病理学 第3版

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病理学は、疾病の原因、成り立ち(病態発生)に関する学問であり、医学・医療の基本である。本書は、病理学を初めて学ぶPT・OT養成校の学生を対象に、限られた時間内で効率よく理解できるような工夫を随所に施した。オールカラー化により病理写真はもちろん、図表も理解しやすい。「理学・作業療法との関連事項」は、PT・OT学生が「病理学」を専門科目の学習や臨床に関連付けるヒントを盛り込んでいる。
*「標準理学療法学・作業療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
シリーズ監修 奈良 勲 / 鎌倉 矩子
編集 梶原 博毅 / 横井 豊治
発行 2009年02月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-00735-1
定価 5,060円 (本体4,600円+税)
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  • 序文
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第3版 序

 本書の初版が2000年3月に出版されてからすでに約9年が過ぎ,その間,2003年11月には第2版が出版されるとともに,2004年1月には本書が韓国語に翻訳された.このように,本書はわが国のみならず,隣国である韓国においても理学療法士・作業療法士をはじめ,多くの医療技術者を養成するための教科書として使用されてきた.しかし,現在までに,執筆された先生には定年を迎えられて,大学を去られた先生もあり,また,病理学の内容にも年々新しい展開があり,このたび,第3版を発刊することとなった.
 第3版を発刊するにあたり,これまでの編集体制をかなり大きく変更し,将来に向かっての新しい企画を試みた.
 まず第1に,編集作業を2人体制(梶原博毅広島大学名誉教授および横井豊治名古屋大学教授)とし,理学療法士・作業療法士をはじめ,その他多くの医療技術者の養成に適した,より細やかな編集を行った.
 第2に,執筆者も理学療法学科および作業療法学科を有する医療技術系大学の教官を中心とした体制を組織し,新しく金沢大学の河原 栄教授,鹿児島大学の吉田愛知教授,岡山大学の高橋聖之教授および東京大学の伊藤彰彦准教授に加わっていただいた.
 第3に,内容に関しても,新しい知見が多く取り入れられ,また,本書の最も大きな特徴として,本文中の写真や図,特に,肉眼,組織の写真は,視覚的な側面からも理解しやすいように,これまでの白黒写真に換えて,カラー写真とした.
 以上のように,第2版とはかなり大きな改変がなされ,これまでよりもいっそう充実した美しい病理学の教科書ができあがったと確信している.この第3版が,理学療法士・作業療法士をはじめ,多くの医療技術者の養成に大きく貢献することを心から期待する次第である.
 最後に,本書の出版に際し,多大なるご助力をいただいた医学書院の関係各位に心から感謝の意を表する.

 2009年1月
 梶原 博毅
 横井 豊治

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 序説 PT・OTと病理学のかかわり

総論
 1 病理学の概要
 2 病因論
 3 退行性病変
 4 代謝異常
 5 進行性病変
 6 循環障害
 7 免疫
 8 炎症・感染症
 9 腫瘍
 10 放射線障害
 11 老化
 12 先天異常・奇形

各論
 1 循環器
 2 呼吸器
 3 消化器
 4 神経系
 5 運動器
 6 泌尿・生殖器
 7 内分泌臓器
 8 造血器
 9 皮膚・感覚器

  セルフアセスメント
  索引

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疾病の成り立ちと病理変化をわかりやすく解説した書
書評者: 河村 守雄 (名大教授・リハビリテーション医学)
 現代の少子・超高齢社会,また先端医療技術の発達した社会の中で,医療は医師のみで実践されるものではなく,医療技術者(コメディカルスタッフ)との共同作業が必須となっている。とりわけ,リハビリテーション医療の最前線に立つ理学療法士(PT)・作業療法士(OT)にとっては,医師との連携を密にして情報をつぶさに交換しながら,患者や障害者に科学的エビデンスに基づいた医療を提供していくことが要求される。現代の理学療法学・作業療法学はかつての経験的な学問から,科学的学問・研究へと方向性を転換しつつある。そのような医療の実践や学問・研究の推進を担うPT・OTにとっては専門領域の知識・技術のみならず幅広く他領域の知識も具備する必要がある。

 今回,梶原先生,横井先生によって改訂・編集された『≪標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野≫ 病理学 第3版』は,そのようなPTやOTの専門基礎分野の実践的教育をめざしたものである。執筆者の陣営に全国の大学で実際にPT・OTの学生教育を担っておられる諸氏をそろえているところにも,PT・OTにとって真に必要な病理学は何かを追求する両氏の思い入れが表れている。

