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日常生活活動学・生活環境学 第3版

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「日常生活活動学」は、総論でADLの歴史、概念、評価などの基本を解説し、各論で疾患別の評価方法とADL指導を提示。「生活環境学」では、概念や評価について解説し、法的諸制度とそれらを利用した住宅改修や生活支援機器の活用方法について紹介する。第3版では新たに「呼吸器疾患・循環器疾患」「在宅でのADL支援」「フィールドワークの実践」を加え、諸制度と用語をまとめた巻末資料をつけた。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 鶴見 隆正
発行 2009年02月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-00758-0
定価 5,940円 (本体5,400円+税)
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第3版 序

 本書が2001年に誕生してから8年の月日が流れた.2005年に第2版の改訂が行われ,そしてこのたび,第3版を上梓できるはこびとなった.このように本書を改訂できるのも,ひとえに多くの読者がご愛読くださったお陰だと,心から感謝している.
 高齢者や障害のある人の生活行動能力を高め,充実した人生を過ごすように支援するには,最新の医学情報や社会情勢などを総合的に取り入れた効果的な理学療法の実施が求められている.それにはクライエントの障害とニーズを的確にとらえたうえで,生物医学的な知識・治療技術と心理社会医学的なアプローチを,個別的に実施することが重要である.理学療法士は,医療・介護保険の動向,社会保障などの諸制度の改正には常にアンテナを張り,クライエントにとって最適な諸制度のサービスを活用したADL指導や社会参加へのアドバイスを行うことが大切である.したがって健やかで質の高い生活行動を指導,支援するには,医療と保健福祉を統合した具体的かつ実践的な理学療法を展開することがポイントである.
 本書は,理学療法士を目指す学生や臨床の第一線で理学療法に取り組まれている方々に,ADLの理念,ADL評価とその指導にかかわる知識・技術,人の生活環境をとりまく諸制度などの最新情報を織り交ぜた内容を提供する使命を負っている.それゆえに標準的な教科書である本書の責任は大きく,常に社会情勢や諸制度の変化に応じた内容に適時に改訂すべきであり,このことは編者としての責任でもある.
 第3版では,「日常生活活動学」に「呼吸器疾患・循環器疾患」,「在宅でのADL支援」の項を追加し,「生活環境学」に「フィールドワークの実践」を組み入れるなど,新知見を交えた実践的なテキストとなるように見直しをはかった.また,各種制度にかかわる図表を巻末にまとめ,類似した行政用語をまとめて解説した「日常生活活動学・生活環境学の基本用語解説」を巻末付録とし,効率的に学習できるように編成した.
 本書が,理学療法を学ぶ学生,臨床現場や地域理学療法を担っている方々に最新の諸制度,学術情報を提供し,日々の生活環境を踏まえた日常生活活動学の知識と技術を身につけることに役立つことを願っている.
 最後に,今回の改訂作業にあたり適切なアドバイスいただき,お世話くださった医学書院の編集部と制作部の皆様に心より御礼申し上げる.

 2008年12月
 鶴見隆正

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日常生活活動学
第1章 総論
 I.ADLの概念と範囲
 II.ADLと障害
 III.ADLとQOL
 IV.ADLと運動学
 V.ADL評価
 VI.ADLを支援する機器(1)-自助具・日常生活用具
 VII.ADLを支援する機器(2)-歩行補助具
 VIII.ADLを支援する機器(3)-車いす
第2章 各論-ADL指導の実際
 I.片麻痺
 II.脊髄損傷
 III.脳性麻痺
 IV.関節リウマチ
 V.人工股関節術後
 VI.下肢切断
 VII.呼吸器疾患・循環器疾患
 VIII.神経筋疾患・難病
 IX.在宅でのADL支援

生活環境学
第1章 生活環境学の概念
第2章 生活環境の評価と改善計画-バリアフリーを踏まえて
第3章 生活環境と法的諸制度
第4章 生活環境としての住宅・住宅改修
第5章 高齢者の在宅生活サービス
第6章 生活を支える福祉・リハ関連機器
第7章 地域環境と公共交通
第8章 フィールドワークの実践

巻末資料
 資料1 法制度関連資料
 資料2 日常生活活動学・生活環境学の基本用語解説
 索引

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社会情勢や諸制度の変化に対応する改訂
書評者: 臼田 滋 (群馬大教授・総合理学療法学)
 『≪標準理学療法学 専門分野≫ 日常生活活動学・生活環境学 第3版』は,理学療法を学ぶ学生や臨床で活躍する理学療法士を対象に,最新の学術的情報と諸制度を提供し,生活環境を踏まえた日常生活活動学の知識と技能の習得を目標に執筆された教科書である。2001年に初版が発行され,2005年に改訂第2版が発行,今回は4年ぶりの改訂となる。

 本書の構成は,「日常生活活動学」と「生活環境学」の二部構成であり,前者においては理学療法における日常生活活動の位置付け,日常生活活動の運動学的分析,評価の実際と疾患別の日常生活活動指導が解説され,後者では,人の生活行動を支援する上で必要不可欠な社会保障制度,バリアフリーの概念と実際,住宅改修の要点,生活を支える福祉機器などが詳細に述べられている。

