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在宅酸素療法マニュアル 第2版
新しいチーム医療をめざして

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保険適応から20年が経過した在宅酸素療法の重要性は、患者数の増加や高齢社会の本格的な到来に伴いますます注目されている。チーム医療としての在宅酸素療法の実施を明確に打ち出し、医師、看護師ほかコメディカルスタッフに重宝された書、待望の改訂第2版。使いやすいマニュアル形式はそのままに、最新の知見も盛り込んだ。
木田 厚瑞
発行 2006年08月判型:A5頁:360
ISBN 978-4-260-00153-3
定価 4,730円 (本体4,300円+税)
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  • 目次
  • 書評

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1 慢性疾患と在宅呼吸ケアのあり方
2 チーム医療と包括的呼吸リハビリテーション
3 医療連携のあり方と問題点
4 在宅酸素療法の医学的効果
5 医療倫理とインフォームド・コンセント
6 在宅酸素療法の導入基準
7 在宅酸素療法の手順
8 在宅酸素療法で用いられる機器と取り扱い上の注意点
9 日常評価と指導
10 外来受診のチェック・ポイント
11 在宅酸素療法における副作用,事故とその対処法
12 在宅人工呼吸療法
13 薬物療法の考え方
14 急性増悪の対策
15 在宅酸素療法における将来の課題
索引

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在宅医療全般に当てはまる在宅酸素療法の必読書
書評者: 飛田 渉 (東北大保健管理センター所長)
 在宅酸素療法(Home oxygen therapy, HOT)は,1985年に保険適用になって20年を迎えました。わが国における在宅医療のパイオニア的役割を果たしてきたと言っても過言ではありません。この間,HOTは大きな変貌を遂げてきているのも確かです。基礎疾患が大きく変わっているのもその理由の1つです。HOT患者は初め肺結核後遺症が全体の約3割を占めていたのが漸減し,間質性肺炎や肺癌のHOT患者が増加してきております。新たに睡眠呼吸障害を伴う心不全にHOTが適応となりました。一方では,HOT患者の高齢化も起こっております。当初,平均年齢は63歳でした。それが今や70歳を越えています。さらに社会環境の変化に伴い,HOT患者においても例外なく核家族化が進んだだけでなく,独居患者も増加しています。このような背景にあって,HOTの今後のあり方がきわめて重要な課題になっています。

 本書の著者,木田厚瑞氏はわが国の呼吸病学の第一人者であり,呼吸器疾患患者のリハビリテーションに関する臨床研究を一貫してなさってきました。特に,呼吸器病の治療にはチーム医療による包括的なアプローチが必要であると,「包括的呼吸リハビリテーション」のプログラムを提唱しました。1995年のことです。これを契機にわが国において,チーム医療による呼吸ハビリテーションが多くの医療施設に導入されるようになりました。

 本書は木田氏が1997年に発刊した『在宅酸素療法マニュアル』の初版を加筆修正し,第2版としてまとめられたものです。初版後の9年間においてわが国のHOT医療が大きく変貌してきたことを踏まえ,HOTのこれまでの歩みはもちろん,HOTに関する新しい知見にとどまらず,現在あるいは今後さらに問題になると思われるHOTのチーム医療や包括的リハビリテーションにおける位置づけ,さらにはHOTを軸とした医療連携のあり方や医療倫理とインフォームドコンセントに関することがわかりやすくまとめられています。

 最終章では,将来への課題についても触れられています。また,章立てがクリアでどこから読んでも理解しやすいように工夫されており,重要なポイントにおいては「NOTE」として補足説明がなされています。図表や引用論文も多いことにも魅かれます。限られたスペースの中に豊富な内容を体系づけて,しかも簡潔にまとめられています。これは木田氏が呼吸器病患者を専門に診療の第一線で永年活躍された後に,大学の医学部に移って得られた豊富な経験をもとに,本書が第2版として再構築されたからだと思われます。

