新臨床栄養学

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病態生化学・生理学の理解に根ざした、医療現場のニーズにも応え得る、実践的栄養学テキスト。静的な維持管理の栄養学から、栄養治療としての動的・積極的な栄養学をめざして編集。最新のエビデンスをもとに、第一人者が執筆。真の意味の臨床栄養学の決定版スタンダードテキスト。
編集 岡田 正 / 馬場 忠雄 / 山城 雄一郎
発行 2007年03月判型:B5頁:640
ISBN 978-4-260-00284-4
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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執筆者/岡田正 馬場忠雄 山城雄一郎

 最近の30年間における臨床栄養学の目覚ましい進歩・発展に疑いを差し挟むものはいないであろう.それは中心静脈栄養法の導入と発展,引き続いての経腸栄養法の進歩によってトータルの栄養法(栄養治療)が確立され,それまで入院患者に数多くみられた栄養障害に対して大いなる威力を発揮し,また数々の難治疾患に対し栄養代謝面からのアプローチを可能にしたことによるものであろう.さらにまた一方では,飽食の時代が始まり,国民の急速な高齢化の進展とともに糖尿病,高脂血症,高血圧など生活習慣病の罹患率が高まり,これらの疾患に対し遺伝学,分子生物学的アプローチを駆使しての病因・病態の解明,治療・予防法の展開が得られている.そして今やさまざまな病態の基盤に存する栄養・代謝異常を正しくとらえ,早期に的確な治療を行うことが求められている.
 このような時代にあって,日常臨床に従事するすべての医師に求められているのが,医学栄養学の基本的な知識の把握と実践である.さらに,栄養士,看護師,薬剤師とともに医療チームを構成し,栄養診断・治療の判断を下すべきリーダーとしての立場も求められている.しかしながら,臨床の現場においてはいまだ多くの医師が患者の栄養管理に無関心であり,また各医師が独自の判断基準に基づいて誤った,あるいは不十分な栄養管理を行っていたり,重症になって初めて栄養障害に気づいて治療を開始するといった事実にも遭遇するのが現状である.輸液・栄養に関連した医療事故の発生も後を絶たずに起こっている.そこで,わが国の第一線で活躍中の方々を網羅し,臨床医学に携わる医師が誰しも身につけておくべき“スタンダード”な医学栄養学(臨床栄養学)の知識・技術を簡潔にわかりやすくまとめた教科書を作成することを考えた.編集者3人が十分な相談を重ね,まず全体的な梗概を定め,次いでこれを細目に分けそれぞれ最適と考えられる執筆者を厳選し,執筆を依頼した.
 本書が今後,臨床医学を志すすべての医学生,研修医,さらには各診療科の専門医に愛読され,栄養学に関するバイブルとして広く用いられ,また日常の医療において患者の診療に役立ち,威力を発揮することを信じている.
 2007年 3月

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総論
 1. 医学栄養学の歴史
 2. 栄養教育の重要性

基礎編
I. 病態生化学
 1. 水・電解質代謝(脱水症
 2. 糖質代謝
 3. たん白質・アミノ酸代謝
 4. 脂質代謝
 5. 脂溶性ビタミンの欠乏・過剰
 6. 水溶性ビタミンの欠乏・過剰
 7. 微量元素の欠乏・過剰
 8. 食物繊維(プレバイオティクス)
 9. 過酸化脂質
II. 病態生理学
 1. 食欲の調節
 2. 消化・吸収の調節機構
 3. 妊娠・授乳と栄養
 4. 乳幼児の成長・発育
 5. 加齢と栄養
 6. 創傷治癒と栄養
 7. 栄養障害と免疫
 8. 遺伝子発現と栄養
 9. 栄養とサイトカイン
 10. 栄養とホルモン調節機構
 11. 成長因子と栄養
 12. 腸内細菌叢とプロバイオティクス
III. 日本人の食事摂取基準(2005年版)

臨床編
I. 栄養アセスメント
 1. 身体構成成分
 2. 呼気ガス分析
 3. 摂取量,成分
 4. 血清たん白
 5. 尿中窒素化合物--3メチルヒスチジンを中心に
 6. 生理機能による評価
II. 栄養法
 1. 経口摂取(経口食)
 2. 経腸栄養
 3. 経皮内視鏡的胃瘻造設術
 4. 静脈栄養(末梢,中枢)
 5. 経腸栄養法と静脈栄養法のメリットとデメリット
 6. 健康(栄養)補助食品
 7. 在宅経腸・静脈栄養
 8. オーダーメイド栄養(テーラーメイド栄養)
 9. 栄養治療チーム(NST)
III. 疾患と栄養
 1. 肥満
 2. 高脂血症,動脈硬化
 3. 糖尿病
 4. 高血圧
 5. アレルギー疾患
 6. 骨粗鬆症
 7. 神経性食欲不振症
 8. 精神・神経疾患
 9. 摂食・嚥下障害
 10. 先天性代謝異常症
 11. 食物アレルギー
 12. 低出生体重児(LBWI)
 13. アルコール依存症
 14. 貧血
 15. 呼吸不全(慢性閉塞性肺疾患)
 16. 心不全,心臓悪液質
 17. HIV感染症における栄養アセスメント--HAARTに伴う脂質代謝異常
 18. 消化性潰瘍
 19. 慢性下痢
 20. 炎症性腸疾患
 21. 短腸症候群
 22. 腸管不全
 23. 肝炎(急性・慢性)
 24. 肝移植
 25. 胆汁うっ滞
 26. 肝硬変,肝癌
 27. 食道癌,胃癌
 28. 大腸癌
 29. 脂肪肝
 30. 胆石症
 31. 膵炎(急性・慢性)
 32. 膵癌(術後,特に膵全摘)
 33. 腎不全と栄養法
 34. 急性腎炎・ネフローゼ
 35. 術前術後管理
 36. 多臓器不全

