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ノンバーバルコミュニケーションと脳
自己と他者をつなぐもの

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人は言葉だけでなく、自分の体や周りの空気、時間などあらゆるものを使って他者とのコミュニケーションを図っている。果たして脳は、それらの情報をどのように処理し、意味づけているのだろうか。脳とこころの不思議に迫る≪脳とソシアル≫シリーズ第3弾。 本書をご購入された読者の皆様へ
シリーズ 脳とソシアル
編集 岩田 誠 / 河村 満
発行 2010年07月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-00996-6
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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発刊に寄せて

 河村 『脳とソシアル』シリーズも第3作目になりました.『ノンバーバルコミュニケーションと脳―自己と他者をつなぐもの』というタイトルがついています.全体の構成は4つに分かれていて,最初は「顔の脳科学」,次は「コミュニケーション・スキルと脳」,3番目は「社会の中でのコミュニケーション」,そして4番目が「脳科学の社会的意義」です.
 最初は,「顔の脳科学」です.われわれ神経内科の立場からいうと,相貌失認という症状がありまして,これは顔認知の障害です.これは確か,1947年にJ. Bodamerが最初に記載したとなっていますが,Jean-Martin Charcot(1825-1893)が最初に提言したという説もあります.視覚性失認については19世紀の終わり頃に統覚型,連合型の2つが定義されていますが,それから50年という長い月日が経って,初めて顔の認知のspecificな障害が記載されるわけです.
 顔認知の研究というのは,Bodamerから始まったと考えていいのでしょうか.
 岩田 顔そのものの認知は,個体性の認知と表情の認知があるでしょうけれども,表情の認知は,Charles R. Darwin(1809-1882)のちょっと前のCharles Bell(1774-1842)も研究しています.だから,顔に対する科学者の眼というのは,かなり昔からありますね.
 たぶん,顔に興味をもって一生懸命やり出したのは,ルネサンス時代の美術の人たちです.画家にしても,彫刻家にしても,顔というのは,美術作品の中で人間を描く場合にはいちばん大事な部分ですから,どういう表情(相貌)にするかというのは,大きな関心事だと思います.
 僕が面白いなと思うのは,顔学会の原島 博先生のグループの仕事だけれども,「その人らしさ」という顔があることですね.ルネサンスの人たちで,例えばRaffaelloがマドンナ,マリア様を描くでしょう.そのときに,マリア様らしい顔というのがあるわけです.そして,顔だけじゃなくて,全体的な体のしぐさ,体全体の表情におけるその人らしさというものが,非常に研究されたはずです.
 それは,いわばノンバーバルコミュニケーションですよね.絵をパッと見たときに,「ああ,これはマリア様らしいな」とか思わせるわけですから.それを逆に,Caravaggioなんかは打ち崩して,マリア様らしさを消すようなかたちでマリア様を暗示させる方法をとっているわけです.そういう興味のもち方というのが,私は17世紀から綿々とされてきたと思います.
 そういうものの積み重ねのうえに,顔に対する興味と脳科学がつながって,たぶんBodamerとか,そういうところにくるのだと思います.
 河村 先生のご指摘のように,Bodamerのしたことは顔の同定ですね.表情については,もっと前から医学領域でもあって,私の知っている限りでは,Charles Bellがいちばん古くて,その次にDarwinですね.それから,Duchenne(1806-1875)ですか.
 岩田 Duchenneは顔を刺激して,いろいろな表情をつくらせていますよね.
 河村 ですから,けっこう古いということが言えると思います.
 岩田 表情の研究のもう1つの流れとして,これは特にフランス演劇の中に出てくるんですけれども,表情によってつくり出す演技がありますよね.典型的なのが,いわゆるパントマイムで,Marcel Marceauなんかのやっていたパントマイムの中には身体表現,特に顔を使って自分の思いなどをパッと出すものですね.それは,フランスの演劇界で非常に強いですね.例えば『天井桟敷の人々』という有名な映画の中に出てくる,Jean-Louis Barraultの役があるけれども,パントマイム劇をやるわけです.まったく言葉を使わないで,自分の感情が相手に伝わるようにいろいろ演技する.それこそ,ノンバーバルコミュニケーションというものは,演劇などの芸術分野でものすごく研究されてきたものだと思います.だけど,それは脳科学ではなかったわけでね.
 河村 日本にもありますね.能楽はどうでしょう.
 岩田 ある意味からすると,そうですよね.能ではお面をつけていますが,能に出てくる主人公はすべて幽霊です.死んだ人間が出てきて,しかも,それがバーバルに語るわけです.これは,私が素人だから思うことかもしれませんが,能面をつけることによって,生の人間が普通にする表情を消して,逆にバーバルな意味づけに非常に深い表情を暗示させる,そういう効果があるんじゃないか.
 その逆が歌舞伎でしょう.歌舞伎は,むしろ踊りが主体で,言葉は付け足しみたいなものだから,そこに出てくるのは非常に派手な,人間が普通の表情ではできないような隈取でつくった顔と衣装で,それは能とはまったく逆ですよね.生きている人の,あらん限りの表情をそこでつくり出しているように感じます.
 河村 すると,コミュニケーションといって最初に思うのは言語だと思っていましたけれども,そうではなくて,ノンバーバルのコミュニケーションのほうがよく使われているわけですね.
 岩田 バーバルは付け足し的なものというか,説明的なものですよね.
 脳というのは嘘つきで,自分の本当の思いとか,本当の感情を隠すために言語というのは非常に便利なものだと,僕はよく言うんです.というのは,体のいろいろな状態,表情というのは本物が出てしまうんです.その本物を隠すには,バーバルにいくしかない.だから,乱暴な言い方をすれば,バーバルというのは嘘をつくために存在する,ノンバーバルは本当のことしか出ないですからね.
 そういう意味で,言語というのは恐ろしい道具ですよね.絶対に感情を加えない,ということができてしまう.情動は,本音というか,その個体が行動しようとするときの,本当の行動パターンを外に表わす情動行動と,その中で感じた感情とがあると思いますが,どちらも本物なんですよね.
 それを,バーバルコミュニケーションによって,いかに抑えるか.それが人間のいちばんの特徴で,ある意味,人間を非常に不幸にしている原因でもあるんじゃないかと思うんです.だから,言語の使い方というのを,私たちは一生懸命本音に合わせるようにしていかないと駄目なんじゃないかな.
 河村 そんな気がします.私たちがつくったこの本は,そういう意味で非常に大切なことを提案しているということだと思います.
 岩田 社会活動というのは,人間の脳が存在している,いちばん大きな理由の1つですよね.そのために脳が大きくなったと言ってもいいと思うんですよ.それは,間違いない事実でしょうね.

