患者にやさしい経鼻内視鏡ハンドブック[DVD付]
豊富な経験に基づいて「患者にやさしい経鼻内視鏡」を丁寧に解説
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従来の経口内視鏡検査よりも患者の苦痛が少なく、近年急速に普及しつつある経鼻内視鏡検査。しかし、安全で苦痛が少ないという経鼻内視鏡本来の利点を最大限に生かすには、そのための理念とテクニックを知ることが必須である。本書では、豊富な経験を持ち、患者にとってより安全で苦痛の少ない検査法を追求してきた筆者が、「患者にやさしい経鼻内視鏡」のすべてを丁寧に解説。DVD付。
著 | 大原 信行 |
---|---|
発行 | 2008年10月判型:A5頁:140 |
ISBN | 978-4-260-00764-1 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
- 正誤表
序文
開く
序
近年,患者にやさしい医療が求められている.検査においても可能な限り苦痛を排除し被検者の忍耐に頼らない検査法が期待されている.このような医療事情を背景に,経鼻内視鏡は急速な拡がりを見せている.経鼻内視鏡が始まった2003年当時は一部の開業医のみが取り組んでいたが,現在では内視鏡検査を行う診療所の約半数が経鼻内視鏡を導入するに至っている.さらに,健診センター・民間病院での導入も増え,経鼻内視鏡は診断を目的とする上部内視鏡検査の標準的な検査法になりつつある.
経鼻内視鏡の基本理念は,『安全で苦痛が少ない検査を提供すること』である.この理念は検査のみならず,前処置・検査後の対応まで一貫していなければならない.各施設の実情に合わせて検査法・前処置法をプランニングする場合も,この基本理念を常に念頭に置いて尊重していかなければならない.検査数が多い施設では効率性を優先して前処置の単純化・簡略化を考えがちであるが,基本理念に反する効率化は経鼻内視鏡のメリットを損なう結果を招いてしまう.経鼻内視鏡を行う検査医は,手間がかかっても被検者の苦痛軽減に最善を尽くすべきである.
経口内視鏡においても,鎮静剤を使用して被検者の苦痛を消す方法がある.しかし,安全上の問題から設備の充実した大規模施設でのみ実施可能であり,医師ひとりで検査を行う診療所ではリスクが高い.これに対し,経鼻内視鏡は苦痛が少なく鎮静剤が不要であるため,診療所や健診施設においても安全に行うことができる.さらに,検査体位・前処置法・挿入法を工夫することによって,その受容性をさらに高めることができる.経鼻内視鏡は,患者にやさしい検査を目指す診療所・健診施設に最適な検査法である.
経鼻内視鏡のデメリットとして,高画質経口用スコープと比較して画質が劣ること,生検困難な部位があることなどがよく指摘される.しかし,これらのデメリットは経鼻用スコープの機能に由来したものであり,経鼻的に挿入するという検査法の欠点ではない.この点を混同して,経鼻内視鏡を否定的に評価するのは誤りであり,正しい議論ではない.精密光学の技術は急速に進歩しており,経鼻用スコープが高画質化するのは時間の問題である.生検の問題も鉗子・スコープの改良により近いうちに克服されるであろう.その日のためにも,最善の経鼻内視鏡の検査法を作り上げることが重要である.
本書は,患者にやさしい経鼻内視鏡を目指す内視鏡医を対象に,経鼻内視鏡のテクニックをできるだけ詳しく解説したものである.筆者が,経鼻内視鏡を導入以来,試行錯誤を重ねて作り上げたテクニックの集大成である.前処置,検査中・検査後のポイントについては,コメディカルの方にも参考にしていただきたい.本書を内視鏡室に置いて,日常の検査に少しでも役立てていただけることを希望する.
2008年9月
大原ファミリークリニック
院長 大原 信行
近年,患者にやさしい医療が求められている.検査においても可能な限り苦痛を排除し被検者の忍耐に頼らない検査法が期待されている.このような医療事情を背景に,経鼻内視鏡は急速な拡がりを見せている.経鼻内視鏡が始まった2003年当時は一部の開業医のみが取り組んでいたが,現在では内視鏡検査を行う診療所の約半数が経鼻内視鏡を導入するに至っている.さらに,健診センター・民間病院での導入も増え,経鼻内視鏡は診断を目的とする上部内視鏡検査の標準的な検査法になりつつある.
