神経内視鏡手術アトラス

もっと見る

■テレビモニターでの術野の理解! 見ている部位はどこ? 適応症例は? 最適なアプローチは? スコープ操作の注意は? 合併症対策は? それぞれの「何」に応えるアトラス。 ■脳の中の正常と異常、手術の落とし穴から危機管理まで、疾患別手術の実際をビジュアルに展開。神経内視鏡手術の安全性向上のためのガイドブック。
編集 石原 正一郎 / 上川 秀士 / 三木 保
発行 2006年11月判型:A4頁:224
ISBN 978-4-260-00149-6
定価 17,600円 (本体16,000円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く


略語一覧

I 歴史と基礎知識
II 解剖
III 症例-内視鏡手術
 1. 水頭症
 2. くも膜嚢胞
 3. 頭蓋内嚢胞性疾患
 4. 脳腫瘍
 5. 脳室内血管病変
 6. 硬膜下血腫
 7. 感染性疾患
 8. 寄生虫疾患
IV 症例-内視鏡下手術
 1. 脳内・脳室内血腫
 2. 下垂体腫瘍
 3. てんかん
V 症例-内視鏡支援顕微鏡手術
 1. 脳動脈瘤
 2. 聴神経腫瘍
 3. 顔面痙攣
VI 神経内視鏡手術の合併症・pitfallsと対策
VII 神経内視鏡ならびに周辺機器の故障と管理法

付・神経内視鏡手術心得10カ条
付・内視鏡のメンテナンス
索引

開く

より安全で確実な神経内視鏡手術を行うために
書評者: 冨永 悌二 (東北大大学院教授・神経外科学)
 このたび,石原 正一郎先生,上川 秀士先生,三木 保先生らが編集した『神経内視鏡手術アトラス』が発売された。神経内視鏡は,歴史は古いものの脳神経外科領域における診断・治療技術としては片隅に追いやられていた感がある。しかし新たな内視鏡機器の開発や技術の洗練によって成熟し,今やある種の閉塞性水頭症では治療の第一選択肢となる程重要なmodalityとなりつつある。本書はこのような流れの中にあって誠に時宜を得た企画であり,神経内視鏡を志す脳神経外科医,第一線で神経内視鏡治療に携わっている脳神経外科医のみならず一般の脳神経外科医にとっても大変有用な著書である。

 第一章「歴史と基礎知識」では神経内視鏡の歴史がわかりやすく紹介されるとともに,従来の著書では軽視されがちであったdeviceとしての神経内視鏡に関する解説がなされている。軟性鏡と硬性鏡それぞれの特色や利点にとどまらず,最近登場した脳室内ビデオスコープについても従来の軟性鏡との違いについて解説している。さらに現在の神経内視鏡手技において最も問題となる止血操作の際に用いられる凝固子についても各製品の作用原理,生体への影響についてもわかりやすく述べている。

 第二章「解剖」は,高画質な内視鏡写真による正常解剖の網羅的解説がなされており,本書の白眉の一つといえる。当初神経内視鏡を始める際には,解剖書のスケッチを頭に描きながら,時として方向や位置を見失いそうになりながら内視鏡を操った経験がどの術者の記憶にもあると思う。本書の正常解剖を写した内視鏡写真は,そのような状況での的確な「ガイド」というべきもので,それこそ正に編者らが意図するところであると思う。またこれだけ多くの「教材」を提供しうる編者らのこれまでの経験の蓄積と,その提供は敬意に値する。第二章の末尾には「神経内視鏡手術心得10か条」が記載されている。編著者らの豊富な経験に裏打ちされたものであり,より安全で確実な内視鏡治療を行う同義的責任を担っていることを改めて読者に喚起している。

 第三章の「症例─内視鏡手術」には水頭症,嚢胞性疾患,脳腫瘍をはじめとした脳室内病変から寄生虫疾患にいたるまで多彩な症例の呈示がなされている。広く普及しつつあるとはいえ,個々の施設で経験できる神経内視鏡手術の症例数には自ずと限りがある。本書は一般の施設で遭遇すると思われるほとんどの疾患が網羅されており,また個々の症例における手術のポイントやピットフォールも記載されている。神経内視鏡手術の実践の場にあって即役に立つ「ガイドブック」でもある。

 最後に,昨年神経内視鏡学会の技術認定制度が発足し,神経内視鏡手術は注目を浴びていると同時に結果に対する期待も大きい。本書が身近な「ガイドブック」となり神経内視鏡治療がより安全で確実なものとなるよう祈念したい。
安全かつ確実な技術を得るための必読書
書評者: 寺本 明 (日医大大学院主任教授・脳神経外科)
 日本脳神経外科学会は1948年の創設であるので来年60周年を迎える(ただし,学会の開催数はもっと多い)。数え年で言えば既に還暦を迎えているわけである。この間,学術的にも技術的にも,さらには政治的にも一貫して右肩上がりの発展を来たし,時には既に完成形に近づいたかと思われる分野もあった。細かいことを言えばきりがないが,臨床的にはMicroscopeとCT scanおよびMRIが三大プロモーターであった。これらが安定してきた後で華々しく登場してきたのが神経血管内手術と神経内視鏡手術であり,中小の学会の中には統廃合がささやかれるものがあるなか,この二つの専門学会は会員数を飛躍的に伸ばしてきている。いずれも従来の治療法と比較するとより低侵襲であり,テクニックも精緻であるため,若手の脳神経外科医にとっては大変魅力的に見えるようである。

 一般に外科分野においては,患者にとって低侵襲となればなるほど外科医の負担は増えてくる。もし同じ成果が挙がるなら切開や術野は小さいほどありがたい。しかし,その分新規の機器の導入やその習熟が外科医に要求されるわけである。この習熟過程をおろそかにすると,低侵襲どころか患者に健康被害を与えることになりかねない。現に,これらの新しい分野ではさまざまな医療事故が報告されている。脳神経血管内治療学会ではいち早く専門医制度を立ち上げたが,より新しい分野である神経内視鏡学会ではまず技術認定制度から始めることになった。そのテキストともいえるのが本書である。

 本書は,最初に内視鏡の原理や基礎知識,脳室系の外科解剖が各々20頁ずつ紹介してあるほかは,大半の頁を実地の症例を示しながらの術式の解説に徹している。しかもカラーで内視鏡の手術画像をふんだんに盛り込み,随時操作のコツを示している点が読者にとって有益な情報である。一方,個々の疾患の項目の中に“操作のコツ”として注意点も挙げられてはいるが,合併症とその対策,および機器の故障といったリスクマネージメントに関する事項が最後に10頁程度に圧縮されているのは若干物足りない。改訂時にはこれらの記述内容を大幅に増やしてもらえるよう要望する。

 神経内視鏡手術については,2002年に水頭症に対する第3脳室底開窓術(脳室穿破術K174-1)として21,800点の保険が認められた。これは神経内視鏡手術が初めて社会に認知されたことを示すきわめて意義深い事実である。しかし,本書にも記載があるようにまだまだ多くの脳神経外科疾患に内視鏡手術は有用であり,それを保険で認めてもらう努力がなされている。一方でわれわれ脳神経外科医は,この技術を安全かつ確実なものとする義務を担っているわけであり,本書の意義は大きいものと考える次第である。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。