膝MRI 第2版

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放射線科医では数少ない膝MRIのエキスパートである著者によって、その豊富な経験をエッセンスに、箇条書きでわかりやすい本文、見やすいレイアウトで示し大好評であった書籍の7年ぶりの改訂。初版刊行以降の症例を精選のうえ多数追加。術後の写真も掲載し、“忙しい現場で目を通せる”という視覚的理解をさらに目指し、内容がいっそう充実した。
新津 守
発行 2009年07月判型:B5頁:228
ISBN 978-4-260-00914-0
定価 5,940円 (本体5,400円+税)
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第2版の序 Preface to the 2nd edition

 自分はやはり「膝が好き」だと思う.私の永遠の恩師,故・板井悠二先生が,カンファレンスでシャウカステンに肝臓のフィルムがかかると身を乗り出されていたように,ビュウワーに十字靱帯や半月板らしい形状が描出されると,鼓動が高まる.

 初版『膝MRI』を出してからはや7年が過ぎた.出版後に多くの方々からお褒めの言葉をいただくとともに,不備な点もご指摘いただいた.自分で見直してみても,適当な写真がなかったり情報が欠けている部分が気になり出した.その間,症例は着実に蓄積するとともに,3.0T装置や多チャンネルコイルなど,画質の向上も進んだ.そこで第2版の構想を5年ほど前から練り始めて,今ようやく形となった(明確な締め切りのない著書刊行にはこのような遅延はつきものと思われるものの,やや時間がかかりすぎた).

 今回も私の最も頼りにしている整形外科医・池田耕太郎先生に最大のご支援をいただいた.本書に多数の関節鏡写真を掲載しているが,その多くは池田先生からのものである.ご紹介いただいた症例には各先生のお名前も記載させていただいたが,池田先生のものはあまりに多いので最近の数症例のみの記載にとどめさせていただいた.また筑波大学整形外科教室のみならず,私の職場が移動したことにも伴い,東京を中心とした多くの整形外科の先生からご支援をいただいた.ここに改めて感謝の意を表する.

 初版からの7年間で環境も大きく変わった.私自身,筑波大学から,合併・新設された首都大学東京へ異動,池田先生はいちはら病院へ,福林徹先生は早稲田大学へ,齋田幸久先生は聖路加国際病院へ異動された.冒頭の板井悠二先生は初版出版の1年後,まだまだご指導を切望するわれわれを残して,天国に旅立たれてしまった.
 今回も医学書院の阪本稔氏,黒田清氏,大橋尚彦氏に大変お世話になった.最後に,初版時には遊び相手としての父親を必要としていたが,すでに中高生となりその必要がなくなった二人の息子,光と充,そして妻・由紀子に深く感謝する.

 2009年6月
 新津 守

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第1章 膝の解剖
第2章 MRI撮像法
第3章 前十字靱帯
第4章 後十字靱帯
第5章 内側側副靱帯
第6章 外側側副靱帯を含む外側支持組織
第7章 半月板
第8章 骨折と脱臼,筋損傷
第9章 若年者の膝
第10章 変性と壊死
第11章 滑膜病変とタナ障害
第12章 膝内外の液体貯留腔
索引

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完読するたびに新たな事実を教えてくれる本
書評者: 宗田 大 (東京医科歯科大大学院教授・整形外科学)
 MRIが日本の臨床で用いられるようになって20年余り,私自身これまでに何千もの膝MRIを読影してきた。同時に添付される読影医の診断やコメントも数多く目にしてきた。そんな中,唯一参考になるコメントを書いてくださる読影医を発見した。それが本書の著者である新津守氏である。新津先生のコメントには私の読みの上を行く,有益な内容や情報が常に含まれている。プロのコメントである。日本には骨関節系のMRI読影専門医が少ない。一方,MRIの撮像に対して日本の医療制度は非常に寛大であり,膨大な数のMRIが撮られている。その画質や読影医の読影能力の差はすさまじいものがあり,同じ医療費でよいものなのか,と日頃から感じている。そのような日本の中で私たち整形外科医にとって新津先生の存在は貴重である。

 本書は長年にわたる新津先生の膝MRIの仕事をまとめた書物の第2版である。好評だった初版の7年後の改訂であり,時代の,主にMRI撮像技術の変化に応じた改訂である。膝をこよなく愛する著者の,膝関節の外傷や障害に対する理解の深まりが手に取るように伝わってくる。初版の精神を引き継いだ著者のライフブックである。

