標準形成外科学 第5版

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本書は医学生・初期研修医が知っておくべき形成外科学の基本的事項および最新の知見を解説した教科書である。第5版では美容外科領域の記述がさらに充実し、また新しい試みとして「医学生のための必修事項」「医学生のための禁忌事項」を随所で取り上げ、医師国家試験に際しての注意点とした。各項目の冒頭ではその分野ごとの「基本事項」を箇条書きで簡潔にまとめている。
シリーズ 標準医学
編集 秦 維郎 / 野崎 幹弘
編集協力 平林 慎一 / 鈴木 茂彦
発行 2008年03月判型:B5頁:352
ISBN 978-4-260-00558-6
定価 7,480円 (本体6,800円+税)
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第5版の序
野崎幹弘・秦 維郎

 医学書院の標準教科書シリーズは,医学生や初期研修医たちの学習のために,基礎と臨床について広範にしかもバランスよく内容をまとめたわが国を代表する成書の1つになっている.このたび本書は第5版を上梓することになったが,形成外科の教科書として,より充実した内容の編纂になっている.初版から数え33年,8年振りの改訂である.
 2007年に日本形成外科学会は創立50周年を迎えた.この間創成期の諸氏の志は脈々と次代の形成外科医たちに継承され,外科学の一分野を担うにふさわしい発展がなされてきた.全国80大学の医学部・医科大学・医科大学校がある中で,すでに多くの大学で形成外科学講座や診療科が設置されて卒前教育が行われている.学会としては医師国家試験出題にも参与しており,早くから専門医制度も確立されている.研修基準に適合して指定された施設は専門医資格をめざす臨床研修の場であり,広くは卒後教育の場となっている.したがって形成外科は日本専門医認定制機構においては基本診療科の1つに位置づけられ,厚生労働省では学会認定された医師に「専門医形成外科」を標榜できることを認めている.
 形成外科は体表外科を担う新しい分野の外科として認識されてきたが,その足跡をたどると古代文明にまでさかのぼる.紀元前の古代インドにおいて前額部から皮弁を移植して鼻を再建した事実が,世界最古の外科学の成書ススルタ大医典に記載されている.この手術法の基本は現在も「インド法造鼻術」として形成外科医たちに継承されている.一方,近代形成外科は第一次・二次世界大戦後に飛躍的に発展した.外傷後の顔など体表面の形状を復元させることから,戦傷外科ともいわれるゆえんである.その後も体表外科を取り扱う学問としての進歩は継続され,本書でも改訂のたびに形成外科の新しい項目が追加されてきた.
 今回の改訂では各領域のその後の学術的進展を補足し,美容外科領域をさらに充実させた.また標準教科書シリーズは卒前・卒後教育の成書をめざしていることから,各章の項目の冒頭には医学生・初期研修医にとって必要な重要事項を「基本事項」として挙げている.また医師国家試験に出題される内容については「医学生のための必修事項」「医学生のための禁忌事項」として,理解しやすいように特別なコーナーを設けた.これらの基本的かつupdateな内容を織り込んだ執筆は,平素から大学で卒前・卒後教育に直接従事されている方々にお願いしており,医学生はもとより卒後教育の臨床の場でも本書が形成外科の教科書として大いに活用されることを確信する.
 今版では第4版を監修された鬼塚卓彌先生が勇退され,新たに平林慎一先生,鈴木茂彦先生に編集協力としてご参加いただいた.第4版までに執筆された方々,また第5版より新たに執筆に加わった方々に厚く御礼申し上げるとともに,本書刊行にあたって多大なご努力をいただいた医学書院の関係各位に深甚なる謝意を表する.
 2008年3月

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総論
 1 形成外科総論
 2 形成手術手技

各論1 先天性疾患
 3 先天異常総論
 4 先天異常各論

各論2 後天性疾患
 5 外傷
 6 瘢痕
 7 難治性潰瘍・その他
 8 腫瘍
 9 美容外科

索引
 和文索引
 欧文索引

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最新の知見を盛り込んだ卒前・卒後教育の成書
書評者: 寺師 浩人 (神戸大学大学院准教授・形成外科学)
 形成外科学は,頭のてっぺんから足の先まで,皮膚表面から腹部内臓器を含むまで手術的に扱う学問である。われわれ形成外科医は,幅広い知識に加えてオリジナルである形態・発生学,さらに創傷治癒学にも精通していなければならない。また,医学としての学問のほかにアートとしてのセンスを磨くことが要求される。さらに,精神外科学という造語にもあるように,手術的手技を携えた心療内科的要素も包含していなければならない。

 『標準形成外科学』は,1975年の初版以来,一人前の形成外科医をめざす若者にとって長く必読書であった。今回,8年ぶりの改訂であり,形成外科学の教科書としてより充実した内容の編纂となっている。もともと「『標準』シリーズ」は,卒前・卒後教育の成書であるが,本書は主として卒後に形成外科をめざす医師にとっての教科書として親しまれてきた。昨今,社会において形成外科医療が求められてきていることと,形成外科学が医師国家試験の科目の1つとして組み込まれたことから,医学生への形成外科学の教育の必要性も増してきている。今回の改訂内容をみてみると,そのような社会事情,教育の必要性を鑑みたものと思われる。

