新訂 キラリ看護

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「看護の魅力はどこにあるのか。本当に一生続ける価値がある仕事なのか。また、看護という職業は将来性があるのか」。これから看護師をめざそうとする高校生、看護を学び続けている学生たち、そして新人看護師たちに、看護師を50年以上続けてきた一人の先輩として、ナイチンゲール記章受章の著者が看護の魅力を伝える。
川島 みどり
発行 2008年03月判型:B6頁:216
ISBN 978-4-260-00618-7
定価 1,760円 (本体1,600円+税)

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二十一世紀の看護を創るのはあなた
川島 みどり

 あなたは、なぜ「看護の道」を選んだのでしょう。その動機は人さまざまでしょう。自分で選んだのであれ、人からすすめられたのであれ、ともかく歩いていく道を選んだのです。ときに苦しく、ときに思い悩むこともあるでしょう。とりわけ、看護師不足とか、医療事故の報道が相次ぐなか、もし、進路変更ができるものなら今のうちにと考える方がいるかもしれません。また、看護師として働いている方のなかにも、まだ看護の本当の魅力を感じとれないまま、方向転換をしたいけどと、頑張ったりあきらめたりをくり返している人もいるかもしれませんね。
 でも、本当に「この道を選んでよかった」と思える日が必ずくると信じましょう。だって、あなたは、人一倍人間が好きで、病人や弱い人々のお世話に興味をもち、そのことを通して自立できる職業をめざそうとしているのですから。その上、無限の可能性をもって今を生きているのですから。
 ところで、看護の魅力はどこにあるのでしょうか。本当に一生続ける価値がある仕事なのでしょうか。また、看護という職業は将来性があるのでしょうか。
 これから看護師をめざそうとする高校生、現在看護を学び続けている学生たち、そして、看護師になりたての若いみなさんに、看護師を五十年以上続けてきた一人の先輩として、看護の魅力を伝えることができれば、こんなうれしいことはありません。
 看護師の日々は本当に変化に富んだ毎日です。急に患者さんの病状が変化したり、新しい患者さんが入院したり、予測しにくいことが起きて、すぐに対応を迫られるのも一つの特徴です。そうした日々の変化のなかで、ドラマチックなできごとは枚挙にいとまがありません。
 看護のプロセスは楽しいことばかりでないのも事実です。新しい道を切り拓いていかなければならないこともたくさんあります。でも、困難が大きければ大きいだけ、それを乗り越えた喜びは格別です。目をみはるような高度の医療技術の進歩と普及は多くの人々の生命を救い、寿命も延長して、超高齢社会を目前にしています。その一方で、治りにくい病気や生活習慣をもちながら生活している人々も増えています。
 人々の健康に責任をもつ看護師への期待はこれからいっそう強まることでしょう。
 つまり、二十一世紀は看護の時代といってもよいのです。看護の歴史を創っていくのは、一人ひとりのあなたです。あなたが看護を必要としている人々のための看護実践を通して喜びを体験してくださることを願ってやみません。

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21世紀の看護を創るのはあなた
1 看護の魅力
 看護は生活行動の援助
 期待される看護師像
 人間が人間らしく生きていくために
2 看護の仕事
 技術に裏づけされたやさしさ
 死の瞬間までその人らしく生きるために
3 看護の技術
 人を見る確かな目と気づき
 技術があってはじめてやさしくなれる
 やさしさの実践は想像力と表現力で
4 看護の感性
 職業的な能力と引き換えに失うもの
 感性はきたえるもの
5 ベッドサイドに学ぶ
 リアリティショックで落ち込まないために
 臨床での看護の役割と学び
 患者さんは最高の教師
 もっといかそう看護師の手
6 看護師の労働
 高度な医療と看護
 聖職者意識を捨てよう
 看護労働の本質
7 看護の向上のために
 マンネリからの脱皮をめざして
 変化を起こす
 看護はいつも前向きに
8 私の新人時代
 希望の病棟勤務になった喜び
 新人時代に得た学び
 医師との対等な関係をつくるために
 新人のあなたへ
9 いきいきと働き続けるために
 女性の自立
 妊娠と性
 結婚する自由、しない自由
 家庭と臨床看護の共通点
あとがき

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「看護が好きになる」川島看護論の原点 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 小野寺 綾子 (相模原看護専門学校校長)
 『新訂 キラリ看護』は,著者である川島みどり先生の第41回ナイチンゲール記章受章記念として出版された。1993年発行の初版から,若干の修正,追加がされているが,歳月を経ても新鮮に読める本である。

 本書では,人間味溢れる優しさや看護の魅力が,著者が50年間携ってきた看護実践に基づいて語られている。多くの看護師は,著者の講義,講演,書物などで川島看護論に一度は触れたことがあると思うが,改めて本書を読むことで,その真髄がわかる。

 著者は,看護実践の力点を生活行動援助技術におき,臨床看護の質の向上に労を惜しまずに歩んできた。

 「看護の魅力」について述べた章では,次のような事例が紹介されている。著者が新人時代に,命の灯が今にも消えそうな背髄腫瘍の9歳の女の子に全身清拭を行った結果,血行が良くなり食欲が増し,少女らしさをよみがえらせることができた。その時の著者の喜びが,鮮やかに目に浮かぶ。

 それから10年後,この体験をナイチンゲールの『看護覚え書』の理論で考察し,「生活行動の援助こそ看護の専門性である」と,その当時から考えていたことに驚かされた。そして著者の一貫した「生活行動援助技術」の理論化への根幹がここにあったのかと,新たな感動を覚えた。

 「看護の仕事」についての章では,さまざまな技術のトレーニング・アンド・トレーニングの必要性を説き,学生が自信をもつための専門的知識,熟練した技術,人間の生命をいとおしむ気持ちの大切さが強調されている。

 看護は人間の生命にかかわる仕事である。看護師の役割が,死ぬ瞬間までその人らしく生きていくことへの援助であること,生命の尊厳を重んじ,謙虚に学ぶことの大切さを再確認させられる。また,患者の気持ちに近づける優しさ,気づき,感性を磨くなどの必要性は,看護師としてだけでなく人間として求められていることが伝わってくる。

 著者は,祖母が優しく当ててくれた手のひらの感触を忘れず,看護師になって手によるケアを行ってきたという。そして,苦痛緩和の効能をもたらす手によるケアは,機械化が進む今こそ,看護師に求められていると強調する。

 手によるケアは,著者が看護の専門性と価値づける「生活行動の援助」の基本であり,いわば看護の原点といえる。

 看護に疑問を抱いたり,看護から逃げ出したくなった時,本書を手に取り,この「原点」に立ちかえってみてほしい。きっと「看護が好き」「実践が楽しい」と思えるはずだ。

(『看護教育』2008年6月号掲載)

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