標準精神医学 第3版

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新進気鋭の編集,執筆陣により,精神医学の「現在のスタンダード」が示された教科書。evidence-basedな考え方を意識しながら,わかりやすい記述で精神医学の面白さを感じられる内容。国家試験出題基準を網羅し,各章ごとにポイントをまとめた構成で使いやすい。卒後にも役立つ「一般医にとっての精神医学」に加え,今版から「精神科臨床実習の手引き」を付録に収載。
シリーズ 標準医学
編集 野村 総一郎 / 樋口 輝彦
発行 2005年04月判型:B5頁:512
ISBN 978-4-260-11897-2
定価 7,150円 (本体6,500円+税)
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  • 目次
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総論
 第1章 精神医学とは
 第2章 精神機能とその異常
 第3章 精神発達
 第4章 精神医学的診察と診断
 第5章 精神科治療学
 第6章 コンサルテーション・リエゾン精神医学
 第7章 精神医療と社会
各論
 第8章 神経症性障害と心身症
 第9章 人格障害と行動異常
 第10章 ストレス反応と適応障害,反応性精神病
 第11章 統合失調症
 第12章 気分障害
 第13章 児童・青年期の精神疾患
 第14章 痴呆
 第15章 器質性精神障害
 第16章 症状性精神障害と化学物質中毒などによる精神障害
 第17章 睡眠覚醒障害
 第18章 てんかん
 第19章 精神作用物質使用による精神および行動の障害(アルコール・薬物依存)
付録
 1 プライマリケアのための精神医学
 2 精神科臨床実習の手引き
資料
 1 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
 2 医師国家試験出題基準(平成17年度版)
索引

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時代に即応し,しかも精神医学のロマンを伝える上質な教科書
書評者: 神庭 重信 (九大大学院教授・精神病態医学)
 編者と執筆者とが一体となって教科書作りを楽しんだ,そんな印象を与えるのが本書である。章による出来不出来や体裁の不統一が少ないうえに,分担執筆の強みが生きている。つまり,その領域を知り尽くしている専門家の手による,正確でしかも漏れのないテクストが端正な姿を見せ,しかも“厳選された”という執筆者の個性的主張がそこかしこに滲み出ているところがとてもよい。

 本書には編者の工夫の跡が随所に見てとれる。例えば各章は,頭に“学習目標”と“キーワード”が配置されている。これはちょうど地図を手渡されて,登ろうとしている山々の特徴を頭にいれておくようなもの,とでも言えようか。そして,それぞれの章は箇条書きからなる“重要事項のまとめ”をもって終わる。全体を理解しながら,細部を記憶しなければならない学生には嬉しい配慮である。

 某大学で内科学の教授をしている同級生がいる。彼は学生時代にハリソンの内科学を原文で読んでいた。そして周囲の尊敬を集めていた。近年もっぱら取りざたされるのは,国試合格率の数パーセントの優劣であり,国試のガイドラインは年々そのボリュームを増している。ハリソンにのめり込んでいては国試に落ちるかも知れない。対策マニュアルが氾濫するのも仕方のないご時世ではある。それでも本物の医学を学ぼうとする志の高い学生は少なくないはずだ。彼らには,本書が伝えようとしている精神医学のロマンや奥深さに触れてほしいと願う。

 昨今,精神医学への要請が社会のさまざまな場面で高まっている。医療が最先端になればなるほど,患者や家族の心のケアが重要となってくる。これらの現場には,人がこれまで経験したことのない不安,葛藤,懊悩が満ちているからである。一方プライマリケアでは,今年始まったニューヨーク市医師会の取り組みにみるように,うつ病の早期発見とそれによる自殺予防が喫緊の課題となっている。家庭・学校・職場におけるメンタルヘルスの重要性は今更いうに及ばない。本書は,卒前教育の枠を超えて,こうした時代の要請にも十分応えられる上質な教科書に仕上がっている。

精神医学の“標準”を示す教科書
書評者: 高橋 清久 (国立精神・神経センター名誉総長)
 本書は他の類書に見ない大きな特徴がある。まず第一に,簡潔でわかりやすい表現である。教科書というと重々しい表現で学生が読むには抵抗がある表現をよく見かけるが,本書に限ってはそのようなことがない。第二に精神医学の歴史の記述などに見られるが,物語性があり,読者をあきさせない面白さがある。第三に内容に偏りがない。教科書であるから内容が偏っていては困るのであるが,本書は類書に比べて生物―心理―社会という精神医学の重要な側面がバランスよく取り入れられている。第四に内容が新しい。今,精神医学は多くの新しい知見が蓄積されており,国の施策も大きく変わり,精神医療・福祉の発展が著しい。司法精神医学の新たなスタートである医療観察法も最近施行された。このような新しい内容も簡潔に盛り込まれている。

 学習に便利なように,各章に「学習目標」「キーワード」「重要事項のまとめ」を入れてあることも特徴的である。それに加えて,「エビデンス」という囲み記事を入れており,精神科領域のEBMを紹介している。これによって読者は精神医学においてもEBMが重要視されていることを知り,認識を新たにすることであろう。さらに,医学部を卒業して何科に進んでも役に立つようにと,巻末には「プライマリケアのための精神医学」がある。編者のサービス精神がここに極まった感がある。

 以上のような特徴に加えて,もっとも特徴的なことは本書が精神医学の標準を示していることだ。2001年の第2版出版の際に,編者が交代し,執筆者も一変した。その際の序文に,編者の「本書は学生向けの教科書であるが,同時に『精神医学の標準とは何か』を示そうとしたものである」という意欲的な言葉がある。読後感として,その言葉通りに現在の精神医学の標準的なレベルというものが示されているという印象を持った。

 このように標準的な精神医学が,わかりやすく,簡潔で,バランスよくまとめられ読者に提供されたのは,いつにその編者・執筆者の尽力によるものと思われる。精神医学の幅広い分野の中で,各分野のもっとも相応しい研究者が編集し,執筆している。そして1人ひとりの執筆者の意欲が伝ってくる。そこに本書の特徴があると思われる。

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