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専門医をめざす人の精神医学 第3版

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本書は、精神科専門医制度研修医が学ぶ際の指針。研修すべき内容の学問的裏付けや、さらに勉強を深めたい人にとってのスタンダード・テキストブック。専門医をめざす人はもちろんのこと、精神医学および精神科医療の進歩に応じて、その態度・技能・知識を高め、生涯にわたって研鑽を図る専門医のために、必ずやよりどころとなる1冊。
編集 山内 俊雄 / 小島 卓也 / 倉知 正佳 / 鹿島 晴雄
編集協力 加藤 敏 / 朝田 隆 / 染矢 俊幸 / 平安 良雄
発行 2011年03月判型:B5頁:848
ISBN 978-4-260-00867-9
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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第3版の序

 本書の第1版は,『専門医のための精神医学』として,1998年に出版されたが,これは,大学の精神科主任教授の集まりである「大学精神医学講座担当者会議」を中心に,わが国の精神科医の生涯学習に役立つことを願って編集された。当時はまだ,「専門医制度」についての展望もひらけておらず,精神科医を志す人びとのほとんどが大学で研修を始めるという状況のなかで,担当者会議のメンバーが精神科医になろうとする医師に精神医学の専門的知識・技能を体得してもらうことを念頭に作られた。
 第2版は『専門医をめざす人の精神医学』と名前を変えて2004年に出版された。このときは,2005年から専門医制度が発足する予定であることを受けて,精神科専門医をめざす人のための教科書,手引書的なものにしたいとの,明確な目標をもって編纂された。幸い,研修医のみならず,すでに専門医になった方も含めて,多くの人びとに受け入れられ,その役割を果たすことができたことは望外の喜びである。
 この間,「精神科専門医制度」も軌道にのり,専門医になろうとする若い医師が明確な目標をもって,必要とされる研修を行うという,新しい局面を迎えることになった。
 そこで,第3版を編集するにあたりいくつかの点に配慮した。その1つとして,日本精神神経学会によって,専門医が研修すべき事項が研修手帳に明示されていることを受けて,研修手帳にあわせて新たな項目を追加した。また,精神医学の進歩を取り入れ,学術的にも最新のものとすると同時に,新しい精神医療のあり方や制度についても時代にあったものとすることにした。
 その方針に基づき,編集委員の討議を経て,改めて執筆項目を見直し,執筆者も精神医学講座担当者に限定せず,適任者に執筆をお願いすることとした。また,同じ項目を第2版と同じ執筆者にお願いする場合でも,もう一度内容を見直していただき,追加訂正をお願いしたり,時には同じ項目をあえて別の方に,新たな視点で執筆をお願いした。
 そうすることによって,初版ならびに第2版と読みあわせることにより,さらに内容的に深まることを期待したものもある。その結果,半数以上の項目で,第2版とは執筆者が交代し,残りの項目でも見直し,書き直しが行われた。その意味では,大幅な改訂が行われる結果となった。
 このようにして編纂された第3版も,百数十名の執筆者による大部の本となったので,このたびも当初の予定から大幅に出版が遅れることとなり,執筆者の皆さんにご迷惑をおかけしたが,それだけ内容の充実したものとなったものとご理解いただき,ご寛容に願えれば幸いである。
 本書が世に出るにあたり,今回も医学書院の編集・制作担当の皆さんに大変お世話になったことに対し,深甚なる感謝を申し上げるものである。