 膝の専門医,膝に興味のある医師,研修医,膝に興味がありさえすれば,どのような経験や読影力の持ち主でも,まず最初から最後まで完読していただきたい。読むというよりも画像をどんどん見ながら,ページを繰っていく。目に付いた画像があったら説明を読んでみる。そのような斜め見でも,膝全体の問題が身に付くような気がする。MRIを通じた幅広い膝関節の外傷・障害の総合的教科書としても手ごろな読み物(図鑑)といえる。特に前十字靭帯損傷と半月板障害の項目は詳しい。数多くの症例が発生する2つの疾患は,同じ病名や障害部位であっても,いろいろな問題や障害の側面があることを,新津先生の幅広い経験を通したMRIが教えてくれる。ただ単にMRIにとどまらず,膝の読み手のレベルと興味に応じて間違いなく脳裏に残る情報があるに違いない。またMRIにおける解剖も改めて見直す価値がある。私たちは常に正常解剖にかえり,現在を振り返る必要がある。現在の診断は正しいのか。治療法は本当に正しいのか。

 学会の往復,当直時,時間の取れるときに繰り返し,読み返してみたい。繰り返し完読するとそのたびに新たな事実を教えてくれる本である。MRIの読影法のみならず,膝に興味のある若いドクターにはトピックごとに示されている質のよい参考文献が役に立つ。値段も手ごろであり,膝のMRIに接する機会のある多くの医療関係者にお勧めする良書である。
幅広いレベルの読者のニーズに応える格好のテキスト
書評者: 福田 国彦 (慈恵医大教授・放射線医学)
 巻頭言に「自分はやはり『膝が好き』」,「ビュウワーに十字靱帯や半月板らしい形状が描出されると,鼓動が高まる」と記されている。まさに膝MRIの第一人者,新津守氏ならではの言葉である。

 全編に22のコラムがある。これらのコラムは疾患概念,用語の解説など本文で取り上げ難いことがまとめられており,また日常診療や研究に向けた新津氏の姿勢も書き込まれている。その中の「膝MRIのレポートは整形外科医とのキャッチボールである」では,お互いが相手の構えたところに捕りやすいボールを返球するのが重要と述べている。また,「これでいいのか膝のMRI」では,どのレベルの装置を使っているのであれ,その装置で得られる最高画質を引き出して臨床医に提供するのがプロの自覚であると,現場を叱咤している。

 さて,本題に入る。本書は既に膝関節のMRI診断のテキストとして定番である『膝MRI』の第2版である。内容がさらに充実し,MR画像も厳選され極めて上質である。同一症例のMR画像と内視鏡写真との対比や,経過観察をしたMR画像が多用されており,読者の理解を助ける。

 また,参考論文が該当文章の左隅にレイアウトされている。最近は読影室でも外来でもネット検索が可能な環境となっており,このレイアウトは現場でさらに詳しく知りたい読者に親切な配慮である。

 本編は全12章からなり,解剖と撮像法の基礎2章と各論10章から構成されている。著者が得意とするMRIの原理については,最小限にとどめている。全体のボリュームを膨らませないための配慮と思われるが,膝MRIに必要な技術は漏れなく症例を提示しながら解説されている。MRIを理解している人の手に掛かれば,同じことを書いてもわかりやすくコンパクトにまとめられるものだと感心する。各論では腫瘍以外のすべての疾患がカバーされており,膝MRIの現時点における総括といえる内容である。

 巻頭の本書の使い方では,忙しい現場で目を通せることを目的としたため,本文を箇条書きにしたとある。読ませるテキストではなく箇条書きにしたもう一つの理由は,著者が日常診療や研究の過程で気付いたことや論文から得た知識のメモ書きをそのまま,まとめ上げたからではないかと推察する。そのため,新津氏でなければ書けないキラリと輝く記述が随所に散りばめられており,まるで膝MRIの新津メモを盗み見ているようである。

 したがって,これから膝MRIを勉強する医師にも膝を専門とする医師にも,それぞれの読者のレベルやニーズに応じて,必要な要素が引き出せる格好のテキストになっている。本の厚さも価格も手ごろで,読影室に常備するのみならずMRI診断を行うすべての画像診断医,整形外科医,およびスポーツ医学を専門とする医師に必携の膝MRIのテキストとしてお薦めする。

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