看護学教育における
講義・演習・実習の評価

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本書は、看護教育の評価についてテストの作成法から評価まで具体的に紹介したもの。また看護教育に多いレポートや記録の記述の評価などわかりやすく解説している。さらに問題解決能力など、学生に持ってほしい能力がどの程度備わっているかをレポートの中から探り評価する方法にも言及している。
Marilyn H. Oermann / Kathleen B. Gaberson
監訳 舟島 なをみ
発行 2001年01月判型:A5頁:368
ISBN 978-4-260-33105-0
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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  • 目次
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1. 評価,測定,教育の過程 
2. すぐれた測定用具の条件 
3. 教室内試験の計画 
4. 客観式試験問題:真偽式,組み合わせ式,短答式 
5. 客観式試験問題:多肢選択式,多重選択式 
6. 論文式試験問題と記述式課題の評価 
7. 問題解決,意志決定,批判的思考の評価:状況設定問題とそのほかの評価方法 
8. 試験の構成と実施 
9. 試験の採点と分析 
10. 看護学実習評価 
11. 看護学実習評価の方法 
12. 試験得点の解釈 
13. 成績評定 
14. 社会的,倫理的,法的問題 
15. プログラム評価 
16. 総合的質管理(TQM)と看護学教育

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いかに看護教育の質を高めるか
書評者: 佐々木 かほる (群馬県立医療短大教授)
 本書『看護学教育における講義・演習・実習の評価』は,『Evaluation Testing in Nursing Education』の翻訳書である。「教授=学習活動」を展開するために必要な評価過程の理論と教育学研究者の業績を解説している。著者らは本書の内容を5つに分類構成し,16に章立てしている。

◆評価なき看護教育の状況を打開し改善するために

 内容の第1は「測定・評価・試験の概念」,第2は「試験問題の作成と分析」,第3は「看護学実習評価及び能力評価」,第4は「試験結果の解釈と報告」,第5は「教育プログラムの評価」である。いずれも研究結果や例題が豊富に示されている。以下にそのいくつかを紹介する。
 まず第1章の評価・測定の概念では,教育目標の分類学に基づく総合診断測定による評価の考え方を述べている。このBloom理論は1973年にわが国で翻訳・出版された『教育評価法ハンドブック』(第一法規出版)に詳しい。また,この評価の考え方は,わが国の看護学教育で,教員研修や臨床指導者講習会などにおいて,広く紹介されている。大学設置基準の改正により,現在大学では自己点検・評価が進められており,目標を明瞭に示し,評価していくこの理論はきわめて参考になる。
 客観的試験問題の作成では多肢選択式がよく使われる。第5章ではその多肢選択式試験問題作成を,看護学の例題を使い詳細に説明している。多肢選択式の試験は知識の単なる想起だけではなく,理解,応用,分析レベルまで測定できることから広く利用され,わが国では国家試験問題がこの形式をとっている。この章では国家試験問題の分析ができるような基準も示されている。
 看護学実習評価は,教師が学生の実践能力を評価し,目標の達成度を確認する。しかし,看護学実習での評価は客観性に欠けることがある。つまり,学習以前に学生が当然到達しなければならない社会人としての規範,それに加え看護基礎教育としての到達目標である患者・看護関係成立の能力・知識・技術・専門職としての責務など,広範な学習目標が示される。さらに,学習の場の複雑性などから信頼性・妥当性を確保するには課題が多い。第10章では,この分野を実習評価の公平性を期するシステムの必要性として取り上げ,公平性の3側面を説明している。
 日頃,誰もが目標を達成できる効果的な講義・演習・実習活動を展開したいと願いつつ,十分な準備がないまま講義に臨むこともある。また,看護学実習では多くの人材,物品および時間の調整,準備をするが,フィードバックなしで次の実習を行なうこともある。本書はこのように評価されない状況を打開し,改善するための手だてを示している。
 付言すれば,日本の看護学教育に携わる訳者らは,現場の実情に精通していることから,邦題を原題の直訳から,読者がイメージしやすく,平易に理解できる表現へと心がけている。難解な教育評価の専門書を最後まで読み切ることができるようにとの訳者らの熱意が感じられる。

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