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レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版

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初版発行から7年。第2版は頁数を倍以上に増やし、新版と見まがうほどの大改訂となった。最新エビデンスを明示し、臓器別・原因微生物別のアプローチを充実させ、臨床での問題解決のための生きた知識・考え方を網羅。「感染症は全診療科に共通の問題なので、研修医は感染症診療の基本原則を身につけることが重要」という理念はぶれることなく、研修医および指導医が困ったときに最初に繙くべき本という位置付けに変わりはない。
シリーズ レジデントマニュアル
青木 眞
発行 2008年01月判型:A5頁:1464
ISBN 978-4-260-00387-2
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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  • 序文
  • 目次
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第2版 序
青木 眞

 第2版も感染症の診療現場で「途方に暮れ,焦り,諦めかけている」研修医・若き医師,医学生を対象としている点では変わりがない。しかしはるかに量は多く読みづらいはずである。

 これは,他に臨床感染症を概観するのに有用な,優れたマニュアルが入手可能になった今日,本書の役割を考えた結果である。具体的には読者からの要望も参考にし,「感染症診療の基本原則」「感染症治療薬」の章を整理拡充,更に既存の各章を新しい資料により書き換え,予防接種など新たな章も加えた。この意味では本書は改訂ではなく,新しい本である。

 同時に,感染臓器・解剖,原因微生物,感染症治療薬という3本の軸を有機的に整理・統合すること,感染症の存在・その趨勢判断に体温,白血球数,CRPに依存しすぎないことを強調し続ける点では,全く前版と変わっていない。世界標準の治療薬でありながら本邦で承認されていない薬剤を処方例に並べ,承認薬でも,その投与法・量に関しては保険で認可されたものよりもオーソライズされた資料のそれを推奨している点も全く変わっていない。

 初版を利用して下さった医学生,若き医師の手元に,新たに本書が置かれ日常診療の一助となれば幸いである。

 最後に,足かけ4年の歳月と各専門領域の優れた臨床医のサポートなしには,本改訂は不可能であった。特に,藤田芳郎先生,堀 成美氏には,多大な支持を頂きました。心から感謝致します。

 2007年11月

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第I章 感染症診療の基本原則
第II章 感染症治療薬の概要
第III章 検体の採取と取り扱い
第IV章 特殊な発熱患者へのアプローチ
第V章 中枢神経系感染症
第VI章 呼吸器感染症
第VII章 尿路・泌尿器関連感染症
第VIII章 血管内感染症
第IX章 腹部感染症
第X章 皮膚・軟部組織感染症
第XI章 骨髄炎,化膿性関節炎
第XII章 眼科関連感染症
第XIII章 頭・頸部感染症
第XIV章 性感染症
第XV章 重要な微生物とその臨床像
第XVI章 免疫不全と感染症
第XVII章 HIV感染症・後天性免疫不全症候群
第XVIII章 敗血症
第XIX章 予防接種
欧文索引
和文索引

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感染症診療の原則から実践的かつ貴重な情報がちりばめられた一冊
書評者: 大庭 祐二 (ミズーリ大学呼吸器集中治療内科准教授)
 感染症診療においては既に定番書となっている『レジデントのための感染症診療マニュアル』が改訂,出版された。著者の青木眞先生は,公私において私の恩師の一人であり,緒方洪庵の適塾の門下生で種痘の普及に尽くした湯浅芳斎の末裔でもある。

 私の専門の一つは集中治療であるが,感染症を制するものが集中治療を制すると言っても過言ではないほど,感染症診療は多くの臨床診療科においてかなり重要な位置づけを占める。しかし残念ながら,日本では臨床感染症という領域はかなりの長期間軽視され続けてきた。

 そこで本書であるが,この本は初学者が臨床感染症学を学びやすいように非常にうまく構成,記述されている。外国語の場合,初学者はまず文法を知ることが必要であるが,まず総論部分において,すべての医師が初期研修中に身につけるべき感染症診療の文法が述べられている。