 本書を一読すれば,その内容が決してHOTにとどまるものでなく,在宅医療全般に当てはまる内容であることがご理解いただけることでしょう。HOTを軸に,読者にチーム医療としての在宅医療について考える機会を与えることが木田氏の狙いではなかったかと思われます。一般臨床医,看護師,理学療法士,薬剤師,栄養士,保健師など,医療従事者のみならず医療機器担当者や在宅医療行政に携わっている方々,そしてこれから在宅医療を学ぶ研修医や医療系学生にとっては必読の書です。

重要知識を要領よくまとめた実地マニュアル
書評者: 川上 義和 (KKR札幌医療センター院長)
 このたび出版された第2版は,1997年の第1版に続く改訂版である。しかし,単なる改訂版ではなく,ほとんど全面的に書きかえられたことが明瞭であり,木田厚瑞教授のこの本に賭ける情熱と熱気を堪能させるものとなった。

◆内容をまったく一新した第2版

 第2版では疾患の一般的な解説を避け,また原理など基礎的な事項は最低限に抑えられており,実地的なマニュアルとして一新された。コンセプトが明快に書かれていること,在宅酸素療法の関連領域――つまり包括的リハビリテーション,医療連携,医療倫理とインフォームドコンセントを踏まえたうえで,在宅酸素療法の効果など実際的な記載となっている。

 第1版ではこれら前段階の記述が少なく,機器の構造や取り扱い方法が比較的多かった印象があるが,第2版ではこれらの機器に関する項目は少なくなっている。医療職としては,構造などは常識として知っていればよく,実際的なことは業者が行うという理由からであろう。「NOTE」として知っておいたほうがよい知識やメモが随所に要領よくまとめられているのも,新しい点である。

◆重点的に書かれている第2版

 第1版は22章からなり,これに統計資料,様式などが参考資料として追加されていた。第2版ではこれら参考資料はよく取捨選択されて章の中に記載されていて,読みやすいように工夫されている。総ページ数は増えているが章の数は15に減っており,それだけ項目と内容を吟味して絞られた結果であろう。

 とくに重点が置かれているのは,在宅酸素療法における日常生活の評価と指導,急性増悪への対応,薬物療法などであろう。急性増悪をどう発見するか,専門施設への紹介のタイミングなど詳細に書かれており,薬物療法の重要性も適切に評価されている。これらはいずれも実地医家の参考になることばかりである。

◆新しい領域について書かれている

 在宅人工呼吸療法(NIPPV)が広がりを見せているなか,これについても詳しく書かれているのが第2版の特徴である。病院から自宅へ移る基準,コンプライアンス,長期NIPPVの導入基準など,日常の管理に役立つ記載である。

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)についての知見が増えているところから,在宅酸素療法の観点からこれら新しい知見を積極的に紹介して,実地診療に役立てるのに貢献している。実際,在宅酸素療法の導入基準などはCOPDの研究から生まれたものであり,また患者の多数がCOPDであるところから,COPDについての知見は基礎として重要である。

◆将来の課題について問題提起がある

 種々の問題点が将来の課題として残るなかで,前回の診療報酬改定で在宅酸素療法の点数が大幅に引き下げられたのは,残念なことであった。木田教授は,将来の課題として医学的問題,社会的問題,機器に関する問題,研究方法の問題,患者要望の問題など多くを挙げている。深い理解と広い実践があって初めてなされる指摘ばかりである。

◆誤ったドグマがない

 在宅酸素療法については,誤った,あるいはエビデンスに基づかないドグマを強調する向きが一部にはある。木田教授の豊かな見識は本書でも遺憾なく発揮されており,このようなドグマのかけらも見受けられない。安心してお薦めするゆえんである。

 以上,第2版の書評を試みた。本書を医師ばかりでなく多くの医療職(看護師,呼吸療法士,理学療法士,作業療法士,保健師,栄養士,薬剤師,検査技師,救急隊員など)に強くお薦めする次第である。

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