 (2010年3月吉日 メディカルクリニック柿の木坂にて)
 編者  岩田 誠・河村 満

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I 顔の脳科学
1 モナ・リザの微笑み-顔ニューロンが問いかけるもの
 まえおき-豊倉康夫先生の慧眼と碩学に学ぶ
 A 顔認知研究の歴史
 B サルにおける顔アイデンティティの認知
 C ヒトの顔認知と脳の活動部位
 D 扁桃体と顔ニューロン
 E 顔ニューロンが問いかけるもの
 おわりに
2 顔の脳科学
 非侵襲的脳機能検査法
3 脳波と脳磁図を用いた顔認知の研究
 A 脳波と脳磁図
 B 顔認知のメカニズム
 おわりに
4 自分の顔を見る
 A 自分の顔と「自己」
 B 単一の「自己」システムは存在するか?
 C 自分の顔の3つの「顔」
 D 「自己」は再統一されるか
 おわりに
5 顔を通じた対面コミュニケーション
 A コミュニケーションにおける顔
 B 表情を介した感情伝達
 C 顔の動きと表情
6 視線認知の障害
 A 他者の目を検出する
 B 視線の向きを処理する
 C 視線方向に注意を転動する
 D 視線を追う
 E 追視から他者理解に至るまで
 F ここまでのまとめ
 G 精神障害における指線認知の障害
 おわりに