 副題にもなっているPrinciples & Practiceという言葉に集約されるように,感染症診療のいろいろな原則を知っていれば,随分と診療が楽になる。感染症を制するための必須の第一歩である。また初版にはなかった,敗血症,予防接種の章が加えられており,かなり包括的な内容となっている。

 特筆すべきものの一つとしては,以下に挙げるような臨床医として長年診療に関わったものにしか得ることができない,臨床上重要なエッセンスや数々の格言があちらこちらに惜しみなくちりばめられていることである。

● ペニシリンGの力(6頁,図譜22)(千の言葉より一枚の写真)

● 培養検査に関して「嘘をつく」菌がいる。(26頁)

● 腎機能低下時は「容器」からの排泄が遅くなっているだけで「一定の容積に一定の濃度を作る」という初回投与という作業とは直接関係がない。(60頁)

● ESBL耐性は「結婚詐欺」AmpC耐性は「心変わり」……(124頁)

● 押しても消えない皮疹(出血性皮疹)にはもっとも恐ろしい感染症や病態が伴うことが多い。(365頁)―鑑別診断(368頁)

● 免疫不全には幾つかののタイプがある。それを知れば,問題となる微生物の種類とその探し方,またまた事態の緊急性をも決定することができる。(1133頁)

● 抗菌薬の使用にもかかわらず血液培養の陽性が続く時の対処法。(1313頁)

 その他に,著者の臨床感染症家として本領発揮といえる第3章の「検体の採取と取り扱い」,また不明熱,リンパ節腫張や皮疹を伴う発熱について書かれた第4章などは,感染症専門医が希少な日本において,実際的でかつ非常に貴重な情報である。各論に関しては症例にあたるたびに読み返して欲しい。第15章の「重要な微生物とその臨床像の把握」も経験的治療を決定する際に知っておくと非常に強力な武器となりえる重要な情報である。
 本書は日本の感染症診療の現状に対する現代の「種痘」である。多くの医師が研修早期に本書に触れ,ここに書かれている原則を診療に生かし,それによってより多くの患者さんが恩恵を蒙ることを願ってやまない。できれば研修医などがいつも持ち歩けるように要約版やその電子化が今後期待される。
「臨床家すべてのための」感染症診療マニュアル
書評者: 岩田 健太郎 (亀田総合病院総合診療感染症科部長)
 本書のタイトル『レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版』(以下,『マニュアル』)は,おそらくは著者の意図するところが十分に発揮されたタイトルである。しかしながら,そのタイトルは本書の属性をすべて表現しているわけではない。実のところ本書は「臨床家すべてのための」感染症診療マニュアルである。感染症とまったく無縁で臨床行為を行うことなど,限りなく不可能に近いことだからで,感染症と関わっている限り,本書は必携である。誇張表現をひとかけらも用いずに要約すると,読者が臨床家であるならば,ためらうことなく,すぐ本書を購入するのがよい。

 単に広告としての書評であれば,ここで私の役割は終わりであるが,蛇足を覚悟でもう少し追加したい。

◆「唯一の」教科書から「最高の」教科書へ

 私が医師になったとき,日本語で読める感染症の教科書は皆無であった。その後『マニュアル』の第1版が出たとき,それは日本語で読める,臨床感染症の「唯一の」教科書となった。日本の病院の多くは感染症のプロを有していない。困ったときに相談する相手がいない。多くの医師にとって『マニュアル』は頼りになる唯一のよりどころであった。感染症で迷ったときは『マニュアル』を開く。私が尊敬するある医師は,机上にセロテープで何度も補修した,ボロボロになったあの青い本を置いていたものである。

 その後,私たちが感染症を学ぶ環境は激変した。第1版出版時はまだ十分に普及していなかったインターネット環境の整備である。今や,メールを使って世界中の専門家に気軽に症例の相談が可能になり,John's Hopkinsの回診光景がネットで中継され,数々の教科書や論文にも簡単にアクセスできる。感染症関係の信頼できる教科書も増えている。

 第2版の『マニュアル』は,そんなわけで,もはや「唯一」のよりどころではない。しかし,今や数ある教材の中でも本書は群を抜いて素晴らしい。間違いなく,日本臨床感染症界史上最高の教科書である。「唯一」は「最高」に変身した。

