医療安全ワークブック　第2版

第2版 出版によせて
川村治子

　2004年10月の初版発行から3年半，このたび念願の第2版を出版することになりました。初版は，予想以上にたくさんの看護学生，臨床の若い看護師および教育担当者の皆さんに読んでいただき，とてもありがたく思っています。
　3年半の間で，医療事故防止のための社会的な環境整備が相当進んできました。その大きなものの1つは，薬剤の外形・デザインや医療機器の操作設計の改善です。たとえば，薬剤では，初版発行当時は，間違いを誘発しそうな外形類似の注射薬などが相当数ありました。しかし，ここ1～2年でほとんどの薬剤メーカーが，薬剤のラベルのデザインを見直し，使用者の間違いを誘発しにくいものに変更しました。また，カリウム製剤に代表されるように，準備や実施上の間違いを防ぐプレフィルドシリンジ製剤も普及してきました。医療用のポンプでも進歩はめざましく，誤りにくく，また仮に誤った操作をしても危険が生じないような安全機構がさまざまに組み込まれてきました。最近の機種では，最も難題であった「フリーフロー」すら，防止できるようになっています。
　この第2版では，そうした環境の変化をできる限り反映するとともに，新たな企画も加えています。第2版での主な変更は次の通りです。

　まず，UNIT1の「知らねばならない“危険”の知識」では，薬剤写真は最新のものに変更し，薬剤の解説などは最新の治療薬書籍に準拠した修正と加筆を行なっています。また，「注射」で2つのセクションを削除し，「内服」で1セクションと，新たに設けた「検査」で3セクションを加筆しました。
　UNIT2の「看護業務に必要な計算ドリル」では，2009年4月までに一般用輸液セットが20滴に統一されることを受けて，関連する計算問題を修正しました。
　UNIT3の「リスクセンストレーニング」では，新たな追加はないのですが，この第2版では新たに看護師の「コミュニケーショントレーニング」をUNIT4として加えました。これは，看護師と患者とのコミュニケーションシーンのイラストから，そのあり方を考えてもらうためのものです。以前収集した看護のヒヤリ・ハット1万事例の中にあったコミュニケーションに関する事例を参考にして作成したものです。UNIT3と同様に，グループワークなど学習に使っていただきたいと思います。

　第2版も，看護師の卒前・卒後の医療安全教育に少しでも役立ちますよう，心から願っています。
　2008年2月

第2版出版によせて
初版はじめに

UNIT1 知らねばならない“危険”の知識
　注射
　ポンプ
　内服
　輸血
　経管栄養
　チューブ類の管理
　検査
　酸素
　その他

UNIT2 看護業務に必要な計算ドリル
　ウォーミングアップ
　指示薬剤量を液量「mL」に換算して取り出す
　注入速度(流量，滴数)計算
　酸素ボンベの残量，使用可能時間を計算する

UNIT3 リスクセンストレーニング
　患者の自力行動中の転倒・転落
　認知症患者の危険行動
　摂食・嚥下障害患者への食事介助中の危険
　ベッドから車椅子への移乗介助中の転倒の危険
　小児のベッドからの転落の危険
　廊下歩行中の転倒の危険
　入浴中の患者の転倒，溺水，熱傷の危険
　検査台からの転落の危険
　排泄介助中の危険
　ナースステーションでの認知症患者待機の危険

UNIT4 コミュニケーション・トレーニング
　末期がんの妻への処置を求める夫と看護師の会話
　抗がん剤投与中の夫の悪化を心配する妻と看護師の会話
　乳幼児を連れた面会家族と看護師の会話
　排泄ケアで訪室した看護師と患者の会話
　退院を翌日に控えた高齢患者と看護師の会話
　急死した患者の家族と看護師の会話
　内視鏡検査に関する外来看護師と患者の会話

文献
UNIT1 解答と解説
UNIT2 解答と解説
あとがき
INDEX