経鼻内視鏡の基本理念は,『安全で苦痛が少ない検査を提供すること』である.この理念は検査のみならず,前処置・検査後の対応まで一貫していなければならない.各施設の実情に合わせて検査法・前処置法をプランニングする場合も,この基本理念を常に念頭に置いて尊重していかなければならない.検査数が多い施設では効率性を優先して前処置の単純化・簡略化を考えがちであるが,基本理念に反する効率化は経鼻内視鏡のメリットを損なう結果を招いてしまう.経鼻内視鏡を行う検査医は,手間がかかっても被検者の苦痛軽減に最善を尽くすべきである.
経口内視鏡においても,鎮静剤を使用して被検者の苦痛を消す方法がある.しかし,安全上の問題から設備の充実した大規模施設でのみ実施可能であり,医師ひとりで検査を行う診療所ではリスクが高い.これに対し,経鼻内視鏡は苦痛が少なく鎮静剤が不要であるため,診療所や健診施設においても安全に行うことができる.さらに,検査体位・前処置法・挿入法を工夫することによって,その受容性をさらに高めることができる.経鼻内視鏡は,患者にやさしい検査を目指す診療所・健診施設に最適な検査法である.
経鼻内視鏡のデメリットとして,高画質経口用スコープと比較して画質が劣ること,生検困難な部位があることなどがよく指摘される.しかし,これらのデメリットは経鼻用スコープの機能に由来したものであり,経鼻的に挿入するという検査法の欠点ではない.この点を混同して,経鼻内視鏡を否定的に評価するのは誤りであり,正しい議論ではない.精密光学の技術は急速に進歩しており,経鼻用スコープが高画質化するのは時間の問題である.生検の問題も鉗子・スコープの改良により近いうちに克服されるであろう.その日のためにも,最善の経鼻内視鏡の検査法を作り上げることが重要である.
本書は,患者にやさしい経鼻内視鏡を目指す内視鏡医を対象に,経鼻内視鏡のテクニックをできるだけ詳しく解説したものである.筆者が,経鼻内視鏡を導入以来,試行錯誤を重ねて作り上げたテクニックの集大成である.前処置,検査中・検査後のポイントについては,コメディカルの方にも参考にしていただきたい.本書を内視鏡室に置いて,日常の検査に少しでも役立てていただけることを希望する.
2008年9月
大原ファミリークリニック
院長 大原 信行
目次
開く
1 経鼻内視鏡に必要な物品
A 局所麻酔薬
B 鎮痙薬
C 点鼻用局所血管収縮薬
D 潤滑材
E スプレー
F 鼻鏡
G 前処置スティック
H ノーズピース
2 経鼻内視鏡に必要な設備
A 経鼻内視鏡用スコープ
B 検査台
C 被検者用サブモニター
D モニタリング装置
E 快適な検査環境
3 検査日までの準備
A 鼻腔のチェック
B インフォームドコンセント
C 検査前日,当日の注意
4 経鼻内視鏡の前処置
A 前処置のポイント
B ガスコン溶液の内服
C プリビナの鼻腔噴霧
D 鼻腔麻酔
E 咽頭麻酔
F スコープの準備
G 挿入鼻孔の準備
5 検査体位
A 左側臥位
B 半座位
C 座位
6 鼻腔通過法
A 挿入ルート
B 鼻腔通過のテクニック
7 食道挿入法
A 食道挿入時のポイント
B 左側臥位での食道挿入法
C 半座位での食道挿入法
D 食道通過後の注意
8 検査中・検査後のポイント
A 鎮痙薬の使用
B 唾液の処理法
C 呼吸法
D 検査中の会話
E 抜去時の注意
F 検査後のポイント
9 経鼻内視鏡での観察法
A 経鼻内視鏡でのスコープ操作法
B 経鼻内視鏡での観察法
C 診断能を上げる工夫
D 狙撃生検
10 経鼻内視鏡に特有な偶発症
A 鼻痛
B 鼻出血
索引
DVDメニュー(計約28分)
1.ビスカス注入実験(2分14秒)
2.バリウム嚥下実験(2分29秒)
3.経鼻内視鏡の前処置(3分19秒)
ガスコン・プロナーゼ溶液の内服
プリビナの鼻腔噴霧
鼻腔予備麻酔
スティック法による鼻腔麻酔
4.挿入ルート(6分34秒)
中鼻ルート
下鼻ルート
中間ルート
鼻茸症例
5.食道挿入法─頭部回旋食道挿入法(3分21秒)
6.半座位での経鼻内視鏡(10分13秒)
A 局所麻酔薬
B 鎮痙薬
C 点鼻用局所血管収縮薬
D 潤滑材
E スプレー
F 鼻鏡
G 前処置スティック
H ノーズピース
2 経鼻内視鏡に必要な設備
A 経鼻内視鏡用スコープ
B 検査台