II コミュニケーション・スキルと脳
1 身体性コミュニケーションとその障害
 A もしも言葉がなかったら
 B 身体性コミュニケーションの神経メカニズム
 C 自分を知り,他人を知る
 おわりに
2 ストレス,遺伝子,そして扁桃体
 扁桃体との出会い
 A ストレス・情動と扁桃体の関係
 B 遺伝子多型と扁桃体
 C 性と扁桃体
 D 精神疾患と扁桃体
 E 文化・人種と扁桃体
 扁桃体研究のこれから
3 他者と関わる前頭葉-思考を読み取る脳内機構
 A ミラー・ニューロン
 B 他者の動作のコピーから予測,そして意図の解読へ
 C ヒトのミラー・システム
 D 社会性と自閉症
 E ミラー・ニューロンの展望と問題
4 脳指紋とコミュニケーション・スキル
 A 脳指紋(うそ発見器,真実検出器)
 B 内因性の誘発電位としてのP300
 C P300の特性
 D P300による実際の虚偽・真実検出(脳指紋)
 E ノンバーバルコミュニケーション・スキル
 F P300による意思伝達装置
 G そのほかのbrain-computer interface(BCI)
 おわりに

III 社会の中でのコミュニケーション
1 囚人のジレンマにおけるかけ引きと脳活動
 A 囚人のジレンマゲーム
 B 報酬系の脳部位と強化学習
 C 囚人のジレンマと脳活動
 おわりに
2 人格を破壊する脳深部の小さな梗塞-視床背内側核と“sociopathy”
 A 人格と人格変化-最も定義しにくい神経症状
 B 意識が回復したら人格が変わっていた
 C 視床傍正中動脈梗塞の神経心理学-情動と行動様式に着眼して
 D 前頭葉サーキットの要-視床背内側核
 E “Sociopathy(社会症)”と遂行機能障害
   -ノンバーバルコミュニケーションの観点で
 F 視床背内側核と統合失調症
 おわりに
3 わが道を行く症候群(“going my way” syndrome)
  -ピック病のコミュニケーション障害
 A ピック病の‘わが道を行く’行動とは?
 B 症例呈示
 C FTDとSDのコミュニケーション障害
 おわりに
4 心的外傷と感情抑制-PTSDの神経機構
 A PTSDの脳画像研究
 B PTSDの脳病態仮説
 C PTSDの病因仮説
 おわりに

IV 脳科学の社会的意義
1 脳科学と社会の関係はいかにあるべきか?
 はじめに-専門家集団と社会の関係
 A 科学にとって「社会」とは何か?
 B 科学と社会-歴史的・文化的背景
 C 脳科学と社会-脳神経倫理の動向
 おわりに

あとがきにかえて
索引

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ノンバーバルコミュニケーションの広がりと神経基盤を知るに最適な一冊
書評者: 鈴木 匡子 (山形大大学院教授・高次脳機能障害学)
 コミュニケーションは「自己と他者をつなぐもの」である。本書は,その中でも言語を使わないノンバーバルコミュニケーションのために脳がどんなしくみを持っているのかをさまざまな角度からみせてくれる。本書で取り上げられているノンバーバルコミュニケーションは多岐にわたる。目の認知や視線の方向から,顔の表情や向き,身体の姿勢,動きや行為,さらに社会の中での行動までカバーされている。そして,話題はこれらの機能を支える神経基盤だけでなく,ミラーシステム,脳指紋,社会的要因と脳機能の相互関係,脳科学の社会的意義にまで及ぶ。

