心理的問題をもつ妊産褥婦のケア
助産師による実践事例集

序章
　A わが国での妊産婦の精神支援への取り組みと看護スタッフの役割
　B 助産師によるよりよきメンタルヘルスケアを期待して
　C 周産期にみられる精神疾患の分類と診断基準
実践事例集
　第1章 産後うつ病
　第2章 パニック障害
　第3章 妊娠うつ病
　第4章 自殺念慮を伴う妊娠うつ病
　第5章 強迫性障害
　第6章 全般性不安障害
　第7章 乳幼児突然死症候群
　第8章 新生児死亡
　第9章 人工妊娠中絶
　第10章 不妊
　第11章 流産
付録
　精神科診断用構造化面接基準
　－妊産褥婦へのエモーショナル・サポートのために
　怖いものの一覧表
索引

この本いかがですか？ （雑誌『助産雑誌』より）
書評者: 吉沢　豊予子 (東北大学医学部保健学科)
　本書のタイトルを見て，“ついに出たネ”そして，監修，編集者名をみて“そうだよね”さらに，中身を拝読し“これだよね，助かった”そんな感想を持ちました。書評の書き出しとしては失礼でしょうか。私は，読者の生の声を代弁した一言，二言のような気がしてなりません。どうしてこんな感想を持ったのか，述べていこうと思います。

　女性の健康Women’s Healthの概念が日本のなかに浸透しだしたのは，1994年のカイロ人口会議，1995年北京女性会議の頃からです。このとき，Women’s Healthの概念にはメンタルヘルスそして，メンタルケアの重要性が位置づけられていました。これによって私たち助産師は，女性の生涯を通じてのメンタルヘルス，そして女性特有の妊娠，分娩，産褥に伴う身体や心のありようや変化，この事象をきっかけに起こってくる新たな身体や心の変化とケアの方法を再認識することになるのです。この頃，本書の基礎となる初期の研究が開始されており，監修，編者の先生方のすばらしい心眼力に敬服いたします。

　私は，日々助産師たちが，妊婦，産婦そして褥婦のケアのなかで，心のケアを必要とする人たちがいることに気づいており，その女性たちに暗中模索のなかでケアを行なっていることは知っていました。しかし，そのケアを提供するまでのアセスメントとケアの的確性と評価に，不安を感じていたのではないかと思っていました。本書に対する“これだよね，助かった”の意味がここにあります。本書は，現在も続いている周産期にある女性の心のケアの研究に基づいて，本書の帯にもあるように，構造化面接を用いた出産期の心のアセスメント手法を示してくれたことです。

　さらに助産師が日々体験する周産期女性の心の問題について，多数の事例を示してくれたことにより，助産師が抱えている事例と本書の事例を見比べながら，その対処法を学ぶことができるのです。そして，この事例には看護上のポイントと医学的解説の両方が示され，このことが提供するケアに確信を与えてくれています。

　こう言えるのも，長年の研究を基礎にして作り上げられた手法であり，EBMあるいはEBNに基づいてケア法を提供しているからではないかと思います。さらに本書のすばらしさは，非常にすっきりコンパクトに要点を纏め上げているところでもあり，臨床の場の傍において紐解くには適したものになっています。これらから，看護の実践力や看護の有効性を高めてくれる書になるのではないかと確信しています。

　また本書が，現場で日々ケアを提供している助産師にとっては，心のケア提供のためのバイブルとして，卒業1年目の助産師や助産師学生には，どちらかというと経験で培われていく側面も大きい心のケアの臨床力を磨くものとして，役立つのではないかと思います。

　本書は，日本の周産期の女性ケアの質が確実に向上するであろうことを確信できる一冊です。本書を世に出してくれた著者の先生方に感謝いたします。

（『助産雑誌』2005年7月号掲載）