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言語コミュニケーション障害の新しい視点と介入理論

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多様な言語コミュニケーション障害症状の発現機序に関するup-to-dateな情報を、内外の文献のreviewを通して整理し、脳内の言語情報処理のしくみ(認知神経心理学的メカニズム)に関する最新の知見を提示。こうした知見が言語臨床に与える示唆、応用への提言をテーマごとにまとめた。
編集 笹沼 澄子
編集協力 辰巳 格
発行 2005年09月判型:B5頁:348
ISBN 978-4-260-00072-7
定価 6,600円 (本体6,000円+税)
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 カラーアトラス 言語コミュニケーション障害の新しい視点と介入理論
I 言語コミュニケーション障害のメカニズム:言語音レベルから談話レベルまで
 1章 言語音レベルの障害
 2章 カテゴリー特異的意味障害
 3章 動詞/名詞の選択的障害
 4章 意味と語彙処理
 5章 音韻機能の障害
 6章 単語の読み書き障害への認知神経心理学的アプローチ
 7章 語の文法とその障害-二重システム仮説と単一システム仮説の対立
 8章 構文機能の障害
 9章 談話レベルの処理障害
 10章 原発性進行性失語
 11章 言語機能の回復・修復のメカニズムと今後の展望
 12章 認知心理学的アプローチによる作動記憶研究の動向
II 脳イメージング研究の現況と展望
 13章 機能的脳イメージング法
 14章 ことばの聞き取り,理解および生成
 15章 健常成人における漢字単語・仮名単語の処理
 16章 健常成人における構文処理機構
索引

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理論と実践のバランスがとれた本
書評者: 御領 謙 (千葉大文学部教授・心理学)
 人間を人間たらしめている言語コミュニケーション機能に,不幸にも障害が生じた場合の不利益は計り知れない。この障害の評価法や,回復の支援に必要な方法の一層の整備は,高齢社会を迎えた今,緊急の課題の1つと言えよう。そのためには臨床場面のみならず,関係諸科学の基礎的研究をも含めた超領域的研究が必要であり,幅広い視点と知識が要求される。本書は読者をこの広領域にわたる研究と実践の最前線に導いてくれる。

 本書の特徴を2,3あげておきたい。第一は理論と実践のバランスを重視する姿勢である。これは編者笹沼澄子氏の編集方針であったのだろうが,どの著者もその要望に十分にこたえている。つまり本書は単なる事実や理論の羅列でなく,事実(神経心理学的事実,心理学,心理言語学的事実,脳神経画像的事実など)と,理論(認知機能モデル,言語理論,脳機能モデルなど)と,介入技法との間の有機的な関連付けを明確に意図している。それが現時点でどの程度成功しているかは,問題領域ごとの研究の進展具合などもあり,一概に判断はできない。しかし本書のこのような方向付けに,評者は深く賛同したい。

 特徴の第二は,学際的研究の進展振りがよくみえる点である。「人間の言語機能を解明し,言語治療に役立てる」ことが本書の究極の目的であろうが,それには脳科学から工学,人文科学にわたる超領域的研究が必要であることは自明のことである。本書は,その自明のことが現実にここまで進んできたかという感慨を与えると同時に,まだまだこれからだという限界,よく言えば将来性にも気づかせてくれる。もう一点,これまで研究の遅れていた意味の問題,すなわち意味処理過程の解明や意味理解の障害に関する最近の研究動向が随所に紹介され,この領域の熱気を伝えている。これも本書の貴重な特徴の1つであろう。

 本書が伝える研究と実践の現状を眺めつつ,評者は以下のような感慨と疑問をいだく。…例えば20年前を考えてほしい。このような本が編めたであろうか。否。明らかに研究は大きく進歩した。だからといって現状に満足できるであろうか。できない。では次になにをなすべきか…。本書を精読することにより,熱心な読者には本書の著者らと議論を戦わせたい点がきっと山ほど出てくるであろうし,次になすべき研究,次に試みるべき介入方法などがふつふつと思い浮かんでくるに違いない。このように本書はきわめて刺激的な本であり,決してマニュアル本ではない。言語はもちろん認知機能全般に関係する研究者,臨床家,学生諸君等々,多くの方々に推薦したい本である。

最先端の言語治療法が学べる画期的な書
書評者: 種村 純 (川崎医療福祉大教授・感覚矯正学)
 本書は言語コミュニケーション障害に関する本格的な概説書である。本書の特徴は認知理論に基づくさまざまなモデルに基づいて,言語コミュニケーション障害を位置づけ,さらに脳イメージング研究での成果が結びつけられている。まさに専門家が求める内容となっている。

 各章では最先端のきわめて興味深い話題が次々に紹介されている。言語音レベルの障害では言語音の処理に関する音節配列や調音プログラミングのモデル,音声分析装置の現状,音声聴取のモデルなどが取り上げられている。カテゴリー特異性に関しては,感覚/機能理論,領域特異的仮説,概念―構造仮説などの理論が紹介され,比較されている。動詞/名詞の選択的障害と動詞の障害に対する治療,意味記憶の構造と意味セラピーなど新しい言語治療法が紹介されている。

 音韻機能の障害に関する章は圧巻である。ニューラル・ネットワーク・モデルに損傷を与え,呼称と復唱の成績変化を予測したデータが提示されている。その後に,音韻機能の障害を示す各症候群の報告例と失語症の成績が分析され,各症候群の再検討が行われている。単語の読み書き障害に関する章では,各臨床型について二重経路モデルとトライアングル・モデルからの解釈を対比しており,ここでもシミュレーションと実際にデータとの対応が検討されている。語の文法,すなわち動詞の活用に関する二重システム仮説と単一システム仮説,構文機能の障害,失語症,認知症,右半球損傷,頭部外傷における談話レベルの処理障害,原発性進行性失語,言語機能の回復・修復のメカニズム,作動記憶における中央実行系,スパン,言語性短期記憶と音韻ループと理論的に重要なテーマが並んでいる。

 脳イメージング研究に関する第2部では各種の神経機能画像法,脳イメージング研究による音声言語の処理ネットワーク,漢字・仮名単語の視覚認知,読み書きの機能画像研究,構文処理と運動系列予測学習仮説が取り上げられている。

 日本語でこれだけ水準の高い情報が盛り込まれた書物は今までになく,画期的な出版である。本書によりわが国の言語コミュニケーション障害に関する臨床,教育,研究が確実に進むことであろう。

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