 本書の斬新さは,広汎な研究をノンバーバルコミュニケーションという視座からとらえ直すことによって,それぞれの研究の意義を浮き彫りにしている点にある。例えば,顔認知を支える脳に関して,神経細胞活動記録,脳波,脳磁図,近赤外線分光法,機能的MRIなどを駆使した各研究は,それぞれ非常に読み応えがある。それだけでなく,岩田誠先生と河村満先生の対談で,ノンバーバルコミュニケーションとしての顔認知の位置づけが明らかにされることによって,個々の研究結果を統合的に理解することができる。

 このように,本書はノンバーバルコミュニケーションにかかわる脳機能研究の,現時点での集大成とも言える。さらに,本書は今後の研究の方向性も示している。対談の中で,ある機能がどこの脳部位と関連するかはわかってきたが,そこの神経細胞がどのようなアルゴリズムで機能を生み出しているかはこれからの課題であると指摘されている。また,コミュニケーションの神経基盤として一世を風靡したミラーシステムに対しては慎重な意見が述べられている。

 一方,最終章では,ノンバーバルコミュニケーションに限らず,「脳とソシアル」シリーズ全体にかかわると思われる「脳神経科学と社会の関係」が取り上げられている。まだ日本ではあまり知られていない「脳神経倫理」についての話題で,脳神経科学者と社会の双方向コミュニケーションの重要性が述べられている。

 本書はいろいろな読み方ができる。コミュニケーションに関心を持つ人は,2つの対談でノンバーバルコミュニケーションについて俯瞰し,その上で各章を読み進めるとよいかもしれない。脳神経科学に興味を持つ人が,一つの課題についての多様な研究方法を学ぶこともできよう。脳神経倫理についての章は,脳神経科学者に一度は読んでほしい内容である。随所に挿入されたこぼれ話は,これだけつまみ食いしたくなるほど印象的な話が多い。もちろん,全体を精読すれば,ノンバーバルコミュニケーションの神経基盤について,十分な知識や洞察が得られることは言うまでもない。
文字情報に依存するコミュニケーションへの警鐘
書評者: 津本 忠治 (理化学研究所脳科学総合研究センター)
 のっけから個人的な話であるが,小生,朝起きて真っ先にすることは,以前はテレビのスイッチを入れることだったが,最近はまず電子メールを見ることとなっている。また,世の中では,すぐ隣の部屋の同僚に用件を伝えるのにドアを開けて顔を見ずに電子メールを使う人が多いという。

 ことほどさように高度情報化時代では,人と人とのコミュニケーションは主に言語,特に文字情報によって行われるようになった。しかし,日本語でも「顔色をうかがう」,「顔が広い」,「目顔で知らす」等々多くの言い回しがあるように,表情,アイコンタクト,身ぶり等はコミュニケーションの重要な手段である。その重要性は,大脳皮質の中でも顔や視線に関与する領域の広さからも推測されよう。

 上述のように,現代社会において高度情報化が進み文字情報に依存し,ノンバーバルコミュニケーション能力を使わなくなったことは人の脳のでき方からみて大変不自然であり,今後,子どもの脳発達やひいては人格形成にいかなる影響を及ぼすか深刻に考えるべき点と思える。その意味で,自己と他者をつなぐノンバーバルコミュニケーションとその脳メカニズムを詳述した本書の出版は大変タイムリーであるといえよう。

 本書は計15篇の総説のいわばアンソロジーあるいは総説集であるが,神経内科学や神経心理学における碩学である岩田誠先生と河村満先生が優れた見識に基づいて編集されたものであり,その編集の観点は序とあとがきに対談として語られている。この対談は単に序文と後記ではなく,それ自身が非常に興味深い読み物となっている。

 したがって,各総説ではそれぞれの領域において気鋭の専門家が研究の現状をわかりやすく解説されているが,全体としては一本筋の通った読み応えのある本となっている。

 上述したように,顔,あるいは表情によるコミュニケーションが人においては特に重要であるが,その意味でこの問題に関する7篇の総説が第1章にきているのは大変良い企画と思われる。特に,この章は,fMRI,脳磁図や近赤外分光法といった最新の手法を使った脳科学的研究のみならず,発達心理学や精神医学までカバーした総合的な観点から編集されている点も特記すべきであろう。