 内容を見ると,まずPT・OTと病理学のかかわりから入り,総論では病理学の歴史,病因論,老化を含めた新しい病変分類がわかりやすく解説され,各論では各臓器の構造と機能,必要に応じ発生学,そして病理学としての疾患概念,病因,病態,病理像が系統立って解説されている。それぞれの項目を軽重なく均整的に扱っている点が本書を読みやすくしている。また,各章の末尾には「PT・OTとの関連事項」を掲載し,PT・OTがどのような視点や姿勢でその疾患に臨むべきかを説明しているのが従来の書籍と異なる特徴的な部分である。読者はまずこの項に目を通した上で,本文を読解するほうが入りやすいかもしれない。運動器疾患を治療対象とするPT・OTにとっては運動器の章で疾患がやや選択されているように思えるが,他章とのバランスのため必須事項のみにとどめてあるようだ。詳細は運動器病理の専門書に委ねるべきかもしれない。

 図表に関しては,病理学の命ともいえるミクロ,マクロの病理組織像がほぼ全編カラー版で実に鮮明に表現されている。病理組織の観察・解析にその色と形態の情報は必須であり,非常に理解の助けになる。さらに各図の注目すべき重要な部分は丁寧に矢印や円囲いあるいは文字で強調が加えられておりいっそう理解しやすくなっている。解説図表も全カラー刷りで要点を適切に押さえている。これも本文理解の大いなる一助となっている。

 PT・OTが病理学全体を理解するために非常にやさしく丁寧に編集された書である。ぜひ学生のみならず臨床に携わるPT・OT諸氏にも,本書を身近に置いて臨床・研究の一助とされることをお勧めする。
なぜPT・OTが病理学を学ぶのか,どこまで学べばよいのか
書評者: 内山 靖 (名古屋大教授・理学療法学)
 2009年2月に,標準理学療法学・作業療法学シリーズ専門基礎分野『病理学』3版が発行されました。初版が発行された2000年の初版から6刷を経て,2003年に2版が発行されています。その後も順調に5刷を重ね,今般,一層成熟した内容として3版が発行されるに至りました。

 病理学は,疾病の原因と病態発生についての学問で,医師にとって極めて重要な領域です。かつて,臨床系教授が定年になる時期を迎えると,「○○教授の誤診率は△△%でした」という記事や話題を耳にするほど,病理学的な診断を基準として臨床能力の一側面を評価しようとする風潮があったほどです。

 医学教育モデル・コアカリキュラムには,大項目である医学一般の原因と病態として,遺伝子異常と疾患・発生発達異常,細胞障害・変性と細胞死,代謝障害,循環障害,炎症と創傷治癒,腫瘍が挙げられています。また,その後の大項目の病態,診断,治療においても病理学の重要性が示されています。

 理学療法士,作業療法士は,医療専門職として病理学が重要であることに変わりはありません。他方,医師養成の教育課程と比べて修業年限が異なることや,社会行動学的な知識や技術の修得が期待される中で,膨大な学問体系である病理学において必要な項目を適切に抽出することは教育者にとって重要な役割となります。

 本編集に当たられた梶原先生と横井先生は,共に理学療法士,作業療法士の教育に直接携わられた経験と情熱とを生かされ,医師用のテキストを網羅的に簡素化するにとどまることなく,理学療法士,作業療法士が真に必要な項目を厳選した良質な内容となっています。

 総論と各論とに大別された各章の構成は初版から変更されることなく,各項目には新しい知見が取り込まれています。このような改版は,確立した学問としての一貫性と常に進歩する要素を取り込む調和と風格を感じさせます。また,科学技術の進歩とはいえ,図表や配色を含めた製作過程の進歩は読者のわかりやすさを高める仕上がりになっています。

 各章の終わりには,理学・作業療法との関連事項が記載されています。教員にとって,入学後早期に履修する共通教育や専門基礎分野を学ぶ意味を提示することは重要な役割です。なぜ,病理学を学ぶのか,病理学を知ることによって理学療法,作業療法の何が変わるのかをさらに具体的に提示することは,専門基礎教育と専門教育を担当する教員の共通した課題といえます。

 マニュアルやガイドラインが重用される時代であればこそ,医療専門職の臨床思考過程(Gedankengang)の中核である現象から原因を同定・究明し,対象者のニーズに応じた現実的な治療・介入を行う問題解決能力の涵養が不可欠です。違いのわかる理学療法士,作業療法士をめざす皆様に,特にお薦めしたい一冊です。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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