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救急レジデントマニュアル 第4版

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救急診療の現場における実践的知識をコンパクトな体裁に詰め込んだマニュアル。①症状を中心に鑑別診断と治療を時間軸に沿って記載、②診断・治療の優先順位を提示、③頻度と緊急性を考慮した構成、④教科書的な記述は省略し簡潔を旨とする内容、が特徴。救急室で「まず何をすべきか」「その後に何をすべきか」がわかるレジデント必携のマニュアル、待望の第4版。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 相川 直樹 / 堀 進悟
発行 2009年03月判型:B6変頁:600
ISBN 978-4-260-00800-6
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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  • 序文
  • 目次
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第4版の序

 1993年に初版が上梓された『救急レジデントマニュアル』は,5年毎に改訂され,今日までの15年間で10万部以上が世に出された.初版の序の冒頭で「わが国の救急医学と救急医療は大きく変わろうとしている」と書いたが,本書は救急医療の歴史を見つめながら版を重ねてきた.
 編者は医師国家試験委員長と医師国家試験出題基準作成部会長を務め,医師臨床研修制度の制度設計に関わってきたが,今から振り返ってみると,この15年の間に,医学教育,医師国家試験ならびに臨床研修で求められる知識や到達目標で,救急医療が最重要分野の一つとなったことに気づく.
 臨床研修制度では内科,外科とともに救急医療が「基礎研修科目」となり,2008年には医療法が改正されて「救急科」が標榜科となって,今や救急医療は臨床の major player である.救急医療に対する国民の期待は強く,現場では急性期患者が増加し,多くの医療施設で「北米型ER」が整備されるようになったことに対応して,臨床医には救急医療現場で「質のよい医療」を提供する責務が生じた.
 そのような臨床医向けの救急医療の実用書として編集した本書は,初版の時から「理論」を割愛し,「救急現場でまず何をすべきか」,「その後に何をすべきか」を具体的に示し,「入院・帰宅の判断」なども臨床のエビデンスを重視して解説している.多くのガイドラインや法令改正に対応した第3版の改訂に加え,今回の改訂でもAHA2005,JATEC,改正感染症法のほか多くの最新情報を取り上げ,救急現場でますます重要となっている心エコーの解説図も充実させた.四分の一以上の48項目は新たな執筆者が担当するという大改訂である.
 この結果,版ごとに厚くなってきた本書ではあるが,あくまでも救急医療の現場で活用されるために,白衣のポケットに入るサイズを守った.
 15年間にわたり救急分野のベストセラーとして君臨してきた本書の最新版が,若手の臨床医たちに活用され,より質の高い救急医療の提供に役立つことを期待したい.
 2009年3月
 慶應義塾大学医学部・救急医学
 教授 相川 直樹

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凡例
略語一覧

I 救急患者の診療にあたって-レジデントとしての心構え
II 救急診療の進め方
III 救急蘇生法
IV 症候からみた初期治療
V 外傷の初期治療
VI 中毒・環境障害の初期治療
VII 各科救急の初期治療
VIII 救急治療手技
IX 緊急検査と評価
X 救急室のシステム
XI 救急医療関連事項
付録
 1.注射用抗細菌薬一覧
 2.経口抗細菌薬一覧
 3.抗真菌薬一覧
 4.抗不整脈薬の分類
 5.妊娠と薬剤

索引

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救急医療の優れた実践編
書評者: 豊岡 照彦 (東大名誉教授・循環器内科学)
 救急診療は初期治療が患者の予後を決定する大きな要因である。初期対応によって将来のQOLも左右する面があり,特に実践性が重視される。今回,慶応義塾大学救急医学のスタッフが中心になって執筆した『救急レジデントマニュアル』第4版は,初版以来のコンセプト,「理論より実践」や「時間軸に沿って,優先順位と簡潔な記述」を重視する理念を活かしつつ,大胆な改善が随所に加えられた。

 最近の阪神大震災,地下鉄サリン事件や9・11などの大規模なテロ活動,新型インフルエンザに代表されるように,救急部が扱う領域は内科,外科の枠を超えて多岐にわたり,かつ複雑化している。一方,社会的には医師の絶対数は増加しつつあっても,産婦人科,小児科の救急体制は一部の施設で撤退せざるを得ないほど逼迫しており,緊急医療の整備として今後救急部への要望は一層高まると予想する。