 第2章は主に身体の動きの解析から,扁桃体の機能,さらには他者の動作や意図の推測に関与するとされるミラーニューロンまで最近のホットなトピックスがわかりやすく述べられている。

 第3章では,報酬系や意志決定の問題,さらには統合失調症,ピック病,心的外傷後ストレス障害などの臨床に関する問題が,社会性の障害という観点から紹介されている。また,最後に脳科学と社会との関係について,特に脳神経倫理についてこの分野の第一人者による解説がついている点は本書をユニークなものとしている。

 以上,神経内科,神経心理,精神科,脳外科の関係者,あるいは高次脳機能研究者のみならず神経科学をめざす大学院生や学部生を含めて多くの人に本書を推薦したい。
第一線の研究者による総決算
書評者: 祖父江 元 (名大大学院教授・神経内科学)
 インターネット時代に入ってわれわれは大きく世界が広がったように感じている。e-mailにより,外国の相手とも瞬時にコミュニケーションが可能となっており,われわれはこのe-mailなしには一日も過ごせなくなっているといっても過言ではない。しかしこのe-mailは相手の顔が見えないし,声が聞こえない。われわれは文字情報に頼って真意を汲み取ろうとする。

 一方電話は,相手の声が伝わる。大切な相談や伝達は電話を使うことが多い。相手の声の中に本音を読み取れると感ずるからではないか。相手の気持ちを確かめながら,情報の交換ができると感じている。

 しかしさらに相手の本音や心に触れるコミュニケーションをとりたい時には実際に会って話をするということを行っている。相手の表情,目の動き,手振り,声の抑揚,姿勢などその情報は格段に増すことになる。われわれは言葉以外の部分にその人の本音の部分,本当の部分が読み取れることを本能的に知っているように思われる。最近では,このノンバーバルなコミュニケーションが大変希薄になっているように感じられる。しかしこのノンバーバルの部分がヒトの成長・発達や社会とのかかわりの中で,より重要で本質的ではないかとわれわれは薄々感じている。インターネット時代の中でのこの部分の希薄さが,最近の社会性の欠如した人間の出現や犯罪にもひょっとして関連しているのかもしれないと感じたりしている。

 このような時代の中で,本書はノンバーバルコミュニケーションの重要性について説いている。それはどのようなもので,どのような脳のメカニズムによって行われるのか,どのような研究が進行しているのか,ノンバーバルコミュニケーションの領域の第一線の研究者による総決算が提示されている。本書を読み進むに従って,それがいかに重要なものなのかが改めて認識させられる。人格や社会性とその破綻や,さらには脳科学の社会的意義という脳科学の中心課題にも踏み込んでいる。

 中でも顔認知の脳科学と身体コミュニケーションの脳科学に大きなスペースが割かれており,ノンバーバルコミュニケーションの重要性とその脳メカニズムが異分野の人にもわかりやすく解説されている。

 さらに本書の魅力は,岩田誠,河村満の両編者が,発刊に寄せて,あるいはあとがきにかえてとして対話の形式をとりながら,ノンバーバルコミュニケーションの本質を語り合っている点である。これは随想風の「こぼれ話」と相まって,ノンバーバルコミュニケーションについての本音の部分が盛り込まれているように感じられる。各章のエキスパートによる文字情報に対して,本音の議論がアクセントを作っているという構成は見事である。

 本書はノンバーバルコミュニケーションの重要性を脳科学の立場から解説した啓発の書である。脳科学によって人の心や文化といったさらに高度の脳活動を読み解くことが可能であることを示唆するチャレンジの企画であると思う。

 本書はわれわれ神経内科医など,脳科学の領域に携わる者にも心地よい内容であるが,広く一般の人々や異分野の人々にこそ推薦したい。

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