小腸疾患の臨床

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近年増加傾向を示すクローン病をはじめ、多種多彩な小腸疾患について、話題のカプセル内視鏡やダブル・バルーン法などを含む最新の検査法、疾病の病態、画像所見、診断・治療法を、本邦の第一人者である編者らのグループが総力を結集して解説。現時点における小腸疾患診断・治療学の到達点を展開。消化管疾患の診療に携わる臨床医にとって、ぜひとも備えておきたい小腸疾患の診断・治療指針の決定版。
編集 八尾 恒良 / 飯田 三雄
発行 2004年11月判型:B5頁:440
ISBN 978-4-260-10663-4
定価 19,800円 (本体18,000円+税)
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I 総論,諸検査法
 1. 小腸疾患へのアプローチ
 2. 診断のための諸検査法
II 各論
 3. 発生学的異常(Anomalies)
 4. 小腸炎症性疾患とその鑑別診断
 5. 血管性病変
 6. イレウス,偽性腸閉塞症
 7. 蛋白漏出性胃腸症
 8. 腸リンパ管拡張症
 9. 免疫不全
 10. Systemic diseaseの小腸病変
 11. その他の非腫瘍性小腸疾患
 12. 腫瘍性病変
索引

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最新の内視鏡法にも言及した小腸病学の集大成
書評者: 山本 博徳 (自治医大講師・消化器内科)
 「小腸疾患の診療」と聞くと今でもマイナーだと感じられる方もおられるかもしれない。しかし,実は小腸は消化管のなかで最も長く,最も重要な働きをしている臓器である。食道,胃,大腸は全摘しても生きていくことが可能だが,小腸を全摘しては生きていくことはできない。それにもかかわらずこれまで消化器病学のなかで中心的に取り扱われることは少なく軽視されてきたきらいがある。

 その中で編者の八尾恒良先生,飯田三雄先生は小腸二重造影の開発をはじめ30年以上前から一貫して小腸疾患の診療,研究に力を注がれてこられたのである。

 本書はお二人の先生方を中心とする九州大学病態機能内科学(第二内科)と福岡大学筑紫病院の消化器グループの長年にわたる研究成果の集大成である。

◆画像に基づく診断

 本書の特徴は日本の消化管診断学の最も得意とする¥外字(815a)線画像,内視鏡画像,病理組織構築を対比したうえでの画像診断学を小腸疾患の診断にも取り入れ,なおかつ小腸疾患の診断には欠かせない病態の解説も十分になされた包括的な小腸診断学の実用書となっていることである。本書の随所に盛り込まれた豊富な症例,美しい画像には驚嘆させられる説得力がある。

◆最新かつ包括的内容で完成度の高い仕上がり

 総論では小腸疾患へのアプローチのための諸検査法に関し最新のカプセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡も含めて詳細かつ実用的に解説されており,各論では各小腸疾患に関してカテゴリー別に症例の画像を提示しながらわかりやすく網羅的に解説されている。

 小腸病学を学ぶために通読するのもよいだろう。また小腸疾患に遭遇したとき診断,鑑別診断を進めるうえで参照するのもよいだろう。まさに痒いところに手が届く高い完成度で仕上がっている。

◆タイムリーに発刊された待望の書

 はからずも今ダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡という小腸全域の内視鏡観察を可能とした2つの新たな内視鏡法の登場により小腸ブームが幕を開けようとしている。本書は長年の小腸診療,研究の蓄積に加えこのような新しい手法も取り入れた最新の内容となっており,まさにタイムリーに発刊された待望の書である。

 新たな内視鏡手技の登場により小腸への新しい扉が開かれた今,小腸疾患に対し興味がますます注がれ大きく注目を集めていくものと考えられる。この時期にタイムリーに発刊された小腸病学の集大成といえる本書は,21世紀の消化管学において必携の書といっても過言ではない。

全消化器病医が待ち望んでいた小腸疾患の診断・治療におけるゴールドスタンダード
書評者: 田尻 久雄 (慈恵医大教授・内視鏡科)
 本書編者の福岡大学・八尾恒良教授と九州大学・飯田三雄教授は,これまで消化器病領域において数々のマイルストーン的な先進的業績を発表されており,日本国内にとどまらず,世界の消化器病学界でのオピニオンリーダー的な先生方である。一方では,消化器病医としての基本的手技,読影,診断に関しても決して妥協のない厳格なものを求められ,両先生の下で指導を受けた多くの先生方が,現在,各方面で活躍されている。

 さて,つい最近まで小腸は暗黒の大陸と称され,解剖学的な困難さも手伝って,診断や治療において非常にアプローチが困難な領域であった。これまでに消化器領域の名著は幾つかあったが,こと小腸疾患に限ってみるともの足りない印象があることは否めない。しかし,X線検査をはじめとする基本的手法以外に最近の数年間はカプセル内視鏡やダブルバルーン法による小腸内視鏡などの画期的な発展があり,急速にその扉は開かれつつある。このような状況下で,小腸疾患について,最新の進歩が加味された診断・治療にわたるゴールドスタンダードとなる書が望まれていた。今回,小腸疾患を中心にこれまで長年にわたる豊富な経験をお持ちの両教授が中心となり,まさに全消化器病医が待ち望んでいた小腸疾患の現在の集大成となる書が出版された。

