「燃えつきない」がん看護

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看護師の「燃えつき」につながる要因が集約した形で現れるのが,がん看護の臨床現場。本書は,がん看護の11事例を通し,燃えつきにつながる要因を明らかにしつつ,その対応を精神科医とともに分析。「燃えつきない」看護を実践する道を探る。よい看護実践を目指しながらも,くじけそうになるすべての看護師に送るメッセージ。
安達 富美子 / 平山 正実
編集協力 グリーフケアセンター
発行 2003年06月判型:A5頁:192
ISBN 978-4-260-33286-6
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
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第1章 「燃えつき」につながる対応困難事例
 事例1 末期がんで死の不安・恐怖を攻撃的にぶつけてくる患者
 事例2 予後告知に対して怒りをぶつけてきた家族
 事例3 もうすることはすべてした、死なせて欲しいと依頼する人
 事例4 軽減しない疼痛から看護師に対して攻撃的言動をする患者
 事例5 患者に自殺された看護師・医療職
 事例6 せん妄になった患者の行動に対応する看護師のストレス
 事例7 看護師を小間使いのように使いたがる人
 事例8 IVH装着患者の廊下での転倒事故
 事例9 独特の価値観でわがままな主張をする人
 事例10 忙しさで優しい微笑をあげる元気もなくなったという看護師
 事例11 死を意識して死に至るまでの過程を見守る看護師の苦悩
 事例12 看護した患者が次々と亡くなって行くのに耐えられなくなったという看護師
 事例13 セデーションすべきか否か思い悩む看護師
 事例14 医療側と患者の連携がうまく取れず症状コントロールがうまくゆかないケース
 事例15 家族と患者の和解の機会を持たせられなかった後悔
 事例16 残される家族の対応に悩む
第2章 対談 「燃えつきない」看護を目指して
引用参考文献

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つらい思い抱く人の傍らに
書評者: 宮子 あずさ (東京厚生年金病院看護師)
 内科で9年働いた後,神経科(精神神経科)病棟に移って8年目になります。この間管理職となり,夜間の管理当直をするようになりました。この管理当直では,他病棟で亡くなる患者さんの死にしばしば立ち会います。そこには悲しみを抑えてその闘病をたたえるご家族の姿や,初めての死に泣き崩れた新人をやさしく励ます先輩看護師の姿があります。

 こうした究極の場面で垣間見える「人の力」に感動しながらも,1人になると魂を抜かれるように疲れている…。この感覚は本当に久しぶりです。改めて,「年に数十人の患者さんが亡くなる病棟で働いていたのは,本当にすごいことだったんだなあ」と思いました。

 温かい場面に立ち会ってすら,人の死はエネルギーを吸い取るものです。ましてやそれが良い経過でなかった場合は,看護師の消耗は極限に達します。最近まで私は,内科病棟で受けた患者さんからの「仕打ち」をつらく思い出すことがありました。あいさつをしただけで怒鳴った白血病の患者さん,1日中下肢マッサージを続けてももんでもらえなかった時間のことだけを責め続けた患者さん。「患者さんが一番つらかったんだ」とその場は自分の気持ちを納めても,年に何回か,ふとつらくなるのです。

 最近までと書いたのは,多少気持ちに変化が出てきたからです。精神科看護にかかわる中で,これら「泣かされた患者さん」の多くが,境界例の患者さんと非常に近い特徴を持っていると気づき,自分だけが悪かったのではないと思えるようになったのです。

◆受け入れられない理由がわかることで減る自責感

 逆説的ですが,看護師が患者さんのことを受け入れられない時ほど,「受け入れられない自分」を責めています。受け入れられない理由がわかり,受け入れることの難しさが了解できると,自責感が減ります。これが患者さんとの関係には,非常に大事だと実感しました。

 この本には,私が精神科で働く中でようやくわかったこれらのことが,カウンセリングの専門家からアドバイスされています。事例の選択も非常に適切で,昔の古傷がうずいて困りました。でも大丈夫。後にはきっちりフォローをしてくれるのが,この本の力です。

 今後私は,新たに開設される緩和ケア病棟の所属になる予定です。スタッフの燃えつきは,一番気になる点のひとつ。この本は,きっといつも近くに置いておきたいと思っています。最後に,この本にかかわった皆様へ。力になる著作をありがとうございました。

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