 昔,医学部紛争で卒業が1年遅れになったわれわれは,途中で自己研修と称して医学部から放り出された。内科系を志望していた筆者は将来経験することの少ない外科系をあえて選び,長時間の手術の鉤引きや術中の血液ガス分析(BGA),皮膚縫合と抜糸まで教えられた。卒業後はCCUが独立する前のICUで先輩たちと寝食を共にした。この間に対人関係も含めたチームワーク医療の大切さなど精神面の修養も教示いただき,今でも感謝と懐かしい思いが重なる。その当時,救急医療の実践的な参考書がまったくなく,先輩の手技をメモしながら体得していくしかなかった。現在でも医療は知識でなく体験を通してしか真の理解に至らないと確信しているが,その理解が科学的に系統だったものか自信がない。

 卒業直後で臨床経験の未熟な初期研修医やレジデントたちに社会との接点に位置する救急医の立場を理解させた上で,即戦力と臨床家精神を身に付けさせる教育は並大抵の苦労ではない。本書冒頭の相川先生と堀先生による救急診療の心構えと診療の進め方を一読すれば,「鉄は熱いうちに打て」の熱意と現場の緊張感がよく伝わる。多忙な日常診療の傍ら,きめ細かく,最近の話題を簡潔に「addendum」としてまとめた工夫は高く評価される。また,一般名で記載することの多い治療薬もあえて商品名と具体的な処方量を加えた点にも実践重視の姿勢が貫かれており,好感が持てる。

 最後に患者,家族と救急医のメンタルケアも重要である。うつ状態は多くの疾患予後に影響することはよく知られており,今後の救急医療にぜひ加えるべき領域であろう。さらに「インフォームド・コンセント」,「説明責任」,「クレーマー対策」などに忙殺される救急医たちの健全な精神衛生を保ち,充実した臨床を実感できるシステム作りも示してくれれば,なお良かったかと思われる。

 治療ガイドラインは年々改変されており,新情報を的確に短時間で得るには現在の冊子体のほかに,CDかDVD版のデジタル教材としてクリック一つで参考文献に飛んでいくなどの工夫により本書はさらに充実すると予想する。研修終了時に本書を基にした体験事例集は各レジデントの一生の財産となることは疑いない。
救急診療の場で何をすべきかを知るための実践的マニュアル
書評者: 福井 次矢 (聖路加国際病院院長)
 本書は1993年の初版以来,15年間の販売部数が10万部を超えているとのことであるから,この期間にわが国の医学部・医科大学を卒業したほぼすべての医師が本書を手にしたことになる。救急診療の現場で「まず何をすべきか,その後に何をすべきか」という実践的な知識・態度・技量を身につけようとする者にとって,本書は,その内容と利便性からいって,まさに“スタンダード・マニュアル”であることに異論をはさむ余地はないと思う。

 本年3月に出版された第4版では,過去6年間の医学・医療の進展を反映し,取り扱うテーマの新設・改廃が行われた。例えば,臨床研修の到達目標,保険適用されたt-PA,改正感染症法,AHA2005,JATEC,肺血栓塞栓症,急性膵炎など,多くの最新情報が盛り込まれ,執筆者の変更も全項目の約4分の1にあたる48項目に上っている。読みやすい場所にうまく配置されている32項目のAddendum(補遺)には,新たに「ISS(Injury Severity Score)」と「APACHE II」が加えられた。

 初版以来の本書の最大の特徴である,①症候を中心に記載し,鑑別診断と治療を時間軸に沿って述べる,②救急室入室からの時間で区切り,頻度と緊急性を考慮した診断・治療の優先順位を示す,③ほとんどの症候について数ページという簡潔な記述を旨とし,教科書的な理論の記述は省略する,④参考文献は最小限に絞る,などの基本スタンスは維持され,550ページを超える大部の割には,大変コンパクトな作りで,白衣のポケットに入るサイズという,救急現場での利便性を高めるための長所も維持されている。このことは,本書のような,研修段階にある若い医師を主たる読者対象とするマニュアルには不可欠の要件といえよう。

 私がもし今,研修医なら,救急の研修が始まる前の数日間をかけて,たとえ徹夜してでも,本書のすべてのページに目を通した上で,救急室のローテーション研修に入るであろう。そして,本書を白衣のポケットに入れ,患者さんを診るたびに,症状や病態の頻度に応じて,何度も何度も同じページを読み返す。

 同時に,本書の余白には,本書以外の情報源から学んだ事柄をぎっしり書き込む。3-6か月間の救急室ローテーションが終わるころには,手あかで薄汚れた,ますます愛着のある,自分だけの『救急マニュアル』が出来上がっていることであろう。

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