 2011年2月
 編集者を代表して
 山内俊雄

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1 精神医学を学ぶための基本的な知識と態度
 A.精神医学とは何か
 B.精神医学を理解するための神経科学
 C.精神医学を理解するための認知行動科学
 D.精神医学を理解するための心理・社会科学
 E.精神医学の基本
2 精神症状とその捉え方
 A.精神疾患の症状
 B.精神医学的面接,精神的所見の取り方,病歴の取り方,記載の仕方
 C.精神症状の理解と解釈
 D.精神症状評価尺度
3 診断および治療の進め方
 A.診断の進め方
 B.疾患分類-ICD-11とDSM-5作成の動きをめぐって
 C.治療の進め方
4 症状性を含む器質性精神障害
 A.総論
 B.アルツハイマー病
 C.脳血管障害と血管性認知症
 D.認知症の治療および対応
 E.レビー小体型認知症
 F.前頭側頭型認知症
 G.その他の認知症性疾患
 H.その他の器質性精神障害
 I.症状精神病
5 精神作用物質使用による精神および行動の障害
 A.依存と乱用,後遺症害(中毒)の概念
 B.アルコール使用による精神および行動の障害
 C.依存性薬物による精神および行動の障害
 D.その他の物質による精神および行動の障害
6 てんかん
7 心理・生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
 A.摂食障害
 B.睡眠覚醒障害
 C.妊娠・産褥に関連した障害
 D.性に関連した障害
8 統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害
 A.統合失調症
 B.その他の統合失調症圏障害
 C.統合失調感情障害および非定型精神病
9 気分(感情)障害
 A.気分障害(躁うつ病)
 B.大うつ病・気分変調症
 C.双極性障害
 D.特別な気分障害
10 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
 A.不安障害
 B.強迫性障害(強迫神経症)
 C.重度ストレス反応および適応障害(F43)
 D.解離性(転換性)障害
 E.身体表現性障害
 F.心身症
11 成人のパーソナリティ障害および行動の障害
 A.パーソナリティ障害
 B.習慣および衝動の障害
 C.性同一性障害
12 精神遅滞(知的障害)および心理的発達の障害
 A.精神遅滞(知的障害)
 B.心理的発達の障害
13 小児期および青年期に通常発達する行動および情緒の障害
 A.多動性障害
 B.行為障害
 C.情緒障害および社会機能の障害
 D.チック障害
14 乳幼児期,児童期および青年期の精神医学的諸問題
15 リエゾン・コンサルテーション精神医学,サイコオンコロジー
 A.コンサルテーション・リエゾン精神医学(CLP)
 B.サイコオンコロジー
16 精神科救急
17 自殺の問題
18 精神医療と安全管理
19 生物学的治療
 A.精神科薬物療法総論
 B.抗不安薬
 C.睡眠薬
 D.抗精神病薬
 E.抗うつ薬と気分安定薬
 F.抗てんかん薬
 G.抗認知症薬・脳循環改善薬
 H.精神科でよく用いられる一般薬(含む漢方)
 I.電気けいれん療法
20 精神療法
 A.精神療法の教育・研修
 B.精神療法の治療機序について
 C.理論・技法体系について
 D.薬物療法のかかわり
21 社会的な治療,社会復帰を援助する治療
 A.代表的な治療アプローチ
 B.部分入院
 C.住居プログラムと就労支援-可能性への挑戦
 D.成年後見制度
 E.地域精神保健活動
 F.社会的援助システム
 G.介護保険とケアマネジメント
 H.精神障害の予防
 I.産業精神保健
 J.学校精神保健

和文索引
欧文索引

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研修医のみならず専門医にとっても座右の書となる一冊
書評者: 中嶋 照夫 (医療法人中嶋医院 院長)
 大学紛争の中で医師が学んでおかねばならない最少限の精神医学の知識(minimum requirments)について真剣に考え,熱心に議論した思い出がある。精神医療をとりまく環境の変化が著しい中で,精神科医は生じてくる広範なニーズへの対応が迫られるとともに,自らの意識を啓発する必要があった。

 このような中で精神医学講座担当者会議は『専門医のための精神医学』と題する冊子の編さんを企画した。精神科専門医として必須の精神医学の知識と医療技術を会得するための指導書として,卒後教育を行っていた講座担当教授の有志が執筆し,急速に変化,発展する精神医療に対応するために必要な知識を盛り込み,専門医になるための研修や生涯教育をも意図して作成されたものであった。

 日本精神神経学会は専門医制度(学会認定医制度)の発足を検討してきていたが,その動きの中で『専門医のための精神医学』を改訂し,精神科専門医をめざす医師のための手引書的な冊子にしたいと考え,書名も『専門医をめざす人の精神医学』とし,2004年に上梓された。第2版は精神医療に視点がおかれ,臨床的立場を重点とし,専門医としての基礎的知識と臨床治療を発展させるための素養を習得するための教科書として意図されたものである。専門医制度を考えて編さんされ,膨大に拡張してきた精神医学・医療の分野を取り上げて,現場での実践に役立つ知識の獲得が意図されてあるので,執筆者数は初版の2倍以上,総ページ数も1.3倍以上の大冊となった。