◆博物事典ではない,基礎的な箴言ばかりの大著

 単一著者が書き下ろした本書は,一貫して同じ理論,同じ哲学,同じ価値観を結晶させた一冊である。感染症は,もともと膨大なコンテンツを持つ領域である。ハリソンの内科学を開くと,いちばんページ数を割いているのは循環器でも消化器でもなく,感染症である。

 その膨大なコンテンツをたった1人でまとめ上げること自体,ほとんど奇跡的で,諸外国でもなかなか例のないことである。さて,およそ1400ページ(!)もある本書。単一著者からなる教科書で,これだけの内容とボリュームを備えている例を,私はMarinoの『The ICU Book』くらいしか知らない。

 その膨大な教科書を,慣れた日本語で読める。スピーディーにページをめくり,知りたかったこと,読みたかったことが片っ端から目に入ってくる快感は格別である。質の高い翻訳者がお気に入りの外国人作家の作品を翻訳してくれたような幸福がそこにはある。日本の諸事情(諸制限)も勘案して書かれた本書のよさは,外国の教科書では得られない。

 膨大なページ数に騙されてはいけない。実際に読んでみると,その内容は意外なほど基礎的な箴言を主としていることに気がつく。決してマニアの博物事典ではなく,感染症と対峙するときはここに気をつけろ,ここを注意しなさい,という基本的な,教育的なメッセージにあふれているのである。それが膨大なボリュームになってしまうところに本書のすごさがある。そういう意味から考えると,「レジデントのための」と銘打ったタイトルは決してミスノマー(誤称)ではない。初学者は,第I章の「感染症診療の基本原則」を熟読するだけでも十分な基礎体力がつくはずだ。病棟や救急外来で困難に陥ったときでも決して揺るがなくてもよくなる,基礎体力。

 基礎的な箴言であることは,必ずしも安易さを意味しているわけではない。その深遠さは,「尿路感染症は,一見簡単な感染症のようでありながら,実は他の部位の感染症を除外しながら診療することを求められる総合内科的疾患である」(550ページ)という一文を紹介するだけで十分であろう。この言葉の秘める重要さは,質の高いプライマリ・ケア医か,逆に私のように痛い目にあったことのある医者(ただの尿路感染だと思ったのに!)なら骨身に染みて感じているはずだ。

◆教育者がやってはいけない「がっかりさせること」

 上級者にとっても本書は有用である。「エビデンス」では得られない臨床決断上の重要なtipsはあちこちに散らばっている。例えば私が珠玉の一章だと思う結核の項(1032ページから)を読むだけでも,それがわかる。「肺結核に特徴的なX線像というものはないと考えたほうが安全である」(1048ページ)。あるいは,半世紀を経て再発した骨髄炎のエピソードが,黄色ブドウ球菌の執念深さと恐ろしさを教えてくれる(819ページ)。

 日本における非科学的な根拠に基づいた「保険適応」という呪縛は,DPC採用の病院が増えるにつれて,解かれつつある。あとは,心の呪縛を解くだけである。指導医の皆さまは,ぜひ本書を熟読して感染症診療の基本を学び,学生・研修医に一層,質の高い教育を提供してほしい。一所懸命勉強している学生・研修医をがっかりさせるような発言だけはしないでほしい(「とりあえずカルバペネムいっときゃいいんだよ」「CRPが下がったんだから抗生剤は止めてもいいよ」)。教育者が何よりやってはいけないのは,怒らせることでも,泣かせることでも,落ち込ませることでもなく,がっかりさせることなのだ。

 相談する相手がいなくて「途方に暮れ,焦り,諦めかけている」研修医(本書序文より)たちは,本書を心の拠りどころとするとよいだろう。日本でも感染症のプロが少しずつであるが生まれつつあるが,すべての病院に行き渡るのは遠き未来の話である。

 感染症のプロは,ここに心強い相談相手が生まれたことを大慶としよう。毎日の診療で困惑を覚えたとき,真っ先に本書を開く習慣を,多くの専門医が持つに違いない。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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