C 被検者用サブモニター
D モニタリング装置
E 快適な検査環境
3 検査日までの準備
A 鼻腔のチェック
B インフォームドコンセント
C 検査前日,当日の注意
4 経鼻内視鏡の前処置
A 前処置のポイント
B ガスコン溶液の内服
C プリビナの鼻腔噴霧
D 鼻腔麻酔
E 咽頭麻酔
F スコープの準備
G 挿入鼻孔の準備
5 検査体位
A 左側臥位
B 半座位
C 座位
6 鼻腔通過法
A 挿入ルート
B 鼻腔通過のテクニック
7 食道挿入法
A 食道挿入時のポイント
B 左側臥位での食道挿入法
C 半座位での食道挿入法
D 食道通過後の注意
8 検査中・検査後のポイント
A 鎮痙薬の使用
B 唾液の処理法
C 呼吸法
D 検査中の会話
E 抜去時の注意
F 検査後のポイント
9 経鼻内視鏡での観察法
A 経鼻内視鏡でのスコープ操作法
B 経鼻内視鏡での観察法
C 診断能を上げる工夫
D 狙撃生検
10 経鼻内視鏡に特有な偶発症
A 鼻痛
B 鼻出血
索引
DVDメニュー(計約28分)
1.ビスカス注入実験(2分14秒)
2.バリウム嚥下実験(2分29秒)
3.経鼻内視鏡の前処置(3分19秒)
ガスコン・プロナーゼ溶液の内服
プリビナの鼻腔噴霧
鼻腔予備麻酔
スティック法による鼻腔麻酔
4.挿入ルート(6分34秒)
中鼻ルート
下鼻ルート
中間ルート
鼻茸症例
5.食道挿入法─頭部回旋食道挿入法(3分21秒)
6.半座位での経鼻内視鏡(10分13秒)
書評
開く
経鼻内視鏡のノウハウが凝縮された書
書評者: 河野 辰幸 (東医歯大医学部附属病院食道・胃外科診療科長)
創意工夫を満載した経鼻内視鏡検査の実用書が出版された。臨床の第一線で活躍されている大原信行先生の『患者にやさしい経鼻内視鏡ハンドブック』である。わが国は消化器内視鏡の分野において世界をリードする多くの臨床医,研究者を輩出し続けており,この著者もその一人といえる。著者は新しい診療ツールである経鼻内視鏡の臨床的意義をいち早く認識するとともにその問題点をも正確にとらえ,独創的な工夫を加え続けており,その詳細を余すところなく本書で示している。この姿勢こそが,困難な問題を創意工夫により解決し,わが国の消化器内視鏡技術を世界のトップに押し上げた多くの先達に通ずるものである。
略歴にある通り,著者はもともと外科医としてスタートしており,本書に示された多くの工夫には外科医としての経歴をうかがわせるものが少なくない。そもそもツールとしての上部消化管内視鏡の目的と意義は何であろうか? 疾患の存在を確認しその性状をできるだけ正確にとらえること,表層性の癌であればその広がりと壁深達度を診断すること,あるいは特記すべき異常のない状況を確認すること,そして,可能であれば疾患の治療(処置)にまで利用することである。
しかし,第一線の臨床医にそのすべてが求められているわけではなく,求められるのは治癒が十分に期待できる早期癌の拾い上げやさまざまな疾患の存在・確認診断であり,高性能内視鏡や拡大観察でなければ見えないような微小癌までを発見することではない。では内視鏡により咽頭から十二指腸までの上部消化管疾患を同定し,患者の利益とするためには何が重要か? 言うまでもなく,検査に対する患者のコンプライアンスを高めることであり,機器の性能を十分に引き出すための内視鏡医の技術である。
本書では,前処置と検査環境の整備,手技の実際,偶発症対策,そして多くの有用な器具が示されているとともに,DVDにより各技術が動的に体験できるよう工夫されている。特に,著者が積極的に行っている半座位・座位での検査手技は,内視鏡による上部消化管スクリーニング法の一つの方向性を示すものであろう。そして,画質の相対的低さなどスコープが細いための弱点を補うための対策や,分光画像の応用(FICE)法など,最新の技術にも言及している。
これは著者がクリニックの院長としての多忙な診療の合間に,経鼻内視鏡の利点と問題点を十二分に認識しつつ,新たな技術につきものの道標のないさまざまな問題に対して心血を注ぎ工夫を重ねてきた経鼻内視鏡のノウハウが凝縮され示された書である。読者はそれを知ることにより,経鼻内視鏡が実は易しい検査法の一つであり,患者利益の多い新技術であることを理解するに違いない。