 本書は,総論と各論から構成されている。総論では,小腸疾患に関連する診察方法の記載がまずあり,続いて各種の画像診断,すなわち小腸診断に欠かすことのできないX線検査法からはじまり,最新のカプセル内視鏡・小腸内視鏡を含むさまざまな検査方法が詳細にその専門家によりバランスよく執筆されている。各論では日常診療を行なう際に遭遇すると考えられるあらゆる小腸疾患が網羅されている。疾患ごとにその概念の解説が的確になされ,診断と治療にわたり現在得られる最高水準の情報が得られる。さらに消化器病専門医であっても小腸疾患は経験する機会が少なく,仮に経験しても良質な画像は得られにくいが,本書で特記すべきことは,疾患ごとにきわめて多くの,説得力のある鮮明な写真を取り入れていることである。また,解説にはその根拠となる文献も記されており,その妥当性・信頼性を客観的に示している。このような配慮は,実際に疾患に遭遇した際に非常に参考となり大変親切な配慮と言える。

 したがって,本書は消化器病を学びはじめた初学者にとどまらず,専門医レベルの先生方にも自信を持ってお勧めできる。また,それぞれの医療機関においても日常診療の際に傍らにおいて絶えず参考として使用されるべき書として推薦する次第である。

豊富な画像が収められた小腸疾患の百科事典
書評者: 多田 正大 (多田消化器クリニック)
◆九州学派は小腸診断学の旗手

 八尾恒良教授,飯田三雄教授が率いる九州学派がわが国の消化管診断学をリードするようになってから久しい。両氏は雑誌『胃と腸』の元・現編集委員長であるが,頑固なまでの信念をもって消化管画像診断学を啓発している。内視鏡偏重の時代にあっても,X線診断の必要性を実践し,マクロとミクロの対比を重要視する姿勢を貫いており,わが国の消化管診断学を真摯に指導している。

 その両教授が編纂し,九州学派の俊英たちが執筆した『小腸疾患の臨床』が医学書院から出版された。分厚い書籍を手にして,小腸診断に情熱を燃やしてきた私にも感慨深いものがある。国内外を問わず,食道や胃,大腸,肝胆膵に関する書籍は山ほどあるが,小腸を取り上げた書籍は極めて少ない。その理由は,小腸には疾患が少ないこと,診断手順が複雑で時間がかかることなどから敬遠されてきたからであろう。小腸で書籍を作れるのは八尾グループ以外では不可能であると信じてきただけに,立派な書籍を手にできて嬉しい限りである。

 九州は小腸疾患への関心が深い地方である。両教授の先輩である岡部治弥先生が『消化管X線読影講座』の「第7巻小腸」を担当され(1969年),その後,中村裕一先生が小腸二重造影法の開発を受け継いだ歴史があるように,九州学派は小腸診断の黎明期から常に最先端を歩んできた経緯がある。コツコツと症例を集積して,貴重な論文を多数発表してきたことは周知のとおりである。

◆『胃と腸』譲りの卓越した画像

 前述したように,両教授は消化管画像診断の分野で孤高を守る『胃と腸』誌に深く関与しており,質の高い誌面を育てるのに多大な貢献をしている。早期胃癌研究会においても拙い画像を叱責し,撮影手技と読影の基本を繰り返し啓発している。したがって本書に掲載された画像もX線,内視鏡,切除標本,組織像はどれをとっても一級品である。単に画像がきれいなだけでなく,その所見の読み方が正鵠を射ている。編者が相当綿密に査読して文章を推敲したのであろう,綻びのない文章と構成は非の打ちどころがない。

 病理部門は岩下明徳先生,八尾隆史先生の厳しい査読を通過したのであろう,要領よく隙のない記述である。

 八尾恒良教授は先に『胃と腸アトラス』上下2巻(2001年,医学書院)を編纂されたが,この書籍では全国各地から素晴らしい画質の症例を集積して読者を圧倒した。本書でも『胃と腸アトラス』に勝るとも劣らない素晴らしい画像が集められ,『胃と腸』譲りの診断理論が展開されており,感動させられる。

◆小腸疾患の百科事典

 検査法に関する項ではX線撮影手技だけでなく,トピックスであるカプセル内視鏡からダブルバルーン内視鏡までも含めて記述されており驚かされる。各論に掲載されている小腸疾患は先天性奇形から炎症,血管病変,免疫不全,systemic diseaseとしての小腸病変,腫瘍など,ありとあらゆる疾患が網羅されている。私たちが経験したことがないような稀な疾患も含まれており,教えられるところが多い。各疾患別に病因,病態,画像所見と診断,鑑別診断,治療と予後を系統的に記述されており,まさに小腸の百科事典を見るようである。できれば早急に英語版も完成させ,わが国の誇る小腸診断学を海外へ発信して欲しい。

 羨ましいほど素晴らしい出来映えの書籍であり,消化器病医の誰もが座右に置いて必読して欲しい書籍である。そして本書が引き金になって,小腸診断学がさらに活性化されることが期待される。

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