 今回の改訂で大きく変更されているのは,1つには「基本事項」が各項目の冒頭に箇条書きの形式で組み込まれ,まずその項に何が記載されているかを端的に捉えることで読みやすくなったこと,2つには医師国家試験に出題される内容として,「医学生のための必修事項」「医学生のための禁忌事項」が随所に挿入されていることである。この2つの追加事項によって,卒前教育のための『標準形成外科学』としても確立されていくであろうことが予想される。実際の内容では,まず総論と各論に大きく分けられ,各論ではさらに「1.先天性疾患」と「2.後天性疾患」とに分けた構成へと変更されている。

 総論では形成外科の歴史を詳しく振り返り,精神病理の内容が大きく変更されている。またインフォームド・コンセントの項目が新しく追加されており,重要な情報である。「形成手術手技」の章では,古典的治療に関しては簡潔的に記載され,昨今急速に伸びている分野として,レーザー治療と化学外科療法の1つとしてケミカルピーリングが比較的詳しく記述されている。さらに,第4版では今後の展望の項目にわずかに記載されていた骨延長法が第5版より独立した項目として新しく追加された。

 各論では,「先天異常総論」の章において,先天奇形という用語の使用について警告を発している。また「先天異常各論」の章では内容的には眼瞼の項目が大きく変更されており,眼瞼機能を詳しく記述し,特に先天性眼瞼下垂症の内容が膨らんでいるのに加えて,その他の項目においてもおおむねリニューアルされている。その他に目立った内容の変更は,第4版では外傷の章内の1項目であった難治性潰瘍が独立した1つの章として登場し,中でも糖尿病性足潰瘍が新しい項目として挙げられていることも時代のニーズに合っている。さらに「美容外科」の章では,各論でまず皮膚の美容外科としてレーザーやピーリングなどの美容皮膚科の分野が取り上げられており,またアンチエイジング(抗加齢療法)が1つの項目として追加されているのも昨今の時代の流れとしては当然と言えよう。

 このように,本書は医学生向けの教科書としても位置付けられる内容へと発展しており,まさに卒前・卒後教育の成書として,本書を広く推薦したい。
現在にマッチした極めて信頼度の高い書
書評者: 大浦 武彦 (廣仁会褥瘡・創傷治癒研究所所長・形成外科学)
 『標準形成外科学』は1975年に初版が発刊されて以来,形成外科を学ぶ者が座右の書として最初に手にし,ことあるごとにひもとく教科書として,長年の間形成外科の分野において君臨してきた。

 さて,日本形成外科学会は2007年に創立50周年を迎え,現在会員数は4300名強となり,毎年の学術集会には約2000名を集める大所帯となった。本学会の内部組織として日本形成外科学会基礎学術集会および専門医制度があり,その上に現在設立されようとしている日本創傷外科学会がある。また関連学会としては,日本頭蓋顎顔面外科学会,日本熱傷学会,日本口蓋裂学会,日本褥瘡学会,日本マイクロサージャリー学会などがあり,形成外科は大きな広がりを見せている。日本形成外科学会の発足当時,初代の形成外科医師が集まり,形成外科のidentityをどこに置き,どのように発展させるべきかを口角泡を飛ばして激論したのが嘘のようである。今や形成外科は世に認められ,医学界においても重要な地位を占めるまでに成長している。今回本書を一新させ,初版から数えて33年,第5版として8年振りに改訂するのは当を得ている。

 第5版の執筆者一覧を見ると,今更ながらに新旧の移り変わりの早さを痛感するし,内容を見ても初版に比べて今昔の感がある。まず,美容外科が堂々と大項目として収載されており,30頁の充実した内容となっていることである。実は第2版から美容外科の項目が収載されてはいたが,内容的には若干物足りなさを感じていたのである。現在の若い方々にはとても想像できないことであろうが,日本形成外科学会の創立当時,美容外科を口にすることはタブーであった。もし形成外科学が美容外科もするならば,大学としては形成外科の新設を認めないという国立大学が大勢を占めていたのである。したがって,美容外科をまったく表に出さずに形成外科の設立に奔走したのである。今回の改訂版では美容外科が形成外科学の大きな柱の1つとして充実しており,感慨無量である。

 また最近は,交通外傷や熱傷が予想外に少なくなる一方,腫瘍や難治性潰瘍が多くなっている。これも第4版のころとは大きく異なっており,第5版では最近の世相を反映して,これらの項目が目新しくまた見やすくなっている。実は,世界の形成外科の中で形成外科医が腫瘍や難治性潰瘍を積極的に扱うのは日本の形成外科だけであり,これが日本の形成外科の特徴となっている。しかしこれは重要なことで,病院勤務の形成外科医が多くなるなか,これらの症例を扱うことで形成外科の存在価値を病院の中で発揮させうる良い機会なのである。

 全体の編集としては要所要所が的確に押さえられており,その流れの中で新しく目につくのがインフォームド・コンセント,性同一性障害,レーザー,人体美論,アンチエイジングなどである。それぞれの項目についてもその道のエキスパートの方々が執筆しておられ,実に充実した編集の改訂版である。また,高度な内容でありながら見やすい教科書となっているので,読んでいて楽しい。

 若い形成外科医のみならず,形成外科に興味を持っているすべての外科医に本書を座右の書として薦めたい。

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