計学』の待望の第2版が発売された。タイトルに「ナースのための」とあるが,この本は統計学を用いるすべての方にこれまで読まれてきたし,これからも読まれるであろう。

 著者の高木先生は,聖路加看護大学の4年生を対象にした統計学の授業ノートを基に本書を起稿されたと伺っている。私は初版の発売直後に高木先生に統計を学んだ,幸運な学生であった。先生の授業は,とにかく数字をどう読むか,調査結果をどのように読み,組み立てていくのかという「数字の意味」と「論理的展開」の授業であった。先生が黒板に手書きされる「箱ひげ図」は絶品で,分布の幅や中央値,最頻値,平均値が何を意味するのかがひと目でわかった。ヒストグラムを打ち出し,視覚的に分布を見ると,あるはずのないところにプロットがあり,データは必ず基礎統計をチェックし,必要なら入力にさかのぼってみる必要性を学んだ。演習的なこれらの内容も,本書では例題を用いて細やかに解説されている。数字というのは,何をどのように問うたかの結果で,それをどう読めばよいのか,論理的思考のプロセスを正確な言葉で基礎から教えていただいた,その講義があらためて本書を読み直して鮮やかによみがえった。本書には,先生の豊富な研究経験からちりばめられた具体例が,素晴らしいイラストとともに配置されており,新しい版で判型が大きくなったこともあって,より全体をとらえやすくなっている。

 大学院時代に再び高木先生から学んだときには,幾つかの名言が記憶に残っている。「大学院のときに知識の貯金をすること,あとは利子で食べていくだけである」「実証的データに裏打ちされた結果なら,偉い人がなんと言っても主張すべきである」「うかつに因果関係を類推することは避けるべきだ」。きっと研究者としてのさまざまなご苦労や,豊かな体験があったのだと想像される言葉であるが,このような研究者としての姿勢もまた,例題の読み解き方から伝わってくる。

 時代は変わり,いまや統計はコンピュータソフトさえあれば,そしてその操作方法さえ学べば,誰でも,どんなデータを用いても結果を計算できるようになった。しかし,本来のデータの意味を取り違えた計算や結果の提示は,それを使う人の知識の不適切さを逆に露呈するようになったともいえる。第2版には「統計解析のためのソフト」という項目があり,分析の基本的姿勢について述べられている。必読である。

 本書の表紙デザインを拝見したとき,何かに似ていると思った。同心円にパステルカラー,ルートやnなどの記号が配されたやさしい表紙。よく考えたら,有名デパートの包装紙であった。私が修士論文の結果を同心円の図で書いていたら,高木先生がのぞきに来て「同心円はなんでも表せるんだよね」とひと言言って去って行かれたことが思い出され,おかしくなった。同心円は概念を図示する上で汎用性が高いのだが,同時にひとの虹彩と瞳孔の形とも通じ,ひとの注目を喚起する。

 現在では,質的研究方法に関する発言も多い高木先生であるが,私は先生を数字または質的データを用いた論理学のご専門だと考えている。研究の最も基本であり,そしてゴールであるのは論理性だ。名著のリニューアル,ぜひ読んでいただきたい。

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