欧文索引
和文索引

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“人間の尊厳”を重視した人間栄養学をめざした良書
書評者: 武藤 泰敏 (岐阜大名誉教授)
 かつて,『栄養化学概論』(芦田淳著,養賢堂)という名著があり,多くの人々が正しい栄養学を学ぶことができた。しかし,現在「食物や食品に含まれる栄養成分のみをテーマとするのではなく,同時に,それを受け入れる人間の側に立って考察していく」風潮が大きな支持を得つつあります。さらに,高齢者の栄養を考える時,“人間の尊厳”を重視した「人間栄養学」をめざした努力も推し進められています。

 このような視点に立った栄養学の名著が次々に上梓され,わが国に輸入されています。特に,Garrowらによる“Human Nutrition and Dietetics”(邦訳:『ヒューマン・ニュートリション―基準・食事・臨床』医歯薬出版),Allisonの“Nutrition in Medicine A Physician’s Views”(邦訳:『医師のための栄養学』ダノン健康栄養普及協会)などは真に味わいのある栄養学の指導書といってよいと思います。

 しかし,残念ながら,日本人を対象とした系統的な人間栄養学(臨床栄養学)の専門書は決して多いとはいえません。このたび外科,内科,小児科領域の編者からなる,綿密な企画に沿った意欲的な著書が,医学書院から刊行されたのは注目に値します。「栄養は力」であるという自己体験をもつ臨床家として,病態改善を優先させた「栄養治療」は“医食同源”という東洋思想にも合致したもので,薬物治療に勝るとも劣らない,しかも,身体に優しい治療法といえます。

 栄養アセスメントから栄養治療へ,チームワークから多職種協働のNSTへ,生活習慣病の栄養学(内臓脂肪の役割),時間栄養学,オーダーメイドの栄養学(個の栄養学),など新しい領域の病態栄養学が精力的に盛り込まれております。

 なかでも,糖尿病の記述は圧巻であり,摂食・嚥下障害,肝移植も大変優れた内容ではないかと舌を巻いた次第です。高齢者の栄養学(骨格筋萎縮Sarcopenia)は今後の一大テーマですが,倫理的にも統一した見解が十分とはいえません。合併症に密接に関与した低栄養は当然治療の対象になりますが,一方,“irreversible”な(超)高齢者の低栄養状態は果たして“aggressive”な処置をすべきかは問題で,安らかな「死の準備」の裏返しではないかとも想像されてなりません。
臨床栄養学辞典として使える,身近に備えておきたい一冊
書評者: 武藤 輝一 (新潟国際情報大学長)
 このたび,現在わが国の臨床栄養学の大家であり指導者でもある3先生の編集の下で,103名のこの道のエキスパートの方々の執筆による本書が上梓の運びとなった。わが国における久しぶりの“臨床栄養学”の大冊である。

 冒頭,臨床栄養の長い歴史についてわかりやすく簡潔に記述された後,これまで医学教育の中では重要視されていなかった“臨床栄養教育”の重要性が強調されている。これは医学教育の将来に向けて編集者が最も強調したいことの一つと思われる。
 まず臨床栄養実施の前に知っておかなければならない基礎的事項として,(1)体内にどんな栄養・代謝物質がどんな形でどこにあり,どんな働きをするのか(病態生化学),(2)健常状態で,あるいは種々の病的状態で,栄養物質や代謝作動物質がどのように変動するのか(病態生理学)など,最近の分子生物学的知見も加えてわかりやすく詳細に記述されている。

 ついで本書の中心となる臨床栄養の実際について,(1)まず栄養管理を実施する前に,患者の栄養状態を素早く確実に把握するため,どのような検査を行い,栄養状態を正しく把握するか,(2)栄養補給法として経口栄養法,経腸栄養法,静脈栄養法(腸管内を栄養物質は通らないが,それと同等の効果のある栄養補給法をparenteral nutritionといい,現在静脈栄養法がその代表である)のいずれを選ぶか,同じ静脈栄養法でも末梢静脈栄養法を用いるのか,あるいは中心静脈栄養法(高カロリー輸液)を用いるのか,その実施方法は,またどのような栄養物質を投与すべきか,在宅での栄養管理はどのようにするか,病院内外に向けての栄養管理チームの存在意義とその成果なども記述され,(3)最後に,それぞれに異なる栄養管理が必須である代表的な36の病態別に,栄養管理の実際が詳細に記述されている。

 本書は臨床栄養学に関する総合テキストというよりは,臨床栄養学辞典とも言えるほどに内容は網羅されていて詳しく,見事なものである。強いて付け加えるとすれば,経皮内視鏡的胃瘻造設術では図が示されていたように,経腸栄養の中の経胃・経食道・経空腸栄養および静脈栄養でのカテーテルの写真あるいは図,さらにカテーテルの経路別挿入・留置図などが記載されているとわかりやすかったかなと思った次第である。

 臨床栄養の基礎となる事項も臨床での実際もすべて記載されており,医学生や研修医はもちろんのこと臨床の第一線で活躍する医師にとっていつでも参考とすることができるよう,身近に備えておきたい本である。医療施設のNST(栄養管理チーム)に参加する看護師,栄養師,薬剤師の皆さんにとっても大変役立つ本であり,参考とされるようお奨めしたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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