 今般,精神科専門医制度も軌道に乗り,卒後教育システムが確立して,専門医をめざす者が研修すべき事項が研修手帳に明記された。これに応じて新たな項目が追加されて,『専門医をめざす人の精神医学 第3版』が出版された。本書を進歩・発展してきた精神医学・医療の知識と技能を教示するための教科書とするために,執筆者も講座担当者に限らず適任者が選ばれており,その数も初版の2.5倍近く,総ページ数も1.5倍近くの800ページを超す大冊子となっている。

 内容項目の構成は第2版と基本的には大差はないが,執筆者の変更と最近の知見の追加や新たな視点での見直しなど改訂が加わっている。構成の大項目は1項目増えて次のような21項目からなる。1 精神医学を学ぶための基本的知識と態度,2 精神症状とその捉え方,3 診断および治療の進め方,4 症状性を含む器質性精神障害,5 精神作用物質使用による精神および行動の障害,6 てんかん,7 心理・生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群,8 統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害,9 気分(感情)障害,10 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害,11 成人のパーソナリティ障害および行動の障害,12 精神遅滞(知的障害)および心理的発達の障害,13 小児期および青年期に通常発達する行動および情緒の障害,14 乳幼児期,児童期および青年期の精神医学的諸問題,15 リエゾン・コンサルテーション精神医学,サイコオンコロジー,16 精神科救急,17 自殺の問題,18 精神医療と安全管理,19 生物学的治療,20 精神療法,21 社会的な治療,社会復帰を援助する治療,である。第18項目の精神医療と安全管理が追加されているが,医療過誤,医療事故などに関する医療におけるリスクマネージメントとインフォームド・コンセントを含む人権問題は,医療現場では避けて通れない重要な課題であり,専門医としては身につけておかねばならない素養である。

 精神科の治療は大別して精神療法,薬物療法と生活療法の3方向がある。これらの治療法の基礎的学問となっている精神病理学と,新たに登場してきた脳科学(生物学的精神医学)は競い合い,かつ統合を模索してきたが,いまだに統括的学問体系には至っていない。一方,臨床現場では生活活動能力や社会活動能力の獲得と社会復帰を援助するチーム医療がクローズアップされてきており,精神科専門医は包括医療や地域医療において中心的役割を担うことになる。本書はこの点に関しても教示が及んでおり,研修医のみならず専門医にとっても座右の書となろう。

 精神医学・医療分野に漸次登場してきた心理的発達障害,小児期および青年期の行動および情緒の障害や精神医学的諸問題,さらにサイコオンコロジーを含めたリエゾン・コンサルテーション精神医学,高齢者介護や各ライフ・サイクルにおける精神保健の諸問題などから考えると,取り扱う領域は時代の変化や価値観の変容,人権意識の高揚などに応じて急速に拡大,展開している。研修すべき項目が今後さらに検証,検討されていくと思われるが,本書が展開されてくるニーズを取り入れて,さらに充実した指導書になることを期待したい。
最新の精神医学の情報に感銘
書評者: 融 道男 (東医歯大名誉教授/メンタルクリニックおぎくぼ院長)
 専門医制度は提唱以来約半世紀を経て,ようやく軌道に乗ってきている。第3版は半数以上の章で筆者が交代し,全体的に書き直された。増ページを含めた大幅な改訂がなされて,一層充実した新しい教科書を読んだ。最新の情報に感銘を受けたページが多々あった。私は,その中から,若い精神科医に読んでいただきたい項目として3か所を選んだ。

 まず,新井康允による『性機能』(92-99ページ)では,男女の性差から始める。『精巣と卵巣の分化』について,図1―37に性腺原基の性分化を基礎的によくわかるように解説している。「思春期発動に最も重要な役割を果たすのは,視床下部にあるゴナドトロピン放出ホルモン[GnRH]を産生し放出するGnRHニューロンの働きである」。と図1-38で下垂体系を含めたGn分泌調節の働きが性機能調節にフィードバック作用で重要な役割を果たしていることを示している。

