標準循環器病学

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循環器病学が難しいと敬遠される理由の1つは,病態生理の理解が不十分なうちに,各疾患の知識を詰め込むからである。本書は各大学で実際に教鞭をとる教授陣が,common diseasesをすべて網羅して,病態生理を丁寧に解説している。学生・研修医が,循環器病学において何を学ぶべきかについて,明確な指針を示した最良の教科書である。
シリーズ 標準医学
編集 小川 聡 / 井上 博
発行 2001年07月判型:B5頁:440
ISBN 978-4-260-11981-8
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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  • 目次
  • 書評

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第1章 症候学 
第2章 身体所見 
第3章 検査法 
第4章 主な循環器疾患の診断・管理・治療

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循環器病学の新しい学問の変遷をタイムリーにまとめる
書評者: 杉本 恒明 (関東中央病院長)
 本書は,医学書院が刊行する臓器別「標準教科書シリーズ」内科系の1冊である。頂戴して早速に読ませてもらった。B5版,450頁余とハンディであり,読みやすい。そして読後,いささか満足した気分となった。

◆実った編集者の意気込み

 近年,循環器学の研究,診療の進歩には目覚ましいものがある。本書はこれから臨床実習に入ろうとする医学部学生のための教科書とは言いながら,循環器病の各種病態を最新の立場で整理し,解説したものである。序文にも近年の循環器学の新しい学問の変遷をタイムリーに取り入れていくことを特徴としようという編集者の意気込みがあった。読みながら,かつて評者が大学で各論講義を担当していた頃,自分にしかできない講義をしたいという思いから,自分の知る限りの新しい内容の盛り込みに努力していたこと,そして,そうした努力がうまくいった講義は学生が評価してくれたことを思い出した。本書は,44人の第一線で活躍中の筆者の分担執筆である。それだけに当時の私の思いが,そのまま教科書として実ったもののように見受けたのである。
 「症候学」,「身体所見」,「検査法」,「主な循環器疾患の診断・管理・治療」の4章構成であるが,当然,診断・管理・治療の章が中心である。図と表が駆使されていて,知識の整理に役立つ。エコー上の左室扁平化の程度により右室圧を推測する図や,運動時の左室流入血流パターンにみる楔入圧上昇の推定図などは大変,実践的である。とくにどの章においても,図がきれいであることには感心した。とりわけ,心音図がきれいである。心音図は最近はあまりとられていないと思われるにもかかわらず,どの章にも見事な記録が提示されていて驚いた。せっかくの貴重な図である,もう少し説明があってもよいようにすら思った。カラーの図は巻頭に口絵で示されているが,文中にはその白黒の図があって,口絵があることに触れてあり,行き届いている。
 直接的な血行動態改善が予後改善に直結しないことを大規模試験に基づいて示している点は,根拠に基づく医学のあり方を教えるものである。薬物の使用は,病態に応じ,個別に適応を考える必要があるということでもあろう。一方,難を言うならば,治療薬の使い方の具体例がない章があるのが気になった。薬の使い方の原則が示されていても,具体的な処方量と方法の記載が見当たらない章がある。臨床に入る前の学生が対象というためでもあろうが,この種の教科書は意外に長く保存されて,臨床経験が重なるたびに,しばしば繙かれることがあるものではなかろうかと思うのである。

◆学生だけでなく臨床医にも役立つ

 記述的であるということもあって,何分にも読みやすい教科書である。学生に歓迎されるであろうことはもちろんであるが,すでに長く医療の第一線にある方々にとっても,自分の得手としない分野の進歩を知る意味で役立つことであろう。各分野の臨床医の方々が,自分の持つ知識が今なお通用することを確認するために一読されることをお勧めしたい。

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