 前回の改訂は,2001年の国際生活機能分類(ICF)の導入に伴う大幅な改訂であったが,今回は,社会情勢や諸制度の変化に応じた改訂である。明らかな改訂のポイントは,ADL指導の実際として「呼吸器疾患・循環器疾患」,「在宅でのADL支援」の項が,生活環境学に「フィールドワークの実践」の章が追加され,巻末資料として,「法制度関連資料」と「日常生活活動学・生活環境学の基本用語解説」が新たに編成されたことである。これらに加えて,全体的な新知見の追加や,理学療法との関連性,さらに学習のしやすさを考慮した見直しが随所に図られている。

 「日常生活活動学」では,「ADLと運動学」に理学療法に関連が深い寝返り動作,起き上がり動作,立ち上がり動作,移乗動作の運動学的分析の項目が追加された。「ADL評価」では,基本的ADLに対する評価の要点や,高齢者や小児などで使用される評価尺度のワンポイントが整理され,「ADLを支援する機器」には,バリアフリーとユニバーサルデザインの解説が追加された。各論としての疾患別のADL指導の実際では,「脳性麻痺」での成長に伴うADL,「人工股関節術後」のしゃがみ込みと床に座る動作の解説などのより実際的な内容が追加された。「神経筋疾患・難病」では内容が大きく見直され,理学療法の対象となることが多い,Parkinson病のADLが追加された。

 「生活環境学」も全体的に内容や項目が見直されている。特に「生活環境学の概念」,「生活環境と法的諸制度」,「高齢者の在宅生活サービス」の章において,関連する理念や法制度の変遷とも関連した大幅な見直しが図られている。

 対象者の日常生活を効果的に支援するためには,動作に対する介助方法や福祉機器の選択などを含む環境調整に関連した基本的技能の習得が必要であるが,そのような技能はあくまでも手段であり,それらを実際の対象者に適用し,さらに発展させるためには背景となる理念の理解が極めて重要である。そして,理念や制度,技術は社会情勢の変化に応じて変遷,発展するものである。本書が,今後も継続して改訂され,内容がさらに充実することを期待する。
障害者と実生活を結ぶリアリティに富んだテキスト
書評者: 林 義孝 (大阪府立大大学院教授・理学療法学)
 専門科目の授業が多くなる学年に上がってきた学生に,どんな授業に関心があるかを聞くと,ほとんどの学生が臨床的科目と答えます。障害を医学モデルの範囲で捉え,それらに対する理学療法技術の適応を学ぶことに,専門職としてのやりがいを見いだしているのでしょう。なるほど,学生の思いは正直で屈託がなく,教える側も納得できます。

 しかし,明日の理学療法を担う学生を,好きな科目にだけ価値観を傾けられるようなカリキュラムで育てたとすると,将来,理学療法士の専門知識と技術を必要とする人々の期待に応えることができるのでしょうか。

 障害をとらえる視点を医学モデルからさらに進め,高齢者や障害を持つ人々にとって,実際の社会生活に適応するための生活モデルにおける支援技術としての理学療法技術を,多くの時間を割いて学生に学んでもらいたいと,平素から思いを巡らしています。

 それには,教科書となる適切な専門書が不可欠となります。しかし,わが国の生活風土や文化についての知識がいまだ浅い学生に,障害者と実生活を結ぶリアリティが不足した専門書を教科書として読ませても,家屋改造や福祉用具を断片的に紹介する,単なる生活カタログ的な知識の集合体の講義と解釈されてしまい,授業への関心が薄らぐ一因となりかねません。

 この危惧を,大いに払拭してくれた専門書の一つが,今回で3版を重ねる,『標準理学療法学 専門分野 日常生活活動学・生活環境学 第3版』です。本書を手にして初版(2001年)と比べると,その内容の充実ぶりに,編集者と執筆者が,実学的な視点を重視しながら版を重ねてこられた,努力と意気込みが伝わってきます。

 初版から,随所に図表をふんだんに取り入れていることで,本書が学生の講義にとどまらず臨床の場面でも,大いに役立つ専門書であるとの定評にも納得できます。とりわけ,この第3版で,「法制度関連資料」および,類似した行政用語をまとめ解説を加えた,「日常生活活動学・生活環境学の基本用語解説」,が共に巻末付録として納められたことは,臨床の場で実に役立つ内容であり,高く評価したいものです。

 他方,学生の現実的視点からは,日常生活活動学と生活環境学の異なる2つの領域の本が,まとまって1冊になっていることが,経済的にも持ち運びの面からも,極めて好評のようです。

 本書に期待する理由が,今一つあります。

「優秀な療法士は,合理的な指導や科学的な裏づけのもとに,あらゆるトリックを駆使して,不可能だった運動を可能にする。目的を知悉した,熱意のある訓練が必要なのだ」

 この一文は,世界的な免疫学者である多田富雄氏が,2001年に突然重度の片麻痺となった体験を綴り,平成の「病床六尺」と評される著書(寡黙なる巨人,集英社,2007年)から,原文のままを転載させていただきました。

 これらの期待により一層応えるには,理学療法士がこの分野における不断の研究と,学生へは優れた教育の提供が共に不可欠です。

 本書は,この目的を果たす知の集積としての内容を,十分に兼ね備えていると言えます。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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