 『月経周期の内分泌』について,卵巣ホルモン(エストロゲン,プロゲステロン)と下垂体前葉ホルモン(LH,FSH)を図1-41に適切に図解している。『更年期』は「卵巣機能(エストロゲン)の衰退である。女性の多くの臓器・組織にエストロゲン受容体が存在しているので,」「臓器・組織に急性,慢性のさまざまな障害をもたらす」。また,サルの実験を引用し「アカゲザルの妊娠中の母親にアンドロゲンを注射」すると,「生まれた雌の子ザルの遊びパターンが雄の子ザルのパターンを示すようになる」。「幼児期の遊びのパターンの性分化に胎児期のアンドロゲンが鍵を握っていることを示している」。おわりに,「空間認知能力の発達に胎児期のアンドロゲンが重要の鍵を握っている可能性を示している」。性機能について,新所見を含めて興味深い章である。

 次に,臺弘が書いた『精神医学の基本』(122-125ページ)を読んだ。専門医制度は日本精神神経学会の長崎総会(1968年)で臺理事長が発議したことから始まっている。また臺弘の『精神科治療の3本柱』は,「薬物療法と精神療法と生活療法」である。「生活療法」を提議して,「百姓・二宮尊徳をその開祖として注目した」。「二宮は道徳を説くとともに生活の基礎の経済要件を整えた」。また,「不時の必要や飢饉に備える長期的展望も心得ていた」尊徳は,多くの町村を復興させた。患者さんについては,「精神障害者の苦労は〈暮し下手〉と〈生き辛さ〉といわれる」。

 「若い精神科医」についても書いている。「先輩や同僚からの貴重な手本に学ぶ」が「手痛い失敗を悔む場合もあろう。同時に当人は患者が誰にも勝る先生であることを悟るに違いない」。また,「治療の現場で自分の〈心〉と〈体〉が相手の〈心〉と〈体〉に協応して作りあげる構えこそが,臨床医の生活場面となる」。私にとっても,これは,臨床精神科医として大いにためになる文章である。

 最後に,牛島定信による『対象による諸問題』(261-267ページ)については,精神療法の中で『3)統合失調症』を選んだ。ここには専門医をめざす若き精神科医が常に心掛けておくべき心得がよく示されている。「ひと口に精神療法といってもさまざまである」。「統合失調症の精神療法を行うときに重要なことは,神経症と違って現実検討能力がないという認識である。したがって,内的な不安や葛藤を暴いたり,年齢相応の社会的役割を強いたりすることの危険については,十分に承知しておかねばならない」。また,「社会のしくみに十分に対応できる自我の状態にないために,薬物療法や個人療法はもちろんのこと,体系的な社会療法を準備しておく必要がある」。「すべてが悪意をもった人間であるという恐怖に包まれているので,いわゆる常識的なかかわり方では不安,恐怖を招きやすい」。そして,「自我が弱体化しているので,周囲が守ってやるような治療構造が求められる」。

 牛島の,『1)神経症性障害』『2)パーソナリティ(人格)障害』『4)気分障害』の精神療法も短くても深い内容で参考にすべきである。
わが国の精神医学,関連分野の総力が結集された成果が一冊に
書評者: 山下 格 (北大名誉教授)
 本書第3版の発刊をこころからお祝いしたい。この本は歴史を背負っている。初版は学園紛争以来の卒後研修の遅れを取り戻すため,精神医学講座担当者会議の54人が執筆し,1998年に刊行された。どこか老教授が新人に講義をする雰囲気がある。その後日本精神神経学会の専門医制度の発足(2005年)に合わせ,専門医が習得すべきminimum requirementsの指針として,現・前教授115人による第2版が2004年に出版された。前版より対象項目を大幅に増やし,教科書的な形式を整えている。そして今回,848ページにわたる第3版が生まれた。執筆には広く各分野の権威130人が参加し,第2版の半数以上の項目で執筆者が交替し,同一人の場合も見直しが行われた。このような経緯からも,本書の内容,目標,存在価値が知られるであろう。差し当たり専門医が研修すべき事項に視点を置いているが,実際にはひろく精神医学の臨床全般にわたる最近の知見とともに,それを支える神経科学,心理学,文化・社会学などの諸側面の研究成果や基礎的理論,さらに精神科救急や安全管理,福祉・法律・職場や学校の精神保健など,身近で実践的な諸問題まで取り上げている。

 その意味で本書は,現在わが国の精神医学および関連分野の関係者の総力を結集した成果といえるであろう。その編集・執筆にあたった方々のご努力に敬意を表するとともに,本書が多くの精神科医の書庫の宝となることを願うものである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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