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高次脳機能障害のリハビリテーション 第2版
実践的アプローチ

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高次脳機能障害のリハビリテーションの基礎知識から、すぐに実践できるアプローチ方法までを扱った総合テキスト。高次脳機能障害者の「日常生活」に焦点をあてるという初版のコンセプトはそのままに、高次脳機能障害の現状に即した形で充実させた。薬物療法の基礎知識や回復期リハビリテーション病棟でのチームアプローチ法など、関係職種にとって今後ますます必要とされる情報も新たに収載。
編集 本田 哲三
発行 2010年05月判型:B5頁:272
ISBN 978-4-260-01024-5
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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第2版の序

 本書がわが国の土壌に根ざした高次脳機能障害リハビリテーション(以下,リハ)の実践的テキストを目指して出版されてから5年が経過しました.
 その間「高次脳機能障害」は流行語となり,マスコミで取り上げられることはもちろん,医学分野から一般向け書物にいたるまで,さまざまなテキスト・マニュアル・解説書・体験記が出版される賑わいを呈しています.そのなかで幸いにも本書が好評をもって迎えられ,第2版出版の運びになったことは編者として望外の幸せです.
 第2版では,わが国におけるこの5年間の飛躍的な調査・研究の増加を踏まえて大幅に内容を改訂しました.改訂の骨子は以下の5点です.
 1.高次脳機能障害者の方々の障害・生活実態に関しては,いくつかの全国的調査が実施されてきました.しかし,残念ながら調査結果が障害や生活実態を正確に反映していないことは,相変わらず高次脳機能障害者の方々の社会参加・社会復帰が困難なことからも明らかです.「高次脳機能障害数,原因疾患と主な症状(1章-2)」では,「リサーチ・リテラシー(調査結果からの客観的事実の吟味)」を取り上げました.
 2.高次脳機能障害研究の発展により各障害のリハに新たな知見が加わりました.そこでほとんどすべての障害を見直し加筆・修正したのに加えて,新たに「障害の無自覚(4章-10)」を加えました.
 3.わが国の保険診療では「回復期リハ病棟」制度が普及しています.しかしそのなかで身体的リハプログラムは定型化される一方,高次脳機能障害はむしろ定型化からはずれる理由となる傾向がありました.本書では高次脳機能障害プログラムの定型化を提案しました(5章).
 4.高次脳機能障害のリハで避けることのできない薬物療法の基礎知識を追加しました(6章).
 5.リハ医学・医療の最終的ゴールはいうまでもなく社会参加・社会復帰です.特に,高次脳機能障害は本質的に社会活動の障害であるうえに年代的にも中年の方が多いため就労は深刻な問題です.残念ながら,わが国では制度上医療施設での就労支援は限られています.7章では私たちの経験から医療機関でも実践可能な就労へのアプローチを提案しました.
 本書が医学・心理学・社会福祉学・看護学を統合した総合的テキストとして,高次脳機能障害のリハにかかわるすべての方々のお役に立てることを願っています.

 2010年4月
 本田哲三

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1 高次脳機能障害を引き起こす疾患と主な症状
 1 高次脳機能障害に共通してみられる特徴
 2 高次脳機能障害者数,原因疾患と主な症状
 3 高次脳機能障害を引き起こす主な疾患
2 高次脳機能障害者の暮らしぶり
 1 日常生活の状況
 2 社会的・文化的活動
 3 職業
 4 経済状態
 5 日常生活上で困っていること
 6 まとめ
3 高次脳機能障害を疑うとき(見立ての手順)
 1 日常生活で高次脳機能障害を疑うとき
 2 まとめ
4 各障害の診断とリハビリテーション
 1 失語症
 2 注意障害
 3 記憶障害
 4 行動と感情の障害
 5 半側空間無視(半側身体失認を含む)
 6 遂行機能障害
 7 失行症
 8 地誌的障害
 9 失認症(視覚失認)
 10 障害の無自覚
   (参考)認知症
5 回復期リハビリテーション病棟におけるチームアプローチ
6 高次脳機能障害のリハビリテーションと薬物療法
 1 薬物療法の意義と問題点について
 2 各薬剤の特徴
 3 各症状への具体的対応
 4 薬物療法を含めた今後の展望
7 高次脳機能障害者の就労へのアプローチ
 1 就労支援におけるリハチームの役割分担
 2 就労支援に必要な診断・評価
 3 当事者・家族・職場スタッフへの障害の説明(カンファレンス)
 4 介入計画書の作成と契約
 5 職場スタッフへの指導(外来および職場訪問指導)
 6 外来でのフォロー
 7 事例紹介
 8 医療機関での就労援助結果
 9 おわりに
8 高次脳機能障害者を支える諸制度
 1 身体障害者手帳(失語症)
 2 精神障害者保健福祉手帳
 3 障害者自立支援法
 4 障害年金制度
 5 成年後見制度
9 関係諸機関
 1 高次脳機能障害支援普及事業拠点機関
 2 自治体相談窓口
 3 就労支援機関
 4 その他
10 参考文献/ビデオ・DVD/ホームページ

おわりに
索引

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初心者にもベテランのセラピストにも参考となる実践の手引き書
書評者: 小川 恵子 (聖隷クリストファー大リハビリテーション学部長)
 本書の初版(2005年)が出版された後,2006(平成18)年の診療報酬の改定時には,リハビリテーションの長期にわたる継続が制限される中,高次脳機能障害は継続的なリハビリテーションが必要な障害と認められた。つまり国ですら,この障害が日常生活に与える影響は大きく,長期に適切なリハビリテーションを行うべき障害であると認めたといえる。当然,そのアプローチは,エビデンスを持った効果的なリハビリテーションであるべきであるが,高次脳機能障害の症状は多様で,さまざまな職種が手探りで個別に対応していたのが現実であったと思われる。

 そこで,現場のセラピストたちが実践の手引き書として活用できると感じたのが本書であった。診断の基準,評価の視点,日常生活の状態に合わせた対応と復職に至るリハビリテーションプログラムが具体的に提示され,「見えない障害」をどのようにとらえ,支援を行うかについて,即運用が可能な内容で,しかも読みやすい文章で紹介されていた。これは,医療福祉に携わる人間だけでなく,障害を持つ対象者の家族にも高次脳機能障害に対応する道標になったのではないかと思われる。しかしながら,高次脳機能障害の研究の発展は著しく,発刊から5年が経過して,その記載された知見に付け加えて他書を参考にすることがあったのは否めなかった。

 そしてこのたび,第2版が出版された。今回の改訂版は,高次脳機能障害の研究からの最新の知見が加筆修正されただけではなく,薬物療法や高次脳機能障害を持つ対象者の社会参加における困難さについて,さまざまな調査結果から解説されており,総合的な視点からのアプローチが示唆されている。これらの改訂は,今まで個別に書物を探し一つ一つの問題を理解しながら治療や対応を進めてきたがために,つながりの無い断片的なアプローチになりがちであったこの障害への対応を,一つにつなげる役割を果たすことができるのではないだろうか。その意味で,本書は入門書でありながらも,同時にベテランのセラピストにも参考となる実践の手引き書として,再度生まれ変わったといえよう。ぜひ手に取っていただきたい一冊である。

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