基礎作業学

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本シリーズの基盤となる、「作業」が「療法」に役立つしくみについて概説し、また具体的な臨床例にまで踏み込んで示す巻。人間の健康的な生活のもとであり、作業療法の最大の特徴となる「作業・活動」に焦点をあて、作業療法評価学、各治療学の基礎となる役割を果たす教科書である。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 小林 夏子 / 福田 恵美子
発行 2007年06月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-00228-8
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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小林夏子・福田恵美子

 標準作業療法学シリーズ専門分野・基礎作業療法学の一領域である『基礎作業学』は,当然のことではあるが「教科書である」ということを意識して企画し,具体化した産物である.本シリーズは学習マップをガイドとし,各章ごとに教育目標として「一般教育目標(General Instructional Objectives; GIO)」を設け,GIOを具体化した項目として「行動目標(Specific Behavioral Objectives; SIO)」をあげ,さらに自己学習のための項目として「修得チェックリスト」を設けている.学生が学ぶにあたり,主体的に学べるような構成に基づいてつくられた教科書である.具体的な学習への誘導が行われることで学ぶことに興味が注がれ,刺激を受け取り,自ら学習に取り組もうとする学生意識を考慮に入れた構成になっている.
 本巻は作業療法専門分野の『作業療法学概論』で学んだ「作業」の概要や適用を,具体的な作業・活動分析を通して,どのように対象者に適用していくのかを学べるように構成した.
 第1章では,健康な生活を営む人間と作業との関係,作業療法が対象者に適用する作業について,作業の分類,対象者・作業課題・作業療法理論からみた作業分析などについて,図表を用いてわかりやすく提示した.また,わが国での実践についても概説した.
 第2章では,身体運動技能,認知技能,心理・社会的技能に分けて,技能別作業分析の理論と方法について提示した.学生時代にきちんと学んで,無意識にこの分析をふまえて実践できるようになってほしい.また,作業療法士が打ち立てた代表的な感覚統合理論と作業遂行分析の理論に基づいた分析の方法についても提示した.
 第3章は,身体機能,精神機能,発達過程,高齢期のそれぞれの分野において,実践されている作業・活動分析について事例をあげ,作業分析の臨床への応用や作業の意味する内容,適用するときのポイントなどについて解説した.
 普段の生活で何気なく行っている作業の特性を生かし,対象者に治療として適用している作業療法の面白みについて考えることを願う.
 2007年5月

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序章 基礎作業学を学ぶ皆さんへ
第1章 基礎作業学と作業療法
 I 作業療法と「作業」について
 II 作業の適用と分類
 III 作業分析
第2章 技能別作業分析の理論と方法
 I 身体運動技能と作業分析の理論と方法
 II 認知技能と作業分析の理論と方法
 III 心理社会的技能と作業分析の理論と方法
 IV 理論体系例としての作業分析とその方法
第3章 分野別作業分析と適用
 I 身体機能分野
 II 精神機能分野
 III 発達過程分野
 IV 高齢期分野
基礎作業学の発展に向けて

さらに深く学ぶために
【巻末資料】ワーキングシート
索引

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作業療法の入り口に立った人たちのために
書評者: 鈴木 由美 (公立置賜総合病院・リハビリテーション科)
 私が学生だった頃,作業療法領域の書籍は非常に少なかった。しかも難解だった。教科書は,この本にも出てくるSpackman’s Occupational Therapyだったが,興味が持てそうな各論よりも,作業療法の理念や原理などに多くの時間をかけた講義を受けた覚えがある。

 今回,この本の第一章を読んでまさに学生時代に受けた講義を思い出した。「なぜ作業療法なのか?」この問いかけは常時つきまとう。その答えを恩師は私たちに噛みくだきながら伝えようとしていたように思う。作業療法の根幹ともなるべきものである。この本の第一章を読んだ時,当時と同様の感覚がよぎった。第一章は根幹である。そしてそれに続く第二章以降の生き生きとした枝葉である各論を支えているのである。そして,これまでずっと理解できずにきた学生時代の恩師の講義の意図が,ようやく理解できたように思う。根幹がなくして,枝葉は広がらないのである。

 運動を治療手段とする理学療法士と異なり,作業を治療手段にする作業療法士は,対象者を前に必ず2つの分析を必要とする。1つが対象者自身の分析(評価),そしてもう1つが治療として用いる作業の分析である。作業の分析は口で言うほどたやすくはない。作業そのものの分析に加え,その作業が対象者にとってどのような意味を持つのかを分析しなければならないからである。なんでもない作業が,ある人にとっては非常に深い意味を持つことがある。幼少時の思い出や,多感な青年期,そして大切な人たちとの関わりの中など,個人史で語られる作業が治療の糸口になることがある。そして,その作業を治療的に使うことができてこそ,作業療法士だと著者らは語る。この本では,第一章で基本的な分析について述べてある他は,膨大な情報量を持つ各論にゆだねられる。各論には,領域が異なっても複数の著者らの同じ思いが根底に流れている。それは,あくまでも対象者を主軸に考えるのが作業療法だということである。学生時代に学んだ理念がここでも感じられる。

 この本は教科書として書かれた。つまり,作業療法の入り口に立った人たちのために書かれた本である。本のいたるところに読み進むことで,学習過程が明確にできるような工夫もされている。しかも,内容は基礎作業学が1つの学問として成り立っていけることを十分に示している。難解なSpackman’s Occupational Therapyを手に,何がなんだかわからなかった私の学生時代から見れば,ずいぶん,いい時代になったと思う。反面,監修者,編集者,そして多くの著者らの問いかけも続いている。ゆるぎない作業療法の核。この本を開いた読者はどこまで答えられるだろう。そして私自身は?

 この本には,単なる技術書であることを許さない偉大なる先人たちの願いが垣間見える。

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