新医療技術の開発と導入は一般的に患者への福音となる。しかし同時に医療費の高騰をもたらす大きな要因でもあるが,経鼻内視鏡は費用効果比に優れた新技術である。今日,医師は制約の多い診療環境において,従来にも増して検査機器の有効活用が求められている。わが国の優れた上部消化管内視鏡技術を維持発展させていくためにも,このような第一線医師の取り組みには大きな意義がある。経鼻スコープを用いての上部消化管内視鏡を始めようとしている医師への入門書として,あるいは現に行っている医師への参考書としてのみではなく,患者へ消化器内視鏡検査を勧める立場にある多くの第一線臨床医に読んでいただきたいと考えるゆえんである。
書評者: 河野 辰幸 (東医歯大医学部附属病院食道・胃外科診療科長)
創意工夫を満載した経鼻内視鏡検査の実用書が出版された。臨床の第一線で活躍されている大原信行先生の『患者にやさしい経鼻内視鏡ハンドブック』である。わが国は消化器内視鏡の分野において世界をリードする多くの臨床医,研究者を輩出し続けており,この著者もその一人といえる。著者は新しい診療ツールである経鼻内視鏡の臨床的意義をいち早く認識するとともにその問題点をも正確にとらえ,独創的な工夫を加え続けており,その詳細を余すところなく本書で示している。この姿勢こそが,困難な問題を創意工夫により解決し,わが国の消化器内視鏡技術を世界のトップに押し上げた多くの先達に通ずるものである。
略歴にある通り,著者はもともと外科医としてスタートしており,本書に示された多くの工夫には外科医としての経歴をうかがわせるものが少なくない。そもそもツールとしての上部消化管内視鏡の目的と意義は何であろうか? 疾患の存在を確認しその性状をできるだけ正確にとらえること,表層性の癌であればその広がりと壁深達度を診断すること,あるいは特記すべき異常のない状況を確認すること,そして,可能であれば疾患の治療(処置)にまで利用することである。
しかし,第一線の臨床医にそのすべてが求められているわけではなく,求められるのは治癒が十分に期待できる早期癌の拾い上げやさまざまな疾患の存在・確認診断であり,高性能内視鏡や拡大観察でなければ見えないような微小癌までを発見することではない。では内視鏡により咽頭から十二指腸までの上部消化管疾患を同定し,患者の利益とするためには何が重要か? 言うまでもなく,検査に対する患者のコンプライアンスを高めることであり,機器の性能を十分に引き出すための内視鏡医の技術である。
本書では,前処置と検査環境の整備,手技の実際,偶発症対策,そして多くの有用な器具が示されているとともに,DVDにより各技術が動的に体験できるよう工夫されている。特に,著者が積極的に行っている半座位・座位での検査手技は,内視鏡による上部消化管スクリーニング法の一つの方向性を示すものであろう。そして,画質の相対的低さなどスコープが細いための弱点を補うための対策や,分光画像の応用(FICE)法など,最新の技術にも言及している。
これは著者がクリニックの院長としての多忙な診療の合間に,経鼻内視鏡の利点と問題点を十二分に認識しつつ,新たな技術につきものの道標のないさまざまな問題に対して心血を注ぎ工夫を重ねてきた経鼻内視鏡のノウハウが凝縮され示された書である。読者はそれを知ることにより,経鼻内視鏡が実は易しい検査法の一つであり,患者利益の多い新技術であることを理解するに違いない。
新医療技術の開発と導入は一般的に患者への福音となる。しかし同時に医療費の高騰をもたらす大きな要因でもあるが,経鼻内視鏡は費用効果比に優れた新技術である。今日,医師は制約の多い診療環境において,従来にも増して検査機器の有効活用が求められている。わが国の優れた上部消化管内視鏡技術を維持発展させていくためにも,このような第一線医師の取り組みには大きな意義がある。経鼻スコープを用いての上部消化管内視鏡を始めようとしている医師への入門書として,あるいは現に行っている医師への参考書としてのみではなく,患者へ消化器内視鏡検査を勧める立場にある多くの第一線臨床医に読んでいただきたいと考えるゆえんである。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
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